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里海資本論 日本社会は「共生の原理」で動く
里海資本論 日本社会は「共生の原理」で動く
井上恭介、NHK「里海」取材班/KADOKAWA
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総合評価

24件)
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    『里山資本主義』の続編。瀬戸内海のアマモを再生するために立ち上がった漁師。富栄養化され赤潮が発生するまでになってしまった内海だが、稚魚の揺り籠となるアマモの森、牡蠣の養殖筏で、海水の浄化が進んでいく様子がダイナミックに描かれる。連鎖的に里山も再生され、ヒトが住みやすくなった。認知症老人が生き生きと暮らす島にも感動。こんな小さな循環型社会がこれからの日本の理想なのだと思った。「自然を自分たちの都合で、今生きている自分たちのためだけに使い、あとは知らないという時代は、終わるべきなのだ」に納得。

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    投稿日: 2024.11.30
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     唯一神の世界では、海に手を加えるというのは環境破壊である。SATOUMIは牡蠣の養殖することによって海を浄化し、アマモという海藻を増やして豊かな瀬戸内海を取り戻した。つまり海に手を加えることによってより豊かな海を実現して、漁業によって生きる道を開こうとするものです。  少し前に里山資本主義が有名になりましたが、里海資本論はそれを含めてオカネ資本主義に汚染された生き方を再考するきっかけになります。  人類史上、パンデミックは人類の歴史を大きく変化させてきました。3世紀から4世紀にかけての寒冷化が民族大移動を引き起こし、東では漢帝国を滅亡させ、西ではローマ帝国を分断させました。寒冷化は大飢饉をもたらし、免疫力が低下した人類にパンデミックを引き起こさせます。  14世紀のパンデミックも、ミニ氷河期の到来が原因で飢饉に陥り、大元帝国を崩壊させます。神への信仰に疑問を持つ多くの人が宗教改革やルネッサンスを起こすわけです。  こんな時代にこの本は読む価値ありです。今信仰されているマネー資本主義、金融緩和すればデフレから脱却できるとか、新自由主義とか、MMTとか、怪しい信仰は崩壊する可能性があります。こんな時代だからこそ読むべき価値ある一冊と言えます。

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    投稿日: 2020.12.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    里山資本主義に続き、読んでみた。 前回は随分と既存の資本主義をマネー資本主義と叩いていたように記憶するが、今回はトーンが落ち着き、様々な里海(海の多様性を放置するままではなく、少しだけ人為的に手を加えることによって多様性を復活させ、自然の恵みのおこぼれを貰う)の例が挙げられている。里山と里海の違いについて最後に書かれているが、その辺りの違いはあまりしっくりこなかったが、サステイナブルとはまさにこのことだと思う。だからといってどれだけの人類が自然に対して謙虚になっていけるのだろうか?そういう意味では世界規模で広げていくには大分難しいように思える。とはいえ、筆者の言うように日本人には馴染みやすい考え方だと思う。 P.15 一九世紀後半、都市化が進み資本主義が盛んになり、煤煙と工業排水と、地下鉄の通勤ラッシュと、ひどい労働条件とすさんだ暮らしを強いられた労働者があふれた、イギリスの首都ロンドン。そこで未来を必死に思い描こうとした社会主義者ウイリアム・モリスが、「二十二世紀ロンドンに現れるユートピア」を本に著した。(中略) 「どう見ても、文明の最後の時代に人は物品の生産という問題で悪循環におちいってしまったようですね。(中略)<世界市場>と呼ばれるものです。その<世界市場>は、いったん動き出すと、物品の必要あるなしにかかわらず、ますます大量に生産しつづけるように強制しました。(中略)おかげで人びとは、ひたすらその悲惨な制度を維持するためだけに、とてつもなく多くの仕事を背負いこむはめになったのです」 P.76 「乱獲」や「資源枯渇」と対極をなす世界。網に魚が入るのを待ち、入った分だけいただく、おだやかな漁。 馬鹿にしないで見て欲しいのだ。成果を現代的な経済用語で説明すれば「増収増益」したことになる。しかも投資資金はほぼゼロ円で。 これこそが、「里海資本論」の掲げる「経済成長」なのだ。 P.92 岡本太郎が世界の芸術の先端を行くフランス・パリから帰ってきたのが戦中の一九四〇年。パリでシュルレアリスムや、ピカソのキュービズムなど、常任には理解できない芸術の最先端を貪欲に吸収したエネルギーをそのまま日本に持ち込んだ。 戦争がおわり、日本の芸術のどこがすごいのか、見いだそうとしたが、いつまでたっても見つからなかった。平野さんの解説によれば、「わびだのさびだのという弱っちいものに芸術のエネルギーなど感じられるわけがない」ということだったらしい。 それがある日、目を真ん丸にして「あった!」と叫んだ。「縄文土器」との出会いだった。太郎自身、驚きをこう記している。 「驚いた。こんな日本があったのか。いや、これこそが日本なんだ。身体中の血が熱くわきたち、燃え上がる」 (『岡本太郎の宇宙2 太郎誕生』ちくま学芸文庫、二〇一一年、二八五頁) P.96 「現状のマネー資本主義」では無理だという人がいた。巨大かつ緻密で、複雑怪奇なマネー資本主義を成立させる高度な数学理論、金融工学の世界的な達人のひとりだ。 彼の主張はこうだ。マネー資本主義は自己増殖しすぎた。そして「人間の幸せ」から乖離した。世界に存在するお金は今も増え続けている。しかしそれは、今存在するお金を増やすことにしか役に立っていない。「世界の人間の幸せの総量」を増やすことに、なんら貢献できていないと。 だからその人は今、マネー資本主義の改革に取り組んでいる。明るく笑ってこういった。「自身はある」そしてこう続けた。 「人間が昔からしてきたことを取り返せばいいのだ」そしてさらにこう付け加えた。 「その後も進化を続けた金融工学を駆使すればそれは可能さ」 P.98(プライベートエクイティーKKRの共同創業者、ヘンリー・クラビス氏) どのようにして投資先を選ぶのか。どうすればそんな利回りを獲得できるのか。 信じられないほどシンプルな答えが返ってくる。 「正しいことをすればいいのだ」 何をきいても、どうきいても。答えはそのひとことに尽きた。 マネーゲームに明け暮れる「マネーの猛獣」はたくさんいるし、たくさん稼いでいるのだろう。しかし本当に一番稼げる近道。それは世の中が一番困り、解決策を求めているところへの「正しい投資」なのだと繰り返した。 世の中が求めることに必要な金をつぎこむのは政治の役割ではないのか、と尋ねた私たちに彼は言った。選挙に勝てればいい政治家たちには、もはやその役を果たせない。かわりをつとめられるのは、結局マネーしかない。 では正しいことは何か。「地球の現k内に関すること」に話は及んだ。 世界全体を見渡し、限界に達した、あるいは環境があっかしてすぐにでも対応しなければならないところを特定する。必要な額を計算し、信じられないほどの額のマネーをつぎこむ。世界中から有効な先端技術を選び出し、適切な形で問題を起こした地域に重点配備する。 そうすれば「結果」はおのずと出る。地球の問題に対しての結果も、投資に対するリターンという結果も。 P.180 東京の川も、「悲しい色やね」と歌われた大阪の海も、なぜ未来永劫そこで泳げないと、あきらめるのか。多くの場所で、何十年か前まで当たり前に泳いでいたのに、そのことをみんな見事に忘れてしまっただけなのだ。思い出し、取り戻そうとすればいいのだ。 理想追求に燃える技術者たちが生み出したニッポンじまの先端技術も総動員して、実現しようと前向きに、何ができるか考えていきたい。科学技術が自然を無理やり変えたり、壊したりする時代は終わった。どんな先端技術も「里守の道具」にする時代が到来しようとしている。 P.197(里海づくり研究会議事務局長 田中丈裕氏) 広大な干潟が広がる有明海。ノリの成長に欠かせない富栄養化物質が豊富な海だ。それが急にガタンと、とれなくなった。 考えられる原因は、アサリやタイラギなど二枚貝の激減だという。二枚貝が過剰な植物プランクトンをせっせと食べ、尿として窒素をだしてくれたおかげでノリは成長できたのだそうだ。アサリなどの二枚貝が少なくなると、ノリは水中の富栄養化物質を植物プランクトンと奪い合うこおてい通りに生産されるとになり、負けてしまうらしい。 物質循環、あるいは「命のサイクル」が回らなくなると、何かがうまくいかなくなる。海の絶妙のバランスの上に生き物たちは生きている。 「原料さえ供給し、機械のメンテナンスさえぬかりなくやれば、製品は予定通り生産される」という「人口の世界」とは違うのだ。 里海の掟がここにある。

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    投稿日: 2020.01.16
  • 21世紀の豊かな人間社会へ

    21世紀における、新しい自然との共存を目指す方法を、瀬戸内海を舞台に展開される。本書を読んで、これからの社会の理想を見せてくれたように思う。 20世紀の高度経済成長では、工業化によって海や山が壊されて行ったが、豊かになって行く過程で、自分たちの環境を住みにくく変えてしまったという弊害もあり、今後は違ったやり方で豊かな社会を築いていく必要があると感じた。 本書で述べられているのは、自然のバランスを見極め、人間も自然環境の一部であり、バランスを保った活動をすることで快適な暮らしを手に入れることができるというものだと思う。工場と森や小川、海が共存する、一見何か矛盾したような感じを受けるが、これからの社会のあり方はそういう新しいものにして行くことが求められている。本書で述べられた「海全体を生け簀にする」という発想などは、非常に印象に残っている。里海資本論というのは、豊かな人類の未来を築く重要なヒントになるだろう。

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    投稿日: 2019.11.12
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    里山資本主義の枠を更に超えた面白い人たちが多数登場します。里山資本主義とセットで読むことをお勧めします。

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    投稿日: 2018.12.25
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    2015年81冊目 里山資本主義のNHK取材班が今度は里海を調査 里海はSATOUMIとして海外でも認知されている言葉らしい。 里山資本主義は里山にある資源を再度有効活用した生活を紹介したが、 里海では一度死にかけた海をいかに昔の環境に戻し生き返らせるかという点がポイント。 一時期はコンビナートから垂れ流される汚水や生活排水で赤潮でいっぱいになり、 それまでは鯛の海だったのに魚達が生活出来なくなった瀬戸内海。 そんな瀬戸内海を生き返らせたのは牡蠣でありアマモ。 多くの人々の努力でかなりよみがえりつつある瀬戸内海であるが、 まだまだ戻ってはいないそうである。 自然と人間との関係性、将来への環境などについて考えさせられるとともに、 希望をもたせてくれる一冊であった。

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    投稿日: 2018.10.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    だいぶ前に『里山資本主義』は読んでいたのだが、本書はしばらく積ん読状態。。 読み始めてみると、自分にとってとても身近な瀬戸内海をメインに取材がされていて、もっと早く読めばよかったと後悔。 今では、澄んだとてもきれいで美しい瀬戸内海だが、高度経済成長の時代には工業排水や生活排水、埋め立てなどの影響で1年に300回近くの赤潮が当時発生していたとされている。 それが今の状態まで回復してきたのはここ約10年ぐらいである。 公害や排水への意識が高まり、対策がとられてきたのももちろんだが、一番の要因は自然に任せるのではなく、「人が手を加えることで海を健康にし、豊かにするメカニズム」。 西洋的な一神教に基づく考えではなく、八百万の神々を奉ずる多神教に例えて、人間(人為)も自然のシステムの中の一部、八百万の神々の端くれとして機能させることで、自然の中に均衡や多様性を生むことができる、という概念を実証データを基に証明した。 その結果、普段当たり前に見ている、美しい海が瀬戸内に広がっている。 そして海がよみがえると、病を抱えた人もよみがえる効果があった。 お金ではなく、昔ながらのモノが循環する経済もよみがえった。 そしてそれらはこれからの時代の最先端である。 弓削島や因島、向島の例も取り上げられていて、とても身近に感じた。 本書の解説で藻谷さんが引用している『風の谷のナウシカ』の一文がインパクトあった。 「この時代、人は海の恩恵からも見放されていた。海はこの星全体にばらまかれた汚染物質が最後にたどり着く所だったからだ」 たしかに、人が出す廃棄物などの汚染物質が最後にたどり着くのは海である。 そんな状態だった瀬戸内海が、いかに現在の状態まできれいになったのか、本書を読んでとても勉強させられた。

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    投稿日: 2018.05.31
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    里山資本主義も読んだ。こちらは今日からでもやろうと思えば自分も実践できそうなことがたくさんあった。 里海資本論はどうか?そこは広大な海の物語。自分としてすぐにできることは少なさそうだが、意識しなければいけないことは多そうだ。日本人にとって海の幸は切っても切り離せない産物。だから、改めて意識したい。

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    投稿日: 2018.04.04
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    ☆☆☆2017年8月レビュー☆☆☆ 『里山資本主義』に続く、これからの日本の針路を示す著作。身近なものを生かし、原価ゼロで人と人とのつながりを大切にして暮らす。それが持続可能な社会ではないだろうか、と考えさせられた。 今回のテーマは「里海」。四方を海に囲まれた日本において、海とどうつきあっていくべきだろうか?瀬戸内海のアマモ復活プロジェクトを中心に書かれている。 僕は今、都会に住んでいるが日々の仕事や生活の中で何かできることはないか、考えたい。

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    投稿日: 2017.08.07
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    逆転の発想、視点はなかったが、取り組み自身は、興味深い。解説の藻谷氏の視点は鋭い。生命の循環を意識しなければ。

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    投稿日: 2017.05.23
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    『里山資本主義』という、この本の前作となる本がありました。これは一見都会に見放されたと思われるド田舎が実はアツイというお話で、田舎好きの私にとって非常に興味深く面白かった本です。 で、その続きともいえるのが本書「里海」。瀬戸内海で起こった魚の減少と海の荒廃、それを再生させた地元漁師と最先端研究のコンビを例に、人間がどんなに自然と乖離した生活を営もうとも、自然界の一員に過ぎないということを改めて感じさせる。 実は「里海」は「SATOUMI」として学術用語になっている。海洋汚染は瀬戸内海だけの話ではなく地中海などでも深刻なようです。その取り組みが世界でも模索されているようですが、この瀬戸内海発の取り組みが注目されているとのこと。 「里海」は「人手が加わることによって生物多様性と生産性が高くなった沿岸海域」と定義されている。ほったらかしにして自然に成り行きをまさせるのではなく、人が生物多様性の環境づくりを手伝い、そのおこぼれをいただく、ということ。 この考えは、以前では学会で発表した日本人研究者が罵声を浴びせられたらしい。「お前は漁師の召使か!」と。それから数十年。彼はひるむことなく研究と実践を積み重ね、カキの水質改善能力と、カキ養殖、そしてカキの稚貝が住みやすい環境(それは他の魚も住みやすいことを意味する)づくりを見事に組み合わせた自然にも漁師にもプラスなる成果を出したことから世界的にも脚光を浴びることになったようです。 里山よりもスケールの広い里海。やはり地方はアツイ。とはいえ、都会でもできることはある、と著者は締めくくっています。

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    投稿日: 2016.11.23
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    SATOYAMAの行き着く先はSATOUMI! カキ筏、アマモの森など、海を綺麗にしながら人間が生きていく方法はたくさんある! 神に頼り切るのではなく、神の手助けを人間がすることによって循環する生活を送れるようになる。 懐かしい未来に向けて共生していく努力をしなくては!

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    投稿日: 2016.10.24
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    牡蠣筏によって、浄化されていく海。自然物を利用して自然を取り戻していく。ステキな考え方だと思った。赤潮の時と筏設置後の写真を実際に見比べた時は同じ海とは思えないほどキレイになっていて感動した

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    投稿日: 2016.10.03
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    海が好きになる本。 瀬戸内海の浄化の取り組みを取り上げ、自然に任せるのではなく、自然の一部の人間が自然を作る手伝いをすることで本来の自然を取り戻す動きを紹介している。 昔の当たり前を実現しようということで、懐かしい未来と表現している。 東京の女性の就業率は全国最下位。保育所などがなく、出産後働けないから。

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    投稿日: 2016.09.15
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    里山資本主義の続編! 東京でも素晴らしい自然がみれるのかな‼ちょっとずつ、自然を作り上げれるように、協力してみたい!

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    投稿日: 2016.02.01
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    広島のカキ,日生のアマモなど身近な話で楽しめる.素晴らしい人々の活動を記者として的確に報告している.確かに瀬戸内海はきれいになってきた.赤潮の時代があったことが信じられないが,あのように海を痛めてきたことは忘れてはいけないと思う.未来に希望が持てる話ばかりで,楽しく読めた.

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    投稿日: 2015.12.21
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    前に読んだ「里山資本主義」より分かり易くて良かったが、私自身ではどうしようもない。でも、こういう話が増えて欲しい。

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    投稿日: 2015.12.12
  • 知らなんだ…

    瀬戸内海で暮らす人達は先ず読むべき本である事には違い無い。赤潮が減ったカラクリを初めて知った…尽力してくださった人々に感謝せずにはいられない。

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    投稿日: 2015.11.15
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    何しろ私は岡山在住なので、NHK中国で取材している番組は、全てではないが見たことはある。取材対象が岡山県が多かったので、買ったのではあるが、「里山資本主義」の別バージョンかとは思っていた。二ついい意味で裏切られた。一つは、前著は半分以上は藻谷浩介氏の理論書だったが、今回は全面ドキュメンタリー番組の映像のテキスト化と補足になっていて大変わかりやすくなっていた。一つは、里海は里山の理論を覆って、(断定と曖昧は弱点だとは思うが)大きな理論になっていた。前著が資本主義で、今回が資本論であることにその時になって気がつく。 日生、しまなみ海道の弓削島、因島、または笠岡の取り組みは興味深いものが多かった。確かに、赤潮の発生が今ではほとんど聞かれることがなくなった等々のわかりやすい指標以外にも、ガッテンすることはある。倉敷に住んでいると、あんなにも臭くて臭くてたまらなかった水島港の臭いが、この前約40年ぶりに行ったらほとんど臭わなかったのだ。そうか、海が再生されつつあったのだ。水島はアマモが生えていないし、カキ筏もないので、再生のスピードは遅いが海は大きく繋がっているのである。 アマモの種付けで成果が現れ出したのは、始めてから25年後くらいだったという。確かに我々は死んだ海を長い間見てきた。その間に、漁師たちは諦めずに対策を立て実行してきたのである。「壊すのは簡単だけど、元に戻すのには時間がかかる」それは全ての環境問題に当てはまることなのかもしれない。 日生のアマモ面積は戦後すぐは590ha、1971年には82haまで落ち込んだという。2014年には280haまで回復。まだ道半ばなのである。 因島の除虫菊畑も復活しているらしいし、笠岡のカブトガニも今は干潟にもたくさん見えるという。この変化も、ほんの10年前には聞かなかった。アマモとはまた違う、独自の努力の賜物である。 自然の再生に、人間も少し「お手伝い」をする。その「里海」の考え方は、非常に日本的なのだという。里海理論が、やがて世界を救うのかもしれない。 2015年10月19日読了

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    投稿日: 2015.10.30
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    里山資本主義の続編。 里山資本主義では里山自体にそれほどのキャパシティがないことは認めつつ、資本主義経済とも折り合いよくやりつつその比重をシフトしようよという主張だったと思うのだけど、今回の里海資本論では、なんというか‥里海礼賛のような主張ばかりが鼻につく。 書き手が前回の藻谷氏から井上氏に変わったからなのか、ここ数年で僕の意識が変わったのかはわからないが、事はこう単純な自然礼賛で解決することではないように感じる。もちろん、本書が論じるのはミクロであって、地球全体の巨視ではないのは理解しているし、こうしたミクロな意識改革が大切なのだが、そうした巨視観点からの警鐘も少しでもあればよかったと思う。

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    投稿日: 2015.10.13
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    「里海」の概念によって再生した瀬戸内海各地を取材している。「里海」とは、人が手を加えることによって、自然の循環・再生が保たれ、生物多様性が増しているような海のこと。人間も多様性の一部であるという考え方は斬新だと思う。再生に取り組んだ人々の情熱と苦労と、その後の喜びが生き生きと描かれており、テレビ番組で見た場面も多かったが、活字もまた勉強になる。因島や弓削島も登場し、その自然環境の豊かさを再認識した。藻谷氏の解説の解説も面白い。

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    投稿日: 2015.10.06
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    里山資本主義も読みました。 里山よりも里海のほうが、親近感がわきます。 やはり、どちらかというと山よりも川や海の近くで 生活してきたからかもしれません。 だけではなく。 里海資本論の考え方は、都市も地方も関係なく 全体でできうる考え方だと思うのですが 里山資本主義の言われ方は、都市対地方(田舎)という 間違った対立に取られる部分があると思います。 今住んでいる家の近くは、23区内ですが、近くの川や 畑、森と自然が多く 虫・鳥もたくさん見かけます。やはり自然や多様性 を人間の手によって作り上げていくということが 大事なのではないかと思います。

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    投稿日: 2015.08.27
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    「里山資本主義」に続いてNHK取材班による日本再生の具体論。思えば子供の頃、70年代の記憶では瀬戸内海と言えば石油コンビナートや赤潮の発生など公害によって汚染された海というイメージだった。それが直近の僅か10年間で、驚くほど豊かな海が復活したという。牡蠣やアマモを活用した古来から伝わる智恵によって海水は浄化され、生態系が再び息を吹き返しつつあるという。過疎に悩む地域に若者が戻ってきてあらたな繋がりを生み始めている。里山から始まった新たな資本主義が里海に到り、本当に日本の社会を変えていくのではないかという期待を抱かせる。 少々、良いところばかりを取り上げているのではないかとも思わせるほどの絶賛ぶりなので、もう少し現実に起きている問題点などにも触れてくれるとより理解が深まるのではないかと思う。

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    投稿日: 2015.08.21
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    20150804 懐かしい未来。我々の世代までが実感としてわかるのかも。子供たちにとっては当たり前の現実になるように変わっていく流れになれば良いと思う。人任せではダメ。参加する事から始めよう。

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    投稿日: 2015.08.05