
総合評価
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powered by ブクログ都市を発展史観で捉えるのではなく、幾重もの重層的な歴史であるととらえる点がユニークである。本書によれば東京は徳川政権、薩長連合、米軍に敗れてきた歴史があるという。筆者の述べていることだが、この3度にとどまらず、常に勝者と敗者とが生まれているのが都市である。 出版社の雑誌に連載されていたものを一本化したものらしく、やや大部の本書の真ん中には筆者の一族の歴史にかかわる具体的な話が挟まっている。この部分を読んでいる時は脇道にそれた感じがして、少々不愉快になった。 だが、彼らは忘れられた起業家であり、経営が破綻した企業主であり、やくざであり、そのほかいわゆる「勝者」とは言えない人々である。そうした敗者としての人々が実は確かな足跡を残している。こういった人物が東京の地層にいるのであることが分かった。 本書の説得力は終章に来てはっきりする。国力の頂点を越え、緩やかな衰退に向かっているといわれる今日の日本にこそ、敗者としていかに生き抜くかという意味が問われるというのだ。勝者であり続けることからは得られない新次元は敗者の側から達成されるのかもしれないという気持ちになれた。
0投稿日: 2025.04.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
PR雑誌「ちくま」に掲載された連載を本にしたものである。東京を明治維新、第二次世界大戦の敗者から見たものである。最も面白いのは、吉見の家族としての曽祖父母、祖父母、母親や親戚の安東(ヤクザ)と、その住んでいたところの大久保や新宿、渋谷についての関わりであった。東京については大まかには知られているものの、細かいことまではわからない。第3部(7章)からは吉見のファミリーヒストリーである。東京に来た大学生は、これを読むことで、東京はどのようなところであったかが理解されると思われる。
0投稿日: 2025.03.05
powered by ブクログ「ちくま」の連載をとりまとめたものなので、必ずしも論旨が一貫しているとは言えない。江戸・東京の敗者としての歴史を鈴木理生等によって概述。 ・彰義隊の怨念は抑圧されたのに対し、清水次郎長は敗者である天田愚庵「東海遊侠傳」で、東京の貧民窟は敗者のジャーナリストが語る。 ・敗者が抹殺されず複層していく。ファミリーヒストリ(曾祖父山田興松(水中化の発明・教育・実業家)、祖母(離婚後木挽町で旅館、いとこ叔父安藤昇)でミクロ史を記述するが、敗者としての東京との関係は複層。 ・鶴見俊舗の敗北への拘り(限界芸術論など) ・敗者は勝者の文化を部分的にとりいれつつ根幹的な精神世界を保持してきた。
0投稿日: 2024.07.24
powered by ブクログ東京という地は少なくとも3回占領されたという整理ーー徳川家康、薩長軍、米軍ーーに基づく東京論。 著者の親戚に安藤昇がいたということに基づくファミリーヒストリーは面白いのだけれど、前半の江戸成立にかかる論述は今ひとつかな。
0投稿日: 2023.10.15
powered by ブクログ東京の歴史を概括する内容だが、引用されている人物が多種多様で著者の視点の広さ、深さに驚いた.1590年に徳川家康が江戸へ入ったのが第1回で、1868年に薩長軍が進駐したのが第2回目、1945年に米軍が占領したのが第3回目と江戸・東京の大事件を捉えて、この都市の変革を詳細に記載している.やはり1945年以降のストーリーが楽しめた.登場人物が非常に幅広く、清水次郎長、国定忠治、安藤昇のようなやくざから、山口昌男、鶴見俊輔、加藤典洋などの評論家.すごい読書量だと感じた.女工哀史に代表される労働問題の記述も面白かった.
0投稿日: 2023.08.30
