
総合評価
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powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
森瑤子著『情事(集英社文庫)』(集英社) 1982.4.25発行 2020.11.17読了 私はすばる文学賞が好きで、最近の受賞作は大抵読んでいる。この「情事」という作品は、1978年に第2回すばる文学賞を受賞した小説で、森瑤子氏の小説は今回が初読みとなる。短い小説で筋に分かりにくいところもないが、それだけに読者を選ぶ作品でもある。 あらすじを要約すれば、35歳の既婚女性が年甲斐もなくパブで外国人を漁って房事に耽る話なのだが、これだけ聞くと、善良で健全な思考を持った多くの読者諸君は離れていってしまうかもしれない。実際、どうしようもない年増の浮気女の話なんて読む必要性を感じない人が大半だろうし、何も知らない方がよほど幸せに人生を暮らしていけるというものだろう。 “夏が、終わろうとしていた。 見捨てられたような一ヶ月の休暇を終えて、秋への旅立ちを急いでいる軽井沢を立ち去ろうとしながら、レイ・ブラットベリや、ダールの短編の中に逃げ込んで過ごした、悪夢のような夏の後半の日々を、考えている。そして、エルビス・プレスリーの突然の死をFM放送で聞いた八月の半ば、私の中で、青春の最後の輝きがまたひとつ、確かに消えていったのを、識った。” 冒頭を飾るこの印象的なイントロダクションは、英文を日本語に翻訳し直したような独特な匂いを沸き立たせている。海外文学のような空気感を漂わせながら、どこか気取った書き出しで物語は始まる。 主人公ヨーコは、英国人の夫を持つしがない翻訳家で、本当は文芸翻訳をやりたいのだが、ウーマンリブの座談会のテープ起こしに燻った毎日を過ごしているキャリアウーマンだ。夫に女として興味を持たれなくなって久しい。愛し合って結婚したはずなのに、今ではお互いに如何に無関心でやり過ごすかについて共謀し合う共犯者同然の夫婦生活を送っている。うら若き日々は過ぎ去り、齢すでに酣に入ろうとするとき、ヨーコの肉体を駆け巡ったのは抜き差しならぬ性欲だった。この小説は、抗いようなく過ぎ去っていく夏に、自分の女としての最後の花盛りを迎えんとする終焉の物語だ。 一体、結婚というものは式を挙げたが最後、お互いの異性としての関心が消えていってしまうのは何故だろうか。夫の愛を繋ぎ止められず、着実に摩耗していく己自身の魂に気づいたとき、人はどうしたらいいのだろう。年を重ねるごとにため息をつき、得ることよりも失うことに慣れたとき、妻として、あるいは母親としての役割の中でしか自分自身を確認できなくなったとき、女は死んでいくのだろう。だが、ヨーコは――不幸なことにと言うべきか――無抵抗に死を待つほど弛緩されてはいなかった。 男女の間に沸き起こる感情のすべてを嘗め尽くしたヨーコは、しかし、男と関係を持っても性愛以上の領域に足を踏み入れようとはしない。愛に執着したならば、必ず憎しみ合うことを知っているからだ。 “深いかかわりがなければ、人を思いやったり優しい言葉を掛けるのは、なんと容易なことだろう。愛しさえしなければ、人を理解し、はるかに多くを識り合えるだろう。愛しさえしなければ。”(p87) 愛に散々傷つけられてきたヨーコは、セックスに溺れることで、惰眠を貪ってばかりいた女を取り戻そうとする。だから、パブでレインと出会ったとき、ほとんどその瞬間から彼に魅せられ、彼を愛しはじめていたにも関わらず、ヨーコは無意識と眩暈の中で、結婚はしていないと嘘をついてしまったのだった。ヨーコは大胆なようでいて、臆病な女性だ。口ではセックスだけを求めているように嘯きながら、内実はレインを愛しはじめている自分にとまどい、傷つくことを恐れている。35歳という妙齢に差しかかり、最後かもしれない愛のチャンスを、情事以上の関係に発展させることを恐れている。抵抗を試みながらも、落陽の余映に輝く夕空に自分自身を重ねて、いつか終わりがくるものを予感してしまっている。 夫と別れてレインと一緒になった方が幸せだったのか、それは誰にも分からない。ただ、ヨーコはこの先二度と性に駆り立てられることはないだろう。今やサンセットの輝きは失われ、人生の一幕が終わりを告げた。しかし、太陽は没しても、人生はまだまだ続いていく。再び引き幕が開くまでまずは祝杯をあげよう。過ぎ去っていく夏と、これからのヨーコの弥栄を祈って。 ――チアース―― https://ndlsearch.ndl.go.jp/books/R100000002-I000001556571
0投稿日: 2025.08.30
powered by ブクログ私が敬愛する作家がべた褒めしていたので。 森瑤子さんの本自体が初読。世代的にだいぶ上だ。 で、案の定、全てが古すぎて・・・。なんだろう。もう不倫相手の名前がレインという時点で受け付けがたい(笑) 明確にされているわけではないが、主人公は物書き(小説の中では翻訳家)のヨーコとレインという米国人男性との不倫小説。ヨーコの夫は遊蕩イギリス人という設定でそこはかとなく私小説かのように作者を彷彿とさせる。 ちょっと辛辣だけど、私はかねがね恋愛分野を書く小説家はやすやすと顔を出すものではないと思っていて。 ルッキズムへの言及が厳しく取り締まられる昨今だけど、美醜って存在する。艶っぽい表現や、小説の中だけで語られるようなうっとりさせてくれる恋愛の描写が秀逸な著者がちょっとアレだとガッカリするのだ端的に。小説のベースが全て実体験に基づいて書かれているとは思ってはいないけど、それでもしらけるのよ、人並みか、それ以上に美しい方じゃない場合。 という気持ちが色濃く残る、ということで察して欲しい(私が読んだ単行本は初っ端ぬ著者のグラビアがドドン!とある)。 古い小説全てを否定する気はさらさらなくて、古さを感じさせない美しい文章、文体ってある。そういうものを純文学とするなら、『情事』は時代的にエンタメ的にというかスキャンダラス性のヒットを狙って出されたものなんだろうなと思う。 かっこいい女性だった、といろいろなところで目にするけれど今のところかっこよさがまったくわからないので機会があったらもう数冊は読んでみる・・・かな。 ちなみに私の敬愛する作家は森瑤子さんと20歳くらい徒年下で、私もこの作家さんの20歳ほど下なので、それぞれに作風が響く範疇なのかもしれない。ね。と。
0投稿日: 2025.06.26
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情事…狭いコミュニティでしない方がいい。 別荘いいな。 誘惑…早く別れろ、一人で実家帰ればよかったのにと思ったけどハッピーエンドで何より。西洋の人から見る東洋人はそんなものか。
0投稿日: 2025.06.21
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うわ!処女作〜って感じ。森瑤子にもこんなたどたどしく小説を書いてた時代があったんだ。文体はぶつ切れでストーリーも一本調子で森瑤子の小説の中では面白くないけど、驚くのはここからメキメキと磨かれること。並の新人作家なら一本二本書き終えて力尽きることが多いのにね。あと特徴的な「胸が泡立つ」とか「粒子」って表現はこの時から使ってたのだなぁ。「誘惑」は終始雰囲気の悪い夫婦喧嘩であんまり。
0投稿日: 2021.06.23
powered by ブクログとても好きな本 言葉が綺麗でラジオみたいにスラスラ入ってくる。 作者を好きになって、他の本も集めました。
0投稿日: 2021.06.20
powered by ブクログ結婚生活が不幸だ、もう女性としての賞味期限が終わる、とそんな理屈で夫以外の男に簡単に抱かれる女性が出てくる二編。こういう情念は理解できるし、別に夫側の視点じゃなくて彼女たちの情人側の視点で読めばいいのに、どうしてもなんかそうできずにしっくりと読めなかった。結婚を選んだ2人がすれ違っていく心理描写がとてもリアルで上手だった。特に「誘惑」では、なんだこの女って思える「情事」よりもとても良く描かれてると思った。しかし欧米人と結婚する日本人女性ってモチーフが好きな作家だなあと思った。面白かったんだけど、好きでは無い作品。
0投稿日: 2018.05.17
powered by ブクログ『情事』『誘惑』の二編。森瑶子さんを初めて読む。主人公が女性であり、女性目線であることがまた男性とは違う恋愛(浮気)感情を綴る。 登場人物がイギリス人である設定と美しい文章の表現が情景を一層浮世離れさせているのかもしれない。
0投稿日: 2016.01.28
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この当時としてはセンセーショナルだっただろうな・・・と察しますが、いつの時代も女性とはこんな気持ちになるのかなと感じます。 読み終えるとお腹いっぱいになりますが、背景の景色や描写のさわやかさに助けられます。
0投稿日: 2015.09.14
powered by ブクログ森瑤子さんは、私が読書を始めた頃すでに売れっ子作家になっていたけど、年齢的に大人の恋愛ものというジャンルに手が出ず、読まないうちにお亡くなりになってしまった。 年齢を重ねて、恋愛ものも好んで読むようになり、今になって読んでみると、作品の空気がバブルの頃といった感があるものの、表現は繊細だし、関係が醒めてきている夫婦の閉塞感が伝わってくる。 「誘惑」の夫婦は、ラスト修復の可能性が見えてきているけど、あれで本当に修復できるのか疑問を感じますねえ……。 「情事」「誘惑」とも夫がイギリス人で、やけに外人の登場人物が多いんだけど、それがこの作家さんの特徴なのだろうか?
0投稿日: 2015.08.13
powered by ブクログ30歳過ぎの既婚キャリアウーマンは、夫子が週末別荘へ行くのを狙って浮気をする。女として夫から見てもらえない不満から別の男へ走ってしまう。でも、夫子が一番大事であるからばれる前に別れてしまうが、その期間の愛情は激しく思う。これが本当の女心だと思う。
0投稿日: 2014.09.03これは
活字中毒でもあるので,めったに途中で飽きることはないんですが,これは私はダメです。 どんな作品を書くのか,ちょっと興味があったんだけどなぁ。
0投稿日: 2014.08.09
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森瑤子を読み漁ろう月間。 大絶賛開催中。 実は、2度目の読了。 普段、本を読み返さない派の自分が珍しく再読させて頂きました。 やはり、濃厚。そして、何年も前に読んだのに、自分がいかにこの本に影響を受けていたのか、改めて実感させられました。 美しくて、濃厚で、素晴らしくて、決して取り戻せない、そんな小説。 何十回とある衝動のうち、たった1回だけを実行に移すとするわね。今度は、あなたの都合のことを考えて、後込みしてしまうわ。 ――電話で、迷惑そうな声を聞きたくないの。
1投稿日: 2012.04.18
powered by ブクログ女、それを持て余しながら生きていく事。 女としての盛りを過ぎた後、どう生きるか。 若い頃は自分が30代になる事すら100年後のように思えた。 欲望が沈んだ澱のようにくすぶり続ける30代。 女について書いた作品。
0投稿日: 2012.03.12
powered by ブクログ誰かを愛する事 愛して愛してどうしようもなくなる事 愚かな事 えげつない事 切ない事 めくるめいて悦ばしい事 秘めて苦しい事 官能にうちふるえる事 そんな事のひとつひとつが、 研がれた美しいナイフのように 体の細部を突いてくる 野生の獰猛のごとく 体中をすばやくめぐる 情事のごとく耽溺しぬきたい小説 忘れ得ない一冊
0投稿日: 2009.03.12
powered by ブクログねっとりと甘い。 心にささった棘からじわじわ膿がでてくるような 大人のけだるい甘さが漂っている。まだ腐りきってない濃厚で でも鼻をそらすことのできない芳香。 ふと主人公の年代が自分とばっちりとかぶっているのに 気づいて愕然とする。こう展開のは、「大人」な空間故だと 思っていたのに、気がつけば自分もその領域にいる。 こういうシナリオが非日常に感じない 自分にちくんとする痛みを感じるのは、 この小説の主人公の気持ちがわかるというのは、 もうがむしゃらで青かった青春時代が終焉してしまったということだから。 でもね、会ったばかりの男がいくらスマートでも 美しくてもやんちゃでも、それを「愛」と言ってしまうのは 私は”逃げ”だと思うな。そういう状況に陥らせる 完全な大人になる直前のあせりを理解はしていても。 この種の甘さは飲み込めば飲み込むほど 乾いていくそういう種類のものだから。 週末に読む恋愛小説に、分別を知るつまらない(けど”良識的な”) 大和撫子をはなっから期待はしないけれど (森瑤子だもの!)ぐらぐらと落ちる直前のところで、 はらはらさせながら最後のスパートにすらりともちこんだ 「誘惑」のほうが私は「情事」より好み。 やっぱりさ、女はいくらいい男でも簡単に寝てしまってはだめなのよ。
1投稿日: 2009.02.14
powered by ブクログ「情事」について。これが処女作っていうんだからスゴイ。どちらかというと2つ目の「欲望」が好き。 素直になれずにどんどん崩壊してゆく関係。そこに思わぬ悪魔のささやき。 欲望との葛藤〜結末まで、揺れ動く女性の心に切なくてもどかしくて、そして安堵。
1投稿日: 2007.09.04
powered by ブクログおしゃれな大人の女の逢い引き、というイメージ。私には関係ない?かな。こんな小説ばかり読んでると、不倫もOKか?と錯覚してしまう。
0投稿日: 2007.01.15
powered by ブクログ文体がいい 最初の1ページが特に素敵 もちろん同じシチュエーションになったことはない でも主人公と同じ年なんだよ 自分でビックリ 森さんの作品で好きなのは実はこれだけ(汗)
0投稿日: 2006.02.12
