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ユートピア
ユートピア
トマス・モア、平井正穂/岩波書店
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総合評価

47件)
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  • 下等遊民重岡のアイコン
    下等遊民重岡
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    正義を断行すれば、それは幸福になるのか。社会の理想形とは、個人の幸福とかけ離れているのだろう。人間は欲にまみれており、不合理な行動を取るが、それが人間の良さなのかもしれない。

    0
    投稿日: 2025.03.04
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    居間石34
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    表紙にあるように、読みものとして十分におもしろかった。当時のイングランドの腐敗した政治形態を暗に批判するために生みだされた理想郷・ユートピアは、現代を生きる我々にとっても、一見理想的に感じられる。 理性至上主義、人民の同質化と差別化の巧妙なバランス、根本にある無条件の崇拝・信仰は、彼らの人生を代替可能なものへと堕するという点で、オーウェルやハクスリー、伊藤計劃が描いていたものと重なる。

    0
    投稿日: 2024.06.18
  • pedarunのアイコン
    pedarun
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    このレビューはネタバレを含みます。

    【不人情な近代国家】 大航海の時代に、アメリゴ・ベスプッチの率いる船にも乗って世界探検を経験したというラファエル・ヒロスディさんが訪れたユートピア国について、全体としては、国家制度の在り方に関する自論みたいなのが語られる。聞いているのは、この小説の語りのトマス・モアさんと、ラファエルを紹介してくれたピエールさんで聞いている、スタイル。 はじめの章は、イギリスの国家としての矛盾を指摘するラファエルさん、合意できない点について問われ、さらに論を深める。 金を盗んだら死刑になる制度を批判。 「人間には自殺する力も他人を殺す力もありません。」 人が窃盗をする環境設定を国家自体が作っていると指摘。つまり、貧者を生む仕組み。生きるために窃盗するしかなくなる状況。貨幣の流通が生む不平等。 「…平等ということは、すべての人が銘銘自分の私有財産を持っている限り、決して行われるべくもないと私は考えています。」(本文より) そこからユートピア国の制度や暮らしをどんどん深堀していく。 ・・・ 当時から貨幣経済の弊害は強く感じられていたのだなーと思う。 でも私たちはさらにその後、資本主義経済を深めていく。 共産主義のいわゆる失敗も経て、経済資本に基づく利益の支配する社会は強固なものになった。 地球環境をぎりぎりまで脅かすまでにもなっている資本制度は、さらに限られた地球資源までも経済価値に置き換えようとする動きが進んでいる。 ユートピア国のしくみでは、偏重した金至上主義みたいなものを克服するために、金を便器などに使っている。 「金なら金、銀なら銀というものの本性にふさわしいように、 本来の価値以上に評価しないで用いているだけの話」とのこと。 労働は6時間。一方で、みんなが同じ服だったり、仕事も割り当てられたり、皆を同じぐらい載せ勝レベルにしようとすると、面白みに欠ける部分もあるのかもしれない。思考実験なので本当のところは分からない。 『#人新世の資本論』でも論じられていたような、コモンズ的なしくみと重なる部分が多々あり、興味深かった。 近代国家が確立していくという時代に、この本はどのように受け止められていたのかな... すでに「理想」であったのか。でもこのような思想を基に、その後、共産主義の思想が発展したし、いったん消えかけたけれども今にもたぶんつながっているのだろうと思う。 ギリシャ哲学なども引用されつつ、 ストア派よりも快楽主義派だとされるユートピア国。 ユートピア国が最も尊重するのは心の快楽は、主として「徳を行うこととよき生活の自覚から生ずる」とのこと。 徳を高める、という点では共通している。 人はどのように生きるべきか、何をもって良い人生と言われるのか、 その視点は、どのように社会を運営するか、という議論には欠かせない。 国家制度や貨幣制度が暴走し始める中で、その国家の在り方を不正な、不人情な国家とし、 本来追求すべきは人間一人ひとりの幸せであったり、人生の質である、と釘を指すよう、手段が目的化していることに警鐘を鳴らす。500年も前の本だけれども現代的にも通づる、考えさせられる本だった。

    3
    投稿日: 2024.05.07
  • ゆうたろうのアイコン
    ゆうたろう
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    今作を精読するだけでも、ルネサンス、宗教改革期の荒れ狂う時代を、一個人がどう思い、何を理想に掲げ生き抜いたのかという細やかな内実に踏み込むことができる。 モアの思想の底流には、カトリックの教えとそこから溢れ出るヒューマニズムが顕在してる。 ユートピア文学というジャンルにおける古典中の名古典。実際の体験談を元にした体という語りのスタイルも簡単明瞭かつフィクションと現実のバランスがよく取れていて勉強になる。

    0
    投稿日: 2023.06.22
  • Mkengarのアイコン
    Mkengar
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    トマス・モアといえば映画「わが命つきるとも」を思い出すのですが、ヘンリー8世の離婚に宗教的な信念から最後まで反対し、最後は斬首されてしまいます。そんなモアが1516年(つまり今からおよそ500年前)、38歳の時に執筆したのが本書になります。ユートピアは「どこにも無い」という意味のモアの造語です。 モアの描くユートピアは、当時の絶対王政下の欧州社会のアンチテーゼ的な意味合いとして書かれていますが、完全なユートピアというよりは「限定的な」ユートピアといった方が正しいかもしれません。たとえば市民には自由と平等がありますが、ユートピアにも奴隷がいて、奴隷は動物のと殺などを担当します。また戦争もします。しかし市民はみな十分に生活していけるだけの衣食住を賄っていて、潤沢にモノが存在しているため貨幣交換が存在しません。なぜ潤沢に衣食住が揃っているかと言えば、皆が生産的な活動に従事しているからで、モアによれば宮廷に巣くうおしゃべりだけの人間だけでなく、弁護士すらも不必要な非生産的人間として扱われ、その結果ユートピアにはそれらの非生産的人間は存在していないのです。またモアは貨幣こそが悪徳と害毒の原因であると断罪しています。外国との交易においては金銀が使われますが、ユートピア国にとって金銀は、戦争資金以外の意味を持ちません。同盟国はありませんが自国の人材を首長として受け入れている国は友邦国であり、自国もしくは友邦国が攻め込まれたときなどには金銀をフルに活用して戦争を行います。金銀を用いて敵国内で内紛を起こすのです。 モア自身が非常に信仰心の強いカトリック教徒だったこともあって、モアの描くユートピアでは理性だけが社会を支配しているのではなく、宗教にも寛容です。しかもキリスト教だけでなくあらゆる宗教が「限定的」ではありますが、ユートピア国では認められる。巻末の解説にも書いてありましたが、理性と信仰の両方を融和させようとした点にこそ、実はモアのユートピアの真髄があるのではないかと感じました。その意味では、宗教を排斥した共産主義よりも、よっぽど「ユートピア」であって、文中の奴隷を機械に置き換えれば、十分21世紀の社会に当てはめることが出来るのではないかと感じました。

    3
    投稿日: 2023.04.30
  • mewmew0345のアイコン
    mewmew0345
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    ユートピアは、文字通りどこにも存在しない場所だと思う。 そこで認められた市民は何の不足もなく、真面目に暮らしてさえいれば満たされるけれども、その影には市民とされないもの(奴隷など)の搾取がある。すなわち奴隷の存在を無視した上での『理想郷』。 そしてその社会に認められている良き人たちというのは、ある意味長いものに巻かれている人たちでもある。個性がないというか、管理された社会の住民。 なんだか昨今の、なんてもかんでも枠に嵌めては賛否を分けたがるキャンセルカルチャーの一端を見た気がした。 役者解説にもあるがトマス・モアはこれを当時のヨーロッパの宗教改革や王権への風刺として書いたのだろう。それでもモア自身も語っている通りユートピアが人間社会の最高峰(理想形)にはなり得ない。

    0
    投稿日: 2023.04.29
  • yoshio70のアイコン
    yoshio70
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    ◯これがなぜユートピアと思えるのか  →あくまで当時の時代を考えなければなんとも言えない。1500年代は暗黒時代?大航海時代に近い。富を蓄えようとしている時代。イギリスではディスクロージャー政策が横行していた頃。  →トマスモアはまさに富の蓄積について疑義を呈している。貨幣の否定、労働者への敬意など。  →また、国家全体を利するように制度を求めるところは、個人主義によって富を蓄積していく不平等が広がっていると分析したか。  →しかし、現代においてこれは社会主義、共産主義国家に思えて嫌悪感すら抱く。共産主義者はこのユートピアをこそ目指しているのでは?国家による婚姻、出産、事物の共有化、まさに共産主義。異なるのは宗教の自由を認めているところか。  →これらに感じる嫌悪感の正体は、権利意識が全く無いからと考えられる。当時、そもそも個人の権利という発想がないということもあるため、フェアな議論ではないが、共産主義的発想も個人の権利意識によって変わるのではないか。奴隷がまさに最たる例。ユートピアに奴隷がいるのは甚だショックでは?  →ユートピアの着想はもしや古代ギリシャの都市国家をイメージか。

    6
    投稿日: 2023.03.05
  • kouhei1985のアイコン
    kouhei1985
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    理想的な国として描かれる「ユートピア」は、「どこにもない国」という意味のギリシャ語を語源としているという皮肉。

    0
    投稿日: 2022.04.14
  • lhoのアイコン
    lho
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    思い出したら何度も読み返すとよい作品だなと感じた。人間の営みにおける全ての理想形が『ユートピア』の国では体現されており、それは現代を生きる自分ですらまさに理想だと感じたほどだ。 例えば、金や銀を人は命と同等くらいに大切に扱うが、実際実用的なのは加工しやすい鉄であって、金や銀そのものに価値はない、とか、財産を持っているというだけで愚かな貴族が敬虔な奴隷を従えるのはおかしい、とか、快楽に娯楽はあるのではなく健康的な生活にこそ楽しみを見出す、など、ユートピアの人間は、もし他の国の人々が簡単に行き来可能な場所ならば到底ありえないような、他の世界から全くもって影響をうけてこなかったような場所なのだ。 『ユートピア』を読んだことはないが、「ユートピア」とか「ディストピア」とか単語だけ知っていて多用している人は少なくないだろう。ぜひ一度読んでモアの生きたテューダー朝の時代を感じてみてはいかがだろうか。

    0
    投稿日: 2022.02.21
  • kuroinohosのアイコン
    kuroinohos
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    南米のどこぞにある「何もない処」ユートピア  そこの土人は、既製品で皮製の服を與へられるとか、書かれた当初の英国人的に屠畜は調理の醍醐味だと思ふんだけど、ユートピア人は牛を屠る奴隷(はユートピア人一人につき2人宛がはれる)がゐるとか、えーと。  その半月上の島から500マイルの彼方にすさんだところがあって、そこの戦闘民族ザポレットはここの人でないと戦争で使へないとか、他、何ヵ国かの国で当時の英国をDISるらしい。  なので首都っぽいアモ―ロート(暗黒 の意。当時のロンドンぽいんださうで)の近所の川アナイダ川はテムズ川みたいな感じださうであるが、へー。  ラテン語とギリシャ語がぶわーってある上にその ザポレット=Ready Sellers 進んで身売りするもの  と言ふ解説があってアレ。

    0
    投稿日: 2021.05.18
  • 鈴華書記のアイコン
    鈴華書記
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    イングランドのトマス・モアによる1516年の著作。本書は,エラスムスの『痴愚神礼讃』やアメリゴ・ヴェスプッチの旅行記『新世界』に触発され書かれたものとされる。「utopia」の後世への影響は計り知れないものだ。 「ガリヴァー旅行記」から知った本で,「ユートピア」は文学と哲学の橋渡しに良い本だと思う。 p175「思うにこの国は,単に世界中で最善の国家であるばかりでなく,真に共和国(コモン・ウェルス)もしくは共栄国(パブリック・ウイール)の名に値する唯一の国家であろう。〜何ものも私有でないこの国では,公共の利益が熱心に追求されるのである。」 例えば「何ものも私有でない」という表現に,ユートピアの理想性と不可能性が出ているように思う。私有権を濫用した社会に対するカウンターとしては十分なのだが。 学問のジャンルとしては公共哲学が近いか。主にプラトン「国家」からのインスパイアを受けたリバイバル的な感じがする。 海の向こう側でのルター始めとした宗教改革(福音主義など)により血みどろの争いが予感される時代で,それはモアの望むようなものではなかっただろう。 なお,著者はヘンリー8世に斬首刑に処されることとなる。この処刑は「法の名のもとに行われたイギリス史上最も暗黒な犯罪」と言われている。

    1
    投稿日: 2021.04.11
  • zaryのアイコン
    zary
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「ユートピア」は実際には存在しない架空の場所である。この場所では、頭脳と心の豊かさが高いレベルにある人々が、平和に暮らしている。 印象に残ったところは、金がこの世界では、貴重なものだとして、崇められている。しかし、このユートピアでは金を実用性のない、むしろ鉄に劣るものだとして、醜さ、みすぼらしさの象徴とみなしている。 たしかに、金は取れる量が少なく、量的な貴重さはあるけれども、本質的には価値を見出せないものである。金を身につけて、いきなり人間としての格や品が上がるのはおかしいことである。 また、人々は神から、自然に喜びを感じる肉体や精神のあらゆる状態と運動とを快楽と呼んでいる。 その快楽は、あえて他人与えることによって、回り回って自分にとって大きな快楽として、帰ってくると本書では述べられている。要は、情けは人の為ならずと言いたいのではないだろうか。 健康であることが身体の快楽と説いている。暴飲暴食をするという表面的な快楽を追求して、病気で苦しむよりも、健康という状態こそが一番の快楽である。

    0
    投稿日: 2021.02.10
  • 土橋俊寛のアイコン
    土橋俊寛
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    「ユートピア」という言葉は、「空想上の」あるいは「理想的な」という意味で使うことが多いだろう。トマス・モアの造語であるユートピアはギリシア語で「どこにも無い」を意味する。表題の『ユートピア』はどこにも無い国なのである。 『ユートピア』はユートピア国に滞在したラファエル・ヒロスデイが語った見聞をモアが記録したという体裁をとっている。この本の中でモアは共産主義国家であるユートピアを理想国家として描いた。ユートピア国の特徴は様々だが、必要十分な少数の法律を人々が忠実に順守していることや、人々が貨幣をまったく用いずに社会生活を営んでいることはユートピア国に特有な特徴だろう。法制度、例えば刑罰の重さや人々が法律を自ら進んで守るための褒賞の存在などがかなり詳しく述べられている。法律家のモアにとって、(宗教を別として)社会基盤としての法律や法制度の重要性を強調するのは当然のことだったに違いない。 しかしユートピアを「どこにも無い国」にしているのは何よりも、公共の利益と平和を求めるユートピア人の性質なのではないかと個人的には思う。「金銀を汚いもの、恥ずべきもの」と考える人々が個人的に大きな富を所有することは難しいだろう。私有財産に関心のない人々は公共財産の増進に心を砕くかもしれない。「どんな人間でも自分に危害を加えない限り、敵と見なすべきでは」なく、「戦争で得られた名誉ほど不名誉なものはないと考えている」人たちの間では争いも起きず、他国へ戦争を仕掛けることもなく、平和が保たれるはずだ。 ユートピア人のこういった性質はそもそもどこから来ているのか。少なくとも一部は教育の賜物と言えるだろう。しかし教育がなぜ上手く機能しているのかが、非ユートピア人である読者にはなかなか理解できない。他の例として、本書には窃盗犯に対する扱いについての記述がある。窃盗犯は日中に公共の労務を果たし夜は独房で過ごす。「国家の共通の召使い」である彼らにはかなり良い食事が提供され、給与が支払われる。そして給与の財源は「非常に慈悲の心に富んでいる」人々による寄付なのである。教育が慈悲の心をはぐくむことは間違いないが、それだけで十分なのかどうか疑問が残る。非ユートピア人であるヒロスデイア説明の中で何気なく「この方法は不安定なものではありますが」という一言を付け加えているのもうなずける。 ヒロスデイはユートピア国での滞在経験を踏まえてこう意見を述べる。「財産の雌雄が認められ、金銭が絶大な権力をふるう所では、国家の正しい政治と繁栄は望むべくもありません」それに対してモアは(おそらく読者を代表して)、私有財産が認められない社会では人々が真面目に働くインセンティブを持たず、結果として幸福な生活が実現しないのではないかと疑問を挟む。ヒロスデイはモアの疑問を「見当ちがい」と一蹴するが、具体的な理由を挙げて反論することはない。ここにも制度とは別の、ユートピア人の何か特別な性質こそが重要であることが暗に示されているように思える。もっとも続く第2巻ではこの疑問への答えとして「国民がぶらぶらと時間を空費する事由が許されていない」、「怠ける口実や言い訳があたえられていない」と飛べられている(本書巻末の「解説」によると第2巻が第1巻より先に書かれたという)。 モアの描くユートピアが理想国家であるかどうかはともかく、制度や法律をどう設計するにせよ、人々の考え方や価値観(そしてそれらを正しく導く教育)こそが重要であることを本書は示唆しているのだろう。

    0
    投稿日: 2021.01.22
  • 丘へ行こうのアイコン
    丘へ行こう
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    2020.7.25 今更読むが感慨深い。 世の中では格差が拡大しベーシック・インカムへの関心が高まっているけど現実は難しそうだ。 競走原理と金銭が欲望の可能性を数値化して先取り出来るところに問題があるんじゃなかろうか。 金=情報、可能性 つまらないので止揚出来る概念が早く生まれて欲しいなとは思う。

    0
    投稿日: 2020.07.28
  • shimooonのアイコン
    shimooon
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    このレビューはネタバレを含みます。

    本書内の「ユートピア」は、理想的な共産主義社会のように思えるが、本書の趣旨は、共産主義の礼賛ではなく、16世紀の絶対王政・宗教弾圧に対抗する社会を描くことにある。 「共産主義社会では真面目に労働しなくなる人が増え生産性が落ちるのではないか」との批判が既に述べられていることが興味深い。 なお、後にトマス・モアは、正に宗教問題によって処刑されることになる。 ちなみに、「ユートピア」国には、「アモーロート」市や「アナイダ河」などFF14(漆黒のヴィランズ)が借用したと思われる言葉が使われている。

    0
    投稿日: 2020.04.18
  • Στέφανοςのアイコン
    Στέφανος
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    原書名:Utopia(More,Thomas) 国家の最善の状態についてのラファエル・ヒスロデイの物語◆国家の最善の状態についてのラファエル・ヒスロデイの話。ユートピアの叙述、ならびに同島のよき政治、よき法律制度についての詳細なる解明を含む◆都市、特にアモーロート市について◆役人について◆知識、技術および職業について◆彼らの生活と交際について◆彼らの旅行、および巧みに説かれ、賢く論ぜられたことども◆奴隷、病人、結婚その他◆戦争について◆ユートピアの諸宗教について◆トマス・モアよりピーター・ジャイルズへの手紙 著者:トマス・モア(1478-1535、イギリス・ロンドン)[オクスフォード大学→リンカーン法曹院]法律家・思想家 訳者:平井正穂(1911-2005、福岡県久留米市)[東京帝国大学英文科→同大学院]英文学者

    0
    投稿日: 2019.05.05
  • ysano911のアイコン
    ysano911
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    トマス・モア『ユートピア』岩波文庫 読了。理想郷ユートピアの見聞録。社会システムが詳細に設定されているので、一つ一つ検討するのも興味深い。だが理想郷といえども多々違和感を感じる。逆説的な作品かと思われるゆえ、モアが話を聞く形式が実に巧妙。ユートピアに住みたいか、もちろん否である。 2011/07/13

    0
    投稿日: 2018.11.06
  • samwo360のアイコン
    samwo360
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    中世からルネサンス・宗教改革の過渡期を生きたトマスの ・モアが残した著名な社会思想上の古典。この歳になるまで読まずに来てしまったが、もっと早く読んでいれば受け止め方も違ったなもしれない。

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    投稿日: 2017.03.19
  • 花園のアイコン
    花園
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    【印象】 どこにもないありえない明るい国。 具体的な市街や気候、文化、歴史についてはあまり述べられず、宗教や戦争、気質、慣習を曖昧に描写する部分が大きいです。 とりわけ経済に関しあまりにも楽観していますので、現実的な考えを読みとりたい人にはお薦めしない作品です。 【類別】 小説の形をしています。 ユートピア/ディストピア。実話的虚構。作中作の要素も。 【脚本構成】 概観すると三部構成であり、理想郷に行ってきたと語る人に会って話すまでがひとつ、その社会文化その他を語りつづけるのがひとつ、最後にちょっとしたものがひとつ。 筆者が作中に登場します。 【表現】 語る一人称視点と聞く一人称視点。

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    投稿日: 2016.10.07
  • kzmharaのアイコン
    kzmhara
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    ユートピア(どこにも存在しない、という意味)という名前の国家に滞在した人物からその国家の全貌が語られる物語。全体的に、国家としての特徴・社会について纏められた本となっているので、物語性を求める人には向いていないかも。 ただし、所謂ディストピア小説を好む方には一度は読んでもらいたい内容となっている。 理想郷=汚れ(戦争・奴隷)が無い世界? 財産(金銀財宝)についての価値観はどうなる?? など、疑問を抱きながらページをめくれる一冊となっている。

    0
    投稿日: 2016.05.07
  • Pierrotyanのアイコン
    Pierrotyan
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    世界を見聞したヒスロデイから、モアがユートピアという国の話を聞くという構成。モアは15世紀から16世紀初頭の人。 ヒスロデイの話が終わったところで個人の喜びがひどく無視された話だと感じた。その後のモアの感想で承認できない、議論すべきところがあるという書きぶりで何を訴えたいのか改めて考えたが、簡単に煮詰まる話でもなさそうだ。 解説によると、モアには宗教と国家の葛藤があったようだ。

    0
    投稿日: 2016.04.09
  • 日曜読書家のアイコン
    日曜読書家
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「ユートピア」という語は、その語が示す世界が非常にあいまいにもかかわらず、広く一般に用いられている。あいまいだからこそ常用されるのか?ひとつだけたしかなのは、人がこの語を持ち出すとき、社会に対してなにがしかの不満や逃避願望が見え隠れするということだ。 16世紀、「ユートピア」なる語を生み出した男は、明らかに社会に不満を抱いていた。彼は架空国家を活字で創造し、それを現実社会と比較することで、それの異常さを告発しようとした。彼は登場人物の口を借りてこう言う。 「・・・正義の行われている国とは一切のものがことごとく悪人の手中に帰している国のことであり、繁栄している国とは一切のものが少数派の独占に委ねられており・・・、他の残りの者は悲惨な、乞食のような生活をしている国のことである・・・」 言いえて妙である。権力によって捻じ曲げられた「正常」を隠れ蓑にして「異常」が行われていることを暴くのに、これほど的をえた文句もない。 「ユートピア」と聞いて、同書が理想郷を称揚する作品だと思うのは勘違いだ。断言できる。これはディストピア作品である、と。彼が批判対象としたのは、権力者のみにとっての「ユートピア」であった同時代なのである。 同書は16世紀に書かれたわけであるが、16世紀という時代がいかなる様子であったのかを想像するのにも役立つであろうし、まだ現代にも同じ文句が通用することから言って、過去の遺物でもないだろう。そしてなにより、「社会思想史上の第1級の古典」ではあっても、読みものとして単純におもしろい。 著者によって開かれた批判の目は、彼の肉体が処刑台に消えたとしても、「ユートピア」が現出しないかぎり閉じることはないだろう。

    4
    投稿日: 2016.03.29
  • keisyunのアイコン
    keisyun
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    「ミスラ」が出てくる。どこかで目にした言葉だなと思っていたが、「MISRA-C」でしたね。 ユートピアでも人は神を、宗教を求めるのかとも思ったが、人間そんなものなのかもしれない。

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    投稿日: 2014.12.07
  • どこにも無い国

    著者トマス・モアが、船乗りラファエル・ヒスロディに語らせたユートピアというところは、自由な精神と自己規律でもって正しく生きている人々の国でした。 都市は国中に均等に散らばって存在し、都市間はわざと間隔が開けられています。それは、農村部を配置し、自給が可能なようにと配慮されているようです。 農村部の農場に、都市部から人が2年ごとに交代で集められ、農耕が営まれています。これは旧ソ連時代の集団農場を想起されますが、旧ソ連の指導者たちがユートピアをモデルにしていたとしても不思議なことではないと思いました。 ユートピアは島国であるが、他国との貿易によって莫大な利益を上げています。しかし、ユートピア人は財産の私有制を取っていないため、特定の個人に財が集中することは無く、またそういう野心を抱くものもいません。貿易で得られた利益は、金として国内に蓄えられるが、一部については他国へ借款として与えられ戦時の交渉材料として使われます。 金銀に対して国民が野心や邪心を抱かないように、金銀を汚らわしいものとして扱う、つまり金は便器として使われたり、奴隷を現す印に使われたりしている。 現実と理想の折り合いをつけようと真剣に考えていたことは、戦争に対する嫌悪感や戦争に対する現実的な対応方法の記述に強く感じられます。戦争による名誉こそ不名誉なことは無いのである。従って戦争は可能な限り回避されるように試みられますし、戦争が始まったときでも流血なしで解決されるように策が打たれます。貿易によって得られた莫大な資金を使って、敵対国と戦争回避の交渉が行われます。あるいは、敵対国の叛乱分子に資金を提供して、相手国を混乱に陥れます。いざ、戦いが始まると、初めに前線に向かうのは、お金に物を言わせて集めた傭兵たちです。ユートピア人の損害をできる限り最小化しようという思惑が働いています。しかし、傭兵をしても相手を打ち倒すことができない場合に、ユートピア人は戦争に嫌悪を感じつつも逃亡という不名誉は考えず、自らが相手との白兵戦に勇気を持って立ち向かうのです。それは家族とて同じで、前線での戦いに家族も同行し、戦士と生死を共にするのです。 ユートピアとは、ラテン語を使ったトマス・モアの造語で、どこにも無い国という意味だそうです。西暦1500年前後のヨーロッパの実情を見て危機感を抱いていたトマス・モアが、理想の国として描いたものだそうです。最小限の法律で国が円滑に運営される国、徳が非常に重んじられている国、物が共有されているためにあらゆる人が物を豊富に有している国、それがユートピアであした。トマス・モアが現実世界を直視して問題の根源を洞察したとき、財産の私有が認められ金銭が絶大な勢力・権力を振るうようなところには、正しい治世と社会的な繁栄はありえないという意見に辿り着いたのでしょう。

    1
    投稿日: 2014.06.08
  • マサムネのアイコン
    マサムネ
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    これがユートピアなのか?という感じだが当時の価値観で考えると理想的ではあったのかもしれない 世界史の知識を補填してからもう一度読みたい

    0
    投稿日: 2014.05.31
  • nakaizawaのアイコン
    nakaizawa
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    (1973.05.07読了)(1973.01.27購入) (「BOOK」データベースより) 表題の「ユートピア」とは「どこにも無い」という意味のトマス・モア(1478‐1535)の造語である。モアが描き出したこの理想国は自由と規律をかねそなえた共和国で、国民は人間の自然な姿を愛し「戦争でえられた名誉ほど不名誉なものはない」と考えている。社会思想史の第一級の古典であるだけでなく、読みものとしても十分に面白い。

    1
    投稿日: 2013.03.26
  • rakutaのアイコン
    rakuta
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    理想郷の代名詞のように言われるユートピアだが、実際に読んでみると、何だか無味乾燥というか、禁欲的な堅苦しい世界のようだ。おそらく、モアの生きた時代のイギリスにおける多くの人、特に、本書の最初の方に出てくるが、エンクロージャーによって生計の途を失った農民などの悲惨な境遇という現実の前では、ユートピアは理想郷であるのだろうし、現代の日本人が心から共感することは難しいのかもしれない。それでも、あの時代にあって、キリスト教を相対化して、その布教上の問題をやんわりと批判していたりして、時代に先駆けた思想の持ち主の著作として、現代でもなお読みつがれる意義も感じられた。

    0
    投稿日: 2012.05.22
  • harmonixyのアイコン
    harmonixy
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    ユートピア トマスモア 岩波新書  トマスモアの矛盾は神を一人として信じていながらも 自然と言う多様性にも心をゆだねている事に気付いていない所にあるようだ このユートピアに書き込まれている彼の理想的なこの世の天国の秩序が 法と言う外力による規制と自律による自己管理による調和の どちらにも徹底しきれずに淀んでしまっているのも この自己矛盾によって起こっているのだと思う 彼は道徳をもって活きることに活路をみいだしながらも だからこそあらゆる場における法に従えと説く 富や希少価値に依存することを徹底的に嫌いながら 納得を度外視して神とその法律に従おうとする この二面性に対してその通りだと同意したいのだけれど その反面法の持つ軸が未来にずれている事を認めざるをえないし その歪みの魅力を信じたいが故に 人間が苦しむことから抜け出せずにいるのだと言う事実を葬るわけにいかない 今現在を中心とする自由自在な道徳性を理解して 心からすべての個性の存在を納得していない限り 共生社会の妙味に気付くことはできないだろう 変化を「にぶる事と」とらえるかと思えば 自然の流れを大切にしたいとも考えている 本物と偽物を語りながらその本物が本物だと言う由緒を追究していない 健康こそ快楽そのバロメーターだと信じていることにも同意したいけれど その健康は心身両面におけるものなのかどうか計り知れない 一神教故の一つの答えに統一することを好む者たちにとっての理想の国は 一律な平等観に落ち着くようだ 彼らはその与えられた規律の中に自由があると思っているらしい 更に神としもべに当たる上下関係から逃れられないための矛盾を抱え その矛盾をギリシャと同じように奴隷に押し付けることで取り除こうとする 全員が分業した中で同じ時間割で暮らし同じメニューの食事をとり お互いの権利と義務でしなり合い肝心の自己責任を放棄する いったい誰が等分の分配を管理できるのか 誰が何のためにメニューを決め善悪を固定化して裁くのだろうか? 共和国も共通の価値観に依存した上でのものであり 自由もその範囲にあってそこから外れることを許さない 神に当たる無限性を人間自身が取り込んで眼中に置かない限り 道徳的に生きようとする人ほど人生を楽しめずに迷い苦しむと言う この矛盾を解決しえないだろう

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    投稿日: 2012.03.08
  • vintage0000のアイコン
    vintage0000
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    幸福な社会に関する名著 不幸の起源が理解できる 人を、社会を「全体幸福」につなげる方法がこの本 美しい内容

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    投稿日: 2012.03.04
  • 琴のアイコン
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    ガリバー旅行記と同時期に購入。 世界史でおなじみトマス・モアのユートピア。 ぶっちゃけ面白くはない。 ただ、ヨーロッパ成長過渡期の人々が、良い国家を作ろう、文明を作ろうと奮闘したことを思うとロマンを感じる。 最後のラファエルおしゃべり氏の「もう黙ろうと思う」に、複雑な気持ちになる。 おもしろくはなかったけど、たぶん偉大と思われる功績に敬意を表し星いつつ。

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    投稿日: 2012.02.20
  • 次郎のアイコン
    次郎
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    理想郷的な意味合いで使われる「ユートピア」の語源となったのが1516年(!)に出版された同著。本書で示されるその世界観は、奴隷制や相互監視を基本とする社会というのもあり、決して今の時代からは理想的なものと言えるわけではない。 ただ、そういったポイントはもはや5世紀以上も過去に書かれたこの本に対する指摘としては十分ではないかも。何よりも、文芸復興と宗教改革の時代の狭間で、司法官と宗教者としての葛藤に苦しみながら、遂には王に死罪にされた著者、トマス・モアがこの時代に何を思い、限界を感じつつも懸命に理想を託そうとしたその意思に、自分は何よりも興味がある。誰もが希望を持てずに打ちひしがれて、理想を描けなくなってしまった今日だからこそ。

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    投稿日: 2011.11.20
  • eriphantのアイコン
    eriphant
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    この本の存在をしったのは今から十年以上前。 中学生の時にEver After という映画の中で登場した。 以来十年間。気になり続けた結果やっと読むことができた。 Utopia 理想的な国 そこでは、誰もが平等に、過不足なく、無駄なく、つつましく暮らしている。 争いもない。 500年以上前に書かれたユートピア。 500年たった今でも、どこにも理想郷なんて存在しない。 500年以上前に書かれたのに、 私たちは何も変わっていない気がする。 そんなことを思った。

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    投稿日: 2011.11.15
  • yasu13のアイコン
    yasu13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    500年も昔でも現代と変わらぬような疑問を世の中に持ったトマス・モアが作り出した架空の理想郷ユートピア。簡単に言えば共産主義国の完成系のような感じかな。ある点ではすごくシンプルで住みやすいだろうし、快適に暮らすという意味でも素晴らしいかもしれない。しかし、私自身としてはものすごく退屈な国なんじゃないかと感じた。 「ユートピア」=「どこにも無い」というのはまさにですね。

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    投稿日: 2011.07.14
  • 左月のアイコン
    左月
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    なんか想像してた理想郷とは随分かけ離れた国だった。 平等だけど、自由は無い。 全員が全員"性善説"な人たちばっかりだったら、このユートピアはさぞかしユートピアだろうと思う。

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    投稿日: 2011.07.14
  • ゆきおのアイコン
    ゆきお
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    共産主義の原型。ユートピアとはギリシア語の「どこにもない国」という意味でトマスモアの造語である。第一巻と第二巻の第一章はは主に理念が語られていて面白いが、それ以降は制度や法律など具体的内容について書かれているので今の感覚から考える理想的な国とは程遠い。少なくとも15世紀から人類が理想的な国の像を模索し続けていていることが分かる。

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    投稿日: 2011.04.12
  • niimiyaのアイコン
    niimiya
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    今更説明の必要もいらないと思いますが、トマス・モアさんの「僕の考えたいい国」ってな内容です。 実際にユートピア国に行ってきたラファエルさんが、モアさんに語るという体で書かれています。 今のイメージで「ユートピア」というと、エデンの園か桃源郷かといった、餓えも苦しみもパンツもないような場所ってイメージですが、実際、本書を読んでみると、そんなこともないんですな。 奴隷もいれば、死刑制度もある社会。 ただ、(モアが考える)理想的に社会設計・運営がされているために、諍いや貪欲とは無縁な国なわけです。 時代背景や歴史的な文脈の中での位置づけなど、全然わかってないので、例によって「ふ~ん」と表層をなめただけでおわっちゃたんですが… これで、筆者をトマス・マンと間違えることはなくなったと思います、はい。 本文から作者の理想主義者像が伺えますが、解説を読むと事実清廉潔白な正義感だったようですね。 真摯なカトリック教徒で、大法官であったときに、ヘンリー八世の離婚に反対して、最終的には死刑になってしまうですね。 いわれてみれば世界史で勉強したなぁ…

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    投稿日: 2010.10.29
  • ackyのアイコン
    acky
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    非常に読みやすく面白い作品。 いわば社会主義国家を極端に表した話で、賛否はともかく思想は興味深い。

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    投稿日: 2010.09.26
  • こねのアイコン
    こね
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    ぜんぜんユートピアに思えない。確かに安定していて豊かな社会ではあるけれど、その安定や豊かさのためにいろんなものが犠牲にされている。私有財産が否定され、人の行動もかなりの面で統制されている。今の感覚からしたら、前時代的で不自由な管理社会でしかない。社会主義国家とか共産主義国家とかのイメージと重ね合わせたくなる。 ユートピアと言ったら、実現不可能だけど天国のような幸せな世界、というようなものかと想像していた。あるいは、いまはまだ実現は無理だけど、少なくとも人間や社会が最終的な目標にするような理想社会とか。 そんなものを予想していたのに、予想外というか意外というか。 ただ、500年前のヨーロッパの社会情勢とか価値観とかと対比させてみたなら、トマス・モアの意図も理解できるかもしれない。当時は封建的な社会でもっと不安定だったんだろうし、貧富の差も激しかっただろう。そんな中で生きているのであれば、こういう社会こそが理想の社会に思えるんだろうか。

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    投稿日: 2010.07.09
  • shiori821のアイコン
    shiori821
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    初めてこの本を読んだのは高2か3の時でしたが、その時は知識が全然なくて大した感想を持たなかった記憶があります。 しかし私も自分なりに今の国内政治(特に先進国)や世界秩序に問題意識を持って読むと全く違う印象を受けました。 ユートピアでは、お金や金に対する欲望を根絶している。(奴隷に金の装飾品をさせたり)財産の私有は認められず、公有する。それゆえ、奪い合いが起こることもなければ、飢饉の時は国中からその地域に食料を分配する。必要なものを必要なだけ生産するだけだから労働時間は6時間だけ。好きなことをする時間がたっぷり。貧困がないから犯罪もめったに起こらない。奴隷も登場するけど、同じ罪を犯したものが罰として汚い仕事をさせられるだけ。反省をきちんとみせれば奴隷からまた元の生活に戻ることもできる。 まさに理想郷。 ただ、当時(15~16世紀)は西洋諸国が世界各地で侵略を繰り返す時代だったからか、もしユートピアや友好国が攻められた場合は他国から傭兵を雇ったりして戦争もする。常備軍はいないけど。 ユートピアは当時だけでなく現在の国家のあり方や経済のあり方を痛烈に批判している。 私たちの政治や経済を見直すのに重要な視点を与えてくれる。 資本主義や私有財産制が私たちから奪っているものに目を向けなければ。 ユートピアは「どこにもない国」の意。 しかし、「どこにもない」「理想」っていうのは不可能と同義ではない。 理想を現実に合わせるのではなく、現実を理想に合わせていかなければいけない。

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    投稿日: 2010.04.09
  • やなぎんのアイコン
    やなぎん
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    ゼミの研究発表『ナウシカに見るユートピア』主要参考文献。 面白い。示唆に富んでいる。近代的空想世界の原点。 ・・・・まぁ、俺のユートピアは一杯のビールで十分なんだがな・・・☆

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    投稿日: 2009.12.02
  • osamaのアイコン
    osama
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     二部構成になっていて、一章ではユートピアの話を聞いた経緯、二章ではユートピアの話となっていました。一章では中世のヨーロッパの政治うんぬんで始まるのですが、その始まりの第一章で読みづらく感じてしまったので、細切れに読んでました。その結果、およそ半年でやっと読み終わりました。  内容は、ユートピアの社会が成り立っている仕組みを追っていくものでした。真の意味での共和国で、私有財産というものがないというのが最も重要な点だったとおもいます。  であるからして、贅沢や娯楽といったものはなく、そういったものがあるとすれば、音楽と算術競争と将棋のような戦略ゲームのみでした。服はもちろん着られればいい程度にしか思っておらず、装飾品は子供のつけるものとして使っているそうです。  ユートピア人は基本的にすすんで労働を行い、それも国民全員が農業を経験してさらに第二職を行わなければならないそうです。  若者は年長者に従い必ず若者だけの集まりは作らないようにし、食事は講堂で皆でそろって食べる(田舎は家ごと)ことによって、妙な集まりを作らない、そんな社会を作っているそうです。  もちろん、他にもユートピア人とするための社会の仕組みは数多くあるのですが、私が読後にも強く記憶に残っているのはこのような事柄でした。これらの事柄は、現代でも理想ですし、また想像しやすくもあります。ですから、古典でありながら読みやすく感じました。理想をどう決着させるかによって受け入れられない箇所もありますが、ユートピアの社会体制はおもしろいと思いました。 2008.09.07 21:15 自室にて読了

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    投稿日: 2008.09.07
  • かーるのアイコン
    かーる
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    ちょっと難しくなったガリバー旅行記という感じだろうか。どこにも無い架空の「ユートピア」国の風土を通して、理想の国家のあり方と現実への風刺を表現している。そこでは合理的な考え方とキリスト教的敬虔さを持った国民による、共産制国家の営みが描かれる。「ユートピア」が共産主義国家を表す言葉として使われてきのは、この書が元であったということか。しかしこの国家にはどこか息苦しさを感じてしまう。国家の規定からはみ出してしまった人間は死刑か奴隷となってしまう。卑しい職務は全てこの奴隷が請け負うことによってこの国家は成立しているのだ。こうした裏の面も、現実の共産主義国家の運命をも見通したものだったのだろうか。トマス=モアが表現したかった真意はなんだったのか、当時のヨーロッパ社会を深く理解しなければ分からないだろう。しかしこの物語は時代を超えた寓意としての価値がある。第一部の官僚批判などは、そのまま現代社会にも通用する人間観察と洞察に基づいている。

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    投稿日: 2008.04.29
  • machyのアイコン
    machy
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    ユートピアでは、日に6時間、毎週6日働けばよい。 物質的な満足を作り出すには、それで充分なのだ。 ユートピア人は虚飾を嫌い、質素な服を着ている。 手間暇のかかる服が、是とされてはならない。 もし皆がそれを欲しがれば、トレードの概念が発生してしまう。 ユートピア人は私有財産を持たない。全ての生産物は皆のものだ。 私有財産に何のフィードバックがなくとも、知的好奇心から、技術的・文化的貢献をするものは居るだろう。 20世紀が物語っているように、問題は、品質の低い労働をするものをどのように戒めるか、だろうか。

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    投稿日: 2008.04.13
  • funのアイコン
    fun
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    現代の私たちが読むとぜんぜんユートピアじゃないんですが、なるほどなーとは思います。対話形式?なのでわりと読みやすいです。学生さんでレポートに何か思想史関係が必要な方は読みやすいという意味ではオススメです。

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    投稿日: 2008.01.05
  • ハツカのアイコン
    ハツカ
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    初めのうちは面白かったけど、宗教のあたりから読むのがつらくなった。 私はユートピアには住めないというか住みたくないと思った。

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    投稿日: 2007.05.28
  • nagaomaのアイコン
    nagaoma
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    ユートピア文学の先駆け。ガルガンチュア物語もそうだったけれど、ユートピアはみんな全体主義的だ。この作品も、ユートピアの方針に従わない者は排除されている。おすすめです。面白い

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    投稿日: 2007.01.07
  • けむしのアイコン
    けむし
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    500年も前にこんな理想郷の思想があったことに驚き、逆にそのころから何も達成されていない現実に悲しくなる。

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    投稿日: 2006.07.03