
総合評価
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powered by ブクログ小泉内閣で大臣を務め、現在でもその言動が話題になる竹中平蔵。格差社会の「元兇」として、ネット上ではもっぱら批判の対象として語られるが、その実像はいったいどうだったのか、以前から気になっていたため、受賞するなど評価が高い本作を読んでみた。読んでみて印象に残ったエピソードはいくつかあるが、ここでは以下の3点について取り上げたい。ひとつめは、竹中がまだ表舞台に登場する前の1984年のこと。処女作を上梓するのだが、なんとそれはじっさいは共同研究だったものを、共同研究者に無断で個人の研究成果として発表してしまったというのである。竹中はのちに国会やメディアの場でときに独善的ともいえるような主張をしばしば展開するようになるが、その萌芽が垣間見られる、といってしまっては穿ちすぎだろうか。ふたつめは、森政権末期、演説原稿を手がけるなど森政権にブレインとして深く取り入る傍ら、同時期に当時の民主党にも接触していたというエピソード。わたしは竹中平蔵という人物を自民党政治を体現するような存在として認識していたため、民主党と関わりがあったということ自体単純に驚きであったが、それ以上に与野党双方のブレインとして振る舞うこの節操のなさには驚くというよりも呆れるばかりである。これもまた人間性、考えの本質がわかるエピソードのひとつである。また、本作では大臣時代の業績として、いわゆる「竹中プラン」と呼ばれた「金融再生プログラム」、そして「郵政民営化」についてそれぞれ1章ずつを割いて詳しく言及されているが、わたしが印象的だった3つめのエピソードは、後者について、じつは竹中本人は郵政民営化を当時行う必要はないと考えていたこと。郵政民営化は小泉政権の「構造改革」を象徴する金看板であり、担当大臣を務めた竹中も当然重要視していると思っていたが、肚のうちでは違っていて、ジャーナリストの田原総一朗に、必要性がないので困っていると明かしている。もちろん政治家たるもの、ときには自分のポリシーとは異なる政策課題に取り組まなければならないこともあるだろうから、このこと自体は取り立てて特異なエピソードではないかもしれない。しかし、メディアであそこまで熱弁を振るっていた竹中の姿とのギャップを考えると、やはりたんに「個人的な思想とは相容れない政策に取り組んだ」以上のものを感じざるをえないのである。これも竹中平蔵という人物を理解するうえで重要であろう。このようにさまざまなエピソードが登場してとても興味深く読めたのだが、ただ作品に対する不満として、安倍政権以降の実績がほとんど描かれていないこと。2013年4月の刊行だから仕方ない面もあるが、文庫化は2020年9月なので、増補することは可能であったはず。近年はもはや「歴史的事象」と化してあまり語られなくなった郵政民営化よりも、慶大教授やパソナグループ取締役会長として、さまざまな発言を行い物議を醸すことで竹中の名前を目にすることが多い。そのもっとも「身近」な存在についてほとんど言及がないことは、どうしても不満に感じてしまった。
0投稿日: 2024.08.16
powered by ブクログニュースのコメンテーターとして出演しているイメージだったが、もっとしたたかな人だということが分かった。 政府や政策の裏側は表に出ないことだらけだなと…。
0投稿日: 2024.02.03
powered by ブクログ少し古い本なので、当時の状況を忘れているところがあったが、政治の世界にうまく入り込み、自分の懐を肥やすやり方はさすがだ。 続編に期待。
0投稿日: 2023.03.26
powered by ブクログ「構造改革」「規制緩和」の代表格でもある竹中平蔵。その生き方、生きてきた道標が詳細に著されている。こうした人物が、なぜここまで上り詰めるようになったのか。混迷の時代、アメリカ追従の思考、時代の寵児ともてはやしたマスコミ、熱狂する大衆、そして利用し利用された各界面々。
0投稿日: 2023.03.01
powered by ブクログ2022.8. 近頃、竹中平蔵が突然、オリックスとパソナの役員を辞める、という動きがあった。 首を洗って待っとけ! 検察は竹中を絶対に逮捕しろ! たまには、まともな仕事しろ!
0投稿日: 2022.08.12
powered by ブクログ構造改革とは何か、郵政民営化とは何だったのか。竹中に対して黒幕のようなイメージを抱いていたが、実際はアメリカに憧れる野心高い実務者だと感じた。実務者としての能力は極めて優秀なのだろうが、学者としても政治家としてもモラルに欠ける徹底した実益主義に恐れ入る。
0投稿日: 2022.06.02
powered by ブクログ全く中身のない本だと思った。 竹中氏の過去が詳細に書かれてるが、全くどうでも良いことばかりで面白くない。
0投稿日: 2022.04.03
powered by ブクログもはや平成日本の金融史と言っていいのでは。 これはほんとに読んだほうがいい。 20世紀末から21世紀現在の日本経済、金融の変遷を 巨悪竹中平蔵を主人公に描いてます。
0投稿日: 2021.10.24
powered by ブクログよく言えば「積極的」?悪く言えば… 竹中氏の経済学的な見地は正直よくわからないので、恥ずかしながら、最初の本の出版時のエピソードや博士号の話、笹川良一さんの財団との関係、住民税不払い方などの「?」的な部分に引き込まれてしまった。 また、どうして氏がそれほどアメリカ的社会に魅力を感じているかがこれまた「?」だった。アメリカというよりは宮内氏の影響も感じられた。 あとがきで作者の方も書かれていたが、ご本人の話が載っているとさらに興味深かったのかもなぁ… (追記) 小泉元首相が「自民党をぶっ壊す!」といって郵政民営化を実行しようとしていた当時、「何かがかわる」と思って期待していた自分に言いたいのは、「竹中さんのキャンペーンにまんまと踊らされたんだ!?」ということ…
2投稿日: 2021.08.30
powered by ブクログ端的言ってこの20年間で竹中のやった構造改革は、目立って評価できる結果は残しているのだろうか? 確かに彼と彼らの改革は、抵抗勢力たちの既得権益との戦いであったことは間違いないが、同時に抵抗勢力から奪った利益を自分のものにし、自分が新しい既得権益者の座についているだけではないか? 労働市場の規制緩和を打ち出す政策実行者が人材派遣会社の会長を兼務しているのは公正さを欠いているのではないだろうか? 企業の内部留保が爆上がりし株価も高いが、そのかわりに非正規労働者や低所得者や福祉を受けるべき対象者が負っている負荷はつり合いがとれないくらい不公平な状況になっている。当然国内消費は伸びないからGDPは上がらない。この人はいったいどんな社会を目指して改革を行っているのか? この人に政治理念や倫理なんてないのではないだろうか? そんな疑問から本書を読んだのだが、ほぼそういうことだったという感想。そもそも経済学には「ある目的を達成するために」「手段を考える」学問であって、「目的が何かを考える」学問だという考えがあるらしい。これはまさに竹中の人物像そのもので、戦争目的の技術開発で「科学者の道徳観・倫理観」が厳しく批判されるようになったのに経済学者にはそれは問われていないように思う。これからは経済学者のこのような態度も批判される必要があるだろう。学者が政治に関与するなら応分の結果責任を負うべきだし、政策を出す側の人間が利害に関係する企業とかかわりを持つことは厳しく規制すべきだと思う。本書の触れている時代のあとにも、国家戦略特区諮問会議で加計学園への学部新設承認や、コロナの持続化給付金事業の受託に電通と組んでサービスデザイン推進協議会なるトンネル会社を作ってみたり相変わらず利権に勤しんでいる。彼の口にする「改革」の最終目的地は、自分の自己実現と金儲けでなければどこにあるのか、もっと議論されるべきだという筆者の意見に同感。
1投稿日: 2021.08.28
powered by ブクログよく理解してないのになぜか悪い意味で気になる存在 だったので、よく知りもしないでそういうイメージを持つのは良くないと思い読んでみた。 実は途中からは少しイメージが変化した(さらには麻生さんに対しても変化した)したのだが権力を持ってから行った改革が結果、彼と彼のお友達をより富ませ、そのかわりに(元々あった)格差はより拡大され、その結果が今日の日本なのだとしたらやはり好きになることはできないな
0投稿日: 2021.08.26
powered by ブクログここに出てくる人物の反論も聞いてみたいところです。 この内容が真実であるならば、竹中平蔵さんは一体何がしたかったのだろうか。どれだけ日本のことを思い考えてくれていたのだろうかと思ってしまいます。
0投稿日: 2021.08.13
powered by ブクログ新自由主義的政策を導入してきた竹中平蔵氏の人物像を詳細に描いた書。公共事業拡大派から一転して緊縮財政派に鞍替えするなど、氏の言説は度々変節しているが、それは日本の国益や学問上の正しさを追求した結果などではなく、単に自らの利益最大化のためだったということが、関係者の数々の証言から明らかになる。同僚と共同で研究した内容を独り占めして発表してしまうなど、自分の利益のために他人を利用してはばからない性格は、若い頃から一貫しているようだ。その面の皮の厚さに驚くばかりである。
1投稿日: 2021.03.19
powered by ブクログ金融界の不良債権処理にあたっての繰延資産税金資産算入を厳格化、監査法人を指図して銀行を破綻させ、公的資金投入を実現、郵政マネーに目をつけたアメリカになびくような郵政民営化の推進、オリックス宮内社長と組んで規制改革利権に手を染めるなど、竹中氏の利にさとい戦略的な手法に切り込む。 猛烈な野心を持ち学者と称しながら政治的、柔軟ではあるが節操がない、効率性のみを追求し、公正、平等性を無視する・・・竹中氏の真の姿が著者によって鋭くえぐり出される。 テレビなどで見る穏和な表情と柔らかいしゃべり方から自分が持っていた竹中像が音をたてて崩れおちた。 「改革派」という聞こえの良さとは裏腹に多くの敵を作っているようで、何よりも自己利益を強く追求するところが汚ならしく感じた。
1投稿日: 2021.03.06
powered by ブクログ日本経済の改革の立役者か、破壊者か。構造改革の旗手、今も政治のブレーンとして活躍する竹中平蔵氏の半生を追った作品。 郵政民営化ほか構造改革の向うに残ったのは格差社会、外資系企業の進出だけだったようにも思える。日本社会の持っていた古き良きものが、経済の効率化、新自由主義の元で失われてしまった。 竹中平蔵氏の果たした役割がどこまでかは本書だけでは分からないが、労働者派遣の見直しと農業改革、氏が顧問を務める人材派遣会社のパソナとの関係など注視していきたい。
3投稿日: 2020.12.21
powered by ブクログ竹中平蔵について、ぼんやりとしたイメージしかなかったけれど、ほぼ時系列でその活動をまとめてみるとようやくわかる。ある種の平成金融史としても読める本。もう少しパソナとの関係も深堀してもらいたかった。自分で調べないと。
1投稿日: 2020.10.30
powered by ブクログある意味すごい人。こんなに貪欲に自己利益を追求しながらも、世直しの装いをしっかりとかぶり続け、人々を欺かせ続けられている人はいるだろうか。著者は次書で宇沢弘文の評伝を書いているが、竹中平蔵はあらゆる意味において真逆の存在。
2投稿日: 2020.10.21
powered by ブクログ引き込まれて読了。『経済ってそういうことだったのか会議』の頃から、いや、本書によればもっと前からなのか、竹中平蔵は日本の中心に座り続けているような気がする。よく言われるように、昭和の頃よりも収入が伸びなくなったことを、格差社会を誘導する政策プロモーター・竹中の暴走のせいにしたい気持ちもある。だが、多少なりとも竹中の言うようなアメリカナイズされた社会制度に近づいていなかったら、今頃はもっとひどい状態になっていたのだろう、とも思う。竹中が非常に政治的な人物というのは、たぶん、そのとおりなのだろう。
3投稿日: 2020.10.07
