
総合評価
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「バンパイア」シリーズ「昭和不老不死」の続き。
「昭和不老不死伝説 バンパイア」の後編になる作品です。 不老不死として自己再生し生き続けたマリア。そのマリア捕獲に動く巨大企業をバックにした秘密組織との戦いがやがて日本自体の再生を目指すことにまで発展するのが本作からすればエピソード・シリーズともいえる「昭和不老不死伝説 バンパイア」。 そしてその後の世界で、マリアが再生(出産)した本田マリアと昇平を中心に理想社会の中に巣食う闇の中心達との戦いが本作になります。 「昭和不老不死伝説 バンパイア」は理想社会になる前の現代の世界観をベースに描かれた作品であり、それに対してマリアを信仰する信徒たちが作り上げた理想的世界観がベースになっています。 本作の社会背景になっている清く正しく美しくという社会って個人として、そしてごく一部の支配層が夢見る理想社会なんですよね~。 リアルな現代日本としては違和感があっても実は地球的にはまだ半分近い国がそういう国家体制です。 そとからみれば独裁国家であってもその国民からすればごく一部を除いて国民は平等に扱われ、刺激や扇情的なことは少なく神の名のもとに安らぎを与えられて心安らかに過ごせ、物質的満足度などバカらしく感じられ、犯罪者は言葉巧みに擁護されることもなく悪として徹底処罰される勧善懲悪社会… ハッキリと聞けば、現代で例えれば北朝鮮でしょうか…まぁ端的に言えば抑制されているんですよね。 日本でもそういう時代があり「開国」とか「文明開化」などと評してして新時代を持て囃し、それまでの時代を悪評の虚言に包んで葬り去って新時代のより腐敗した社会を賛美しました。 そして次の社会で腐敗が進むとこうした理想社会への憧れる人たちが湧いてくるですよね。 2016年の大統領選挙で(やたら暴言パフォーマンスの西洋カルタ氏が目立っていますがその裏で)あのアメリカですら両党の左翼政治家が躍進しています。これば実に驚くばかりです。 日本からすれば、現在の北朝鮮の社会をTVなどで接すると「抑圧されて可哀想」と憐れんでいますが実は彼らからすれば庇護されていて「開国」で蹂躙されるようなことから守られてるいのかもしれません。 もちろんそうした社会だけに膿があるのではなく、「昭和不老不死伝説 バンパイア」の冒頭でもマリアに出会う前の昇平が心で叫んでいたように、現代日本も病んでいるのです。 私が書けば書くほど胡散臭くなりますが、私はこの作者の徳弘正也先生の作品、「ターちゃん」や「黄門さま」。そして本作バンパイア・シリーズを読むと何故だか心が解き放たれる心地がします。 徳弘正也氏の描く作品で何が素晴らしかといえば(ギャグのセンスはもちろんですが)何よりも人の本音が描かれているところが大好きです。 我欲とか、日々の苦渋の生活の中でのささやかな悲哀を込めたギャグなどはもちろん、少年誌というか人が体面で控えがちなエロスについても真っ正直に描かれているのが好きです。 宗教では我欲を捨てろと言います。もちろん肉欲も捨てろと言います。 しかしその宗教を説くのに万人にそれを捨てさせるくらい、万人に存在するのが欲であり、なればこそ業なのです。 何も考えずに笑い転げたいなら「ターちゃん」ですが、ちょっとリアルなバイオレンス(と、エロく)楽しみたいなら本作を強くお勧め致します。本当読んで後悔しません。素晴らしいです。
0投稿日: 2016.03.13
