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ものぐさ精神分析
ものぐさ精神分析
岸田秀/青土社
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総合評価

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    著者の代表作であり、その思想のほとんどが、この本ですでに完成したかたちで提出されています。 著者の出発点になっているのは、人間は本能が壊れた動物であるという認識です。本能が壊れたことで人間は現実から私的幻想の世界へと遊離するようになってしまったと著者はいいます。そして、そのような人間をどうにかして現実と折り合いをつけさせるために、各人の私的幻想の一部分を抽出して共同幻想をつくりあげる必要が生じたと主張します。 国家や言語、性など、人間の諸文化を共同幻想として解釈する論考や、近代日本が、誇大妄想的な内的自己と場当たり的な対応に終始する外的自己に分裂してしまったという主張が展開される「日本近代を精神分析する」という論考などが収録されています。 また、幻想の自我と現実の自我との分裂によって、自己嫌悪やセルフ・イメージなどを解釈した論考、心理学という学問の意義を問いなおす論考などもあります。 さらに、著者が若い頃に新体詩人をめざしていたという回想と、自作の新体詩やヴェルレーヌの翻訳などもあります。 「唯幻論」という視点で、人間に関するあらゆる事柄を一貫して説明しており、おもしろく読むことができました。

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    投稿日: 2017.03.17
  • 自我、歴史、国家、神、性…全ては幻想である

    「人間は本能の壊れた動物である」として、「史的唯幻論」を唱え、 個人の人間に限らず、集団や国家までもを精神分析の対象として分析してきた岸田秀。 心理学者、精神分析医である岸田は、 45歳という遅いデビュー作となった本書(77年)でそう宣言し、 その後のニューアカデミズムの萌芽ともいえる存在となった。 社会の様々な事象に応用可能な理論として当時大変な話題となり、 映画監督の伊丹十三は岸田に惚れ込み、精神分析の世界に入り込んでいったくらいだ。 黒船来航、太平洋戦争敗戦、資本主義などどんな話題であればっさりと切り、 解説をしていくさまは気持ち良い。 自我、歴史、国家、神、性…全ては幻想であるとして、 あらゆる営みを説明し尽くす岸田の論理にワクワクしるはずだ。

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    投稿日: 2015.10.01
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    2011/07/09 最初は偏屈でいけ好かない本だと思っていたのだが、 「性について」辺りから徐々に面白くなり、 最後の「自己について」の章はするすると読み進められた。 「自己嫌悪の効用 ──太宰治『人間失格』について」では、 効用どころか、自己嫌悪がいかに自己欺瞞的であり、狡くて、 自己中心的な詐欺の温床であるかを述べていて、 少し行き過ぎとは思ったものの、内容は非常に痛快です。 自分の純粋性を心底信じている人が読むと、酷く苦い思いを味合うかも。 全体を通して著者の偏ったものの見方が目立つが、 ある一面では、とても鋭く切り込んで物事を捉えているので、 目を見開かされることも多かった本でした。

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    投稿日: 2011.07.09