
総合評価
(24件)| 3 | ||
| 12 | ||
| 6 | ||
| 0 | ||
| 0 |
powered by ブクログ相変わらず、大江健三郎さんの短編集は、どの話もダークな雰囲気の中に皮肉や人間の本質が描かれていてとても面白い。これは他の短編集に比べるとちょっと難解だったかな。 しかし、「敬老週間」はとても皮肉が込められたラストで笑っちゃうし、「スパルタ教育」「犬の世界」などは自分は大好物。「空の怪物アグイー」は長編「個人的な体験」の逆のモチーフでとても興味深かった。 大江作品は亡くなってから読み始めたけど、こうなったら全作品読破するしかないな。
18投稿日: 2023.08.14
powered by ブクログどれも安定して面白い貴重な短編集。 オーケンが文字で表したい事がしっかり明示され、最初期と比べるとライトさも感じる。彼の入門書として最適解かもしれない。
2投稿日: 2022.09.15
powered by ブクログ恐怖からの逃避と自己欺瞞、ここから個人的な体験に繋がるのか、すごい 街の愚連隊だった時分もかれはいかにも卑小な快楽にストイックに充足して生きていたにちがいないという気がするの。
1投稿日: 2023.04.27
powered by ブクログ大江健三郎、著。精神病院から逃げ出した患者を探して町をさまよう「不満足」、新興宗教団体から脅される記者の心理的葛藤「スパルタ教育」、寝たきりの老人に現代社会は明るいと嘘をつくアルバイト「敬老週間」、原爆被害者の孤児を引き取った男の真意「アトミック・エイジの守護神」、生まれたばかりの障害児を殺した男が憑りつかれた赤ん坊の妄想「空の怪物アグイー」、突如消えた森林の奥の集落「ブラジル風ポルトガル語」、非行少年が住む世界「犬の世界」の七つの短編を収録。 長編「個人的な体験」や「万延元年のフットボール」を書く過渡期の短編集らしく、初期の作風から抜け出そうという工夫が感じられた。特に「敬老週間」「アトミック・エイジの守護神」ではショートショート的な分かりやすいオチが用意されていて意外だった。ただ大江健三郎にそういうものを期待していなかったので少し腑に落ちなかった。暴力にあふれているが衝撃的というより虚脱感のあるオチ、生物・無生物の境界を取り去ったような観念的な視点、鬼気迫る比喩、悪文と捉えられかねない奇妙な文章、それらがこの著者のオリジナリティーだろう。それを考えると「スパルタ教育」と「空の怪物アグイー」が抜きん出ている。同じストーリーで別の小説家が文章を書いても決してここまで奥深い解釈はできないだろう。
1投稿日: 2014.01.29
powered by ブクログなかなか難解ではある。 最後の解説を読んで何となーくテーマが明らかになる。 人間の恒常的な状態は恐怖である。 現代人間の欠落した内面は、恐怖という非存在によって埋められる。→恐怖の発見と、その恐怖からの逃亡の拒否(という矛盾)によって人間は成立する。 ↑ 「恐怖の前での自己欺瞞」 が全体のテーマとして描かれているらしい。
0投稿日: 2023.04.16
powered by ブクログ短編集。めちゃくちゃ心震え感動に胸打たれた!というものはなかったが、どれもそれなりに面白かった。『不満足』は暗すぎて好きではないが。 全体的に暗いのはいつも通りだが、それプラス諧謔、皮肉が効いている印象を受けた。 『スパルタ教育』、『敬老週間』、『アトミックエイジの守護神』は特にそう。『スパルタ教育』は特に好き。「恐怖は負け犬でいるよりマシ」というメッセージがとてもストレートに描かれている。 『空の怪物アグイー』は、『個人的な体験』と同じテーマを扱いながらだいぶ軽やかだなと思った。 解説の「副題をつけるとしたら『現代の恐怖』」というのは的確だなと思った。様々な恐怖が描かれていて暗い。
0投稿日: 2023.04.10
powered by ブクログ30年ぶりの再読。いや、再再読か再々再読か。 いくつかの長編の間の短編集だったと記憶する。 物語世界としては、「不満足」は『個人的な体験』へ、そして「空の怪物アグイー」は『個人的な体験』の赤ん坊が死んだ、(火美子の言うところの)多元的な宇宙の話と受け取れる。 今から30年くらい前の大学生の頃は大江健三郎の韜晦趣味の文体は非常に気持ちよくてしかしみずみずしさがあって中毒になったものだが、今読み返すとうじうじしてちょっと恥ずかしい。ヘンリー・ミラーの影響がそこかしこにうかがえてそれも鼻につく。読み手の私が年を取ったせい、おっさんになったせいだろう。 でも、その後の『洪水は我が魂に及び』『同時代ゲーム』など、彼の小説に対する向き合い方は好き(政治思想は大嫌いだが)。 というわけで次は『個人的な体験』を30年ぶりに再読しよう。昔付き合った女性に会うみたいでちょっとドキドキする(笑
0投稿日: 2022.06.16
powered by ブクログこれはA子さんの恋人から。 作者の的確な描写により、体臭やら、汗臭さ、街の埃臭さなどの「生の人間」が生きる環境をジリジリと感じ、喫茶店でコーヒーとか軽食取りながら読んでいたら気分が悪くなってしまう。いや、僭越ながら…凄まじい褒め言葉です。 こう,その当時の時代の空気を想像するに十分な描写。もっと読んでみたくなりました。
0投稿日: 2021.10.29
powered by ブクログ1950年代〜1960年代を舞台にした青春小説。 「異常な世界を平気な様子で生きなければならない時代」という意味では今とそうは変わらないのかもしれない。 この異常な世界に放り込まれた主人公たちを導くのが、いずれも精神異常者や地下社会の人間など「同じ時間を生きているのに、別の世界を生きている人間」であるのが興味深い。 危ういバランスで存在している“この世界”と“もうひとつの世界”を私たちは多元的に生きているのだ。 「不満足」の、遺体を積んだオート三輪が早朝の町を駆け抜けるラストシーンは美しかった。
0投稿日: 2021.10.09
powered by ブクログ「敬老週間」はちょっと大江らしくないので意外であったが、あとは読んでいてニヤニヤしてしまういつもの大江であった。「ブラジル風のポルトガル語」なんかはいつにも増して他者性というものがきわだって描かれていたように思う、けっこう好きな作品が多かった。
0投稿日: 2018.04.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
いずれも大江の過渡的な時期の作品だが、やはり長編とは別にこれらを書かなければならなかったのだろう。表題作と巻頭の「不満足」とは、『個人的な体験』とも重なり、実生活上の大江にとっては、もっとも辛く苦しい時期でもあっただろう。それを「書く」ことで超克していくのだから、大江はほんとうに根っからの作家なのだろう。かつての太宰がそうだったように。
0投稿日: 2013.09.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「敬老週間」なんかは別として、「アグイー」なんかはもう少し読み込みたいと思っているのだけど、サルトル的空気から大江健三郎自身(というのはある種私の偏見かもしれないけれど)の、どんどんずれていっちゃうような、深刻なことを語りながらも同時に滑稽である状況を描いてしまう、彼の常に一瞬前を自省せずにはいられないような意識が書かせる文章が面白くて仕方ない。 普通の人はシリアスな場面で同時並行して起こる滑稽な部分を削ぎ落として文章を書くのかもしれないけれど、この人はシリアスになればなるほど振り子は残酷を含んだ滑稽へも大きく揺れる。この調子が近年失われてしまっているのが私としてはすごく残念なところなのだけれど… と書いているうちに、大雨の中で「バスは行ってしまった!」と三人称で語るように喋ることで大爆笑したサルトルとその母のエピソードが私に焼け付くように残っていて、こういう人が私は大好きなんだ、というのを忘れていたのだけれど、サルトルもこういう側面があったんだったな…。 にしても、これは三島由紀夫も既に言及しているし他の人も多く言及しているに違いないのだけれど、彼は動物を使った比喩を行う時に決定的な笑いのセンスを爆発させている。 「アグイー」でのたいていのフルート奏者が貘に似てくるのは事実である」という箇所や、「犬の世界」での「かれはぼくに似ているかね?」「あなたを含めて人間の誰かに似ているというより、むしろイシガメに似ているわ。」のくだりや、「ぼくはますます腹立たしく、涙ぐましい気分になって寝室にひきあげると、あの愚鈍でグロテスクなイシガメのやつが! いや、自分はいらんです、などと陋劣なことをいって! とにせ弟を罵り睡眠薬を大量にのんで眠った」というところなんか、これらの作品を読んだとき私はたまたま気分が猛烈に落ち込んでいた時期だったのだけれど、「ぎゃはは」と下品な笑い声を風呂場で上げずにはいられなかったほど面白かった。 「ブラジル風のポルトガル語」での、「かれのことを阿波人形の虐げられる百姓の頭に似ていると無遠慮な同級生が嘲弄したことがある。その時、かれは突然、日々の羞恥心にうらうちされた小心なふるまいのすべてに報復するとでもいうように、みんなの前でイスカの嘴みたいに捩れている葉を剥き出し内斜視の目で虚空をにらむとギャッ、と叫んでひっくりかえって見せた。それは虐げられた百姓のうちの最も虐げられる百姓の磔にされる断末魔を演技した訳だったが、それを見たものはひとしく動揺した」に至っては、この話を全く読んでいない家族に向かって私はどうしてもこの面白さを共有したくなって声にだして読み上げたほど。内容の過激さもあるのだけれど、この、文章のくせに文章らしからぬ推敲の抜き加減が、多分わざわざ読み上げたくさせる要因だと思う。「虐げられた百姓のうちの最も虐げられる百姓」なんて、奇妙なくどさがと過激さが、どうしても口にしてみたくさせるというか…。 引用ばっかりですみません。
0投稿日: 2013.08.23
powered by ブクログ大江健三郎はどうやら合わないのか、なんら感動というものは得られなかった。印象に残ったのは本のタイトルにもなっている「空の怪物アグイー」。 最後の方で、子どもに石を投げられて目に当たるという場面がある。その子どもたちは何を思ったのか、そしてアグイーを思った主人公はどうも落ち着いていて、腑に落ちなかった記憶があった。
0投稿日: 2012.03.03
powered by ブクログ敬老週間―人を食ったようなユーモアのある短編で、今の時代にこんな老人がいたとして、嘘で渡り合える人なんてごくまれじゃないかな、と思う。 アトミック・エイジの守護神―主人公の作家が目で追う中年の男が場面場面で善人にも悪人にも変化するけれど、読みやすく大江には珍しくショート・ショートのような肌触りさえ感じられる。 けれど、この中年の男が特に誇張されているだけで、人はみんなこの彼みたいに善いところも悪いところも持っているのだ。
0投稿日: 2012.01.26
powered by ブクログ(1972.06.16読了)(1972.03.31購入) 内容紹介 六〇年安保以後の不安な状況を背景に“現代の恐怖と狂気"を描く表題作ほか「不満足」「スパルタ教育」「敬老週間」「犬の世界」など。
0投稿日: 2011.11.27
powered by ブクログ近代文学演習の課題図書。レポーターとして「スパルタ教育」を担当。 大江の短編小説は初めて読んだけど、舞台設定が抜群に素晴らしいと思った。どの作品も面白かったけど「空の怪物アグイー」が一番好き。 先日の近代文学会で、《近代に始まる純文学にはリアリズムの呪縛がある》なんて言われてたけど、大江はその《純文学》からうまく外れずに他と違った面白いものを書けてるんじゃないのかな。
0投稿日: 2010.05.29
powered by ブクログ個人的な体験でちょっぴり出てくる、バードが精神病者を探し回るエピソード「不満足」が入った、わたしにちょっぴり嬉しい短編集。 どれも短めなのでスイスイ読めました。 「敬老週間」と「アトミックエイジの~」は、シニカルでプッと笑えるオチが大江健三郎っぽくなくて軽く驚きました。 敬老週間はタイトルも素晴らしいですね! 私は表題作のアグイーが一番好きです。「アグイー」っていう響の由来も、胸が痛くて悲しくて、でもどこか眉を顰めたくなるセンチメンタリズム。 美しいだけ、楽しいだけ、こじゃれただけの物語が物足りなくなってきた昨今、やっぱり大江健三郎が大好きです。 10.02.10
0投稿日: 2010.02.11
powered by ブクログ死者の奢りあたりの文体の個性、 迫ってくるような閉塞感はやや影を潜め、 いろいろなパターンの小説が増えてきたな、という感じ。 でも相変わらず短編はおもしろい。引き込まれる。
0投稿日: 2009.10.26
powered by ブクログ『不満足』では『個人的な体験』の菊比古とバードが…。 『空の怪物アグイー』は、『個人的な体験』のテーマ性をそのまま引き継いだ、別バージョン。 「僕はアグイーの存在を信じようとしてたんですよ!」とかいうせりふがあって、それが響いたなぁ。 短編集です。どれもよかった。 『敬老週間』も面白かったし
0投稿日: 2008.12.28
powered by ブクログ長編で使われたモチーフが色濃く出ている、短編集と言うよりは、まさに長編の副産物と言っても良いと思う。しかし大江健三郎が書くと、副産物であれ非常に密度の濃い内容に仕上がってしまう。個人的には表題の作品以外にも「アトミックエイジの守護神」が良かった。
0投稿日: 2008.01.02
powered by ブクログ大江健三郎っぽくない短編がいくつかあって新鮮な気持ちで読みました。敬老週間とか、ちょっと星新一っぽくないですか?
0投稿日: 2007.10.22
powered by ブクログ1962年から64年の間に書かれた短編集。<収録作品> 不満足 スパルタ教育 敬老週間 アトミック・エイジの守護神 空の怪物アグイー ブラジル風のポルトガル語 犬の世界
0投稿日: 2007.09.19
powered by ブクログ『個人的体験』と同時期に読むことをオススメします。 『個人的体験』と同時期にかかれ、全く逆の「答え」を与えているからです。(表題作)
0投稿日: 2006.07.30
powered by ブクログ・・・これを読むと、子供の頃に読んだ時に気分がドーンと沈み、具合が悪くなってしまった思い出が蘇って来ます。 ちなみに「空の怪物アグイー」は大江健三郎の親友であった作曲家の故武満徹をモデルに書かれた物です。
0投稿日: 2006.07.07
