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危機と人類(上)
危機と人類(上)
ジャレド・ダイアモンド、小川敏子、川上純子/日経BP
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総合評価

49件)
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    さすがにおもろ本。構造好きにはたまらない。歴史の再現性を感じられて痺れます。中でも印象的だったのはフィンランドの例ですね。 ここまで正確な自己認識で成立している国って聞いたことありませんでした。 プライドがあったり、自信があったり、国内で上手くいくと、国外に対しての認識が歪むことって歴史上よくある気がするのですが、そうなっていないんですね。過去から学んでいるということだと思いますが、希少な立ち回りに思えて、興味が湧きました。

    49
    投稿日: 2025.09.06
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    国が成立し、維持されている事は当たり前ではない。日本にいると麻痺するが、日本でさえ黒船以降に内戦、外戦を重ねたが、幸いにも大きな戦後の分割統治もなく、治安が保たれているために平和に日々を暮らせている。だが、一歩間違えば、国家的危機、個人的危機に見舞われてもおかしくはなかったし、完全に不安が解消された訳ではない。本書はそうした国の危機について。上巻ではフィンランド、日本、チリ、インドネシアを取り上げる。 特に、フィンランドやチリについて本書で学んだ事が多い。普段、あまり気にしない国だからだ。 フィンランドは今でも人口5百万強の国で、当時も到底ドイツやソ連と張り合えるような国力ではなかった。だが、フィンランドは挙国一致でソ連への譲歩を拒絶。スターリンの恫喝に対し、徹底抗戦の構えを示した。小国が50倍以上の人口を抱える国と戦うなど常軌を逸しており、ソ連軍の戦争計画では、ヘルシンキ占領は戦争開始から二週間以内とされていた。1939年、ソ連はフィンランド攻撃を開始。 こうしてはじまったのが冬戦争。ソ連陸軍はありとあらゆる地点から国境を越えて侵攻し、ヘルシンキなどの都市は空爆された。ナチスドイツはフィンランドについた。フィンランドは、ドイツ、イタリア、日本と並ぶ四番目の枢軸国だと思われていた。この冬戦争から継続戦争により、奪われた領土を一部取り返し、独立を維持。ソ連とは中立の友好条約を。 その後、ソ連の顔色を伺うような立ち位置へ。フィンランドの綱渡り外交は、ソ連から国の独立を守り、経済発展を遂げるというふたつの目標を実現した。そのフィンランドが2023年にNATOに正式加盟。ロシアのウクライナ侵攻を受け、歴史が動いた瞬間だ。 チリの話も興味深い。いや、極めて悲惨な話だ。ピノチェトは指導者の座を譲らず、軍事政権のメンバーを威圧。温厚な老紳士、敬虔なカトリック教徒というイメージとは裏腹に、各地に収容所をつくり、新しい拷問方法を考案し、チリの人々を「消して」いった。「ベンダ・セクシー」と呼ばれる収容所では、収容者の家族全員を拘束して、収容者の前で性的虐待を。その方法はあまりにもおぞましく、とても著者も記載しない程。 独裁者が齎す暴力。それに巻き込まれる国民。国対国の蹂躙など、様々な〝危機“の形がある。明日は我が身という意識で危機管理をしなければ、いつ、内外にモンスターが現れるか分からない。そうした警鐘の書でもある。

    80
    投稿日: 2025.05.25
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    日本の歴史が、外国人の視点からどのように書かれているのか気になって、本書を取る。 が、他国の歴史の方が面白く、フィンランドやチリなど、新たな知識を得て興味深かった。

    0
    投稿日: 2023.12.16
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    他国の危機や危機への対応について、これまであまり関心を持ったことがなかったので新鮮だった。 これを教訓として、今後発生する新たな危機への対応や、危機の予防にどのように活かせるのか、下巻に期待する。

    0
    投稿日: 2023.11.17
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     つぎの一〇年において、これらの問題は日本にどのような結果をもたらすだろうか? 現実的にみて、日本が現在直面している問題は、一八五三年の唐突な鎖国政策の廃止や、一九四五年八月の敗戦による打撃に比べれば大したものではない。これらのトラウマから日本がみごとに回復したことを思えば、今日、もう一度日本が時代に合わなくなった価値観を捨て、意味のあるものだけを維持し、新しい時代状況に合わせて新しい価値観を取り入れること、つまり基本的価値観を選択的に再評価することは可能だという希望を私は持っている。 ――本書の出版が2019年。さて10年後、本書で取り上げられた、日本、アメリカ、世界の問題はどうなっているのか。答え合わせが楽しみなような、怖いような。

    1
    投稿日: 2023.09.07
  • 賢者は歴史に学ぶ

    ビスマルクが話したと言われている「愚者は経験に学び, 賢者は歴史に学ぶ」 という格言を再認識させられた本である。特に第二章のフィンランド戦争の記述は、今戦われているウクライナ戦争とあまりにもよく似ているので驚愕してしまった。フィンランドは国土の一割を奪われながらも独立を保てたが、ウクライナはどうなるのだろうか? 第三章の日本の明治維新の話は既知の話ばかりかと思っていたら、「伝統の発明」という思いがけない用語があって感銘を受けた。現代日本の伝統主義者はこのとき「発明」された伝統を信じているのだな。そしてその「伝統」を全ての帝国臣民に広めたのが「公教育」という話にも、恐怖感さえ覚えた。

    0
    投稿日: 2023.07.29
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    フィンランドのマリン首相の訪日、5/12NATO加盟の意向表明、本書を改めて読み直しました。 =ソ連が安全でないと感じている限り、フィンランドの安全はありえない。 =マリン首相の発言にある、ウクライナ侵攻で、ロシアとフィンランドの関係は根本的に変わった。 今後、このままでは何が起こってしまうのか。日本の(これからの予防的外交)の内容を1市民として考えさせられる週末です。

    1
    投稿日: 2022.05.14
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    観光でしか訪れたことのないフィンランド、チリ。ナショナルアイデンティティという視点から国の在り方や国民性が分析されるとは。銃・病原菌・鉄にも劣らず日本の明治の動きも記されており、興味深く読み進められた。

    0
    投稿日: 2021.11.29
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    銃・病原菌・鉄の大陸間の緯度経度で、民族の発展が大きく異なるって考察がとても参考になったので。 上巻はフィンランド、日本、チリ、インドネシアの国家的危機について。 国家的危機を個人的危機に当てはめて考察する本書のテーマは新しいと思う。 上の書籍もそうだけど、この人は個別の問題を一つのフレームワークに落とし込むので、誰でもわかりやすいし比較もしやすい。 まだ下巻を読んでいないので結論は言えないけど、少なくとも日本以外の危機はあまり日本人に知られていない知識で、知れただけでも大きいかな。

    0
    投稿日: 2021.05.06
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    日本について多く言及されているので、興味深い。 特に前半上巻での、明治時代の日本の「選択的変化」についての言及は納得感が高い。 つまり、ペリー来航を機に変えるもの(封建制度)と買えないもの(マインドセットや天皇制)をうまく選び取った稀有な例であると。 あとはフィンランドの対ロシアの弱腰外交を評価しているのも興味深い。 つまり感情的なネトウヨは、なんでアメリカの言いなりになっているのか!弱腰外交クソだ! みたいなことを言うが、感情的にならず国力を考えて、現実的な判断をとるのが大事だと言うこと。

    0
    投稿日: 2021.03.19
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    トランプ元大統領が引き起こしたアメリカ分断の危機。この本を読めばわかるかも。 国内分断が、国家的な危機を招く。 個人的危機から国家の危機を簡単づけてわかりやすい。 統計的な判断ではないが、著者の関係の深い国フィンランド、日本、チリ、インドネシア、ドイツ、オーストラリアの事例と危機後の国民の向き合い方の違いがわかる

    0
    投稿日: 2021.01.27
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    第2章 なぜフィンランドが豊かで、世界トップクラスの科学・教育リテラシーがあり、社会民主主義国家なのか そこには大国ソ連と長い国境を接する地政学的理由があり、類稀な愛国心があり、人口600万という小国ならではの綱渡り外交があった 真田三代みたい! 第3章 鎖国日本に対する西洋からもたらされた危機に江戸明治の日本がどう対応したのか 海外の知の巨人が書く明治維新は新鮮だが、概ね「まあそうだよね」って感じ 明治維新と、太平洋戦争時の日本の指導者の対比は興味深く読んだ。正確な自己評価の違い。

    0
    投稿日: 2021.01.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ジャレドさん、銃病原菌鉄に続いて2冊目。 この本では、いつくかの国に訪れた危機と、その危機にどのようにして対応したのかが描かれている。 まず、はじめに思ったのは、知らないってことは恐ろしいな、と。この本に書いてあることが、真実なのかどうか、私には確認する術がないけど、それでも、歴史について知ることは自分の考え方に幅をもたらしてくれるような気がする。 例えば、フィンランドの話し。ソ連との関係性について、その内情を知らない人から見たら、なんでそこまでソ連の機嫌を伺うような振る舞いをするのか、理解ができないことだろう。でも、それまでのソ連との関係からフィンランドの人々がどのように考えるに至ったのかを知れば、理解できるようになる。 日本についても、明治維新後の日本については、危機への対応が良かったことが書かれているが、第二次世界大戦や昨今の日本には対応の不味い点が指摘されている。特に戦後のドイツとの比較で、戦争時の過ちに対して正確な自己評価が不足している、と指摘する。ドイツは過ちを詫び、自国内でその過ちについて、きちんと教育しているが、日本ではいまだに戦時の教育ではそうした負の部分が正確に伝えられていない。わたし自身、どちらかというとこの作者の指摘通り、日本がそこまでひどいことをしていないのではないか、という幻想を抱くことがあったように思う。 歴史に学ぶことの重要性を考えさせられる本でした。

    4
    投稿日: 2021.01.04
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    現代世界史の特異点に注目し、フラットで詳細な解説を試みる。 日本の章を読むと、学校で習う日本史ではなく、世界史の中で明治以降の日本はこのように見られているという視点があり、実に面白い。 この人の視点、評価軸、叙述は良いね。

    2
    投稿日: 2020.12.21
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    このレビューはネタバレを含みます。

    国家的な危機には、それが外部からであれ内部からで荒れ混乱を引き起こすが、逆にチャンスになるうるのだなと思った。 日本が明治時代の危機を脱した理由に、決断を先延ばしにして国力を高めたというのは、なるほどと思った。しかしながら、その成功体験が今の日本ではデメリットになっているのかもしれない(コロナ禍での決断の遅さなど)。

    0
    投稿日: 2020.12.20
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    たぶん、NewsPicksでビル・ゲイツの愛読書と紹介されていたのが気になって読んだ本。 個人的な危機と国家的な危機の類似点と相違点を比較した上で、7つの国に起こった危機を紹介・分析している。 上巻では、フィンランド、日本、チリ、インドネシアに起こった危機が紹介されているが、フィンランド、チリ、インドネシアの歴史をほぼ全く知らなかったこともあり、すごく興味深かった。 まだ、下巻は読めてませんが、オススメの一冊です。

    2
    投稿日: 2020.12.19
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    いつものような、知識だらだら・キャッチ明快本、というのはさておき、確かに、日本という国の不可思議なパワー、という視点は面白い。

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    投稿日: 2020.10.18
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    2020/10/19読了。著者ジャレド・ダイヤモンドは、個人的危機を冷静に(自分自身の力で対峙乗り越えたとは決して考えていない。非常に謙虚な人だ)捉え乗り越え、学問領域も多岐に渡っている。 そんな視点から、国家的危機を個人的な危機と対比して捉えようと各国(自分との関わり、その言語や生活をも通して)の変化を分析して語り、考察して我々読者に問題提起をしている。その切り口は非常に興味深く参考になるが、一方で人間はそこまで残酷になるのかと歴史を振り返ると身震いも感じた。 しかし、何事につけ過大評価は慎むべきと繰り返し語られていることには、なるほどとうなずけた。 危機とは→その瞬間を境に激変が生じる『転換点』 のことである。

    0
    投稿日: 2020.10.15
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    「国家的危機の帰結にかかわる要因」の12項目を、第1次世界大戦や第2次世界大戦当時のフィンランド、明治維新の日本などに当てはめて、どう対処していったかを検証している。 フィンランドの例を読んでいてとても辛かった。他国の支援がない中で、多大な犠牲を発生させながらも、よく生き残ったと思う。 危機を世論が認識して合意するということが大事であるが、とても難しい。 現在の日本が、まだ直面はしていない国家存亡の危機に際したとき、あるいはその気配を感じたときに、どうなるかは心配でいっぱい。 世論が自分ごととして考え、行動できるか、政府や首長が世論をまとめられるか。少なくともそのとき、対立を煽って人気だけ得ようとしているリーダーがいないようにしておかないといけない。

    1
    投稿日: 2020.09.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

     フィンランドの対ソ戦争、明治日本、チリのクーデターとその後、インドネシアのクーデター未遂後を襲った危機。その時、「国」はどういう選択をしたのか。  重要だったのは、必要だったのは「選択的変化」。 「危機に直面した個人と国家にとって難しいのは、機能良好で変えなくていい部分と、機能不全で変えなければならない部分との分別だ。そのためには、自身の能力と価値観を公正に評価する必要がある。」  明治日本は選択的変化によって国家的危機を解決した。それは「他に類を見ないほど公正な自国評価」、つまり欧米は日本よりも強いという真実と、日本が強くなるためには欧米から学ぶ以外に方法はないという真実を受け入れたということだ。一方、1937年以降の日本は「現実的かつ慎重で公正な自国評価を行うのに必要な知識と経験が欠けていた」。それが壊滅的状況をもたらした。  今の日本も1937年から何も変わっていないような・・・・

    0
    投稿日: 2020.09.19
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    危機に対してどう対処したのか?を上巻では個人、国としてはフィンランド、日本、チリ、インドネシアを挙げて物語としている。 気になったのは、やはり「日本」で、鎖国からペリー来航による危機に当時の日本人たちがどう対処したのか。そして、そこから領土拡大に向けてとった舵取り… 脅威に対して、各国に優秀な人材を送り込まれて学んだリーダーたちだったか、そう言う経験をしなかったリーダーたちだったか。 「公正な自国評価を行うための知識や能力に違い」とな。 外圧に対しての対処は良かったが、たかだか20年くらいで領土拡大の流れになって、第二次世界大戦の敗戦まで… 歴史物は、書いた人の主観が強く出るから読後感は色々有りそうだけど、近代日本史に興味がなかった自分としてはなかなか面白く読めた。

    0
    投稿日: 2020.08.13
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    原題は「Turning Points for Nations in Crisis」。大きな転換点としての「危機」(危ないことによるきっかけ、機会)に対して、近代国家がどのような決断をし対処してきたか、著者が長期に渡って住んだり現地語による直接的な体験を通ずるなりして理解の深い世界の七か国(フィンランド、日本、チリ、インドネシア、ドイツ、オーストラリア、アメリカ)での事例をあげて比較論的に叙述している。 上巻は個人的な危機を叙述した第1章から始まり、国家的危機としては第2章から順にフィンランド、明治日本、チリ、インドネシアの例を挙げる。危機の要因としてもいくつかあり、他国からの圧力(フィンランド、明治日本)、国内政治の激変(チリ、インドネシア)、ゆっくり進行した変化による危機(ドイツ、オーストラリア)などのタイプがある。

    0
    投稿日: 2020.07.26
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    上・下巻合わせて1、2、3、8章のみ読了。日本に対する章では明治維新で西洋の文化をうまく取り入れながら、自国の文化を再構築し、西洋諸国に並ぶ国力を得られた要因を考察している。現代日本の問題では、男女の不平等や、少子高齢化などの多くの日本人が認識している問題に加えて、移民、中国と韓国、自然資源管理など重要だがあまり考えられていない問題にも触れている。個人の人生に対する危機と、国家としての危機を要員に分けて分析し、退避している点が面白かった。折に触れて他の国に対する言及をしている章も読みたい。

    2
    投稿日: 2020.07.26
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    ◎フィンランドは小国であり、ソ連との国境線も長く、ソ連の勝利をできるだけ遅らせたかった。 ◎オランダも小国であり、植民地化したインドネシアに大金注ぎ込む余裕がなかった。なので、学校や灌漑システムをつくるような倫理政策はあまりできず、搾取政策にとどまった。その中で、それまで「オランダ領東インド」と呼ばれる小国の集まりだったインドネシア人に、国会意識が芽生えてきた。また、特徴的なグループが形成されてきた。ジャワ人は文化的に優れていると考えたりなど。しかしジャワ語には問題点があり、身分の高い人に話しかけるときと低い人に話しかけるときでは言葉遣いが変わってしまうのだ。だからマレー語を変化させたのが現在のインドネシアである ◎インドネシア軍は大量虐殺をおこなった上で東ティモールを無理やり併合した。しかしハビビ大統領政権で独立可否の住民投票を行い、独立できた。

    0
    投稿日: 2020.07.23
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    フィンランド、チリ、インドネシア、それぞれの国のターニングポイント。世界の近現代史を学ぶと、今が見えてくる、勉強不足だなあとじっくりゆっくり読みました

    0
    投稿日: 2020.06.15
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    危機に直面した個人と国家にとって難しいのは、機能良好で飼えなくてもいい部分と、機能不全で変えなければならない部分の分別だ。大半の国は、古いアイデンティティと新しいアイデンティティを抱えた人々でモザイク状を成している。 個人的危機の要因のいくつかは、そのまま国家的危機にも応用でき。いくつかの類似点・相違点をもとにした比較は役に立つ。 【個人的危機の帰結にかかわる要因】 1 危機に陥っていると認めること 2 行動を起こすのは自分であるという責任の受容 3 囲いを作る(問題を特定し、選択的変化を取ること) 4 周囲からの支援 5 手本になる人々 6 自我の強さ 7 公正な自己評価 8 過去の危機体験(経験の豊富さ) 9 忍耐力 10 性格の柔軟性 11 個人の基本的価値観(何なら譲れる、変えられる?) 12 個人的な制約が無い(身の振り方を変えやすい) 【国家的危機の帰結に関わる要因】 1 時刻が危機にあるという世論の合意 2 行動を起こすことへの国家としての責任の受容 3 囲いを作り、国家問題を明確にする 4 他の国々からの物質的支援と経済的支援 5 他の国々を問題解決の手本にする 6 ナショナル・アイデンティティ 7 公正な自国評価 8 国家的危機を経験した歴史 9 国家的失敗への対処 10 状況に応じた国としての柔軟性 11 国家の基本的価値観 12 地政学的制約が無いこと 以上のように、類似した点が多くあれば、メタファーになったり、個人的危機とは全く異なった問題もある。 【フィンランド】 ロシア帝国による統治下のもと圧政を受けていたフィンランドは、その後ロシア革命でソ連が誕生した際に独立するも、フィンランド内戦が勃発した。 その後、ナチスとソ連がポーランドに侵攻し国境線を拡げるにつれ、ソ連がドイツへの対処のために、フィンランドに軍事的要求を出す。これをフィンランドが拒否。それは、フィンランド併合こそがスターリンの真の目標と考えており、また、スターリンの恫喝ははったりだと考えていたから。 ここから、1939年に冬戦争が勃発。フィンランド軍は決死の覚悟とホームでの戦争で、結構粘る。ソ連も予想外の損耗と独ソ戦への準備のため、戦い続けるのは望ましくないと判断、和平条約を結ぶ。そこでカレリア州を含む多くの土地を割譲されてしまった。 継続戦争 1941年、独ソ戦が勃発。周りに頼る国がいないフィンランドはドイツと「共戦」関係になる。ともにソ連と戦うが、目的はカレリア州の奪還であり、アグレッシブにソ連に進軍せず、様子見に徹していた。その後落ち着くとモスクワ休戦協定を結び、戦争が終わった。 この2つの戦争とも、西側諸国の支援は一切得られなかった。 戦争終結後、フィンランドは新たな戦後政策に取り組む。それは、自国を弱小国と認め、ソ連と対話を重ねて信頼を得て、民主主義的権利を部分的に制約することだ。小国にとって、生き残りのためには手段を選んでいられない。地政学的観点から、ソ連に従うことを選んだ。 また、この時ソ連を立てながら西側諸国とも友好的に接する綱渡り外交を展開。これが功を奏し、ソ連から国を守ると同時に経済発展を遂げるという目標を達成した。 敗戦後、地政学的な制約から取った(取らざるを得なかった)様々な問題に対する政治的判断は、かなりうまく舵取りされたのだ。 【日本】 ペリー来航からの開国、不平等条約の押し付けという危機にさらされた江戸幕府は、西洋列強への段階的な譲歩により時間稼ぎをしつつ、その間に軍事力と国力の強化を行っていく。その間国内では攘夷派による様々な内乱が起きるが、西洋列強に勝つには到底遠い。 明治維新により幕府が廃止された後、日本は軍事力だけでなく、西洋の強さを支える社会・政治制度も取り入れていく。ほとんどが西洋を手本としたものでありながら、日本人の考え方と折り合いがつくようにし、日本人の間に、イデオロギーと一体感を醸成し天皇を敬愛するような制度が作られていった。日本の伝統的要素を残しながら、西洋化されていった。これは日本を文明国として諸外国に認識させ、不平等条約を撤廃させることを目指したものであった。 これほどまでに自国判断が正確だった日本が、太平洋戦争に突入した理由は、1930年代においては、欧米の力を知らぬ若い青年将校--自国評価に必要な知識と経験が欠けていた--が力を握っていたからだ。 【チリ】 1970年にマルクス主義者であるアジェンデが大統領になってから、外国資本の大手企業や鉱山会社を次々国有化、カストロとの接近、計画経済への段階的な移行など、過激な政策を実行、経済悪化と国民からの反発を招く。その後クーデターにより軍事政権が樹立し、ピノチェトが指導者になる。ピノチェトは独裁により、対立政権の政治家や活動家を次々と虐殺していく。アジェンデ以上に不可解な人物であった。 経済政策では、国有化した企業を民営化、輸入関税の引き下げなど、国際競争に打って出、高い経済成長を実現した。(格差の放置など、負の面もいくつかあったが) その後ピノチェトに代わって新左派が政権を握り、民政に移行したが、新左派は歩み寄りを示し、ピノチェト側を弾圧することはなかった。ピノチェトは極悪非道な残虐行為を行ったが、同時にアジェンデ政権の経済問題を取り去った功労者であり、今でも国民の中で支持・不支持が割れている。 【インドネシア】 インドネシアは700の島々からなる国であり、古くはその島ごとに国が置かれていた。その島々の住人に国家意識が芽生え始めてきたのは、1910年になってからだ。 幅を利かせていた領主国のオランダに対して反発する動きはWW2まで続き、WW2で日本が占領、独立を約束する(本当は天然資源目当て)が日本は敗北、日本が敗北宣言をした2日後に独立宣言するも、再びオランダが支配権を狙って介入してくる。 初代大統領スカルノはオランダからの独立を企画するも、インドネシアに政治主導の経験がないことから難航する。 1960年代、インドネシアにはスカルノ、軍、PKIの3勢力があった。PKI主導のもと起こしたクーデターが失敗に終わり、軍はその報復としてPKIの関連のある組織や一族を虐殺する。50万人もの犠牲者が出たといわれている。 スカルノの後はスハルトが独裁政権を握り、軍から一般市民にいたるまで汚職が蔓延、30年間大統領の座を握り続けたが、アジア金融危機の影響で失脚した。

    1
    投稿日: 2020.06.09
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    ペリー来航の日本、ソ連に侵攻されたフィンランド…。国家的危機に直面した各国国民は、いかにして変革を選び取り、繁栄への道を進んだのか。世界7か国の事例から、次の劇的変化を乗り越えるための叡智を説き明かす。 フィンランド,日本,チリ,インドネシア。 より具体的で読みやすかった。

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    投稿日: 2020.06.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ものすごくおもしろい。まず「囲いをつくる」というのがとても参考になる。心理学か何かの基礎だとか書かれてた記憶だけど,もっと人生の早いうちから知っておきたかった(けど,あまり人生経験がない中だと,その知識の重要さを認識できず素通りしていたかも)。 本論の方もとても面白い。死ぬまでに世界史を勉強せなあかんなと改めて思う。

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    投稿日: 2020.06.01
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    危機と人類(上・下) ジャレド・ダイアモンド著 日米など7国の危機克服術 2019/12/21付 日本経済新聞 朝刊 著者ダイアモンドはいま、世界で最も高名な著述家の一人だろう。『銃・病原菌・鉄』(2000年に邦訳)では、人類史を自然史の知見と結びつけ、地球的視野で環境と歴史を結びつける新たな人類史の地平を開き、その後の人類史ブームのきっかけを作った。続く『文明崩壊』(05年に邦訳)では環境破壊への適応力が文明の岐路をなすと主張し、これも大いに注目を集めた。 本書が扱うのは、200年ほどの7カ国なので、上述2著ほど壮大ではないが、それでも今日の社会科学の基準で言えば十分に幅広い。本書の目的は、国家がいかに危機に対応し、克服しうるかについて、歴史的比較分析によって探求することである。具体的には、日本を含めた6カ国の事例について1章ずつ記述され、著者の母国アメリカに関する記述もある。 日本の読者には明治維新が国際環境に起因する危機への成功した対応事例として扱われていることに興味を引かれるだろう。ただ、記述内容は日本人にとってはそれほど斬新ではないかもしれない。むしろ著者が一定期間居住した日米以外の5つの国に関する叙述に著者らしい視野の幅広さを感じることができる。ソ連からの圧力を生き抜いたフィンランド、冷戦下の国内危機から生じたクーデタを経験したチリとインドネシア、戦後西ドイツの戦争認識の変容、19世紀以来の白豪主義を放棄していったオーストラリアに関する各章では、著者の回想と歴史記述が組み合わされた記述が興味深い。 他方、著者が依拠する、個人の精神的危機の克服に関する心理学的研究を、国家の危機克服にあてはめる手法には疑問の余地があるように思う。著者自身も暫定的な分析と断っているのでさほどこだわる必要はないだろう。 むしろ印象的なのは第3部に示された著者の危機意識である。日米が直面する高齢化や政治的分裂といった危機に加えて、人類全体の危機として核、気候変動、エネルギー、格差が指摘される。この認識が本書執筆の主たる動機だろう。本書は、かつて文明史の観点から人類の危機を指摘したトインビーのひそみにならった、ダイアモンドの警世の書と見なすことができよう。 《評》京都大学教授 中西 寛 原題=UPHEAVAL:Turning Points for Nations in Crisis (小川敏子・川上純子訳、日本経済新聞出版社・各1800円) ▼著者は37年米ボストン生まれ。カリフォルニア大ロサンゼルス校教授。

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    投稿日: 2020.05.28
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    個人の人生には、自己分析を行い、自分の課題を認識して、それの改善に取り組むことが当然ある。 それを国家に当てはめ、過去に国が直面した課題、それに対してどう対応し、どんな現場が生まれているのかを体系的に説明いた本。 個人に当てはめると、自分の課題が、国家の危機に当たる。 どこまでも現実路線を貫いた国の決断や、逆に国の失政についても学べる。 上はフィンランド、日本、チリ、インドネシアについて書かれている。 世界史を専攻していなかったので、全然知らない世界の歴史についても自然と学ぶことができた。 ジャレドダイヤモンドさんの博学にはビビった。 というか取材と下調べが深い。 的確に自己を捉え、現実路線で冷静にどう進むべきかをアレンジメントするか。個人、組織双方を動かす際に勉強になる話を国家レベルの事例から学べる。

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    投稿日: 2020.05.11
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    銃のやつの前にこちらを読んでしまった 維新のくだりしっくりきた。日本の知人に教えてもらった旨の記述がありますが、その人が素晴らしいのだろうな サピエンス全史のような一本の筋は見えにくく、単に史実を羅列しただけに見えたので1点減点

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    投稿日: 2020.05.02
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    国家と危機と個人の危機の共通している部分とそうでない部分を見ていく。上巻はフィンランド、日本、チリ、インドネシア。12の分類により地理的な条件や指導者、ナショナル・アイデンティティの深さなどについて細かく比較していく。  『銃・病原菌・鉄」も読んだが、ジャレド・ダイアモンド氏はカテゴライズするのが好きなんだなぁと感じた。

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    投稿日: 2020.05.01
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    フィンランド、日本、ドイツ、インドネシア、チリ、オーストラリア、アメリカの7カ国の近代史における変化と対応を述べて、今直面しているグローバルな危機にどう対処できるかを問う。 危機の認識、責任を受け入れる、現実的判断、他者から学ぶ、選択的変化の推進、強固なナショナルアイデンティティ、公正な自己評価、失敗の許容、地政学的条件が危機への変化には重要である。 フィンランドは、ソビエトとの対応。圧倒的大国に隣接していることに対して、他国からの援助も期待できず、何が重要なことでそのためには妥協的態度も取りうることを多数の神て犠牲を出して学んだ。 日本は、ペリー来航から他国に学び、ナショナルアイデンティティに沿った形で変化していった。 チリは、恵まれた国土で民主主義国家だったが、短期間で軍事独裁に転化してしまい、未だにその時代の処理をしきれないでいる。インドネシアも同様。両国ともナショナルアイデンティティには欠けていた。

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    投稿日: 2020.03.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「フィンランド外交に託された第一の課題は、わが国の存立と、わが国の地政学的環境を支配する利害関係との折り合いをうまくつけることである……(フィンランドの対外政策は)予防外交だ。予防外交でやるべきことは、危険が間近にくる前に察知し、危険を回避する対策を講じることである……望ましいのは、対策が講じられたこと自体が察知されない方法だ……とくに、自国の姿勢が趨勢を変えられるなどという幻想を抱いていない小国にとっては、軍事分野や政治分野での事態の展開を左右する要素を、早めに正確に把握することが非常に重要だ……国家は他国をあてにしてはいけない。戦争という高い代償を払って、フィンランドはそれを学んだ」(pp.114-115)  フィンランド人は人生の不確実性を知っている。そのため、今でも男性には兵役義務があり、女性は志願者が兵役に就ける。兵役に就くと、最長で一年間の厳しい軍事訓練がつづく。実戦で使える兵士が求められているからだ。(p.123)  時間稼ぎが、1845年以降の江戸幕府の基本戦略だった。これは、西洋列強を(できるだけ少ない譲歩で)満足させつつ、西洋の知識、設備、技術を手に入れ、軍事力と軍事力以外の国力を増強し、できるだけ早い時期に西洋列強に抵抗できる能力を身に着けるためだ。(p.145)  明治日本の指導者と、1930年代、40年代の日本の指導者では、公正な自国評価をおこなうための知識や能力に違いがあったのである。明治時代には、軍幹部を含む多くの日本の指導者が海外に派遣された経験があった。そうして中国やアメリカ、ドイツ、ロシアの現状や陸海軍の実力を詳細に直接知ることができ、日本と各国の国力差を公正に評価できた。彼らは成功を確信した場合にだけ、攻撃をしかけた。対照的だったのは1930年代に中国大陸に展開していた日本陸軍だ。大陸の将校たちは若く急進的だったし、海外経験もなかった(ナチスドイツを除いて)。そして、東京の大本営にいた経験ある指導者層の命令を聞き入れなかった。若き急進派将校たちは、アメリカの工業力や軍事力を直接見聞きしたことがなかったし、日本の潜在的敵国についても無知だった。アメリカ人の国民心理も理解できず、アメリカというのは厭戦思想の蔓延する商人の国だと考えていた。(p.168)

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    投稿日: 2020.03.09
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    ベストセラー「銃・病原菌・鉄」の作家として知られるジャレド・ダイアモンドが、「個人的危機」と「国家的危機」の共通点と相違点を示しながら、危機全般とその危機に対する対応策について考察を行っているのが本書。 本書の構成が、①個人的危機、②国家的危機、③世界全体の危機、というように徐々にスケールアップしつつ議論を展開してくれているので、自然と自分の視座を高くしていくことができ、大いに知的好奇心を刺激してくれる。 もちろん、他著書と同じくジャレド・ダイアモンド氏の圧倒的な教養・知識は満載だ。 様々な読み方ができる本書だが、私はまず自己啓発書として読んだ。 その場合、単純に自己だけに焦点を当てた啓発書に比べ、視点が広い。

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    投稿日: 2020.03.07
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    国家の危機に際し、その国あるいは国民はどう対処したのかというテーマで事例を検討する。それは国家的危機の歴史であると同時に、ここで取り上げられた個々の国の重要な歴史を垣間見ることにもなる。 上巻では、20世紀前半のフィンランド、明治維新前後の日本、ピノチェト時代のチリ、スカルノとスハルトが統治するインドネシアが取り上げられている。日本人として、明治維新の歴史が一番よく分かるのはもちろんだが、その他の事例も大変興味深い。それは、ピノチェトやスカルノといった身近な歴史であるからと同時に、やはり、国家的危機への対応というその国の歴史のある種のハイライトだからでもあろう。 下巻も楽しみ。

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    投稿日: 2020.02.26
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    「遠くない過去の人類史から何を学び、どう将来の危機に備えるか?」 表紙の折り返しに書かれているように、国家的危機に直面した国民がどのようにそれを乗り越えていったかについて、分かりやすく書かれている。  賛否両論あるようですが、私にはとても面白く、興味深く読めた一冊でした。特にフィリピンと日本(明治維新の頃)は面白かった。

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    投稿日: 2020.02.24
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    個人的危機の具体例として、ご自分の「ケンブリッジ大学で学究を続けるかべきかどうか」という迷いをあげているが、まあ、なんというか衣食足りての贅沢な悩みってやつじゃないの?と思ってしまうのは、下々の妬みか。ともあれ、なんとなくしか知らなかったチリやインドネシアの状況をわかりやすく説明してもらえた。さて、下へ。

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    投稿日: 2020.02.20
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    ジャレド・ダイアモンドといえば20代のころ、読んだ「銃・病原菌・鉄」は衝撃だった(20年前!)いまだったら「サピエンス全史」に相当する歴史本。各地の歴史を地政学から読み解くことで説明したことが斬新だった。本書は日米独豪、フィンランド、チリ、インドネシアの6カ国について、独自の視点で危機対応を解説しているが、やはり地政学はポイント。アメリカはなぜ大国でいられるのか。ドイツはなぜ2回の対戦を引き起こしたのか。陸地で国境を接する国の数が大きい。この6カ国の選抜は作者の個人的な知識と経験が豊富である点から選ばれていて、比較としては不十分なことを最後に述べているが、特色が十分にでる選抜だったと感じられる。フィンランドの冬戦争と対ソ連政策は小国にとっては特に学ぶべきことが多い。 上巻P167で太平洋戦争末期に「米英艦隊が日本の本土沿岸部に艦砲射撃を浴びせていた。」とあり違和感を感じた。「本土決戦」という言葉から、私の認識では沖縄は本土から除外していた。しかし本土という言葉は明確な基準がなく、北海道、沖縄も含める場合もあることを知った。学び反省することは未だに多々ある。

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    投稿日: 2020.02.17
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    2020年13冊目 登場する国がどのようにして危機に陥り、そこから、どのようにして再生を果たしたか。 上巻では、フィンランド、日本、チリ、インドネシアを取り上げる。 フィンランドは福祉国家で国民の教育レベルも高く、平和な印象があるイメージでしたが、地政学的にソ連と国境を挟むため、その存在を強く意識しないといけなかったと言うのは、はじめて知りました。 インドネシアは東ティモールの独立など、血なまぐさい印象を持っていたけど、オランダによる植民地支配の時代や、日本の一時的な統治の時代など、そのような状況に陥る歴史を見て、戦争の無益さを考えてしまいました。

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    投稿日: 2020.02.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    国家的危機を史料研究ではなく、著者本人の個人的危機を理解の手助けとして…って(汗)「個人的に良く知っている国」が7つもある人なんて、そもそもかなり少数派ですから(当然、対象となる時代は著者の生きてる現代のみ)。 また、計量的手法を用いるのに7つの事例は少な過ぎるとの判断により、叙述的記述で頑張っている。にしても、危機の帰結に影響する要因が12個とは多すぎ。 第2章、フィンランド。 サンクトペテルブルク~ヘルシンキの距離が近いのにびっくり!388.5 km。東京~神戸くらい?地政学的にとても厳しい…。 第3章、日本。 明治維新が1868年で、日清戦争が1894年。開国から四半世紀で侵略戦争って、どんだけ無謀…。 第4章、チリ。 第5章、インドネシア。

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    投稿日: 2020.01.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    フィンランドやチリ、インドネシアの多くの国民の血が流され、現在の国の姿になっていることをはじめて認識できた。日本の明治維新についても大変わかりやすく記述されている。 自分の覚書として「帰結を左右する要因」を記載させていただく。 個人的危機の帰結にかかわる要因 1 危機に陥っていると認めること 2 行動を起こすのは自分であるとい責任の受容 3 囲いをつくり、解決が必要な個人的問題を明確にすること 4 他の人やグループからの、物心両面での支援 5 他の人々を問題解決の手本にすること 6 自我の強さ 7 公正な自己評価 8 過去の危機体験 9 忍耐力 10 性格の柔軟性 11 個人の基本的価値観 12 個人的な制約がないこと 国家的危機の帰結にかかわる要因 1 自国が危機あるという世論の合意 2 行動を起こすことへの国家としての責任の受容 3 囲いをつくり、解決が必要な国家的問題を明確にすること 4 他の国々からの物質的支援と経済的支援 5 他の国々を問題解決の手本とすること 6 ナショナル・アイデンティティ 7 公正は自国評価 8 国家的危機を経験した歴史 9 国家的失敗への対処 10 状況に応じた国としての柔軟性 11 国家の基本的価値観 12 地政学的制約がないこと

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    投稿日: 2020.01.05
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    ダイアモンド博士の危機をどう切り抜けていったか国家の事例を基にわかりやすく解説していく書であった。チリ、インドネシアは軍事的に国が危機的状況であったが指導者のおかげで立ち直った。個人的危機に対しても公正な自己評価と柔軟性でもって対応する必要性が分かった。過去の理解、自分に何ができて何が出来ないのかを公正に自己評価する、工業化がフィンランドの経済成長等 身の処し方をよく教えられたと思う。

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    投稿日: 2020.01.03
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    地理学者であり、進化生物学者のダイアモンド氏が近代史に焦点を当て、近未来の人類への示唆を汲み取ろうとした著作。上巻は紹介する7つの国家のうち、フィンランド 、日本、チリ、インドネシアを紹介。

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    投稿日: 2019.12.31
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    このレビューはネタバレを含みます。

    危機に瀕した国家の採った行動の数々。特にフィンランドについてよく知らなかったので、非常に参考になった。

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    投稿日: 2019.12.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    相変わらずこの人の知識の幅は何というか超人的。今回は 上巻はフィンランド、日本(幕末~明治維新)、チリ、インドネシアの歴史上の危機をとりあげ、それにどう対応してきたかを個人に生じる危機の対応(12の要因で説明される)の場合と対比する形で論じている。それにしても、日本の幕末~明治維新っていうのはやっぱり世界史的にも特異な例で、危機に極めて上手く対応できた例なんだなと改めて感動したりもした。 引用すると「明治日本は、選択的変化において重要だと私が考える要件をいくつも満たしている。危機の存在を認め、危機を解決する責任を負い、他国や他の人たちを改善の手本として使い、公正な自国評価を下し、強みを保持し、辛抱強く対処し、強いナショナル・アイデンティティを持ち、基本的価値観については譲らない、といった点である。」このほか、 ・明治政府の指導者がめざしていたのは、断じて日本の「西洋化」ではなかったし、日本をヨーロッパから遠く離れた場所にあるヨーロッパ的社会にすることではなかった。 ・明治政府の目標は、多くの西洋的要素を採り入れつつ、日本の状況に合うように調整し、日本の伝統的要素を多く残すことだった。 ・明治の指導者たちは、自分たちが調整を加えつつ採り入れた西洋式の軍隊や教育などの諸制度が生まれた西洋社会について、驚くほど明確かつ包括的に理解したうえで、西洋化を進めていた。 とにかく、危機対応のキーワードは「選択的」ということらしい。つまり「個人も国家も、かつてのアイデンティティを完全に捨て去り、まったく違うものへ変化するのは不可能であり、望ましいわけでもない。危機に直面した個人と国家にとって難しいのは、機能良好で変えなくてよい部分と、機能不全で変えなければならない部分との分別だ。そのためには、自身の能力と価値観を公正に評価する必要がある。」ということ。きわめて説得的であり、やはり個人にも通じるものがあるような気がする。

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    投稿日: 2019.12.22
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    心理療法の分野で個人が精神的危機を乗り越えるために有効とされる12の要因を、かつて国家的危機に瀕した国々の歴史に当てはめて分析し、そこから今日の世界的課題の解決に向けた示唆を得ようとする著者の研究をまとめた一冊。 著者はフィンランドやオーストラリア、日本など、自身との関わりが深い国々に関して得られた様々な知見をもとに、他国からの侵略や敗戦など、過去に国家的危機に直面した国々が復活した背景には、まず自国が危機にあることを認め、その克服に向けた責任を受容するとともに、自国の現状を公正に評価した上で、守るべきものと変えるべきものを明確にして対処する「選択的変化」という必要不可欠なプロセスがあり、さらには国としての柔軟性と忍耐、他国との関係性も重要になる場合があるという。 著者自らが認めているように、本書の分析対象は著者がよく知る国に限られ、叙述的(定性的)な分析が中心となっているため、科学的根拠を基にした史実としての正確性については批判する向きもあるだろう。特に日本の戦争責任に関する記述は賛否両論があるだろうし、それは他国の分析についても同様かもしれない。ただ歴史の解釈は常に動くものであり、本書の日本に対する見解も、海外ではこのように受け止められることもあるのだという事実を理解する必要がある。その上で、著者が提起する核の脅威や気候変動などの世界的危機に対しても「選択的変化」を実現できるのか、そのために日本ができることは何かを考えるきっかけにしたい。

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    投稿日: 2019.12.08
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    『銃・病原菌・鉄』や『文明崩壊』、『昨日までの世界』など、広範な知識を元に人類の歴史をグローバルな観点で分析をしてきたジャレド・ダイヤモンドの最新作は、近現代史における国家的危機を分析したものであった。 原題は、”UPHEAVAL: Turning Points for Nations in Chrisis” UPHEAVALという耳慣れない単語は、激動・動乱といった訳語が当てられる。激動や動乱は、一般的には非常に個別の事象で、その場そのときに固有のものである。本書では、国家的危機の事例がいくつか並べられているが、そういった意味で「危機と人類」と大ぐくりにされるのはいかがなものか感がある。地政学的な違いや歴史の違いから危機に対しての行動や結果も違っていたというのがこの本の主旨であるので、どこか人類一般に適用されるような一般論を語っているわけではない。 本書で取り上げられるのは、まずはいくつかの過去の国家的危機 - 第二次世界大戦までのフィンランドの対ソ戦、日本のペリー来航から明治維新、1970年代から始まるチリの軍事独裁政権、1965年のインドネシアの軍事クーデーター、ドイツの第二次大戦後から東西統一に至る変遷、1972年のオーストラリアの白豪主義廃止を含む急激な変化、が取り上げられる。そして、現在すでに進みつつある将来の危機として、日本の女性の役割/少子化/人口減少/高齢化という社会的問題、アメリカの政治的妥協の衰退、気候問題などグローバルな危機、である。 著者も断っている通りなのだが、この本で個別に取り上げられた国のリストは、著者自身が何らかの関係があり、自身の経験としてもよくしており、友人知人の話も直接聞くことができるという理由で取り上げたものであり、決して網羅的なリストでもない。少し考えればわかる通り、優先的に取り上げられるべき上位の国ですらないかもしれない。 世界には興味深く取り上げられるべき「危機」と「変化」を経験した国には枚挙にいとまがない。 例えば、隣国の韓国が二十世紀に経験したこと、そして今も分断された国としてあることは、どの国にも負けず国家が向き合う危機として記録され、分析され、記憶されるべきものだろう。地政学的な要因をこれほど強く受けて翻弄された国もそう多くない。チリで取り上げられた独裁者による悲劇では、その悲惨と与えた影響を鑑みるとカンボジアを外すわけにはいかない。フィンランドと同じように大国に翻弄された国でそこからの復活した事例としてはベトナムが外れることはないだろう。悲惨な結果を招いた民族対立とそこからの復興についてルワンダを始め、アフリカ諸国にも無視すべきではない多くの事例が存在する。国家としてのアイデンティティの観点からも南アフリカは、オーストラリア以上に興味深い事例である。そして、もちろん、かつてソビエト連邦として知られたロシアの歴史と連邦としての崩壊についても分析すべき価値がある。 もちろん著者はこの本で取り上げた国が網羅的でないことは百も承知である。著者はこの研究をさらに進めて、現代的な計量的手法を取り入れたいと考えていたが、そこには至らず、「本書は、叙述的な探索的研究」であり、「本書がきっかけとなり、今後計量的な検証がおこなわれることを希望する」としている。ここで取り上げた7つの国の事例だけでは、統計的に有意な結論を導き出すには少なすぎるのである。 一方、危機に際してどのように対処するのかを分析するための下地として、心理療法において使われる個人的危機の解決の帰結を左右する12の要因を国家的危機にも当てはめる。その12の要因とは、①自国が危機にあるという世論の合意、②行動を起こすことへの国家としての責任の受容、③囲いをつくり、解決が必要な国家的問題を明確にすること、④他の国々からの物質的支援と経済的支援、⑤他の国々を問題解決の手本にすること、⑥ナショナルアイデンティティ、⑦公正な自国評価、⑧国家的危機を経験した歴史、⑨国家的失敗への対処、⑩状況に応じた国としての柔軟性、⑪国家の基本的価値観、⑫地政学的制約がないこと、である。これらの要因によって国家が危機に対応する行動とその帰結を理解できるのではというのが、本書で取り組んでいることのひとつである。確かに個人と国家において共通するところもあるが、そこから新しい定性的な結論を導くには至っていないという印象だ。 なお興味深いのは、取り上げられた数少ないリストの中で日本に関するテーマが二度語られていることだ。一つ目は明治維新、そして二つ目は近年の少子高齢化社会の危機だ。著者の妻の親族に日本人と結婚した人がいるということもあって、日本に多くのページを割かれることになったのだが、それ以上に近現代史において日本という国が強く興味を惹く素材でもあるということだろう。日本と欧米社会の相違点として、著者は「日本人の親戚や学生、友人、同僚たりは口をそろえて」と言いながら次のように列挙する -「謝罪する(あるいはしない)こと、日本語の読み書きが難しいこと、黙って苦難を耐え忍ぶこと、得意先を丁重に接待すること、徹底した礼儀正しさ、外国人に対する感情、あからさまな女性蔑視的ふるまい、患者と医師のコミュニケーションのしかた、字の美しさが自慢になること、希薄な個人主義、義理の両親との関係、人と違うと周囲から浮いてしまうこと、女性の地位、感情について率直に話すこと、私心のなさ、異議の唱え方」。同意するところ、そうでないところはあるにせよ、著者のような知識人の間においても、日本人に対してこういった視点(ステレオタイプとも言えるかもしれない)がグローバルに共有されているということについては、日本人として十分に意識的である必要があるかもしれない。 巷間言われるように、明治維新については、隣国の中国がいいように列強に扱われているのと対比して、その指導者層の対応について著者も非常に高く評価している。その要因として、明治政府が海外派遣などを通して自国を公正に評価して、冷静に判断を行っていたことを挙げている。それに対して、第二次大戦前の指導部、特に陸軍における慎重で公正な評価に必要な知識と経験の欠如が、彼らをして誤った行動に駆り立てた原因だとしている。 また、明治国家の特徴として、国家神道という伝統に接ぎ木をしたような仕組みを浸透させることで強固なアイデンティティを形作っていたことを挙げている。それがどれほど強力であったかは、第二次大戦の降伏条件に国体の護持をあの時点でさえも必須の要件としたことや、「神風」や「回天」などの特攻兵器に多くの若い兵士が志願したことからもわかる。 チリやインドネシアの近現代史は、この本がなければもしかしたら一生触れることはなかったかもしれない。多数の島々からなるインドネシアがひとつの国としてアイデンティティを保っていることはよく考えると不思議なことかもしれないが、そのためには国語が大きな役割を果たしたということや、植民地からの独立やクーデーターなどについては知ることがあまりに少ない。 また、ドイツについては、冷戦終了後間もない1993年に個人旅行先でベルリンを訪れ、壁を挟んで東西の落差を見て、その後アウシュビッツ収容所後にも足を運んだが、そこに至る歴史を知っていたかと言われるとまったく心許ない。本書を読むと何よりもナチスとの向き合いが国家レベルとしても、とても重要であったことがわかる。著者はドイツと近隣諸国の関係と日本と中国・韓国との関係を何度か引き合いに出す。もちろん、ドイツの戦後のリーダーのふるまい含めて、ドイツが良い結果をもたらしている一方で日本はその事実に向き合うことに失敗しているという枠組みで語るのである。それに対して反対の意見を持っているわけではないが、軽々に語るべきことでもないようにも思う。ただし、ジャレド・ダイヤモンドのような人が冷静な観点でそのように語っていることに対しては謙虚に認識をするべきだと思われる。 そして、現代の日本社会の課題について滔々と語る第八章は、耳が痛いところが多いのだが、著者に言われなくてもという思いも強い。日本は外圧により動くことが多い(これもまた課題のひとつかもしれない)ので、こういうことを言ってもらった方がよい方向に動くのかもしれないとも思う。女性の役割、少子化、人口減少、高齢化の他にも国債発行残高や移民の少なさも問題として挙げられる。一方で、人口減少は必要となる資源が少なくなることを意味することから大いなる強みになると考えていると続く。本当か、と思うとその次に高齢化はもっと大きな問題と続くので、それはそうだ。女性の地位については、自分が生きている時代の中でもそれでも大きく変わったと思うのだが、まだまだ全く不足だと説く。さらには韓国や中国との間でいまだに第二次大戦のしこりが残っているのは結果として失政としか言いようがない。 著者は彼にとって身近なアメリカの格差問題、トランプの問題に触れ、さらに核問題、気候変動、資源問題、格差拡大、イスラム原理主義、などを挙げる。ちょっと風呂敷を広げすぎた感があり、結論が出ない問題をこねくっているような印象も受けた。 自らが住む日本のことにも数多く言及されていたこともあり、眼から鱗が落ちた、といった部分は少なかったが、なかなか楽しめた。著者は、ここで採用したような国家危機の分析を広くまた定量的にも行ってほしいと考えているとのこと。この内容であれば、誰かと共著で『危機と人類 II』というものが出せそうである。御年82歳、誰か後継となるものをそこで指名してもよいのではなかろうか。

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    投稿日: 2019.12.01
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    ソロー 承認欲求ではなく人生で本当に追求したいことを明確にすべき ・現代の危機(核兵器、気候変動、エネルギー源、格差) ・歴史から学ぶ

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    投稿日: 2019.11.21