
総合評価
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powered by ブクログ元郡奉行秋谷は、前藩主側室との密通を疑われ、10年後の切腹と三浦家家譜編纂を命じられる。妻子らと共に、幽閉の身となる。秋谷は、無実であるにも関わらず、罪を受け入れて編纂に真摯に取り組んでいく。最期の日に向けて覚悟の日々を暮らす。その生き様を追う物語です。彼の生き方は、周囲の人々にも影響を与えていく。 主人公が覚悟した生き方なので、幾つかの事件は起こるけれども、物語は静か。その静寂な感じが、秋谷の息子の父親を踏襲した様な行動への感動や、息子の友人の命をかけて家族を守る感傷を深めるかと思う。 ストーリーのスパイス的な、側室との密通事件の裏側の事情が残念ですがわかりにくいかなと。 殿様達が側室を何人も作って世継ぎのことばかり考えるから、下々が苦労するのね。 歴史を振り返り、現在に呼応する組織や人事に心馳せてはいかがかと。
63投稿日: 2023.05.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
直木賞受賞作。 十年後に切腹することを命じられた武士を中心に、武士の生きざまを描いてる作品。 淡々と物語は進む。 読みづらくはないのだが、予想通りの展開と結末。 時代物なので仕方がないのだろうが、同一人物なのに立場によって呼び名が変わるので、私のようにボケ~っと読んでいると誰が誰だかわからなくなる。 これ以降完全ネタバレになります。 未読の方は読まないでください。 武士だからといって、すべてを受け入れて死ぬのは美しいのだろうか? わからない。 家族がいる。ならば、みっともなくても足掻いて欲しい。 それは武家の作法ではないのだろうけど、それでも、下された切腹を回避するためにもう少し何かできなかったのだろうか? 何より本人にその気がないのでどうにもならん。 いくら武士としての生き方、と言ってもなぁ。 正直潔いとも美しいとも思えませんでした。
36投稿日: 2022.10.16
powered by ブクログ第146回直木三十五賞 蜩のような物悲しさが残り、読み終わった後も切ない気持ち。 命の終わりを知りながらただ真摯に家譜を記す戸田秋谷をもどかしく思った。 しかしその胸の内にある村人や家族への熱い思いが伝わり、じわじわと胸が締め付けられた。 戸田秋谷のいさぎのよさは、私にはそこまで理不尽を受け入れなくていいじゃないかと思うけど、これが葉室麟さんの描きたかった時代の矜持なんだろうな。 郁太郎と源吉の友情も良かった。
35投稿日: 2025.10.29冒頭部分から、その世界に引き込まれます。
主人公の一人である若い武士が、目的地に向かう途中から物語は始まります。その風景描写はまさに純文学の世界です。直木賞受賞作ですが、これを大衆文学と呼ぶには、申し訳ない気がします。 10年後に切腹することが決まっている武士の元に、若い武士が、それを監視するという目的で送り込まれてくるわけですが、それが運命の日まで、あと3年という時期。この期間が絶妙です。その3年の間、寝食を共に過ごす内に、武士とは、人間とは、はたまた生きるとはということを若い武士は、学ぶと言うより、体感することになります。 武士社会の理不尽さ、人間の欲望に対するあさましさ、おろかさ、そして潔さ。きっかけとなった事件の謎解きの面白さ(けっこう込み入っている)もさることながら、思わず「おまえの生き方はどうなんだ?」と襟を正したくなる作品です。 タイトルは、蜩がその日その日を懸命に生きていることからとったと物語の中で説明されています。読む前は、あの悲しい鳴き声から、切ない話なのかなと思っていましたが、さにあらず。涙の中にも、すがすがしささえ感じさせる秀作であります。是非、時代小説ファン以外の人も、一読をオススメします。2014年秋には、映画も公開されるとのこと。役所広司と岡田准一が、どのように役を演じるのか今から楽しみです。
30投稿日: 2014.05.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
切腹する日までの10年間、秋谷は正義を貫き通した。それ故に、その日、秋谷の死がもたらしたのは「彼への矜持」に他ならないのだろう。郡奉行を務めていた秋谷が40過ぎに家督争いに巻き込まれ、側室を救ったことで10年後の切腹を言い渡される。もう一人の側室の由緒の問題により切腹にまで話が拡大する。秋谷は10年間「家譜の編纂」を命じられ、その由緒を明らかにした。しかし、秋谷はそれを盾にして切腹を回避することはしない。秋谷の正義は憎しみの連鎖を断ち切ることにあったのだ。残された者が秋谷の生き様を証明するに違いない。
22投稿日: 2020.09.20
powered by ブクログ知り合いに勧められて読んでみた。 不義密通の罪で3年後に切腹が命じれている武士、秋谷の生き方が一貫して清々しい。 (邪気まみれの自分が情けなくなるくらい、、、)。読み終えても清々しい小説だった。
16投稿日: 2024.05.06天使すぎる?武士
3年後に切腹が決まっている戸田秋谷(映画では役所広司。確かにイメージ通り)が家族とともに粛々と生きて、今の仕事を全うしようとしている折、家老のバックボーンに係わる問題に巻き込まれていく。巻き込まれるといっても秋谷が八面六臂の大活躍とかするわけではなく、若者たちの行いを大きく受け止めて、次世代に想いを繋げていく姿が清々しい本作。まさしく”清廉”という言葉が合う小説です。 ↓↓ 以下、やや批判的な感想です。 個人的にはもっと《生への執着》とか《死への恐怖》が、描かれた方が人間くささを感じて好きです。登場人物の多くが聖人君子すぎるかもしれません。
15投稿日: 2015.12.03
powered by ブクログ山本周五郎の「樅の木はのこった」に続いて読んでみたら、同じ匂いの小説だった。しかし個人的に好みなのは「蜩の記」に軍配があがる。 郡吉の今ある境遇での清々しさに感涙した。 とても素晴らしい小説でした。
14投稿日: 2018.11.20
powered by ブクログ葉室麟さんの羽根藩シリーズ。 映画も見てみたいと思う。 作中の「未練がないと申すは、この世に残る者の心を気遣うてはおらぬと言っておるに等しい。この世をいとおしい、去りておない、と思うて逝かねば、残された者が行き暮れよう」という一文が何よりも印象に残った。 「三浦家譜」を完成させ、切腹を待つ秋谷に慶山和尚が問う。 「ならば思い残すことはないか」と。 秋田には首背して答える、 「……もはや、この世に未練はござりませぬ。」と。 重ねて僧侶が言われたのが、未練がないとはこの世に残るものに気遣いがないということだと。 人は生まれた瞬間から、命の砂時計が落ちる。止まることはない。 その中で、最も大きな財産は「愛おしい」そう思えるものにどれだけ出会えたかということに尽きるように私は思う。 自分の人生を愛おしむそんな生き方がしたい。そんな気持ちにさせられる本だった。
12投稿日: 2024.10.01
powered by ブクログ数年後の切腹が決まっている武士(それまでに藩の歴史をまとめている)、それを見届けるために派遣された主人公。一緒に暮らすうちにその一家に惹かれていく主人公の話。 設定が他にない状況なので新鮮に感じ物語に緊張も与えている。「死」や「武士とは」を思う。 時代描写は面白いとは思うが、直木賞?とも思う。岡田准一氏の演技をみるのは面白いかなと思う。
11投稿日: 2026.01.03
powered by ブクログ地味だなぁ、と思うのだけれど、静謐で武士らしい矜持が滲み出ていて、すごく心地の良い心持ちにさせてくれる作品。 ことの顛末だって派手さはない。 途中で起きる事件も大騒ぎされない。 ただ、清廉潔白な主人公の人となりをこれでもかってくらい見せつけて見せつけてくれるから、心がぐらぐら揺さぶられます。 最後、息子たちを助けにゆくところはかっこよかったなぁ。。。 2025.3.29 66
10投稿日: 2025.03.29
powered by ブクログ数年後に切腹を命じられた者の監視役として遣わされた主人公。 残りわずかな命にも関わらず凛と生きる秋谷に徐々に影響を受けていく。 お家騒動の真相や村の問題などある中で、覚悟が生まれ友の大切さを知り恋も芽生えていく。 話の展開は基本的に淡々としているが、しっかりと心が動いていく様が描かれている。 武士も百姓も、その人となりは死に様が克明に表している。 彼らは最期まで立派な人だなぁ。
10投稿日: 2023.01.08武士の生き様と蜩(ひぐらし)の声
藩が決めた命の期限、それに対する武士の生き様は現代人にとっても見習うべきところがある。それよりも本作品のすばらしさは、タイトルと表紙絵からも伝わるところがあるが、短命であり他のセミとは違ってその鳴き声に哀切を感じる蜩との対比ではないか。なぜか心に静かにしみいる。…読んで損はない。
9投稿日: 2013.12.28
powered by ブクログ映画があることは知っていたけれど、内容は全く知らずに原作を手に飛びました。 切腹の日が決まっている秋谷、それを監視するよう秋谷のもとへ送られた庄三郎。 藩史を書き上げる過程で見えてくる事実。秋谷の無実が証明されるのか?とドキドキしながら読み進めました。 様々な事が起こるなかで、死が迫る秋谷の淡々とした生き様に武士の潔さを見て、読み終わった後の凪のような感覚になった不思議な作品でした。 この作品をきっかけに葉室麟さんの作品を色々手に取るようになりました。お勧めです。
7投稿日: 2026.01.19
powered by ブクログ限られた命の中で、領民のために生きる主人公 秋谷の生き方に感動しました。読了後に清々しい風が心に吹きました。
7投稿日: 2025.08.17
powered by ブクログ終盤50ページはずっと泣きながら読んでた。 なんて潔い生き方だろうか。 秋谷の潔い良さに周りも引き込まれその習性に徐々に染まっていく。 序盤からずっと惹きつけられる物語で退屈等全くしない。エンターテイメント盛りだくさんなのに全然物語が暴れておらずスッと読める。 兎に角泣きまくれてデトックスが凄い。 もうこの体験が経験済みになったかと思うと悔しくてしょうがない…
7投稿日: 2025.01.25
powered by ブクログ「蛍草」と違って、こちらは本格派の時代小説といった印象です 難しい用語や表現もあって、最初はつっかえつっかえでした 読み進めていくにつれ、結末が気になり徐々に引き込まれます スカッととする結末ではありませんが、侍の生き様を感じられる作品でした
7投稿日: 2021.05.31
powered by ブクログ限りある生命を如何にして締めくくるか、死を迎えるまでの日々の生き方を問う慟哭の時代小説である。徳川の閉ざされた武家社会に蠢く人々の宿命的な生き様が、哀切の情念で切々と綴られていく。人の心の気高さに、万感の想いが募ってやまない。
7投稿日: 2019.09.18正しくまっすぐ生きる!
戸田秋谷は藩主の側室との不義密通の疑いで、10年後の切腹を言い渡された。理不尽な上役や欲深い悪徳商人等が現れ、延命とひきかえに彼を利用しようとする。しかし、彼は甘い誘いにのらず、あくまで正しくまっすぐ生きる。その姿はすがすがしささえも感じる。
7投稿日: 2015.05.16「蝉しぐれ」へのオマージュ?
読み進めて20ページで、藤沢周平の名作「蝉しぐれ」と重なりました。「初恋の女性が殿の側室」「権力争いに巻き込まれて襲撃される側室、それを守る主人公」「祭りに出かける主人公と女性」更に言えば源吉の亡くなり方は「ベロ出しチョンマ」のオマージュですよね。まあ「蝉しぐれ」との共通点は直木賞選考委員が納得の上との事なので、これはこれでアリなのでしょうか。しかし、いくら小説としての出来が良くても、ここまで他の作家の作品が目の前をちらつくのは如何なものか。今一つ世界に入り込めませんでした。
7投稿日: 2014.08.24日本人のこころに響く秀作
江戸中期の豊後国羽根藩。郡奉行の藩士戸田秋谷は、ある事件の責を追われ十年後の切腹とその間の家譜編纂を命じられ、山あいの村に幽閉されていました。 その監視役を任じられた庄三郎が秋谷と共に過ごす日々から感じ得た、人が生きるべき道とは・・・。 淡々とした筆致で描く、自分の役割をひたすらに全うする秋谷の心奥深くの信念の篤さに心震わされます。そして人の信念は他人をも変えることが、ごく自然に読む者に伝わってきます。 日本人の誰もが持っている清冽な心を思い出させてくれる秀作でした。
7投稿日: 2014.05.22
powered by ブクログ恥ずかしながら、初めて作者の本を読んだのだが、これが面白かった!日本文学、侮るべからず。 私の中では、時代物にまた新たな傑作が。 百田尚樹「影法師」、冲方丁「光圀伝」、藤沢周平「蝉しぐれ」等に連なる名作でした。 ってことで、作者のことを調べてみたら、本作品を書いた5年後の2017年に亡くなっていた・・ 葉室 麟(はむろ りん、1951年1月25日- 2017年12月23日)は、日本の小説家。福岡県北九州市小倉生まれ。本名・本畑雄士。 福岡県立明善高等学校卒業。西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業。地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て、2005年に江戸時代元禄期の絵師尾形光琳と陶工尾形乾山の兄弟を描いた『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞を受賞。 50歳から創作活動に入り、4年後に文壇デビューを果たした。2007年、『銀漢の賦』で第14回松本清張賞を受賞する。2012年、『蜩ノ記』で第146回直木三十五賞を受賞する。久留米市を拠点に、敗者や弱者の視点を大切にした歴史時代小説を生み出した。 2017年12月23日午前2時、病気により福岡県福岡市の病院で死去。病名は明かされていない。66歳没。 2018年8月17日、都内でお別れの会が開かれ、小郡市の直木賞作家東山彰良は、「葉室さんは作品に自身の美学や哲学を込めていた。それはどんなにぶざまでも、どんなに理解されなくても、正しいことは美しいのだという美学。その美しさがきっと、誰かを救うという信念の下に小説を書いていた」と語り、八女市黒木町出身の直木賞作家安部龍太郎は、「優しく、思いやりが深い。自分よりも人のことを先に考える。人の痛みが分かる苦労人でもあった」と語り、故人を偲んだ。 文学賞受賞・候補歴: 2005年 - 『乾山晩愁』で第29回歴史文学賞受賞。 2007年 - 『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞。 2009年 - 『いのちなりけり』で第140回直木賞候補。 2009年 - 『秋月記』で第22回山本周五郎賞候補、第141回直木賞候補。 2010年 - 『花や散るらん』で第142回直木賞候補。 2011年 - 『恋しぐれ』で第145回直木賞候補。 2012年 - 『蜩ノ記』で第146回直木賞受賞。 2016年 - 『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。(Wikipedia) かなりデビューが遅い作家だったようですが、本作品は映画化されていたということで、もしやと思って確認したら、この映画、見てました。そして、私の評価は「時間があれば」。我がことながら、この評価の落差と記憶力の衰えに愕然とする。
6投稿日: 2020.07.02
powered by ブクログ徳のある正々堂々とした生き方が近道。 時代物としては久し振りに感銘を受けた。 何より、この文章の美しさにまいった。
6投稿日: 2018.11.17
powered by ブクログ時は、江戸時代。 前藩主の側室との密通の廉で家譜編纂と10年後の切腹を命じられた秋谷が暮らすのは、九州の山間の村でした。 そこに遣わされた庄三郎の目を通して感じる清逸な世界観と美しい自然描写に心が洗われました。 10年後の切腹の命、すなわち余命は10年。 それも、病で命を落とすのではなく、自らの手で愛する家族のいる世界を後にするのは想像を絶する痛みでしょう。 その葛藤が書かれているのかと思いきや、主人公は清廉な人柄で、心静かに穏やかに、確固たる信念を持って生きていました。 限られた生をどのように生きていくか、人間らしく、親らしく、夫らしく生きるとはどういうことか、常に心に抱きながら生きているからか、主人公の人との関わりのなんと深くやさしいことか。 自分の生き方について改めて考えさせられました。 ひとは心の目指すところに向かって生きている。 心の向かうところが志であり、それが果たされるのであれば、命を絶たれることも恐ろしくはない。 私もいつか、そんな風に思えるんだろうか。
6投稿日: 2014.04.29
powered by ブクログ限られた命を生きる心意気に、武士というものの潔さ、雄々しさや剛さを感じ、さわやかな読後感だった。 戸田秋谷は、将軍家側室(お由の方)との不義密通の罪で十年後に切腹という沙汰が下る。その間 向山村に幽閉され、三浦家の家譜編纂を命じられる。 限りある命を感じながら、自然に恵まれた静かな地で日々を送っていた。 秋谷は以前、豊後、羽根藩の郡奉行を務めていた。この村を検分し、副業に莚を編むことを奨励し、無欲で清廉な勤めぶりで、村の行き方についてよく指導し、村人に慕われていた。幽閉中であったが何事か起きると村の相談役にもなっていた。 壇野庄三郎は、奥祐筆であったが、文机で書き物をしていたとき筆の墨が飛んだ。隣にいた親友の信吾の顔にかかり裃の「拝領紋」を汚した。怒った信吾と争いになり、その末に庄三郎の居合いで放った脇差で信吾の足が切れ、彼は歩くのが不自由になった。庄三郎は切腹のはずが許され、秋谷の下に赴くことになる。事実上は三年後の秋谷の切腹までの監視役であった。 庄三郎は秋谷の書いている日記「蜩ノ記」を見せられる。それは家譜の進捗状況と簡単な秋谷の日常の覚書だった。 秋谷の死に向かう潔さと、私利私欲を離れた静かな生き方を見ていると、あの事件はもしかして冤罪では有るまいか、という考えが浮かぶ。 郡奉行の悪辣さ、飢饉の年の年貢の取立てなど、秋谷に持ち込まれる相談事も多い。 また秋谷の罪の源になった側室のお由の方は、昔、秋谷の実家で働いていた。 正室お美代の方側との、お家騒動に巻き込まれお由の方が毒を飲まされた。秋谷は危ういところで助け、秋谷は逃げた先で護衛として一夜をともにし、それを不義と誤解されたのだった。だがそれを無言で受け入れている。 お家騒動の源は家老、中根の策謀だった。彼はお美代の方を正室にしたが、これには曰くがあり、その経緯の解明はお美代の方の「御由緒書」を見ることであった。 これを巡っての命がけの攻防戦がある。 郡奉行に殺された、親友の百姓のために、秋谷の息子郁太郎は庄三郎を供にして家老に直談判に行く。そこで捕らえられ牢につながれる。 秋谷は「御由緒書」と引き換えに二人を助け出す。 秋谷は家譜の原本を懇意な名刹の和尚に渡すが、この幕切れは余韻がある。 百姓、郡奉行などの殺人事件の犯人は誰か。 秋谷の罪の真相は。 「御由緒書」の行方とその内容、過去の使い途は 秋谷とお由(出家して松吟尼)とのかかわりは 10年目のその日が来たとき、秋谷は、庄三郎は、家族は ミステリの要素もあり家族愛、お家騒動、権力争いに関わる策謀有り、読むのは楽しかったが、お家騒動と家老の成功譚と一族の系譜などは少し煩雑で、将軍の来歴もあまり関心を持てなかった。 郁太郎が家老宅に入るときなどは、「蝉しくれ」で明かりを消して船で逃げるシーンのような緊迫感がある。あそこはやっぱり名場面だったな。 家老も最後の場面ではなぜかいい人になる。 親友の信吾との確執も解けて、信吾は協力者になっていく。 秋谷の人となりも誇りもなぜか気高い。私淑していく庄三郎の心境も感動的だった。 重いテーマで始まるが、読後はほっとして、当時の武士の心意気、めでたし。
5投稿日: 2026.02.08
powered by ブクログ死ぬために毎日を生きている侍とその監視役が少しずつ成長していく姿とが相対しているにもかかわらず、のめりこんでいってしまうほどの作品でした。 今の時代よりも理不尽なことがあり生きづらい世のなかっだたかもしれませんが、そのなかでも人としての信念をもって切腹の日まで過ごすのは並大抵のことではないと感じました。死ぬ勇気に必要なエネルギーも半端ではないと思いますが、生きていくことの大変さに必要なエネルギーもすごいものだということを改めて思いました。 本当に感動する作品でした。
5投稿日: 2022.09.16
powered by ブクログ戦国武将以外の時代小説を初めて読んだ今作。 直木賞受賞作で泣けると触れ込みがあり、小説で泣ける?それは経験した事がないので読んで見る事に。 序盤から静かな雰囲気の中で進み、それぞれの生き様や考え方に色々と考えさせられる。 登場人物達の心情も細やかに書かれていて感情移入しやすく、残念ながら泣けはしなかったが直木賞受賞作とはこの様な作品なのかと知る事ができた。 個人的にはラストも素敵で後味が良く、ここで泣けといった感じもない葉室麟さんの作品に感銘を受けました。
5投稿日: 2021.05.02
powered by ブクログ人は誰でも限られた時間の中で生きている 終焉は明日かもしれないし10年後あるいは50年後かもしれない もし明日命果てようとも恥ずかしくなく志も優しさも偽りなくありたいと思った 丁寧にひたすら言葉をつなぐ葉室麟の世界は居心地が良かった
5投稿日: 2020.09.15
powered by ブクログ何も言わず、自分の死を目の前に見ながらやるべきことだけを果たそうとする。清廉潔白で厳格。これこそが本当の武士なのだろう。 戸田秋谷の生き方、それを監視する檀野庄三郎。 自然描写が美しく効果的でした。
5投稿日: 2018.03.04
powered by ブクログ面白かった。 歴史小説+ミステリーといった感じ? 徐々に明らかになる真実で真相究明されていくのもよいですが、やはり武士としての生き方、覚悟、矜持といったものがひしひしと感じられる作品でした。 さらには、本文で語られている情景の美しさがそれに拍車をかけます! 物語全体が凛としたすがすがしさを感じる作品です。 物語としては、7年前に犯した罪で、家譜編纂と10年後の切腹を命じられた秋谷。さらに、その監視役を命じられた庄三郎。庄三郎の視点から秋谷が語られていきます。そして、家譜編纂の作業の中で明らかになる7年前の真実。といったところです。 なんといっても秋谷の生き様、覚悟、清廉さ、そして矜持がすばらしい。 また、農家の子供源吉の覚悟と信念も胸に響きます。 ただ、残念なところは、その明らかになる真実にいたるところでの藩内の人間関係や背景がわかりにくい。 さらに、最後、悪人が本当の悪党という感じでもないところがちょっと残念。 とはいえ、とてもすがすがしい気持ちで読み通すことができました。 お勧め!
5投稿日: 2015.11.21
powered by ブクログ日本人に産まれて良かったと思うような傑作時代小説。第146回直木賞受賞作も頷ける。これほど心に訴えてくる小説は無い。 不始末により切腹と引き換えに幽閉中な戸田秋谷の監視を命ぜられた檀野庄三郎…秋谷の元で過ごすうちに庄三郎が行き着いた場所は… この時代小説の面白さは、我々に武士としての志と清廉な生き様を示してくれるだけではなく、庄三郎が秋谷が幽閉された理由を解き明かすミステリーの要素も秘めているからではないだろうか。 あまり時代小説を読まぬ自分でも、驚くほど素晴らしいと思う小説だった。
5投稿日: 2014.06.25凛とした主人公の生き方
主人公は、先代の藩主に10年後の切腹を命ぜられて、山間の村に幽閉されています。 主人公が切腹を命ぜられる原因となった事件とその真相の謎解き、藩の悪政と一揆を起こしそうな農民たちの様子を縦糸と横糸にしながら、主人公の武士の矜持をもった生き方が抑えた筆致で描かれています。 読み終わったとき、静かな感動に包まれます。
5投稿日: 2014.01.29
powered by ブクログ限られた命とどう向き合い、いかに生きるか。 秋谷氏の生き様は淡々と、しかしその一本気は心に深く染み入る。 (秋谷氏の安定感に対し、庄三郎は一人前の武士として、少し頼りない印象もあったかな) この忙しない、物質的な現代社会を過ごす上で、そのような気概保ち続けることは難しいけれど、心の片隅に置き続けたい清廉さ。
4投稿日: 2019.09.08
powered by ブクログ時代小説はほとんど読んだことがなかったけれど、何となく惹かれて手に取る。手に取って正解。文章が美しく、読み応えあり。 登場人物が魅力的。秋谷の凛とした生き方、庄三郎や郁太郎の成長など… 裏事情が少しずつ明らかになっていくのは、推理物みたいに楽しめた。
4投稿日: 2019.07.28
powered by ブクログ日本史に詳しくなく、名前が長い人たちがたくさん出てきて、誰が誰なのか、どうなってそうなったのか…等が分かりづらく、物語の半分過ぎまで斜め読みでした。これはおそらく私の理解力のなさでしかないと思います。。 なので、謎が明らかになっていく様などは、フワッとしか分かっていませんが、それでも、最後の方は涙無くしては読めませんでした。 武士の生き方、というか、人の生き方が描かれていました。死ぬことを美徳とするのは、あまり好きではないですが、そうではなくて、どう生きるかという作品でした。 理不尽な事が多く、真っ直ぐなんて正直生きていられないのは、今よりもこの時代の方が圧倒的に多かっただろうと思われます。その中で、中心をずらさず、武士の道、人の道を生きようとした人たち。我が強いのとは正反対だけど、信念は揺るぎなく強い。なりたいと思ってなれるものではないけど、やはりこの様な生き方が美徳とされるのは腑に落ちる気がします。
4投稿日: 2019.01.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
初葉室。直木賞受賞作。藤沢周平著『闇の歯車』にて、時代小説の面白さに気付き、本書で二作目。この作品を読み始めたのが私の仕事での失敗により、近いうちにおそらく“解雇”になるであろうタイミングと云うのは、何か運命を感じた。切腹と解雇。秋谷が庄三郎と郁太郎を助けに行くところは思わず涙が流れた——。読む前は逆だと思っていたが、人生とは終わる日がきっちり判っていた方が有意義かも知れない…。秋谷の人間性、凛とした真っ直ぐな生き様。秋谷の家族への想い。その逆もまた然り。庄三郎が秋谷を慕っていく過程。等々…読み処が本当に多い。大変良い作品に出会えた。続編であろう『草笛物語』は是非とも読みたい^^
4投稿日: 2018.05.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
国語の先生におすすめされて読みました。 時代小説はあまり読んでいなかったから、途中リタイアになるかなーと思っていたけど面白かった! まっすぐに生きる秋谷さんももちろん魅力的だけど、源吉の最期が悲しすぎて……。お春のために笑顔を作った彼にも感服。そして万治、もう少し頑張ってほしかった。 源吉のことでさらに武士と百姓との溝は深まってしまったのだろうけど、庄三郎と郁太郎が秋谷さんのように向き合ってよい方向へ進むと信じたい。
4投稿日: 2018.03.17
powered by ブクログ少し甘いが、星5つ。 藤沢周平を思わせる作品世界だが、凛とした秋谷一家がなんとも言えずいい。庄三郎の人柄にも惹かれる。村の人間の生き方も強くていい。 悪役もしっかり役割をこなしているし、人間的に徹底していて深みを感じる。つまりは、人間造形が上手という事だ。謎解きの方は今ひとつの感もあるが、もっと読みたいと思わせる作家である。
4投稿日: 2014.11.10
powered by ブクログ現代の日本のどこにこれだけの思慮と覚悟を持って生きている人がいるだろうか。少なくとも私はただただ、その日一日から逃げるだけの日々である。 死期を知りつつも己の責務を全うし清く生きる秋谷には尊敬の目しか向けられません。 時代小説、というと難しいイメージがあって避けていたのだけれど、この本はひたすらに描写が綺麗だった。 もちろん悲しいことも描かれているけれど、人の潔い心、清い心が素敵だと思った。 *映画を観ました。絵が素敵でしたが、やはり省かれている部分もあって本の方がいいなと思いました。けれど、映る景色にも役者の中にも静謐さが表れていました。
4投稿日: 2014.11.01
powered by ブクログ☆5.0 直木賞受賞作ということでかなり期待値高く読み始めましたが、その期待に充分答えてくれる作品でした。 切腹の日が定められ山村に幽閉されている秋谷と、城内で不祥事を起こし秋谷の監視のため山村に遣わされた庄三郎。 命の刻限が迫るにもかかわらず武士として自らを律し生きる秋谷を間近に、その切腹を命じられた罪過は誤りだとの確信を持ち、庄三郎は自ら調べ始めるが…。 文中、源吉と慶仙和尚の言葉が深い。 その言葉だけを抜き書きしておこうかと思う位に重みのある言葉が並ぶ。 武士とは、武士の矜恃とはこのようなものかと心に迫る作品。
4投稿日: 2014.09.14自分の生き方を考えさせられます
直木賞受賞作だから、面白いに違いないと思い、読みました。最初から引き込まれ、あっというまに読めてしまいました。 秋谷の切腹の原因になったからくりの謎解きあり、主人公の恋模様あり、息子の成長の記録あり、家族愛あり、若いころの初恋の記憶あり、いろんな要素がからんでいて、読み飽きません。最後は、さわやかに泣ける作品です。 秋谷の生きざまを通して、自分の生き様も考えさせられました。
4投稿日: 2014.04.10
powered by ブクログ思い出したかのように読み返したくなる作品。 羽根藩の向山村に幽閉され、3年後には切腹する秋谷と、勤め中に喧嘩騒動を起こしてしまい切腹を免れたものの秋谷の見張り役の命を受けた庄三郎が出会い庄三郎が秋谷の生き様をみて秋谷に惹かれ、なんとか秋谷を助けられないか?と思いながら切腹までの時がすぎていく。 というお話なのですが、なぜ秋谷が幽閉されているのか?そして、その騒動の真相は?というところにミステリーな要素も交えつつ、想像の中の武士というのは秋谷やその生き方をみて変わっていく庄三郎みたいな武士なんだろううなと今でも思う、いやこういう人々が武士であってほしいと思うくらいに格好良いなと思える作品です。 私が本作品を読みたくなる時は、仕事に悩んだ時が多いのですが、私も仕事をする人間としてどういう風に仕事に接するべきか、仕事やりたくなくてサボりたいなと思う時や、やる気がなくなってきた時に読むのですが、そういう時の気持ちは、本作品の主人公である庄三郎のように私も秋谷をお手本にしているんだろうなと思っています。 百姓達の不満などで一揆や強訴騒動など不穏なことも起こりそうになる舞台の向山村ですが、どこかのんびりとした日常も感じられるシーンもあり、頭の中はタイムスリップしているような読書体験を得られる作品だなとも思います。
3投稿日: 2025.08.16
powered by ブクログ時代小説をよく読むので、好きなんだなあと思います。今の時代の常識では考えられないことだけど、その非常識の中で、人間は同じように悩んだり自分らしさを求めたりしたのかなと思いながら読んでます。 全然別の世界の話でファンタジーと近い。そういう世界の話を読むと癒されるっていうのがカタルシスってやつなんでしょうか?
3投稿日: 2024.08.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
田舎の村で家譜編纂をしながら切腹の時を待つ武士の元へ、不祥事を起こした青年侍が見張り役として遣わされる。青年侍は武士やその家族、村の人々と交流しながら武士の切腹を回避できないかと考える… 謎解きの様な側面もありワクワクしながら読み進めて行った。 青年侍・檀野庄三郎が戸田家の家族や村の人々と交流を深めて行く様子が微笑ましかった。 侍たちの思惑に翻弄される百姓達が気の毒で遣りきれない気持ちになる。 その中で源吉の腐る訳でも暴力に出る訳でも無く、理不尽さえも受け入れて自分に出来ることを考えて行く姿がとても好きだった。
3投稿日: 2022.08.30
powered by ブクログ人間関係や役職関係、相続関係がわからなくなってしまって、途中見返せる家系図が欲しかった。 時代劇小説のあるあるだけど役職が変わったり嫁いだり、出家したりで名前が変わっていたみたい。 人格者には周りに人が集まるし、人の生き方にまで影響を与えることができる。嘘をついたり、私利私欲を肥えさせようとする考えだとダメだなという教訓の本。 秋谷は侍の美学を突き通したのかもしれないけど、お寺の坊さんが言ったように事情を訴えるなど運命に抗ったり、残していく妻子に心残りを伝えたりしても良かったのではないかと思った。心が強すぎてかっこいいけど周囲は寂しい。
3投稿日: 2021.10.18
powered by ブクログ時代物ということで、途中誰が誰だかわからなくなって戻りつつ読んだけど、後半に向けて盛り上がっていき面白かった。 場面が動いていても常に登場人物それぞれの切なさのようなものを感じさせ続け、話のテーマや重点がブレずに一貫しているところがすごいと思った。
3投稿日: 2021.06.22
powered by ブクログ以前、映画で見た作品。 起伏が少なく淡々と物語は進むが 武士とは何たるか、をよく表した作品。 命を区切って生きることの大切さも教えられる。 冒頭と最後も上手くつながっており 悲しい最期なはずだが読後感はいい清々しさです。 映画で筋を知っていても本も楽しめる作品です。
3投稿日: 2020.10.06
powered by ブクログ7月-19。4.0点。 羽根藩シリーズ。直木賞。 藩主の側室と江戸で一夜を過ごした咎で、藩史編纂を命じられた主人公。3ねM後に切腹が決まっている。監視役に命じられたもうひとりの主人公。 再読。面白い。さすが直木賞。 領民を思い、家族に対しても清廉である姿勢。 ラストもグッときた。
3投稿日: 2019.07.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
歴史は鑑。よきことも悪しきことも記す。藩の歴史を記し、10年後に自害することになっている武士の一家と、監視役の男。ただ役割を果たしていく一家。
3投稿日: 2019.04.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
重かった。 秋谷のような清廉の人は切腹で中根のような小物ばかりが人の上に立つ。秋谷を信じられなかった前藩主も人間の器が小さい。 人の上に立つ者が人としての器が小さいというのは罪だな、と思わされる。 秋谷の生き方は自分にもそう生きられるのかと問われているような気がする。
3投稿日: 2019.01.30
powered by ブクログ葉室麟の時代小説で第146回直木賞受賞作。 直木賞受賞にふさわしい優れた小説という印象を持った。 良く練られたストーリー、読者の興味を掻き立てるシチュエーション、魅力的な登場人物、そしておそらく葉室さんの得意とする読者の心に染入る様な美しい風景描写。 物語の初めから終わりまで、本当に良く作り上げられていて、ある種の芸術品の様な美しい作品だと感じた。 職場で友人との喧嘩から刃傷沙汰を起こしてしまった檀野庄三郎は、切腹を赦免される代わりに向山村に幽閉され家譜編纂を命じられている戸田秋谷の監視を命じられる。 戸田秋谷は七年前に前藩主の側室との密通の容疑がかけられており、10年後の切腹が命ぜられていた。 庄三郎は、戸田家の人々と一緒に過ごすことで秋谷の人柄を知り、彼の罪に疑問を持ちはじめ真相を調査する。 「蜩ノ記」とは秋谷が日々の出来事を記録している日記の事である。 この作品は、心に残る台詞が多い。 庄三郎が真相を調査する過程で人の心の闇に嫌気がさし、遠くの田畑を眺めながら 「ひとは、稲のようにまともには生きられぬものなのでしょうか」 と相手に問いかけるシーンは、非常に印象深かった。 戸田秋谷の犯した罪の真相がこの作品のキーポイントであり、その謎に迫ることは危険を伴う為、緊迫したシーンが続きスリリングな楽しさがある。 また、庄三郎が戸田家の人々と交流する事で、人を愛おしむ心が彼の心に生じてくる様の描写も美しい。 それと庄三郎の秋谷の娘 薫に対する恋愛の様子がいかにも不器用で微笑ましかった。 物語のクライマックスからエンディングも感動的で、この美しい物語にふさわしい。 ここでは、庄三郎の人間としての成長が如実に出ていて本当に素晴らしいシーンであった。 非常に完成度の高い良い小説だと思う。 ただ物語が美しければ美しいほどいかにも作り話という感じがしてしまうので、その部分のバランスさえ良ければ満点だ
3投稿日: 2018.01.28
powered by ブクログ「蜩ノ記」 映画は見ていないが文庫になっていたので読んでみた。 お家騒動に巻き込まれ10年後の切腹を申しつけられ、その10年間の間に藩の歴史を編纂するように言いつかった戸田秋谷の物語である。 物語はひょんな弾みで親友に怪我を負わせ、切腹処分の代わりに戸田秋谷の監視役として派遣された檀野庄三郎の話から始まる。 庄三郎は次第に秋谷の清廉潔白で領民たちを思いやる心に動かされていく。 お家騒動の原因が次第に解き明かされていく謎解きと、迫る秋谷の切腹、そしてその中での秋谷、庄三郎、その他の登場人物の思いがよく描かれており、引き込まれる。 秋谷は自分が切腹することについて、やることはやったので思い残すことはないと言うが、慶仙和尚に残された者の思いを汲んで死ぬことをためらう心があることが本当の悟りだと諭される。 主人公の戸田秋谷が己の意志を貫くあまりにストイックな理想的な武士に描かれすぎているところが少々気になるが、いい作品だと思う。 映画は役所広司、岡田准一が演じているが一度見て見たい。
3投稿日: 2017.06.17
powered by ブクログ珍しく時代小説を読んでみた。 主命により切腹の日を決められている秋谷は静かに家譜編纂をしながら日々を暮らしている。 毎日が死へのカウントダウンであり、そもそも切腹しなければならない理由にも理不尽なものがある。 遺していかなければならない家族もいる。 無念さは感じないのだろうか?悔しくはないのだろうか? 読み始めたときにはあまりにも達観しているような秋谷に違和感を感じた。 取るに足らないような地方の村にも生活をしている人たちがいる。 年貢をめぐり、さまざまな問題も起きていく。 侍(搾取する側)と百姓(搾取される側)では立場も違う。 けれど、少しでも相手のことを思いやる気持ちがあれば…。 いや、きっと時代背景を考えると侍が百姓を思いやる意識などなかっただろう。 ならば有能な役人として効率的な仕事をすればいい。 保身だけを考えるのではなく、百姓からいかに多くの年貢をトラブルなく集めるか。 そこだけを考えればいいのに、と思ってしまった。 子供にまで威張り散らすような輩にはプライドがないのだろう。 彼らの保身に染まった行いは、対比としてより一層秋谷の静謐さを際立たせている。 すべてを受け入れて静かに真っ直ぐに残された人生を生きていく。 間近でそんな秋谷の生き方を見守ってきた庄三郎もまた、彼の影響を受け変わっていく。 秋谷の思いは庄三郎に、そして郁太郎に引き継がれていく。 終盤の家老が語る秋谷の心境部分はいるだろうか。 たしかに腑に落ちるものもあり、読み手には親切かもしれない。 だがとってつけたような説明はそれまでの物語に流れてきた空気とあきらかに違うような気がするのだけれど…。 時代小説はほとんど読んだことがない。 だからかもしれないが、物語の世界にどっぷりとつかりながら読むことができた。 秋谷という人物の凛とした生き方に心洗われるような物語だった。
3投稿日: 2017.03.25凛とした芯の強さ
通俗的にいうと、藤沢周平、山本周五郎の小説を足して2で割ったような感じ。もちろんいい意味です。 10年後に切腹を申し付けられるが、裏の企みを知りつつも、ジタバタせずに天命を待つ。家族や村人への思いも強く優しい。主人公もさることならが、源吉(主人公の息子の親友)の悲しい場面は、泣けます。ある意味、主人公を食ってる。凄すぎます。 主人公の家族愛、忠誠心、忠義、まさに武士。ただ1点だけ、松吟尼との一件(不義密通の疑)、これがそもそもの発端だったんですが、女性の視点からだと結局、ちょっとなぁ・・・やっぱり男って・・・と感じてしまい、星1つ減らしました。わからないでもないけど。 文体、素晴らしい表現力を持っていて、ほかの作品も読んでみたいと思いました。
3投稿日: 2015.01.23新しい武士像
歴史小説だと、武士は正義の味方だったり、ヒーロー的な扱いが多いが、現代でいえば単なる会社員(公務員)。お互いの足を引っ張ったり、目上の者に媚びたり。藩士に対して義憤を抱く百姓の気持ちがひしひしと伝わってくる。 その中で、信念を貫き、歴史に真摯に向き合い、武士として、父として、夫として義を通す主人公秋谷の姿は、切腹監視役の藩士とともに読者も感情移入させるに足る、尊厳のある人物。 久しぶりにじっくり読み、静かに感銘を受ける作品でした。
3投稿日: 2015.01.16
powered by ブクログラジオなどの口コミ、あるいは、映画の評判がよかったので、初めて日本の時代小説を読む。 最初は、時代小説ならではの語句に少し戸惑ったものの、慣れると、物語の内容に吸い込まれる。 作品の魅力だろうか。 登場人物の機微、あるいは、それと重なる自然の描写がきれいだった。 フィクションなのはもちろんだが、「物語の内容は、現代小説にあるような展開かもしれない。それが江戸時代にかわっただけ」。そういう表現もできるかもしれないが、やはり、人物の心情、生き様…それらを描くには、この内容がぴったりだと思った。 人間の機微を描く、時代小説が自分にはあっているようだ。 推理小説のような展開、それと並行してすすむ登場人物の心の有りよう、すべてよかった。 満足の1冊。
3投稿日: 2014.12.29武士ではなく「お侍さん」
秋谷さんよ、あんた最高だよ。 「秋月記」を読んでたので、郡奉行の知識があって、より分かりやすかった。武士というよりは、農民たちの見方になるスジの通ったお侍さんという感じ。 それにしても、最後は切ねぇ〜
3投稿日: 2014.12.22真の武士道とは?
愛するものの為に、恥じぬ生き方をする、誠実に生きる…この話を読むと、武士道とはそれだけでよいのではないかという気がする。己の地位を守るために簡単にひとをも殺めることができる権力者がいたり、賄賂がまかり通る世の中、秋谷の生き方が、周りの者の生き方まで変えていく様が素晴らしい。彼の思いを継いだ者たちが、羽根藩をきっと変えていくだろう。
3投稿日: 2014.10.16
powered by ブクログこの分野ではすでに、藤沢周平が確立してるのに、なぜ書いたのか? 美しい精神と大きな技量を併せ持つ源吉を簡単に死なせてしまい、周りの、人間の怒りは凄まじいものと察するなのに、家老中根を殴りつけて終わってる。現実は、こんなものかもしれないが、そこは、小説ですよ。戦国時代じゃないんだから、勧善懲悪を見せてほしかったなあ。最後に中根が過去を述懐するシーンは、要らない。あんな盛り下がるシーンないなあ。むしろ郁太郎を主役にすればよかったのに。
3投稿日: 2014.10.10素晴らしい ‼︎ 自分の生き方も考慮できる本でした。
歴史時代小説はいままで購入して読んだことがが無かったですが、この本において自分の知らなかった、そして忘れていた文字や単語が再勉強できました。自分自身の文字単語帳ができました。これからの自分の生き方を再検討もできました。有難うございました。
3投稿日: 2014.10.08深い深い人間の愛を感じました
切腹の期限が決められ、日一日藩の記録をつづりながら自分の生きた証を記す主人公。 なにごとも心穏やかに・・・時には信念強く。家族には深い愛情を。支え見守る家族は父の大きな背中を心に刻みながら。自分の無実を晴らすことなく、自分が切腹することで大切なことを守り、しかし真実を曲げない。大きな愛の物語です。 映画公開されても読める作品です。
3投稿日: 2014.10.02武士と百姓 身分を超えた男の生き方に感動
まるで武士の様に家族を守る百姓の子供、武士であるにも関わらず卑しい役人、正義を貫き通す武士。 立場や時代によって正義は異なると思いますが、倫理的に恥ずかしくない生き様が評価される世の中であって欲しいと思いました。
3投稿日: 2014.09.20人の欲望という汚泥の中に咲く蓮の花
残された時間は三年。もし自分が同じ立場になったら、どう過ごしただろうか。 自分が死ぬ日にちまで決まっているのに、決して取り乱さず淡々とやるべきことをこなす事は出来ただろうか。 武士らしく人間らしく生きる秋谷や、いつも真正直な源吉らに尊敬の念すら覚えました。
3投稿日: 2014.08.23登場人物たちの感情を抑制した“凛”とした文体、読後にじわっと来る感動が味わえる
私としては初めて読む葉室麟氏の小説。さすがに直木賞受賞作ではあると思う。氏の文章の特徴であろうか、一貫して凛とした文体であり、特に前半は登場人物たちへの感情移入を抑制したセンテンスが続く(人によっては退屈に感じるかも)。終盤に入り、村の少年の死をきっかけに一気にクライマックスに突き進んでいくが、ここでも抑え気味の文体がむしろ心地良い。一気に涙腺が崩れることなく、読後にじわっと涙腺が緩む小説を久しぶりに味わった。
3投稿日: 2014.07.21秋の夕暮れ
期限を決められた命の中で、信念をもって自分の役目を全うするお侍さんと、その期限の日までの見張り役として派遣された主人公。 主人公や周りの人たちは、そのお侍さんの生き方に影響されながら成長していきます。 期限をきめられてなぜ切腹しなければならなくなったのか。 読み終わると、夏から秋に季節が変わるときのようなさみしい感覚になりました。
3投稿日: 2014.04.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読んでよかった。時代物に疎い私でもこれまで知らなかったことを後悔するくらい胸に響いた。 文章はわかりやすく、やわらかく淡々としている。 自然の描写が豊かで四季を感じた。 命の期限が決められている中で、日々をどう生きるか。 秋谷の生き方には、ただ武士の矜持という一言では表せない人としての在り方があり、時代が違う女の私でも感銘を受けるんだと思う。身分は違うが深い友情で結ばれている郁太郎と源吉や、秋谷と過ごすうちに変わった庄三郎にもそれを感じる。源吉の最期は涙なしでは読めなかった。 どの時代でも人徳がある人もいるし逆もいる。私利私欲のために弱者から搾取することに抵抗がない人が増えたと感じる。 多様性が当たり前の時代でも、相手を敬う姿勢や尊重する気持ちは日本の美徳として根底にはずっと薄まらずにいて欲しい。 あとがきがロバートキャンベルさんなのもよかった。
2投稿日: 2025.07.20
powered by ブクログ7〜8年振りの再読。やはり良い。清廉さ、強さ、優しさ。そして、ストーリー展開。読者もはっと気付かされる登場人物の行動や言葉の深い意味。葉室作品のエッセンスが詰まった作品だと思います。
2投稿日: 2023.05.08
powered by ブクログ「散り椿」で葉室さんの言語表現とストーリーに魅入られ、続けて「蜩ノ記」を手にとった。 散り椿でも芯が振れずに誠を貫く武士の有り様に感動したが、蜩ノ記でも理不尽な裁きに怯むことなく、限られた生の中でなすべき事を成すという生き様に感動が止まらない。当分、葉室さんの時代小説にハマりそう・・・。もちろん、この本も再読本に入れる。
2投稿日: 2023.04.29
powered by ブクログ数年後には切腹することが決まってる中での物語。 なんて静かで美しく、悲しい最期なんだろう 読んだら泣く! でも終わりまで見届けねば!! という感情が交互にやってきながらも、何とか最後までたどり着けた 素敵な作品に感謝
2投稿日: 2023.01.13
powered by ブクログ平成23年の直木賞作品。 架空の九州の小藩を舞台にしたフィクション。切腹する定めとなっている武士とその家族、刃傷沙汰を起こして彼らを監視する役回りとなっ青年の武士を中心に物語は進む。推理小説の側面もあり、読むうちに次のページへと読者を惹きつける。 「心がけの良き者はより良き道を。悪しき者は悪しき道をたどる」最後の場面に出てくるこの台詞が印象的。
2投稿日: 2022.06.28
powered by ブクログ不合理な理由で、10年後の切腹を命ぜられながら、自分の与えられた役目にひたむきに向き合う秋谷の生き方。自らの死に意味を持たせて、彼を死に追い込む家老中根兵右衛門を圧倒する。蜩のように静かに、己の信念を貫く姿が、美しい自然の景色と彼を取り巻く人々の温かさを背景にして輝いていた。
2投稿日: 2021.07.28
powered by ブクログ時代物を読むたびに日々の生活や言動を恥ずかしく思ってしまう自分に気づく。 やはりこの時代にある心構えと言うか人としての値観が全く違う。 そこに強く惹かれてしまうのは自分自身が持ってない物だからなんだろうと思う。 父親として又一人の人間としてほんの少しでも今の自分を改めるとこが出来れば良いが(笑)。 敬愛する藤沢周平作品より良い意味で読み易く素直に感動できる万人に読んでほしい作品。
2投稿日: 2020.10.21
powered by ブクログこちらも上町63のマスターにご紹介いただいた作家さんの作品です。 映画化 役所広司 岡田准一 めちゃめちゃ良かった 付箋 ・疑いは、疑う心があって生じるものだ。心を変えることができるのは、心をもってだけだ。 ・この世に生を享けるひとは数え切れぬほどおりますが、すべてのひとが縁によって結ばれているわけではございませぬ。縁で結ばれるとは、生きていくうえの支えになるということかと思います。あのように美しい景色を目にいたしますと、自らと縁のあるひともこの景色を眺めているのではないか、と思うだけで心がなごむものです。生きていく支えとはそのようなものだと思うております。 ・ひとは哀しいものです。たとえ想いが果たされずとも、生きてまいらねばなりませぬ。されど、自らの想いを偽ってはならぬと思うております。 ・友達のことは覚えとかんといけん。忘れないのが友達だ ・ひとは心の目指すところに向かって生きているのだ 心の向かうところが志であり、それが果たされるのであれば、命を絶たれることも恐ろしくはない。 ・未練がないと申すは、この世に残る者の心を気遣うてはおらぬと言っておるに等しい。この世をいとおしい、去りとうない、と思うて逝かねば、残された者が行き暮れよう ・若いころの思いを、ともに語れるひとがこの世にいてくださるだけでも嬉しゅうござる
2投稿日: 2020.09.19
powered by ブクログ揺るがない清廉さと覚悟。 それを保ちながら静かに生きる。 それは気負いもなく自然で、まるで前々からそこにあったかのようである。 命の期限にも、浮かび上がってくる策略にも、そして自分に対してだけでなく、すべてのものにおいて。 何があるんだろうという推理小説のようなおもしろさと、読後の凛とした気持ちよさ。 この時代の人の名前や関係性を頭にいれるのが苦手で、やっぱりメモを取りながら読むこととなった。敬遠していたタイプの時代小説。なのにまた他のも読んで見ようかという気になっている。 葉室麟さん、チェック!
2投稿日: 2020.02.17
powered by ブクログ2019年3月12日読了。城内で不祥事を起こした庄三郎は、3年後に切腹を控えた武士・秋谷の監視を命じられ、その振る舞いに感化されていき…。第146回直木賞受賞作。理想化されたとも言える「武士とはどうあるべきか」「いかに生き、いかに死ぬか」みたいな話を清潔感を持って描く作品。うるっとくるシーンもあり読後感はいいし、終盤庄三郎と郁太郎がとった行動は「えー、そういくんか?」と意外性もあったが、定められた結末に向かっていく物語は自分にはもう一つ物足りなかった…。自分の基準で正しく生きることで、不遇な目にはあっても最後には皆に分かってもらえるし、周囲を動かすことができる、と現実は必ずしもそうではないが、そう信じ続けることが大事か。映画の主演は岡田君のようで、ちょっと観てみたい。
2投稿日: 2019.03.12
powered by ブクログ昔の時代ならではの言葉の使い方には冷静さと情熱のような相反するものが同時に表現できる特性があったかのように思う
2投稿日: 2018.09.29
powered by ブクログ「――ひとはどうしようもないことで罪に問われることがあるのだ」 豊後羽根藩にて奥祐筆を務めていたものの、些細なことから城内で刃傷騒ぎを起こした檀野庄三郎。彼は家老の温情で切腹を免れるが、ある密命を帯びて城下を放逐される。 密命とは、7年前、藩主の側室との不義密通の罪を犯したとして、10年後の切腹と藩主・三浦家の家譜の編纂を命じられ、現在は家老の所領である向山村に幽閉されている戸田秋谷を監視することだった。 秋谷の切腹までの期日は3年。庄三郎は自分の命が助かるのと引き換えに、戸田秋谷が死ぬのを見届けよ、という過酷な使命を課せられたのだ。 向山村で秋谷やその家族と寝食を共にし、家譜の編纂を手伝い、秋谷自身の剛直な背を見るうちに、庄三郎は次第に彼の無実を確信するようになる。 やがて庄三郎は、秋谷が切腹を命じられる原因となった側室襲撃事件の裏に隠された、宇羽根藩家中に渦巻く重大な陰謀に辿り着くが――。 多くを語らない秋谷の背中は、身分を超えて多くの人々の心を揺さぶるというのに、本人である彼自身は、決して命の期限を動かそうとしない。 夫として父として家族を、武士として人として、主家や村人たちを守りぬく。限られた命の残りの日々を、疑うことなく誠意を尽くし、逃げることなく生きる姿は晩夏を鳴きつくす蜩の聲にも似て。 庄三郎が秋谷の元を訪れてからの3年間を、彼の目を通して描かれるが、この物語にはもう一つの視点がある。秋谷の長男・郁太郎である。 郁太郎には身分を超えた友人がいる。村の子供・源吉だ。この子がおどろくほど人間が出来ている。 大人たちは重い年貢の取り立てや農作物の不作に不満を漏らすが、源吉は不満を言っている暇などない、と屈託なく笑う。呑んだくれて役に立たない父親を責めもせず、母を助け、妹を可愛がる。武士が威張り散らすのを目の当たりにしても、この世のことはみんなお天道様が決めなさる。と達観している。 源吉の聡明さは郁太郎を何度も助け、その精神を成長させるが、彼には突然の理不尽な死が待っている。この源吉の非業の死が、物語の終わりに秋谷の避けられない死の意味を違うものに昇華させる。秋谷は無実の罪を負って死ぬのでなはなく、藩と領民のために死ぬのだ。 忠義と覚悟。生きることの意味と死ぬことの意義を、凄烈に問う歴史小説である。
2投稿日: 2018.02.02
powered by ブクログ【内容】 日本人の心をふるわす傑作時代小説! 第一四六回直木賞受賞作、待望の文庫化! 命を区切られたとき、人は何を思い、いかに生きるのか? 豊後羽根藩の檀野庄三郎は不始末を犯し、家老により、切腹と引き替えに向山村に幽閉中の元郡奉行戸田秋谷 の元へ遣わされる。秋谷は七年前、前藩主の側室との密通の廉で家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。 編纂補助と監視、密通事件の真相探求が課された庄三郎。だが、秋谷の清廉さに触れるうち、無実を信じるように なり……。凛烈たる覚悟と矜持を描く感涙の時代小説! 【感想】 敵対視していた兵右衛門が秋谷の息子と庄太郎を見逃すのは、かなりの美談だと感じた。 私も、秋谷が助かって欲しかった。 けれども、『信頼関係で結ばれた上司に疑われたら、その時点で助かるに足る』『命捨てな一揆を止めるために切迫を選ぶ』という、現代なら不器用とも言える意志の固さ、それこそ武士道を貫く姿は、清々しいほとであった。 『運命を受け入れろ。そして、運命の中で、実直に生きろ。』秋谷、そして、秋谷の息子・郁太郎の親友である農民の子・武吉に学んだことである。 秋谷の無実の切腹の命も考えものだが、殺傷や一揆を企てざるを得ない、そして、抗うことすら認めらなれない社会の仕組みに憤りを感じるが、それを受け入れて、日々を穏やかに過ごす。 愚痴愚痴と自分の運命を嘆くよりも、後悔なく生きれる生き方なのかも知れない。 見習うべきなのかも知れない。 また、和尚が言った『未練なくこの世を立ち去るな。残されたものが報われない。』といったような言葉も感じるものがあった。確かになぁと。 難しい心持ちだ。 また、何回か読み直して、自らの生き方を考えたいと思う。
2投稿日: 2017.05.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
過去の日本も現在の日本も要は変わらないと思った… トップダウンがいかに愚かなのだろうと感じる。 北朝鮮と重なり、昔の日本って何でも死に繋がる… 現在は死に繋がらないだけじゃねーのかな… 主人公が凛としすぎて、まっすぐすぎてやるせない。 生に執着していないように見えた主人公が言った 「残される者たちのために未練を残して死ぬ」 という一節には、舌を巻いた!
2投稿日: 2017.03.09
powered by ブクログなんたる不条理、なんたるやるせなさ。それなのにこの清々しさ。はらわた煮えくりかえりながら、何度も悔しくて涙しながら、渦中の人間の真っ直ぐな生き方にただ圧倒される。重いはずなのにひたすら清涼で美しい物語。文章で五感を刺激されるような素晴らしい表現力だった。
2投稿日: 2017.01.13人生、かくありたし
ストーリーについては、たくさんの方のレビューがありますので割愛します。 小生、普通に暮らしている普通の平会社員であります。人様に後ろ指を指されることがないよう仕事に責任を持ち、日々を暮しております。社内外的にも上昇志向は持ち合わせてなく、そういった権謀術策渦巻く世界とは距離をおいておりますが、不本意ながらもこの類の波には飲み込まれずにはいられません。 戸田秋谷の生き様…わが人生、かくありたし。だけど、できない→読み終えて表現に戸惑う晴れやかな心持となる。この読後感、藤沢作品と似たような感覚でもありましたが、世のしがらみに辟易とされている皆様、ご一読を。
2投稿日: 2015.07.01あっぱれ
流石、第146回直木賞作品だけありました。 久しぶりに時代小説を読みました。 ネタバレになるので多くは書きませんが、「武士の生きざま」に感服しました。 主人公の「秋谷(しゅうこく)と庄三郎」の人間性に魅力を感じました。 一日一日を大切に過ごそうと感じさせられました。 寝不足ですが、一日で読み終わりました。 続きが気になって一気読みしました。 まさに「あっぱれ」って気分です。
2投稿日: 2015.05.17人の一生はかくの如くありたいと
どうやら、映像化されて、主人公が 役所広司 との事。写真も見ましたが、全然小説とイメージが違います。 限られた命を宣告されている主人公は、より清々しい雰囲気の人物。 千石さんなギラギラが残る役所広司さんだと、ちょっと違うなあと思います。 命の限りは決められていても、決して命を捨てているわけでも無く、己の本分を見失ってもいない。 見極めるたびに御目付役の青年は主人公に惹かれていきます。 私も同じく、武士とはかくあるものと、惹かれていきました。 読後、重たいながらもハッピーエンドです。 素晴らしい一冊でした。
2投稿日: 2015.04.03蜩の記
新進気鋭の作家で、正に油の乗った一作である、直木賞というよりむしろ芥川賞に推薦したい、この本を読みながら私はふと「樅の木は残った」山本周五郎を思い出した、原田甲斐に似ているような気がする
2投稿日: 2014.12.29日本人としての涙か清々しい涙。
想う心が幾重にも。人を想う、親、子、恋人、人生を想う、生き方を想う気持ちが幾重にも織り成すいい話だ。
2投稿日: 2014.11.14清く生きる人は美しい!
清く、潔く生きる人の話。 こういう人物像を描くのは現実味が無くなって難しいと思うのですが、 とても上手く温かみや希望の溢れる物語になっていると思います。 自らの命を賭して信念を貫く人と、その信念を尊重し悪あがきしない人達。 登場人物の全てが素晴らしかったです。 通勤途中に涙を抑えるのが大変でしたw めっちゃお勧めです!
2投稿日: 2014.10.25
powered by ブクログ3年後に切腹を命じられている秋谷と、処分を免れる代わりに切腹を見届けにきた庄三郎の2人を軸に進むストーリー。あわせて、同じ場所に住む武士と農民という2つの世界が混じり合う。 最後の最後、どうなるのかが気になりつつ、そこまでは非常に綺麗にストーリーが進んでいく。 葉室さんというと、これまでモデルのいる伝記しか読んでこなかったので、こういう自由な作品を読むのは新鮮だった。そして、想像していた以上に読みやすい本だった(但し、登場人物一覧、あるいは主家の家系図はあったほうが助かる)。 綺麗なストーリーなので、予想を大きく超える事象はそこまで発生しないが、郁太郎や薫など、脇を固めるこどもたちの成長物語としても楽しめる、すてきな長編小説だと思う。
1投稿日: 2026.02.16
powered by ブクログ静寂に包まれるたような読後間であった。 前藩主の側室と密通したとのことで、三浦家譜の編纂と十年後の切腹を命じられて幽閉されている戸田秋谷の元に、友人に対する刃傷沙汰を犯したため、秋谷の監視と編纂の清書を命じられた檀野庄三郎の二人を軸に物語は進んでいく。 真実は密通ではなく、また単にそれは現代で言う自らの行った罪に服する死刑と異なるものであるため、そもそも十年後に切腹をしなければならない心境とは如何なるものか、この辺の難しい生き様としての武士を描くことに成功しているため名作になったのであろう。 またこの作品は三浦家のお家騒動などの真実を少しずつ暴いていくというミステリーという側面も併せ持っているものであることから、多様な評価を得ているのであろう。 今回が葉室麟作品を初めて読んでみたが、こういった時代小説もありなのと素直に思えた。
1投稿日: 2026.02.10
powered by ブクログ秋谷や庄三郎、郁太郎、源吉を通してひとの生き方を学んだ気がする。誰もが迷いや葛藤、苦難があるなかでカッコいい生き様だった。切なさはあるが暗くないストーリーであった。
1投稿日: 2025.05.07
powered by ブクログ身分を重んじるこの時代の生きづらさはあれど、その中でも武士として、ひとりの人間としてどう生きるのかー。 ひとりの日本人の生き様を通して、自分の生き方と向き合う。 秋谷や庄三郎、その家族のような人々がいたからこそ、世は少しずつ変わっていったのではないかと思う。 このような人たちもいたのだと感じたり信じたりすることが自分のエネルギーになった。 この日本人の精神が私たちにも根付いているのだと信じたい。
1投稿日: 2025.04.19
powered by ブクログ小学校6年生の時本好きの母の影響でこの本を初めて読み、中学生、高校生、大学生、ふとした時に読みたくなる本。 物事の捉え方、感じ方、考え方が自分には無いもので、毎回自分はこれからどう生きていくのかどうなりたいのかを考えさせられる
1投稿日: 2025.01.22
powered by ブクログ人間を知る小説であり、若い人を育てる生き方を学ぶ事ができる。 葉室作品の名作であるという事は間違いない。
1投稿日: 2024.05.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
美しい作品だった。秋谷の姿勢や郁太郎と庄三郎のシーン等、自分の事ばかりで周囲の事を考えていないように感じるところは所々にあったが、武士とはそういうものなのかもしれない。 秋谷の最期が変わらないのは良かったと思う。そのせいで単調な物語にならないように源吉を入れたのは上手い構成だと感じた。 兵右衛門がなんだか最後に悟って良い奴感を出してきたのは許せない。笑
1投稿日: 2022.11.01
powered by ブクログ同僚との人傷沙汰により切腹は免れたものの、檀野庄三郎は藩主の側室との不義密通の為、家譜を編纂し10年後に切腹することを命じられた戸田秋谷を監視する役を負う。切腹まで3年に迫った秋谷の人柄を家譜編纂を手伝う過程で目の当たりにしよもや罪を犯すような人物ではないと考え始める。 百姓の生活、村を我が物にしようとする商人、体裁を重んじる奉行衆、庄三郎の心の変化の描き方が絶妙で上手い。
1投稿日: 2022.05.16
powered by ブクログ2022年1月20日読了。 葉室麟さんの著作を読むたびに姿勢が良くなる気がする。 凛とした生き方を示してくれる。 終盤の流れにはあっと言う間に引き込まれてしまった。 不覚にも落涙。
1投稿日: 2022.01.22
powered by ブクログ無実の罪で切腹を言い渡されていても、命乞いをせずに受け入れ己のなすべき志を捉えて凛と生きる姿に感銘を受けた。 ただ、登場人物(先代藩主等も含め)がかなり多いので、途中で人物相関図などがあったらより分かりやすかった。 とても面白かった。
1投稿日: 2021.11.28
powered by ブクログやや複雑な話であったが面白かった。 最後松谷が切腹を逃れられれば、良かったが残念だった。誰が主役なのか良く分からなかった。
1投稿日: 2021.06.20
powered by ブクログ真っ直ぐで潔い、まさに武士道といった心を持った一人の男の話。 冤罪なのに弁明せず、切腹が決まってから十年もの間きっちり最後まで家譜作成の役目を果たし、途中何度も訪れる卑怯な取引にも屈せず、周囲の人に対して常に正しいと信じる行いを続け、そして潔く最期を迎えるとは、本当にどこまでも真っ直ぐで強い人でした。 こういった地方都市の名も無き小藩を舞台にした時代もので、かつ単独作品というのは非常に珍しい気がしますが、それを名作に仕上げるところが葉室氏の魅力だと思います。
1投稿日: 2021.05.14
powered by ブクログ日本経済新聞に本や音楽の名作選のような記事が掲載されるのですが、2021/4/18に本作品が取り上げられていました。時代小説を読まない身としては、葉室さんのことを存じ上げず、その才能を惜しまれつつ、66歳でお亡くなりになったとのことで、初めて作品を拝読しました。 10年後の切腹を命じられている武士と、その武士のところに見張りとして送られた若い侍を軸にした物語。事件の意味が一枚一枚めくられていき、その都度、そうだったのか、という驚きがあります。文壇にデビューされてたのが54歳と遅く、本作品は7年目のくらいのときのもの。構成に無理がなく手練れた感じを受けます。 藩と領民を考え、家族を大事にし、いわば自分をなくして考える武士の最期。全体を俯瞰する目をもち、あるべき姿を追求する彼は、ヒーローに違いありません。けれど、自分をなくしていく姿は、現代の40代(武士の年齢設定)に共感を呼ぶのか。米国や中国の人々の自己主張の強さを思い、彼らと対峙しながら生きる現代において、それは難しいような気もしました。 けれど、自己主張が強いことだけがよいわけでもありません。一方、本作品の武士も自分をなくしているだけではない。ここぞというときに、彼は果敢に動き、かつては同期であった権力者を殴る挙に出ます。そして、それは権力者の心をもとらえます。彼の命は終わってしまうけれど、次の世代へと彼の精神が受け継がれる。こういう強さをもってもよいのだ、と思わせてくれる作品です。
1投稿日: 2021.05.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
家譜編纂後の切腹が決まっているなかでも揺るぎない信念を持って日々を過ごす戸田秋谷。その生き方に美を感じました。 秋谷の子、郁太郎の友人、源吉も子供ながらに人情深く、芯の通っている人物で非常に魅力的でした。
1投稿日: 2021.02.27
