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父の乳
父の乳
獅子文六/筑摩書房
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総合評価

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    近年再評価される昭和の大衆作家獅子文六。 「娘と私」に続く自伝的小説。フランス時代に結婚したフランス人妻との長女に関する作品から今回は長男そして自身の父に関する回想。 10歳で50歳の父を亡くし、60歳で息子が生まれる。父になった頃こそ分かる、昔の父の気持ちや態度。子供の成人する頃には自分はこの世にいないだろうとの不安から心配。 子供の頃の瑞々しい思い出が後半一転して息子の言動に一喜一憂する展開。 「息子におくる」という献辞と実際の息子さんのあとがきが、実に良い読後感。

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    投稿日: 2025.08.30
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    作家って、なぜこんなに(自らの)子ども時代の心理を生々しく瑞々しく描きだせるのだろう。井上靖の『しろばんば』を読んだ時にも感じた。自分の子どもの頃を思うと、幼さや未熟さがとても恥ずかしく感じられ、とても書き起こす気になれないけど、作家は一定の距離をとりつつ客観的に描き出すことができる。すごいなぁ。 親となってからの気持ちには共感しきり。時代が変わっても、親の子に対する愛情の中身は変わらないんだなぁ。父母での子育ての役割分担についての記述など面白く読む。『娘と私』も併せて読みたい。

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    投稿日: 2025.05.29