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ビタミンF
ビタミンF
重松清/新潮社
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総合評価

621件)
3.7
109
236
202
27
3
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     40代前後の男性(父親)を主人公とした家族がテーマの短編集。近しいからこそ知られたくなかったり、甘え過ぎてしまったり、強がったり…上手に関係を築くのが難しい親子関係。『パンドラ』『セッちゃん』『かさぶたまぶた』がお気に入り。子どもは特に親に喜んでもらいたくて、期待に応えようと頑張りすぎてしまう子が多いんだろうな。父親と母親で求められる役割が違うとは思うが、1人の人間として接することだけは忘れずにいたい。やはりお父さんが読むと、読みづらい小説なんだろうか。

    1
    投稿日: 2022.11.28
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    色んなF。22歳でこれを読めてよかったと思った。取り返しのつかなさに対して取り戻すのではなく、抱えたまま生き続ける勇気を与えてくれた。優しくも厳しいオブラートに包まれたこの錠剤は僕の常備薬だ。

    0
    投稿日: 2022.11.23
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    ちょうど、この本に登場する主人公と、同世代なので、どのお話も、刺さった…。 そして、全話で泣いた。 自分の事に置き換えて読んでいた。 特に、セッちゃんは、辛かった。 どのお話も、ラストはほんの少しだけ、前が開かれて、明かりが少し入ってくる。少しだけ、救われる。

    0
    投稿日: 2022.11.12
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    アラフォー世代のお父さん達が主人公の短編集。 自分の娘(中学生)がいじめに遭う話がつら過ぎた、、 全体的に少し古い感じがしたなー 今のアラフォーお父さんはもう少し若々しい気がする。

    1
    投稿日: 2022.11.07
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    このレビューはネタバレを含みます。

    P144 「女をそういうふうにみないで」 目を赤くしていった。 「ぜったいに、やめて、そんなの」 P153 懐かしいひとの電話番号は、市外局番から先はもう思い出せなかった。

    1
    投稿日: 2022.11.04
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    この方は、私の父親世代の心情を描くのが本当に上手。 男性の不器用で、純粋で、複雑な心のうちが巧みに描かれていてなんとも言えない切ない気持ちになります。 「セッちゃん」と「母帰る」が好きでした。 男性におすすめです。

    3
    投稿日: 2022.11.03
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    そうか、ビタミン剤なんだ。この小説は。 読んでいてあまりいい気持がしなかった理由が、最後にわかった。 まだ20代の自分からして、この40代手前くらいの方々の気持ちは想像しかつかない。だから読んでいて「結婚したらこんなもんなの?」とか「こいつ酷い男だな」とか思ったりした。それが重松清の持っている「理想の男」なのか?と疑問に思ったけど、そうじゃないんだ。最後の解説でわかった。 この小説では、それぞれに問題や悩みを抱えた人達が出てくる。皆、何か諦めていたり、結構ギリギリなところを生きてる。(それに気づいてない主人公もいる) 大体の小説って、その悩みや問題が解決して終わりなんだが、ビタミンFではそうはならない。 ヌルッとしたハッピーエンドというべきか。先行きは不安だけど取り敢えずは解決。といった終わり方を見せる。 だってこの小説、処方箋じゃない。ビタミン剤なんだ。いわば、体調の悪さをちょっと解決してくれる。ちょっとしたサプリメントみたいなやつなんだ。だから、気休め程度、レッドブルとか、モンスターとか、そういうちょっとした力をくれるものでしかない。 だから、出て来た登場人物たちの未来を思うと、嫌な後味があったりする。 この後味は、あんまり好きじゃない。主人公も、あんまり好きじゃない。 こんな大人になりたくない。そう思ってしまうような奴らだ。大体の主人公が、奥さんに対して真摯じゃなく、上から目線で、頑固だ。でも、現実ってそんなもんだったりするのかな。 そうかもしれない。そうかもしれないけど、そうじゃない未来を作りたいなと読んでいて思った。 まあそれはいいとして、だからきっと、どうしようもなくなった時、この小説は力をくれるだろう。 よく小さい頃、風邪をひいた時だけビタミンの粉を直接飲んでいた。口に入れると広がる酸味が好きだった。 だから、ある日風邪を引いてないのに飲んでみた。 すっぱいんだ。すごく。 飲めたもんじゃなかった。鼻をツンと貫くビタミンの刺激に、むせた。だけどやっぱり、風邪の時に飲むとすごく美味しいし、よく効いた。 そういう小説かもしれないなって思ったりした。 もし自分が、家族の事で悩んだり、彼女と喧嘩をしたら読んでみよう。なにか力を貰えるかもしれない。

    4
    投稿日: 2022.10.28
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    短編7編。全てが家族をもつ自らの胸を熱くした。 これがビタミンFの効能なのであれば、私は人生の節目に何度か本書を服用するだろう。傑作。

    0
    投稿日: 2022.10.16
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    アラフォー世代の父親たちが主人公の短編集。 同世代だから共感できるかなと思ったが、全くできず。 まだ若いのにくたびれすぎてるし、考え方が固いというか古いというか。20年以上前の作品だからかなー。 「セッちゃん」が良かった。最後に家族で出かけるシーンが泣けた。

    63
    投稿日: 2022.10.08
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    苦くて渋い小説。 アラフォー世代の父親を描いた作品で、今の自分とドンピシャで心に響きまくった。 子供のいじめ、妻との関係、親との距離、たくさんのことを思い浮かべながら読めた。 こうした家族ものの小説を読んでると、今の自分の家族よりも自分が育った家族の方に照らし合わせてしまうのはなんでなんやろ。 親にはたくさん怒られて恨みもあるけど、必死に育ててくれたんやなと考えさせられる。 自分を中心にして、過去と未来の家族を彷彿させてくれるとても良い小説だった。 さぁ、また頑張ろってマスクの下で呟いた。

    0
    投稿日: 2022.09.30
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    自分は父親でまた息子でもあるのでその立場からの感想。 7つの話しがあるが、セッちゃんだけきつい。 昔学生の時にこんな感じあったと思うし棚に上げての話しかもしれないけれどイジメ話しはきつい。 ゲンコツが親父らしくて好きかなあ。かさぶたまぶたのお父さんのカミングアウトは歯痒い。 最後の母帰るは両親に会いたくなった。

    1
    投稿日: 2022.09.03
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    家族をテーマにしたとても共感できる短編出演であった。この小説がビタミンとしてじんわり体に染み込む感じがする。本作は短編七篇であるがどの作品が秀でてるというよりどれも安定していると感じた。やはり家族をテーマにした重松清の作品は天下一である。

    0
    投稿日: 2022.08.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    泣ける本って言われて読んでみたけど、序盤はあれ?って感じだった。 家族がテーマの短編集。 子供のいじめ、お父さんと息子、お父さんと娘、夫婦、成人の親子。 でも、後半に行くにつれて持っていかれた。 嫌なこともある、出ていきたいと思う。それでも家族は家族なんだ。 離婚寸前の夫婦と、熟年離婚した夫婦の話が特にやばかった。 最後の話の「母帰る」は泣きそうになった。 家族は帰るところじゃない、出ていくところなんだ。 それでも家族は家族なんだよね。 人と人との繋がりの幸せ。 うまくいえないけど幸せ。 めっちゃ辛いけど幸せ。 頑張ろうと思った。

    0
    投稿日: 2022.08.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    アラフォー世代の父親たちの7つの短編集。 外から見たら平和で順風満帆、幸せそのものだが、みんなそれぞれの家庭の中で色んな出来事が起きている。 同じような年齢、同じような立場、思春期の子どもを持つ父親という共通した部分を持つ主人公なのに、限られた中で多くのバリエーションを見せてもらった。だがこれは小説の中だけでなく、実際の家庭もこんな風に違いがあるんだなと、一軒一軒の窓の明かりにもドラマを見る。 ラストの「母帰る」が1番印象に残った。私の知らない夫婦というものが書かれている。何十年と共に過ごしたらこういう境地に至るのかもしれない。

    0
    投稿日: 2022.08.09
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    重松清さんの短編集。直木賞受賞作品だそうです。 ちょうどちょっと前の自分といった設定でしょうか?いわゆる中年に差し掛かった年齢の男性が様々な家庭や仕事の悩みと向き合いながら生きることをテーマにしています。 切なくも優しい気持ちが芽生えて明日からも頑張ろうと思える本です。 オススメ!

    17
    投稿日: 2022.08.07
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    書店員やブクログのレビューが高いのになぜ印象に残っていないのか?重松さんの作品を立て続けに読んだ時期だから他の作品のなかに印象が埋もれてしまっているのでは?と疑問が生じたので再読しました。30 代なかばから40に手が届く年齢のそれぞれの編の主人公がかかえる悩みや葛藤を自分がその年齢の時にどうだったか照らし合わせて共感する部分が少なかったので印象に残っていなかったと感じました。最後の「母帰る」はせつなくあたたかい良い作品だと思います。

    2
    投稿日: 2022.08.05
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    ★家庭っていうのは、みんながそこから出ていきたい場所なんだよ。俺はそう思う★ いわゆる「おっさん」と呼ばれる年齢の男性が、主人公になっている物語。自分は男性として経験することは無いから、新たな視点を得られた。 一方で、ここに出てくる主人公たちは、全員妻子持ちの男性だった。一般的に30~40歳では結婚し、新たな家庭を持っているが、そうでない人にも焦点を当てて欲しい。 彼女持ちだが結婚せず仕事熱心に取り組んでいる人や、結婚しているが子は持たないと決心した人とか。そんな物語があっても面白いと思う。

    1
    投稿日: 2022.08.03
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    人生において、結婚し、子供と出逢い、倦怠時期や幸せの絶頂、別れ、それぞれ多々あるだろう。そんな紆余曲折あった家族や、子供の成長につれ何度でも読むべき良書である。 自らと、家族たちと共に年齢を重ねるたび読み返すと、前回とまた違った視点から物語を楽しむことができる。 私はいまや本書に出てくる主人公の父親たちとほとんど同い年だ。 今回読み返したあと思った本書のテーマは「共感」となった。 「セッちゃん」に関しては毎回号泣する。やめて。

    0
    投稿日: 2022.07.30
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    重松清で自分の中で期待が大きかったので評価3。 「セッちゃん」 娘(加奈子)のクラスメートでいじめられている子「セッちゃん」。運動会を見に行った際にいじめられているのは「セッちゃん」ではなく、自分の娘であることがわかる。学校ではなかなか絶えないいじめであるが、いじめられている当本人には当然家族がいて、その家族もまた辛い思いをすることを改めて感じた。 気付いたら30歳半ばに突入し、結婚して子供も二人いて、それなりの「幸せな家庭」を築いているお父さんたちを主人公にした短編が7つ詰まった一冊。 30歳半ばのお父さんが読んだら共感の嵐かも。

    0
    投稿日: 2022.07.21
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    短編小説を久しぶりに読みたかった。 この小説では37歳の父親というポジションで色々な現実問題に直面する主人達が7人登場する。 皆んな悩み、葛藤しながら父親として頑張って前向きに生きる。だからビタミンFなのかもしれない。

    1
    投稿日: 2022.07.06
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    中学生?ぶりの重松 読みやすい けど、人の親になれば 「中途半端な」年齢になれば もっと核心的にわかるんじゃないかっていう 予感 その意味も込めて 星は3つにいまはしておきます

    0
    投稿日: 2022.07.01
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    アラフォー世代の父親の葛藤を描いた短編集。 私も今年で36歳、ちょうどその世代に差し掛かったところ。 出てくる主人公は、どこにでもいそうなサラリーマンばかり。 家庭内におきそうな出来事が本当に良く描かれている。もし10年前に私がこの本を読んでもただ退屈に思えたかもしれない。しかし今は違う。巷にあふれる小説のようにドラマティックな出来事がないから逆に良い。 自分も人の親となって、「自分の親もこんな気持だったんだろうか」としんみりしてみたり、これから子供がもう少し大きくなった時の家庭を考えてみたり。 「考えさせられる」と言うと、なんとなく薄っぺらい感想になってしまう気もするが、ふとこれからの人生を深く考えたくなってしまう一冊だった。

    2
    投稿日: 2022.06.25
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    何年ぶりだろう?って思うくらい久しぶりに重松清さんの作品を読みました。 中学生や高校生くらいのとき、よく読んでたんだけどなぁ…。読みやすくて、優しい文体が好きだったんです。 もしかしたらこの『ビタミンF』も、過去に読んだことがあるかもしれませんが、何となく、私がずっと抱いていた重松清さんのイメージが、大人になった今この作品を読むことによってちょっぴり変化しました。 ほんわか家族の優しい作品…ではなく、お父さん世代のおじさんたちが抱える、悩みやしんどさ、ほろ苦さがたくさん詰まった作品でした。 仕事では責任ある立場につかなきゃいけないし、家庭では子供を正しい道に導かなきゃいけないし、奥さんには優しくしなきゃいけない…。 おじさんって大変。。。笑 親だからといって、自分の子供のことが全て理解できるわけではないと思います。(逆もまたしかり) 長い時間を一緒に過ごしていたとしても、本当の気持ちは実はよく分からなかったり、聞く機会がなかったり…。近くにいるからこそ、遠慮しちゃったり照れたりしてしまうことも多いんだと思います。 今日はたまたま父の日ですが、いつも穏やかな父に感謝しつつ…これからも元気でいてほしいと願うばかりです。(やっぱり言葉で直接伝えるのはできないのであった…。)

    13
    投稿日: 2022.06.19
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    ・気づいたら中年になり家族をもち、自分が子供の時に自身の親から何をしてもらったか でも血は繋がっているのにうまく接することができない、はがゆい、悔しい、どうして父ではなく母なのか そんなどこの家庭にもあるような悩みを描いている作品 息子が不良と連んでいる、娘が悪そうな彼氏と付き合っている、娘がいじめられているけど気丈に振る舞っていることに気づけないまさかうちの子供が そんなことに巻き込まれてる当事者なんて、、、 さまざまな家族がある中でそれでmどんなことがあっても家族なんだと切っても切れないそんな家族の温かい物語であった

    0
    投稿日: 2022.06.14
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    家族、夫婦、親子の物語 現実と嘘、過去と未来のバランスが何とも言えない感覚を持たせてくれる。 物語に気持ちよく入り込める。これが重松清ワールドだと思う。 この作品は何度も読み直しした方が良さそう。 少し時間を開けて再読するつもり。

    0
    投稿日: 2022.06.11
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    いろんな中年男性のリアルを垣間見ることができた。話の主人公の中年は悩んでいるが最後には良い方向に向かって話が進んでいった。20年後の自分がどうなっているか分からないが、悩みながらも前に進んでいける自分でありたいと思った。

    0
    投稿日: 2022.05.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ビタミンFはとても苦い 苦すぎて、最後に泣けてくる 順調だと思っていた、否、思い込もうとしていた 家族関係の綻びに直面した夫、父親、中年男の 物言えぬ葛藤が描かれた7つの短編集です 「思ってた人生と違う…」 「このまま一生終えても良いのだろうか...」 「でも多分変わりはしない...」 目を瞑って沈めてきた想いを掻き廻します 適当なラベルを貼って仕舞い込んできた想いが 感情を蘇らせ、胸を掻き回します 目を背けてきた役目が胸を締め付けます 登場人物達は些細な変化、思いがけぬキッカケで 掻き回されます。 そしてなんとかしたいと思い悩みます 結局なにも解決はされないのですが。 それでも今まで目を背けてきた相手に、 気持ちに、人生に向き合ったことで、 少しだけ前向きな気持ちになれる そんな微かな、光が見える だから泣けてしまいました 良薬口に苦し、と言います ビタミンFは読んでいて泣きそうになるけれど 流した涙が心の澱を少しだけ溶かしてくれる、 そんな一冊です。 「ゲンコツ」 ガキの頃、嫌いだったような大人になった 正義や希望という言葉にシラケ、 ゲンコツを損得で降ろすようになった 幼さの残る近所の悪ガキに今夜握り締めた その やわらかいゲンコツは 枯れかけた自分に向いていたのではないか 少年は注意され、逃げて転んで怪我をした 連絡を受けた少年の父親は、スウェット姿のまま どたどたとした不格好な走り方で、 脇目もふらず息子の元へ駆け付けた 荒い息のまま礼と詫びを言うと、 ほら行こう、と背中を向けてしゃがみこんだ 小柄な父親は立ち上がるときにふらついたが 息子を背負って帰路についた 汗びっしょりになりながら、最後まで息子をおぶった 中年だと言って捨てたもんじゃない。 幼少期の正義のヒーローはまだ息づいている。 「はずれくじ」 家を継ぐために田舎の役場で一生を終えた 寡黙なお父ちゃんは宝くじが唯一の趣味で 「百万円あったら、どこへでも行けるんじゃのう」 と小学生だった修一に 空に向かって煙草の煙を吐きながら言った。 上京して結婚して家族をつくった長男の修一は 妥協して我慢して小さな暮らしを何とか支えて 今日までやって来た。だが、夢はない。 父親が夢を託したのだとすれば 自分は「はずれ」だと修一は思う 息子の勇輝は臆病で優しいが人に従ってばかり 修一は苛立ち自分の価値観を押し付けてしまう 勇輝にとってこの父親は「はずれ」なのだろうか 妻にとってこの夫は「はずれ」なのだろうか 「運のいい奴なんて誰もいないんだよ、世の中」 当たるわけがない。 だが、ぜったいに当たらないわけでもない。 期待とは呼ばない。 夢というのとも、たぶん違うだろう。 それでも、九分九厘「はずれ」になるはずの紙切れを財布に入れたとき、胸の奥がじんと温もった。 家族を想う気持ちとは、そんなものなのかも知れない。 「パンドラ」 中学生の娘が万引で補導された つまらないことを、つまらない言い方で伝えた 娘はかすかに笑ったようにも、孝夫には見えた すべてが空回りして、すれ違って、遠ざかって、 元には戻らないんだと、噛み締めるしかなかった リビングが我が家の中心だった頃もあった 理想的な父親でないことぐらい、わかっている だが、悪いのは俺だけなのか? 別の人生を生きる可能性だって、あった。 大学時代の友人に、当時の彼女の電話番号を聴いた 「逃げ場所にはするなよ、思い出を」 「思い出は玉手箱みたいなものだから」 パンドラの箱は、蓋さえ開けなければ、いい。 娘が惚れた少年は、女をとっかえひっかえする男だった...。 遊びで、抱かれたのか? そういう言い方しないで。 初めてだったんだぞ、あいつは! 幸せにならなきゃいけなかったんだぞ 幸せになるわよ! 幸せになるに決まってるじゃない!未来はあるわよ! 女をそんなふうに見ないで。 妻は目を赤くして言った 奈穂美の部屋の前に立つ。ドアに鍵はない。 だが、孝夫の手は動かなかった。 パンドラの箱はここにもあるんだ、と思った。 お父さんだけど... お父さんと話すの厭かもしれないけど、 お父さんはおまえと話すの、ずーっと楽しいからな お前が大人になっても楽しいし、 いつでも楽しいからな、 一生、お父さんはお父さんだからな なんだよそれ、と自分で自分を笑った 言いたいことなんて結局それしかないとも思う 今朝、奈穂美を起こしに行ったら、 びりびりに破いた少年の写真がゴミ箱にあったから もうだいじょうぶだと思う。 妻と2人で奈穂美がしたよりもっと細かく写真を破った 親は身勝手だ。 ある時期までは早く大きくなればいいと願い、 ある時期からはいつまでもこのままでいてほしい と祈ってしまう。 パンドラの箱に最後に残ったものは 希望だったろうか、絶望だったろうか 懐かしい人の電話番号は、もう思い出せなかった 「セッちゃん」 中2になった一人娘の加奈子は、明るく積極的で 素直でいい子に育ってくれた。 学校でも小学生の頃から優等生だった。 セッちゃんという、クラスでいじめられている子の話を加奈子がしたのは、二学期の始め。 家族3人揃ってのいつもの夕飯時だった。 その後、加奈子はセッちゃんがいじめられている様子を幾度も両親に報告するようになった。 そして9月が終わり、10月になり体育祭、 秋の生徒会選挙になっても続いた。 いじめられていたのは加奈子本人だった。 セッちゃんは加奈子の創作だった。 リビングでは加奈子一人、しゃべりどおしだ。 セッちゃんのことばかり話す。 セッちゃんがいかにクラスのみんなから嫌われているか、 いかにかなしい思いをしているか、 それを話しておかなければ1日が終わらないというように身振り手振りを交えてしゃべる夜が、 もう何日もつづいた。 親に嘘がばれたときの加奈子がどうなってしまうかが怖い それでも嘘を守ってやることが加奈子のためになるのか、 やはりわからない。 両親で学校に呼び出されたのは、11月の終わりだった。 担任と保健の先生から全てを聞いた。 きっかけは、つまらないことだった。 夏休み中に誰かが「カナちゃんていい子ぶってるよね」と言い出して「そうそうそう」と同意する子が多く、それがいじめへとエスカレートしてしまった。 娘さんはぜったいに、いじめのことは認めません。 生徒会長に立候補したのも、いつもの自分の居場所を失いたくなかったからなんだと思います。 ご家庭の中でも必死に居場所を失うまいとしていたんじゃないでしょうか。 雛祭りの日に川に流し、娘の不幸を、お雛さまにぜんぶ持ってってもらうという流し雛。 季節外れの流し雛を流しに家族でドライブに出掛けたのは、次の日曜日だった。 セッちゃんの話は、このところ出ていない。 まるで、鈍感な両親がようやく一人娘の危機を思い知らされた、その瞬間を見届けて、あとはよろしく、と立ち去ってしまったように。 あのさあ...カナ。学校であったこと、なんでもかんでもお父さんやお母さんに教えてくれなくてもいいぞ。 お父さんもよくわかんないけどさ、ナイショの話とか秘密とか、本当は楽しいのかもしれないなあ。 疲れたら休んでいいからな、カナ。 流しても、いじめ、止まんないよ? そんなに現実、甘くないもん。 ゲンジツを、やわらかい響きで言えるようになった。 それでいい。 舟を、浮かべた。 流れていく。 加奈子は舟のあとを追って歩きかけ、立ち止まった。 カナ! 妻が涙声で呼んだ。 加奈子は遠ざかる舟に、バイバイと両手を振り、 ゆっくりと顔を覆った。 「なぎさホテルにて」 家族ができ、仕事も家庭も落ち着いた途端、 不意に人生が色褪せて見えてしまった36才の達也 これが俺の求めていた人生だったのか。 妻に素っ気なく接するようになった。 駄々をこねてるみたい、だ。 そんな時、20才の頃に当時の彼女と泊まったホテルから、彼女が出した17年後の未来の達也宛の手紙と宿泊割引券が届いた。 手紙には17年後またこのホテルに行ってみない? と書いてあった。 家族を連れて、ホテルへ旅行した。 いるはずのない彼女を探して。 もうひとつの俺の人生の幻を探して。 子供の「もしも」は楽しい想像に使う 大人になると不安なことばかりに使う 結局今が一番幸せなのかな。 過去に「もしも」を使う… …今より幸せになってただろうか。 人間はさなぎにはならない。 でも、心はわからない。 こどもからいっぺんにはおとなになりきれず、 さなぎの時期を過ごすひともいるのかもしれない。 家族3人から誕生日カードの寄せ書きを貰った。 達也は少し照れて、小首をかしげながら チョウチョを指差した 「俺も早くチョウチョにならなきゃなあ」 妻が、知ーらない、とそっぽを向くのと入れ替わりに 年長さんの娘が頬をふくらませ「ひっどーい」と睨んだ どうやら、ハートマークだったらしい。 「かさぶたまぶた」 男なんだから弱音を吐くな 長男なんだから我慢しなさい 一家の長として常に正しくありなさい ...昭和の男は、是非などなく、本音に蓋をして、 そのように躾けられていた 女もそうだ 与えられた役割を演じきることがアイデンティティだった 家庭でも職場でも、常に正しく、よき理解者であろうと背筋を伸ばして生きてきた政彦。 同じ性格を継いだ娘は優等生だが、耳の不自由な生徒との遊びの途中で、自らの偽善に気付き、激しい自己嫌悪に陥る。 人のためでなく、自分が佳く見られようと行動していたのだ。 政彦も同じだった。 周りの者はずっとストレスを感じていた。 若い部下のひとりが酔って愚痴を吐いた。 橋本さんって、なんでこんなに余裕あるんすかあ? なんかねえ、ニンゲンっぽくないんすよね すごい人気っすねえ…… でも、そういうのって、 カッコつけてるだけなんじゃないっすか? いつもおとなしくヘラヘラしている息子が、 つらい酒で酔って、キレた。 エラソーなんだよ、ひとのことバカにしてよお、なんでもわかってるって顔してよ、 知ったかぶりすんなよ、 なんにもわかんねえくせに あなたには弱いところ見せられないのよ、みんな。 あなたは強いから。 違う。強くなんかない、余裕なんてどこにもない、ただ間違ったことをしたくなくて、正しい、理想の自分になりたくて……ずっとがんばってきただけじゃないか…… 政彦はその場にへたり込んだ。 ボキン、だな。音が聞こえた。 天井の照明をぼんやり見つめ、家族の誰に言うとでなく、 いまだにズボンを穿いたままウンチできない、 という内緒話を打ち明けた。 何を言ってるんだろう。だがしゃべるにつれ なにかが体の奥からすうっと消えていくような気がした。 娘の優香がぷっと吹き出した。 息子の秀明もあきれて大の字に寝ころがった。 妻の綾子は「お母さんだってね」と、 若いころポエムを書いていたことを打ち明けた。 政彦のまぶたはじわじわ熱くなった。 嬉しいのか悲しいのかはわからない。 ただ、寂しくはなかった。 「母帰る」 おととし古希を迎えた年老いた父の、 もしかしたら最後になるかもしれないわがままだ 父は、まともな頭で、まともに考えて、 そしてまともではない結論に達したのだ。 わしゃあ、三十三年も連れ添うた女を、 一人暮らしのまま死なせとうない。 それだけじゃ 母が家を出たのは十年前。離婚届を父につきつけた。 なにもいらない、悪いのはすべて自分、 責められてもなじられてもかまわない、 ただ離婚してほしい、家を出ていきたい、 母は涙交じりに訴えたのだという。 結婚して三十三年、五十八歳のおばあちゃんが、 夫の両親を看取り、娘の産んだ孫を抱き、 息子の結婚を見届けて、この家での仕事はすべて終わったのだというふうに荷物をまとめたのだった。 母は家を出て間もなく、町の東端から西端へ移る格好で 父と同い歳の中村さんという方と暮らしはじめた。 奥さんに先立たれ、すでに独立した息子がいて、 悪いひとには見えなかった、らしい。 今年の夏、母は中村さんに先立たれた。 人づてにそれを知った父は、もう一度一緒に 暮らそうと母に連絡をとったらしい。 進学で上京して以来十九年東京で暮らすタクは、 離婚して息子と暮らす故郷の姉から連絡を受け、 父と話をするために帰郷することにした。 いつもは妻と娘がいるが、今回は息子と父で それ以外の役になることはできない。 長男で末っ子。愛されていた、と思う。 僕は、僕を愛してくれたこの家族が大好きで、 家族がみんな幸せでいてくれたらいいと願っていて なのに、父も母も、姉も、いま幸せなのだろうか のう、タク。お母さんのこと、そげん恨んどるか わしゃあ、恨んどらんよ お母さんにはお母さんの気持ちがあるんじゃけえ 四十やそこらじゃったら、張り倒しとるわ。 もう、親の務めがぜんぶすんでからのことじゃったけえ 舅と姑も送ったんじゃけえ、ようやってくれた もう迷惑のかかる者はおらんのじゃけえ 夫婦には、迷惑いうもんはないんよ わしゃあ、三十三年も連れ添うた女を、 一人暮らしのまま死なせとうない。 それだけじゃ 僕のつくった僕の家族はある。たしかに、ある。 そうかんたんには壊れないと信じて、 壊してたまるかと誓って、けれどほんとうは、 家族というものはこんなにあっけなく壊れてしまうんだとも、僕は知っている。 「お帰り」と迎えてくれるひとがいるのなら、 どこからどこへ向かおうとも、それはすべて「帰る」になる。 父と姉と僕は久し振りに三人で集まった。 壊れた家族のかけらが、いまここに集まっているんだと気づく。 父はひとりぼっちで年老いていくかけらを放っておけなかったんだろうな、とも思った。 その晩、僕は電話した。 母は電話口で涙ぐみながら何度も謝った。 「帰ってくればええが」 僕は知らぬ間に久し振りに方言で喋っていた。

    2
    投稿日: 2022.05.23
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    バブル以降に社会人となり家庭を持った40歳前後の人生のステージに立っている人(この小説では男性)の迷い、不安、戸惑い、痛み、切なさなどの心の揺れ動きと言ったものが、とても的を得た形で表現されていた。 難しい年頃の子供を持つ親として、年老いていく親の息子として、妻に対して以前の様な恋愛感情を持てなくなった夫として、それぞれの立場によって抱く感情の描写にリアルさがあるところが良いと思いました。 また、収録された7つの短編全てにおいて、主人公たちが問題の解決とまでには至らぬものの、少しずつの気付きから何かしらの希望の光を得て、前に向かって進もうとする結びとなっている事が、私を含め読む人の多くの心を掴むのだろうと思います。良い作品でした。

    2
    投稿日: 2022.05.09
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    都内の企業で中堅どころの地位にあり、忙しい日々をおくる中年のサラリ-マンが、家庭のなかでの親と子の、夫婦間のゆがみから生じた亀裂にゆさぶられ〝自分の立ち位置〟に自問自答を繰返しながら、人生の〝中途半端〟な時期の出口の見えない問題に葛藤する・・・そんな男たちの悩める姿をとおして、読む者に心の栄養剤<ビタミンF>が贈られる7編のオムニバス。 終尾を飾る『母帰る』は、菊池寛の名作『父帰る』を彷彿させる直木賞受賞作にふさわしい、こころに効く感涙編。

    9
    投稿日: 2022.05.03
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    40歳前後の父親であり息子でもある存在を中心に添え、そこにまつわる家族の繋がりを背景とし、現実の問題を受け入れながら次の歩みを模索する内容。 心があったまりきることはないが、現実を見据え次に何をすべきか悩みながらも決断をする主人公の姿に勇気をもらえる。 父親とはそういうものか。

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    投稿日: 2022.05.02
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    40代、働き盛りのお父さん。 仕事、年老いていく両親、…そして家族。 どの短編も、誰かの立場に自分が重なった。 それは年頃の娘だったり、妻、母親だったり。働きざかりのお父さんだったり。 何のため、誰のために働いてるんだろう? 「家族のため」働いてるって…ほんとに? これからも働き続ける毎日だけど。 自分を見失いそうになったら、またこの本に戻ってこようと思います。 そばにおいて、繰り返し読みたい本でした。

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    投稿日: 2022.04.29
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    30代後半から40代前半の、悩めるパパさんたちの短編集。 仕事が大変だったり、家庭の悩みがあったり、子供との距離感にとまどいがあったり。 それらをちゃんと乗り越えたりする様子が、なんだか、すごく良かった。 『かさぶたまぶた』は泣いてしまったな。 この作者さんの本、他も読んでみたいなと思う。

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    投稿日: 2022.04.08
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    家族を持った中年男の短編集。40代になり、家庭を持ったらより共感できるのかもしれない。「ゲンコツ」が好きだった。

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    投稿日: 2022.04.06
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    重松清氏の言う「お話の力」が、込められている珠玉の短編集。どの作品も、読むことで、なんらかの力をもらえます。 家族の亀裂、いじめなど、取り返しのつかなさは、そのままで変わらないという事実に目を背けることなく、なお前を向いて闘っていこうとする姿がここにはある。

    0
    投稿日: 2022.04.05
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    これを最初に読んだのは小学五年生の頃だった。語り手の父親ではなく、この話に出てくる子供たちに近い年代だったせいだと思うが、その時は単に「いい話だな」で終わらせてしまっていた。 二十代後半になった今読み返して、この話に登場する父親たちの年齢ではまだ無いけれど、時折じんと心に痛く刺さってくるような箇所があった。あと十年後読み返すとしたら、私はこの小説に登場する父親たちとほぼ同年代になる。その時、この小説は今以上に一文一文が染み入るようになってくるのではないかと思う。私にとって年月を重ねて何度も読み返したいと思える大切な一冊だなと思う。

    1
    投稿日: 2022.03.29
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    2000年《直木賞受賞》の本作品が 昨年から急浮上してとても売れている ということで一気に読了。 「父」が主人公の話が7つあって ・40歳前後の年齢 ・思春期の子供がいる ・結婚して10〜15年の男性 がすごく共感できると思われる短編集です。 世のお父さんたちの苦悩や強さが 描かれていて、心に刺さる話ばかりでした。 自分が思春期の頃 うちの父親はどんなことを考えながら 毎日を過ごしていたのかなと。 よく子育て乗り越えられたなと。 父親への感謝の気持ちが溢れました。 帯に「最泣の一冊」とありましたが 泣ける本というよりは 自分にとっての「家族」について 考えさせられる作品です。

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    投稿日: 2022.03.26
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     2000(平成12)年刊。直木賞を受賞した短編小説集。  帯には 「涙腺キラー・重松清の最泣の一冊  100%涙腺崩壊!」 と書かれている。こないだ読んだ『ルビィ』は全くつまらなくて、感動も何もありはしなかったのだが、これはどうだろう、泣けるかな?と期待して読んでみた。  が、結局「え、これ泣ける? そうかな、違うんじゃない?」となった。 「泣ける本」というのはこういうのじゃないと思う。本書はもっとかすかな「じわじわ」感で、子がいじめられる話などは重苦しさが胸に迫りはしたが、涙腺が崩壊する感じとはまるで違う。  40歳前後の妻子ある男性サラリーマンが主人公で、ちょっと家庭の危機みたいのがあり、物語の最後には一応、ささやかな家庭のぬくもりの「維持」の方向へと向かうかすかな兆しが見える、という程度の弱いハッピーエンドの物語が多い。どれもラストは泣けるというほどには行かない。本当に多くの人はこれで泣けるのだろうか?  心理描写や言語操作などを検討してみると、やはり川上未映子さんや吉本ばななさんのような女性作家の繊細さには遠く及ばない。中年男性の主人公はただひたすら社会・会社のシステムに乗っかることに必死になって生きてきたがそろそろ疲弊してくる頃。振り返って「家庭」の方を向いてみると、安定していたはずのその土台が何やら崩れだしそうな気配。そんなクライシスは単純な機制であり、そこでの男性の情動の揺らぎはむしろ素朴なものに過ぎない。  読んでいて、「これはテレビドラマみたいなもんだな」と思った。NHKで1時間ものの、1話完結のリアルだが地味なテレビドラマのシリーズのイメージだ。そこそこ楽しんで観ることはできるが、大きく感動することはない。そんな感じである。  テレビドラマは人に深く考える機会を与えずに突き進む、強制スクロールのストリームであるのに対し、小説のストリームは「立ち止まる」チャンスを読者に常に与える。だから読みながら書かれた心情や出来事を我が身に置き換えて好きなだけ検討することが出来ることが小説の利点である。が、本書では、「さらなる深みへ」と思考させるような機序は与えられない。そこが物足りないと感じる。  とはいえ、いい加減ウンザリしつつあるような平凡な夫婦間の関係の典型的なモデルが呈示され、男女間の意見や感じ方の違いの衝突を、互いに補い合う方向へとなかなか結びつけることの出来ないそんなもどかしさを、自身の経験に即して振り返る機会を、本作を読む過程で得た。

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    投稿日: 2022.03.18
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    大人ってなんだろう? そんなことを考えながら読みました。 大人だから、言いたいことも我慢して、 相手が何を思っているのかを想像して、 結果何も出来なくなる。 1番分かってほしい家族に対して。 私も経験したこともあるからわかる。 けど、自分の行動を少し変化させるだけで 結果は変わるんだろうね。

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    投稿日: 2022.03.08
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    「その日のまえに」から続けて読んだ短編集。直木賞受賞していることもあり、テーマも興味もあり、期待していた。ひとつひとつの物語の結末がぼんやりと、あえて読者に想像・考察させるような展開で、感情が揺さぶられなかった。ただ、家族の描き方が本当に魅力的だ。リアルさが故に、共感、愛着が湧いてしまう。

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    投稿日: 2022.03.07
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    年頃の子供たちを持つ親の立場として、なるほどいろいろ考えさせられた。 普段、特に不満を感じることのない妻に対しての潜在的な感情、娘や息子に対して言いたいことを言えず、モヤモヤとしたものを抱え続ける父親の気持ち 時代の変遷に伴い、変わっている父親の立ち位置 もっと気の利いたことを子供に対して言いたい葛藤を胸の奥に秘めている現在の自分がいる…

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    投稿日: 2022.02.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ビタミンFの「F」とは、Family, Father, Fight, Fragile, Fortune...。いつか自分も歳をとって、家族をもって、この本をもう一度読み返したなら、きっと全然違う景色が本の向こうに広がるはず。それこそが「Fiction」、つまり「お話の力」であろうし、自分の老いた先にも重松さんの本があることは強い希望だ。

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    投稿日: 2022.02.21
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    同年代の父親目線で書かれた物語 感情移入せざるを得ない 頭の中で色んなシミレーションをして、仮想的ではあるが経験値を得ていく。小説を読む価値というか使い方というか、そんな事を考えながら読んだ

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    投稿日: 2022.02.20
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    「青い鳥」の映画を観て、その他の話を知りたくて読みました。青少年期のすごく繊細な心のつながりを描写されていると思いました。

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    投稿日: 2022.02.18
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    7編の短編。主人公は30〜40代の家庭をもつお父さん。全員子持ちで仕事では中間管理職、家庭では妻や子ども、親との距離の取り方で悩んでおります。派手な内容はないのですが、ほのぼのとした内容ですね。重松さんの作品を初めて読みました。他作品も読んでみようと思います。

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    投稿日: 2022.02.08
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    短編で読みやすくて1日の気分転換になった。 みんな完璧じゃない。弱い自分もまるごと受け止めようって思えた。 「かさぶたまぶた」が好きかな。

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    投稿日: 2022.02.04
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    相変わらず泣けるねぇ。 家族を描く作家と評されるけど、泣ける作家という印象が強くなってきた。短編集なのに、何か繋がってるような感じがして、さっきの(前作の)登場人物がひょいと出てきそうな雰囲気。それほどリアルに家族を描いている。

    0
    投稿日: 2022.02.04
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    20世紀最後の直木賞受賞作品。昨年リバイバルヒットしたというので興味をもって読んでみた。 重松作品は初読みだったが、読みやすくすんなり入ってくる。 一言でいえば、ハートウォーミングなファミリーストーリー。 【かさぶたまぶた】の家族にも弱みを見せない中年男性主人公が、家庭の危機・極限の状態で発した、スボン穿いたままウンチできないと告白するシーンが一番好きだ笑  心の中で思わず爆笑した。

    15
    投稿日: 2022.01.31
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    人生が40歳前後にさしかかった男性に贈る本。 一旦、自分を見つめ直すために読みたくなった。 家族を元気にする「読むビタミン」が詰まった短編集。 "F"を頭文字にしたキーワードの物語が胸をうつ。 読み終えた後は、心に栄養が補充される。

    1
    投稿日: 2022.01.30
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    描かれている主人公が、30~40代の男性。 仕事よりも家族との関係にフォーカスが当てられたストーリの短編集。 娘との関係性の描写ではかなりぐさぐさ刺さる半面、家族、特に妻に対する部分では、「まだまだ青いなあ」と思わざるを得ない私は50代半ば。 読み始める前は泣かされるかなあと思ってましたが、泣くことは一切なく、どちらかというと主人公の「青さ」に少しイライラしてしまいがちでした。

    1
    投稿日: 2022.01.12
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    「中途半端だよな、三十七、八って」 そうなんです。不惑の40でもなく、まだアラサーをギリギリ名乗れる35でもない。間の37、8歳って、何となくどっちつかずで中途半端。 本作は、そんな中途半端な年齢の大人の男達が主人公の短編集です。 平々凡々で幸福な毎日を過ごしているけれど、どうも「しっくりこない」感覚を抱えて生きている、そんな大人の物語。 世間体やプライドを抱えながら、年頃の子供達との接し方にも苦慮するお父さん像がメインかと思いきや、「俺の人生こんなもんか。つまんねーな」と不意に冷める描写が生々しい作品もあったりして、ちょっと読んでいて怖くなる箇所もちらほらと。 それでも、「自分自身や家族を諦めたくない」という思いが通底している本作は、頑張るお父さん達に送る人生讃歌のように感じました。 私の亡父は、どんな気持ちで私達と過ごしていたんだろう。 私の夫は、どんな思いで今を過ごして、10年後にはどんな二人になっているのかな。

    0
    投稿日: 2022.01.12
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    出版された当初。20代に読んでいたものを、40を超えた今、再読。当時も普通に面白いと思っていたけれど、この年になって読むと刺さる。ずるい。

    3
    投稿日: 2022.01.06
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    失礼ながら初めて読んだ重松作品。 せっちゃんの話は、ドキッとしたなー。自分の子供は学生の頃は大丈夫だったんだろうかと、今更思ってしまった。アラフィフの迷える人々の短編集。

    7
    投稿日: 2022.01.06
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    異性の違う世代の人からの視点のお話。 日常の中の絶妙な感情や情景がリアルに思い浮かんだ。 歳を重ねてもう一度読みたい。

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    投稿日: 2022.01.05
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    良かった。ちょうど同じ世代の主人公たち。 重松さんの文体は難しい言葉を使わずふわっとやさしく語りかけてくる。とってもいい。

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    投稿日: 2022.01.03
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    重松清は、岡山県出身ということで、岡山県出身である自分としては気になっている作家でして、作品も読んでみたいと思っていました。 ここにきてようやく、いい機会があったので、読んでみました。 ビタミンFは、7つの短編小説からなる書籍。 どの短編小説も、家族の関係の回復の物語、という感想を持ちました。 どこの家庭にもあるような「不和」や「違和感」に焦点を当て、それらが修復していったり、新たな関係性の発生につながっていったりする過程を、優しい筆致で描いた物語集、ともいえるでしょうか。 中国地方のものと思われる方言が出てくる場面もたくさんあり、そのたびに懐かしさを感じることができ、心が温かくなりました。 途中、物語中の人物と同じような心情の起伏を感じながらも、最後にはホッとできる、そんな時間をもらえた7つのお話たちでした。

    1
    投稿日: 2021.12.25
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    40歳前後の父を描いた小説。中学の自分を振り返ると自分も父を悩ませてたのかなって懐かしくなる本。短編集だから読みやすく、どの作品も最後の一行で鳥肌が立つ。ほっこりして終わったり、感動して終わったり、もやもやして終わることはなく後味最高の作品ばかり

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    投稿日: 2021.12.23
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「別の人生があったのではないか。」 この小説を一言でまとめるとそれだと思う。 この人と結婚しなかったら? でも結局は今が幸せなんだ。 そう気づける物語。

    1
    投稿日: 2021.12.22
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    ビタミンという題名の通り、心に沁みて、エールをもらえるお話。 個人的には、「はずれくじ」が好き。 ほんとうに言いたかったことをまたごまかしてしまったような気がしたが、言いたいことなんてけっきょくそれしかないんだよ。 お父さんは孤独で、不器用だけど、子どもや奥さんを思っての言動が、温かくも、切ないなと。 距離感の難しさや大切さなど、自分がこれから現実になるであろう38.39歳のときにはどんなお父さんになっているのかなと、考えさせられた。 主人公の心情や本音がすごくリアルに感じられた作品だった。

    0
    投稿日: 2021.12.20
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    炭水化物やタンパク質、カルシウムのような小説に対してこの小説は心に沁みてくるビタミンのような小説になっている。 七つの短編小説が全て父親の視点で描かれている。妻のこと、子どものこと、親のこと、そして仕事や隣人などの周りの環境のこと、そのどれもがフィクションとは思えないほどリアルさを感じさせる。 読みながら自分が父親になったらどんな父親になるのだろうと思わずにはいられなかった。温かく切なく愛おしくそんな物語一つ一つがとても面白かった。

    3
    投稿日: 2021.12.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    『父親にだって、言いたいことはあるけれど…』 いろいろな家族の形があり、いろいろな父親像がある。でも、多くの父親が、年頃の子供にどうやって接したらよいか悩んでいるんだろうな〜。そんな父親と家族が、共に悩みを克服しようと藻掻く姿を描いた短編7編。

    0
    投稿日: 2021.12.16
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    ビタミンF。 family、father、friend、fight、fragile、fortun…。 文庫本の後記に著書が書いていた結局は、Fiction「お話」なのだと。 人の心にビタミンのようにはたらく小説をこれからも読み続けていこうと思います。

    0
    投稿日: 2021.12.03
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    社会の中堅、人生の中程の男性達の家族小説短編七編。読む前、Fは家族のビタミンFatherかなと。幾つか読んで、父のビタミンFamily かなと。最後に作者の後書でたくさんのFを込めた事を知った。中でも、Fragile-壊れやすい-はお気に入り。 それぞれの家庭にトラブルは起きる。夫婦も家族も家庭も思春期なのね。どの家庭も幸福範囲内。 修羅場、正念場は人生半ば過ぎからですよ。

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    投稿日: 2021.11.27
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    自分にもあと十数年でこうした時期を迎えるのだなと思うとどこか切なく悲しい思いになると同時に、この『ビタミンF』のおかげでそんな思いに襲われた時の顔の上げ方を知り心が少し軽くなった。 『セッちゃん』の話が読んでて辛かった。中学2年生という難しい年頃。親に自分の姿を偽り続ける様子も胸が痛くなるが、その真実を知った親の描写がより胸を苦しめた。

    1
    投稿日: 2021.11.27
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    自分にとってのビタミンFは、Familyかな。 まだ子供だと思っていた娘に対し、ふとした時に微妙な距離感を思い知らされ愕然とするんだろうな。家族の絆は信じていたいけど。 7つの短編、さまざまなパターンでせつなくしてくれました。どれも最後に顔が少し上がるところは、ビタミンのおかげかな。

    20
    投稿日: 2021.11.21
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    124回直木賞作品 等身大の日常の中にチクリ・グサリな短編集。おじさんおばさんの話。Family, Father, Friend, Fight, Fragile, Fortuneってことね。元気出るどころか割と重いんだが。 セッちゃんのいじめの話がえぐい…展開が変わるところから心が重くなっていった。普段こどもの視点からのいじめしか考えたことはなかったけど、大人の視点からのいじめの話は新鮮。 なぎさホテルの話が好き。作家さんたちみたいに語彙力がないので上手く言えないけど、胸がザワザワザワってなる感じがなんとも言えない。

    1
    投稿日: 2021.11.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    中年男性から見た家族の話 リアルにありそうな、様々な家族の話が描かれており、 正直、重い 身につまされる、考えせられる、そんな読後感

    1
    投稿日: 2021.10.31
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    ニュースで白石一文さんが直木賞とったよー、っていうのを見て、直木賞作品を読もうと思い立つ。 で、ビタミンF。 重松清が好きだ好きだと言っているわりにはまだ読んでなかったので。 小学生や中学生の子供を持つ、30代後半~40代ぐらいの父親が主な主人公の短編集。 今まで、「流星ワゴン」→「世紀末の隣人」→「疾走」→「カシオペアの丘で」→「その日のまえに」みたいな感じで(たぶん間に短編が何冊かある)、時代めちゃくちゃに読んできたんだけど、 重松作品の原点はここかー、と思うような作品で、いかにも「らしい」感じ。 子供のいじめ、離婚、オヤジ狩り…、「中途半端な」時期に差し掛かったオヤジたちをリアルに映し出しているようすは、将来の自分を見ているようで色々と考えることがいっぱい。 だけど、いつも通りハッピーエンドにはならないのが重松作品。 いつもの生活に何かあった、ちょっと考えた、こんなことをやってみた、少し上向いたような気がする…、そこまで。 それが正しかったとか、間違ってたとか、そういうのでは無くて、ちょっと考えたっていう過程が、すごく大事。なんだなーと思いました。 「また、がんばってみるか」と、こっそり呟きたくなります。

    1
    投稿日: 2021.10.24
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    読んで気づいた、、これ前も読んだ! しかも結構前、なのになんとなくそれぞれ展開を覚えてて、なのに涙涙、特に「セッちゃん」で号泣 親になる前だからか、前に読んだ時は過去の自分に被せて読んでいた気がする 今の自分から過去の自分、そして自分の子供を想像したり重ねたりしてうんと考えさせられる短編?集だった 夫にも読んでほしいな、子育って恐れ多いけど得るものもきっとたくさんあるから 何があってもいつでも戻ってこれる、こんな家庭を築きたいものです。。

    1
    投稿日: 2021.10.18
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    元気をもらえる!みたいな帯に惹かれて読みましたが、ズドンとしんどくなりました。 生きるってしんどいよね、みんな問題を抱えて生きてるよね、と改めて感じ、私は消耗しました。 元気をもらえる方もいると思います。私は消耗してしまいました。歳をとることや子を持つことが怖くなりました。

    0
    投稿日: 2021.10.17
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    30後半〜40前半の男性達の短編集。 どの主人公も「父親」「夫」の立場から家族のあれこれに立ち向かいます。 年を経るごとに接し方が分からなくなる娘、長年付き添って逆に心が読めなくなってしまった妻。家族とは。 ビタミンFは、人の心にビタミンのようにそっと効く、心に必要な栄養素ということらしいですが、子どものいじめの描写がリアルで痛々しくて、読むのが辛かったです。 また「なぎさホテルにて」ではかつての恋人と共に過ごしたホテルへ、今の家族を連れて行く話。 もしあの恋人と一緒になっていたら、今の平凡な家族の世界は違っていたんじゃないか。という淡い期待を持つ主人公。 恋人と過ごしたホテルへ連れて行かれる妻の気持ちを考えると胸が痛い。

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    投稿日: 2021.10.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    じゃぁ、なんで君は自分の育った家を出ていったんだ?君が東京で作った大切な方言って、ここにあった家庭から出て行ったから作れたんじゃないのか? いつの間にか侵食されていた家族の基盤に走っている亀裂を、重松清はささやかな他力=事件によって主人公に気づかせ、一時的にその進行をくい止めようとする

    0
    投稿日: 2021.10.08
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    ミステリーは謎が解ける。 スポ根は目標を達成する。 小説は問題を解決するものだとおもっていたが、家族の問題は未解決のまま終わる。物語の前後で変わったものといえば「問題への向き合い方」だ。 考え方が進歩するわけでもなく、精神的に成長するわけでもない。ただ、目を逸らしていた問題に向き合う。何が出来る訳でもないが問題がそこに在ると認める。不思議なことにそんなささやかな変化に心を動かされる。 問題は解消されずそこに在り続けるし、人生は続く。わかりやすいカタルシスは無く、オチらしいオチも無い。強いて言えば問題が在ることを認めただけだ。 解決しなくても物語が終わるのは目から鱗である。 短編集の多くは、子供の成長に追いつけていない親の戸惑いがテーマになっている。成長は非行や異性関係、いじめも含まれている。子供が親のコントロール外の世界に踏み出す時、親はどうすればよいのか?そんな戸惑う7人の父親の姿を描く短編集。 とくに「セっちゃん」は読んでいて苦しかった。子供がいる人が読むと辛くなると思う。 ●ゲンコツ 老いを感じ始めた主人公。自宅付近の駅前でたむろする少年に恐れながら深夜帰宅する日々。ある日、同じマンションに住む少年が夜の公園で仲間と騒いでいる場面に遭遇する。自動販売機にいたずらしているところだった。自分自身が自動販売機の営業を生業としている主人公は我を忘れて少年たちを怒鳴りつけるのだが…。 ●はずれくじ 妻が手術入院しているため、中学生の息子と数日間の二人暮らしとなる主人公。自分の意見を言えない頼りない息子に物足りなさを感じている。ある日、警察からの電話で、補導された少年グループに息子が混じっていたことを知る。不安を感じた主人公はこっそりと息子の塾に様子を見に行く。そこで見たのは件の少年グループに声をかけられる息子だった…。 ●パンドラ 中学生の娘に彼氏ができた様子に気づく主人公。妻に相談すると、相手は高校にも行かずプロのスケートボーダーを目指しているらしい。やきもきしている最中、娘と彼氏が性交渉を持っていることを妻から知らされる。父親としてどうしていいか分からない日々が過ぎる。ある日、彼氏が複数の女性と関係を持っていることが発覚。娘は自分が遊ばれていたことを知り、関係を断つのだった。 ●セっちゃん 中学生の娘のクラスにセっちゃんという子が転校してきたらしい。セっちゃんはいじめられているらしい。毎日、両親にセっちゃんの様子を詳細に報告する娘。ある日、夫婦でこっそり運動会を覗きに行くと、そこには創作ダンスで一人だけ違う振り付けで踊る娘の姿があった。不審に思った主人公が先生に話を聞くと、セっちゃんという転校生は存在しなかった。セっちゃんは娘のことだったのだ。娘にショックを与えないよう、気づかないふりを続ける主人公夫婦。ふと見かけて購入した身代わり雛を家族で川に流しに行くのだった。 ●なぎさホテルにて 人生が見えてしまい、妻といることに苦痛を感じ始めた主人公。最後になるかもしれない家族旅行で訪れたのは、18歳のころの恋人と泊まったホテルだった。2020年の誕生日に同じホテルで会おうと約束して別れた二人。再会を期待していたが、そこに届いたのは十年前に彼女が書いた手紙だった…。 ●かさぶたまぶた 立派な父との暮らしが息苦しくなった浪人生の息子と中学生の娘。友人関係の悩みを親に相談することができない。しかし表面上は理想的な家族であり、主人公もそれを疑わなかった。ある日、泥酔して暴れる息子と学校での失敗で悩む娘を目の当たりにするのだった…。 ●母帰る 熟年離婚して父とは別の男のもとへ向かった母。それから十年が経ったころ、母の相手が亡くなり小さなアパートで独り暮らししていると聞いた父が戻って来いと連絡するが、それを聞いた主人公と姉は複雑な心境になる。父を説得するために帰郷する主人公。父の気持ちを聞くうちに夫婦が一緒に過ごす時間の意味を感じるようになる…。

    0
    投稿日: 2021.10.04
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    『最泣の一冊』という帯、直木賞受賞作というところで手に取った。 家庭を持つアラフォー父親の短編集。 子供のいじめや妻への不満、会社での立場等を通じて、自分が正しいと思っていた家庭内での父親としての在り方に疑問を持ったり、肩身の狭さ、つまらなさ、虚しさを感じる。 解決とまではいかないが、それぞれ何か一歩を踏み出していく。 内容としては、つらいけれど現実にある話だろうなと思った。自分がそれぞれの父親や母親の立場に立った時、どうするだろうと思ったが、考えるとしんどくなるので、他人事として読んだ。 一歩を踏み出したその後は書かれていないが、とくに気にもならず、号泣もせず。 ただ、夫から鬱陶しいと思われず夫婦仲良く、子供にも恵まれ、何も問題なくと本当は言いたいが、たとえしんどいことがあっても乗り越えられるような絆の強い家庭になれば良いなと心の底から思った。

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    投稿日: 2021.09.26
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    私にはいまいちだった。重松清さんの小説にはもっともっといいものがある。『その日の前に』など特に素晴らしい。 最後の「母帰る」がなかったら、★★だったかも。これが直木賞だと思うと、ちょっと残念。

    2
    投稿日: 2021.09.25
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    よかった。 父親になったんだなと。これまでは自分について悩み生きてきたが、これからは家族について悩み生きてく様になるんだなと。 時々喧嘩して家族仲良く元気に。

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    投稿日: 2021.09.20
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    将来家族でこんなことがあったら自分はどうするだろうか、と考えさせられる作品。大学生のうち読めて良かったと思う。

    0
    投稿日: 2021.09.17
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    ほうほう、38歳ぐらいが中年意識、それは早すぎるよと思った。 時代が悪いのか、時の回転が速くなったのか。 若いのに、なんだかくたびれているのである。 バブルがはじけて、高度経済成長の後遺症を背負わされ、なんだかなーという嘆きは解るが。 重松清さんはこの短編集で暖かい結末を用意しているので、ほっとするが。 これが現実かなーと思うと寂しい。 もちろん、一つの切り口としてだけど。手にとるように書いてあるので。 もっと元気出して、打つ手はあるよ、と応援したくなる短編のひとつひとつ。 でもこの感想、ゼネレーションギャップでしょうね。 ここが問題。 私たちの世代が元気すぎ、いい時代だったからねと嫉妬されかねない。 でもね、無いところから始まったのと、あるところから始まったのと、どちらが困難かそれは決められない。 みんないろいろあって大変で、やっぱり頑張って人生をまっとうするしかないのではないか。

    2
    投稿日: 2021.09.16
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    このレビューはネタバレを含みます。

    短編なのに途中でやめられなくて ほぼ一気読みしてしまった。 綺麗に全回収しないところで 読み手に委ねてくるところ なんか、ハマっていきました。 個人的にゲンコツスタートで 掴まれました。セッちゃん、パンドラ なぎさホテルにて どれも良いっす! セッちゃんは読んでて辛かった… でも、最後は再生の光と信じたい。

    3
    投稿日: 2021.09.09
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    家族は自分のコントロールの効かない運命共同体で、理不尽にも自分の人生も左右されてしまう。そしてこの家族ではなかったらというパラレルストーリーを想像する誘惑がある。 家族のメンバーはそれぞれの危うさを抱えていて、特に子供はあやうくて、でも、築いてきた信頼で、なんとか打開策につながっていこうとするのはやはりいいなと思う。

    1
    投稿日: 2021.08.29
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    30代後半に差し掛かった父親の家族とのかかわり方の話。 「中途半端だよな、三十七、八って」「子供の世界から「もしも」の概念が消えたならつまらないものになるだろうな。おとなは逆」とあるように、10代・20代の価値観を持ちながらも身体も環境も着実に変化していくギャップに翻弄される主人公たちが新しいステップを踏み出す物語。 自分にはまだちょっと早いかなと思いながらも、自分もいつかそうなるだろうなと。

    0
    投稿日: 2021.08.28
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    短編七篇、それぞれFから始まる英単語をテーマとした話になっている。テーマが明らかにされているので非常に読みやすく、解釈しやすかった。 家族を背景にした作品は非常に考えさせられる。

    3
    投稿日: 2021.08.18
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    それぞれの登場人物が抱えている心境を細かく記載していて感情移入できたし、ハートフルストーリーだった。 いじめの話に関しては、変に解決させるのではなく、一歩前進したとこらで終わらせるのも非常に良かった。仮に自分に子供ができたときに、家族にばれないように取り繕っていることや、それを知ってしまったときに非常に悲しくなってしまう。。

    0
    投稿日: 2021.08.12
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    めちゃくちゃいい。 めちゃくちゃ泣ける。 でも、温かい。 重松さんの作品はホント素敵だ。 ただ身につまされるのは、30代ってもう、そんなに責任があって、中途半端に老いているものなのか、ということ… 自分は半ばにさしかかったが、まだまだ自分は幼いし責任ある立場かというと、まあそういうわけでもなく、子どももまだ小さいからかもしれないけど、時代の要素もあるかもだけど、 うーん。しっかりしなきゃなあ。 父親の立場の作品が多いように思うけど、父親ってやっぱり、こういうものなんだろうなぁ、てリアリティがある。これは時代もあんまり変わらないよね。 そして、私の一人息子。めちゃくちゃ幼いけど、きっと女の子だったらもっと悩み多いんだろうなぁ、男の子でよかった、なんても思ってしまった

    23
    投稿日: 2021.08.11
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    おじさん世代(35-45?)の方は共感できるのかな。自分はまだ20そこらだから、自分もこんな風に思う時が来るのかなと想像を膨らませるしか出来ない。娘や息子をもったお父さんの日常を少し覗いたような気分になり、自分も家庭をもちたいなと。結婚すら想像するの難しいけど

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    投稿日: 2021.08.04
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    「F」から始まる様々なキーワードを作品のテーマにして書かれたとありました。どの話にも30代後半から40代のお父さん(farther)が出てきます。 何とも言えない思春期の感情や、働く男性の心情がリアルです。ちょっとくたびれすぎな気もしますが…。ドラマチックとは違うけれど、ちょっと明日は頑張ってみようかなと思えました。

    1
    投稿日: 2021.08.01
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    同じオッサン世代ですが、共感じゃなくて違和感でした。歳を取ることがつまらないと感じてる人は共感出来るんでしょうか、、、

    0
    投稿日: 2021.07.30
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    自分が若かったら読まないし、読んでもつまらなかったろうなぁ、という話。 生活って、華々しいことはめったに起きないし、たまに起きる小さなあれこれも、スカッと解決したり、劇的に変化したりしない。だからわたしの人生はつまんない、じゃなく、だけど人生はしみじみいい、生きてるの楽しい、って若い頃は負け惜しみに聞こえるんだよね。 いや、人生ってホントにいいぜ。しんどいけどな。

    1
    投稿日: 2021.07.23
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    すべて子供ありの父親が主人公。38歳の自分とほとんど同年代なので興味深く読了。でも、共感はあまりしないなぁ。渚ホテルの元カノに会おうとする話の主人公がなぁ。でも、オチは好き。 もっとも、理解不能が母帰るの、離婚した義理の兄貴の発言。家庭は帰りたい場所じゃなく、でていきたい場所なんだ。だからも君も外に出て結婚できたんじゃないか。。。。 あんたは浮気して、自分が作った家庭を壊したけど、主人公は新しい家庭を作っただけだ。真逆の行為。これがあたかも、真実っぽく話されるのが理解できなかった。

    2
    投稿日: 2021.07.23
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    直木賞受賞作だけあります。泣かされました。 どれも深いお話でしたが、 「セッちゃん」は、涙無くして読めません。 そして、改めて家族ってナニ?と考えさせられたのが、「母帰る」。 『二つ重なった「帰る」が、すんなりと耳に染みた。「お帰り」とむかえてくれるひとがいるのなら、どこからどこへ向かおうとも、それはすべて「帰る」になる。』

    0
    投稿日: 2021.07.12
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    短編の主人公たちはみなアラフォーで、人生なるようにしかならないと知っているし、いまさらそれに抵抗しようとも思わない。けど、様々な出来事を通じて、人生単純に に割り切れるほど簡単じゃないことを思い知らされる。 時代背景が今とは違う部分もあるけど、本質的なところは変わらないはず。人生の歩き方を深く考えさせられる一冊。 自分が37歳になったとき、どういう人生を歩んでいるだろうか。父が37歳だったとき、どういう想いを抱えていたのだろうか……

    0
    投稿日: 2021.06.27
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    サラリーマンであり、父親であり、といった発散出来ない立場と気持ちの揺れを様々な設定で表現していて共感がもてました。

    0
    投稿日: 2021.06.22
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    ビタミンF 重松清 2020/12/28 僕は今26歳で、そのことを自分では中途半端な年齢だなあと思っている。 もちろん、世間的に言えば「若者」にカテゴライズされるのは認識しているし、おっさんになったなんて微塵も思わない。 けれど「大人」になりきれているとは思えないし、かといって子供だとも思わない。 小説を読んでいて、小学生の主人公には自己投影できないし、中年のお父さん(ビタミンFの主人公)にも感情移入できない。 この本にはおじさんの心理と、彼らの生きる意志、大事にしているものが詰まっている。 僕はまだそこに共感することができなく、けれど、その意味は理解できる。 26歳、この本を読むにはまだ中途半端な年齢だったようだ。 いつか、お父さんに感情移入できるようになった時に読み返したい。 しかし、この本はいわゆる冴えないおじさんの生活をリアルに描いている。 僕らがただ生きているだけで日々積み重ねていく小さな絶望。 その描写が誇張も矮小もせずに描かれているので、なんとなく読んでいて微妙な気持ちになる。 けど、本当は気づいていないだけで同じくらい小さな希望が積み重ねっているんだろうな。 ▶︎pick up おとなは「キレる」わけにはいかない。おとなは「折れる」だ。

    1
    投稿日: 2021.06.14
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     号泣必至と説明があったが、号泣することはなかった。  心に響くという表現が正しいのかなと感じた。  一番共感できたのは【なぎさホテルにて】  ある時、おれの人生ってこんなものか、、、と考えてしまう。  昔別れた彼女を思い出す。  人生うまくいかないときって、昔のよかったときのことを思い出すことあるよなって共感した。  読んでいて腹が立ったのは【せっちゃん】  娘がいじめられているのに、なぜすぐに行動を起こさない!  自分が親の立場なら、学校に乗り込んでいじめてる奴らを、、、なんて考えながら読んでいた。  ただ、実際問題、学校の先生の対応にかかってるんだろうな。

    0
    投稿日: 2021.06.05
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    ●家族について書かれた、7つの短編集。主人公達は30~40歳の中年男性。私がよかった短編は、次の二つです。●①セッちゃん(いじめられている自分を架空の転校生にして、作り話の中に逃げようとした娘の話)、②母帰る(30年以上連れ添った後、家を出た妻を再び呼び戻そうとする父親)。母帰るは、「なにも要らない、悪いのはすべて自分、責められてもなじられてもかまわない、ただ離婚してほしい、家を出ていきたい、母は淚まじりに訴えた」とある。その後、母は内縁の妻として生きるが、男性に先立たれる。事情はあると思うが私には理解出来ない。人それぞれ、考えさせられる一冊でした。

    31
    投稿日: 2021.05.30
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    はずれくじ パンドラ セッちゃん かさぶたまぶた が特に良かった。 泣けると帯に大々的に紹介されているが、泣くことは一度もなかった。 泣くというより、深く考えさせられる。 家族のこと。 自分のこと。 心当たりが誰にでも必ずあるだろう日常の様子、引っかかってたものがすーっと晴れる。

    0
    投稿日: 2021.05.29
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    大人向け、父親向けの一冊。もちろん誰に感情移入してもいいけれど、これは父親かな。それにしてもこの帯が最泣、涙腺崩壊、泣けないわけがないとかちょっと言い過ぎ。じんわり染み渡る良作に変な雑念が入ってしまった。

    1
    投稿日: 2021.05.20
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    「家族」について深く考えさせられる1冊だった 20歳女だから、お父さん側の感情を理解し切ることは出来なかったけど、それでも家族を大切にしようって素直に思えた作品だったな。思松さん、凄い。 誰よりも近い関係であるからこそ家族との距離感って難しいけど 大切なことは、一緒に過ごしてきた時間を美化せずに全て受け止めて、これから共に過ごす時間の一つ一つを愛おしむことだと思えた。

    0
    投稿日: 2021.05.14
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    あらすじにかかれた、40前後の登場人物や、帯に書かれたFをキーワードにした話というのに惹かれて読んでみた。 家族の形、夫婦の形、子供としての気遣い、老年になってからの夫婦の形、いろいろ考えることの多い一冊。

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    投稿日: 2021.05.09
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    最泣と帯に書いてあり、涙活する気マンマンで読んだのに泣けなかった〜。 男性目線だったからかな。。。 子供いないからかな。。。 「母帰る」がよかったな。

    0
    投稿日: 2021.05.05
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    30代後半以上の結婚して子供いる父親は読んどいて損はないかと。 年頃の子供との葛藤、我が家にもあと数年で訪れるんだなぁーとしみじみ。今のうちに予習が必要ですねー。 そして個人的に一番共感したのはなぎさホテルの話。なんかは、家庭持った男(女もか)なら一度は考えるであろう「たられば」と妥協感。 帯に書いてあるほど涙腺は攻撃されませんでした。あと知らずに買ったけど結構古い作品なのですね、どの話も平気で部屋でタバコ吸ってるw 自分は36歳ですが、まだ吉岡みたいな感じですw

    6
    投稿日: 2021.05.05