
火神を盗め
山田正紀/文藝春秋
作品詳細ページへ戻る
総合評価
(1件)3.0
0 | ||
0 | ||
1 | ||
0 | ||
0 |
- tikuo"powered by"
インドと中国の国境に作られた原子力発電所「アグニ」において、日本から出向した亜紀商事の社員を含む、技術者のほとんどが落盤事故に見せかけた爆発によって殺された。生き残った工藤は、原子力発電所内に、CIAが仕掛けた爆弾が存在していることを知る…。 山田正紀の作品の中でも、冒険小説風の風合いが強くて読みやすい、スパイvsスパイもの。CIAと中国、ソ連のKGBが序盤では複雑に絡み合い、大丈夫か?と思ったところで、工藤たちの行動がスタートする。 工藤たち5人については、あれ?それでいいの?という程度の訓練ぶりに、ほとんど活躍すること無くという感じで、むしろその前のサラリーマン時代に焦点が当てられている。同様の作だと半村良のような、ハードボイルドやSFにおける生活感といったものが、サラリーマンの悲哀とともに描かれている。 終盤の1/4くらいで、ようやくメインの活躍が始まるわけで、ハードボイルドアクションを期待した人たちにとっては、少々消化不良になるかもしれない。しかし、個人的にはこれくらいでいいんじゃないのかという気はする。戦車などの記述が少しだけでてくるが、このあたりは作者の趣味なのであろう。 後半になればなるほど、コメディーや悲喜劇の様相を呈してくる。タイトルからめんどくさそうな話だなあと感じている人は、それほど構えなくていい作品だ。 最後に「ストーリーの都合上、実際の原発の構造とは異なっております」というところもクスっとくる。逆にいうと、機械など色々、よく調べてあるんだよね。最近の作家に足りていないのはそういうところ。 (余談) 落語家の息子で苗字「桂」はないやろ。 文庫書籍版が見つからないbooklog。どうにかならんのかな。
0投稿日: 2021.06.10