
総合評価
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powered by ブクログ様々な本を読んできて、新しい世界観の作品に触れることはないだろうと思っていたが、この作品がそうだった。自分が読んできたどの小説にもない、独特な雰囲気が漂っている。初めてのものに出会った興奮と、先をどんどん読みたくなるストーリー展開により、自分にとって大変価値のある読書体験となった。 ドラマを見なければ読んでみようと思わなかったわけだが、ドラマを見る前に読みたかった。
1投稿日: 2017.08.26
powered by ブクログ再読。ふとしたときに読みたくなる、特に雨がしっとり降る夜に。ドラマから入ったが、BGMをちいさく流しながら読むのが好き。
2投稿日: 2017.08.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
衝撃的な内容だけど、あくまで静かに物語は語られていく 自分たちの運命を受け入れていく 子供を産めない、なりたい職業に就けない 彼らと普通の人との違いは何なのか 意図的に作られたヒトは人ではないのか
0投稿日: 2017.07.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
翻訳とは思えない自然さで、素晴らしい文体だった。 精緻で抑制の効いた文章を読み進めるうちに、嫌悪し、痛みすら感じるほど近く、登場人物たちの心的距離の間に巻き込まれる。こちら側から見るだけの景色の中では、あちら側からの眼差しの意味は想像を超えているので、リアリティはさほど沸かない、のがリアリティなのではないかと思う。 文庫版の訳者あとがきで、疑問というか思考がひとつ提示されている。 私は、女性は二人とも受けるだろうと思う。あり方の見直しを問うたとしてとも、存在意義を否定する描写はなかったはずだ。役割は役割として、善く生きることを奨励していたのだと思う。
0投稿日: 2017.07.13
powered by ブクログ役名:トミー 映画ではアンドリューガーフィールドが演じていました。 あまりにも辛すぎる事実を知らされたあと、車から降りて行き場の悲しみををただ嗚咽するしかないあのシーンを…彼のお芝居で見たいです
0投稿日: 2017.07.07
powered by ブクログ長年介護人を続けている『キャシー』。イギリス各地にある施設で育てられた『提供者』の世話をするのが仕事だ。同じ施設出身の『ルース』や『トミー』の介護人も務めた。 もうじきそれも終わる今、生まれ育った施設を思いだす。奇妙で楽しく、特別な場所『ヘールシャム』を…。 同名でドラマ化もされた原作。 臓器提供者として生まれ施設で育てられるクローンの子ども達。卒業後は介護人を経て提供者へ。 倫理的タブーに触れる作品。私達は都合が悪いことからは目を背けがちだ。見えないふりをしていれば、無くなるとでも言うように。 ただ、そうして隠されてしまった者の叫びはどうなるのだろう?この物語の彼らは、声を上げようとはしない。もちろん望んでいるわけではないのに。彼らにとって、それが世界の全てだから。
0投稿日: 2017.07.04
powered by ブクログ静かな本。イギリスらしい。 人という存在に対し、提言をしているが淡々と1人のクローン臓器提供者の人生が描かれるのみだ。 今後、細胞培養による臓器作成は本格化していくだろうが、人が生きることはどこまで助けるべきなのか、考えていかなければならないだろう。
0投稿日: 2017.06.06
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「非日常の世界の普遍性」 下手くそだが、まずその作品を表す一言をできるだけ付すようにします。 <描き方について> ある事情で長期間本が読めておらず、久しぶりに読書したこともあって、どんどん読み進めた。全体的に雰囲気は暗く、はじめから何かがおかしいような、違和感と共に読むが、先が気になって読書が進む。個人的な感想だが、私はそうした要素は重要だと思っていて、純文学でもある意味探偵小説的な、次第に謎が解き明かされていくような感覚を持って読書できるような本は優れた本だと思う。 <内容について> 異なる世界観・架空の時代が舞台になっていて、それが作者の力量によってしっかりと構築されているだけに、多分表現したい内容自体は普遍的なものであるのかもしれないが、はっきり言って、あまり実感が持てなかった。 終盤で、現実世界とこの物語世界の接続(元学校の先生との対話)が図られるが、結局そこでの先生の主張は、どことなく情け容赦のないものに思えた。登場人物たちの心理や感情の動きは、結局のところその世界を生きる者にしかわからないものなのか、と感じた。小説の中の世界としてあまりにも高度に完結しているために、それはそれとして十分に完成度が高かったが、現実の世界に生きる読者として、どう受け止めていくべきかがわかりにくかったのかもしれない。 それともそのような特異な環境設定を通じて、逃れようのない悲しみや孤独をかえって際立たせているのか。例えば作者が、クローン技術の非倫理性について警鐘を鳴らしたいとの意図を持ってこの小説を書いたということならば、より現実世界との接点は密になったであろうが、そんな小説なら多分あまり面白くはないと思う。あくまで、特異な環境の中で、その中で登場人物たちにとっては普遍であるところの愛や哀しみについて周到さをもって描いているから、優れた作品なのだと思う。
1投稿日: 2017.06.04
powered by ブクログ読んでいくうちどんどん暗い気持ちになっていったけど、止められないくらい面白かった。 感情の微妙な流れの中心を掴んでいるというか、普段なら、言葉にしてあえて表現しない部分を浮き彫りにされているところが好き。 土屋さんの訳がすばらしくて、惚れ惚れする。「日の名残り」同様、翻訳された文章とは思えないくらいだった。 ただ、この作品は、また読もうと思うには時間が掛かりそう。
0投稿日: 2017.06.03
powered by ブクログ原作を一度読んでとても感動したので、日本語訳で再読しました。傑作だと改めて思いました。土屋政雄訳はとても自然で美しいです。 結末を知った上で再読すると、一つ一つの言葉の深い意味が分かり、いろんなエピソードが胸に深く突き刺さります。ヘールシャムの暮らしを描いた第一部では、音楽に合わせて踊る「わたし」の姿を見たマダムが思わず泣いてしまう場面、そして、ルーシー先生が雨の日のベランダで「あなた方は教わっているようで、実は教わっていません」と子ども達に話しかける場面が印象的です。これらの場面は、「せつない」を通り越して「痛々しい」というべきでしょう。子ども達に与えられた運命はものすごく残酷です。 キャシー、トミー、そしてルース、彼ら三人のとても微妙な関係と感情のやり取りの描写も見事です。彼らの気持ちや振る舞いは本当に人間的です(だって、実際に人間なのだから……)。 「何か大事なものをなくしてさ、探しても探しても見つからない。でも、絶望する必要はなかったわけよ。だって、いつも一縷の望みがあったんだもの。いつか大人になって、国中を自由に動き回れるようになったら、ノーフォークに行くぞ。あそこなら必ず見つかる、って……」 物語の比較的早い段階(第1部・第6章)で語られるルースのこの言葉に、今回は愕然とさせられました。ここに物語の全てが集約されていることに気がついたので。自分達の運命について徐々に理解していきながら、それでも彼ら・彼女らが必死に探していたものは何だったのか。そしてこの言葉が、第二部でのノーフォークへの旅、さらには第三部のマダムとの再会へと繋がっていくのです。絶望のふちで追い求め続けた彼らの一縷の望みは、果たして叶えられるのか…… それにしてもこの作品には寸分の隙もないです。様々なエピソードが、その内容、順番、お互いの関係においてこれ以上のものはないと思えるほど緻密に組み合わされて嵌め込まれ、一つの大きな流れの物語を形づくっています。純粋な空想から世界観を組み立て物語に仕立ててしまえる圧倒的な作家の力量に、ひたすら感服しました。
2投稿日: 2017.05.28
powered by ブクログ翻訳とは思えない、素晴らしくこなれた文章。静謐な文体で会話から溢れ(こぼれ)落ちた感情の機微を丁寧に描いている。繊細な感情描写をしているのだけど語り手キャスがその時どう感じていたのか?が上手く逸らされているなぁという気がした。物語の感想としては、人というのは結局のところ自分の置かれた環境というものを受け入れるしかないのかなぁ、と思った。絶対的に差別された存在だとしても。それって悲しいなあ・・・。
3投稿日: 2017.05.22
powered by ブクログテーマが重い。 しかし予備知識無しで読むとストーリーがイマイチ掴みづらいのでいつか原書で読んでみたいと思う。
0投稿日: 2017.05.21
powered by ブクログ翻訳本は苦手なのだけれど、知らずに買ってしまった。著者名詐欺…! 介護人、はもちろん老人介護や障害者介護だと思って読み進めた。だけど段々、誰を介護するのか、被介護者が何を提供するのかがわかってくる。そうと知っていながら、そうある自分を全うする登場人物たちが送った青春時代。昔見た「アイランド」という映画を思い出した。倫理を問う小説ではなかった、と感じたけれどどうだろう。そういう状況下でしか生まれ得ない美しさを描きたかったのかな。
4投稿日: 2017.05.14
powered by ブクログよくもまあ、ここまで抑えた筆致でこれだけのことが書けるものだなと感嘆しました。 途中までなんとなくしか設定がにおわされていないのだけれども、生きたいという欲求というか、渇望というか、主人公がまだ提供者となっていないことからくるなんとなくの疎外感とか。 テクノロジーとしてはもうこういうことも可能なのだろうなーなんてぼんやり考えつつ、でも、作中でも出てくるようにいったんその手段を獲得した人間はそれから離れることはできなくなるのだろうな。倫理とかそういったものから目をそむけてしまうんだろうな。だれも肉を食べるときにと畜されてゆく生き物のことを考えないように。Iphoneを使いながら、レアメタルの鉱山で働く人々のことなんて微塵も思いもよらないように。便利さとトレードオフになっているなにかをわれわれは「見なかった」ことにしているのだなーと、つくづく身につまされた作品。 日の名残りのときも感じたが、この淡々とした終わり際が秀逸。
1投稿日: 2017.04.01
powered by ブクログドラマから見ての読了。ドラマで印象的だったマナミはおらず、トミーの描く絵も愛情を示すための似顔絵ではなく動物の絵というところが大きく違っていたなぁ。あとエミリ先生のことも。 ドラマはドラマですごくよくできていたんだなぁ…と思う。歌もとても素敵だった。 本は本当に抑圧された表現で、繊細に描かれていた。ドラマを見てからだったせいで、子供達と同じように、自分達の存在がどういうものなのか理解していくことができなかったのが残念。 実際に【ある】と知ってしまったら後戻りできないこと、情を持ってしまったら利用できなくなるから、あえて貶めて見ることなど、心情的には理解できてしまうことが悲しい。これからの世界であり得るのかなぁ…
0投稿日: 2017.03.26
powered by ブクログイギリスのどんよりした曇り空をずっと見ているような小説。静かで寒くて湿っぽい。 決められた運命に気づきながらも、どこの国にでもある、子供時代の優劣関係や友達関係を過ごしているのが痛々しい。
0投稿日: 2017.03.25
powered by ブクログ社会の理想的なシステム内で臓器を提供するクローン人間と、社会の現実的なシステム内で精神の健全さを提供する社蓄とで、何が違うんだろう、と考えさせられる。教わっているようで教わっていない、それはクローンじゃない人間でも一緒じゃないか。結局提供して終わる運命、それは運命の長さの違いだけで人間でも一緒じゃないか。 SFながら、私達となんら変わらない感性を持つクローン人間視点の物語が、また深い。
1投稿日: 2017.03.22
powered by ブクログ難しい。舞台は特殊だけど、書かれてること自体は普遍的なようにも思われる。冗長さはやや感じた。もやもやしたものも複数残るけど、まあそんなすぱっといくテーマでもないしそれはそうか。
0投稿日: 2017.03.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ドラマにもなっていたようで(見てないけど)。 ストーリィというか、主人公たちの(当人にとっては)衝撃的な「特性」、は作中序盤にわかるのだが、SF的ガジェットで読ませる物語ではなく、「生きるとは何か?」を追い求めた小説。 主人公のキャシー・Hの精緻な語りによる回想がほぼ全ページにわたって続くが、そのせいか、当人にとっては衝撃的であるはずの事実、「生きていても意味がない」という事実が、主人公には理解できていないのではないかと思えてくる。 しかし、(これがこの小説のすごいところなのだけれど)最後のシーンで、この認識が全く違うことがわかる。語り手自ら最後のシーンを「甘え」と表現することによって暴露されるのは、キャシー・Hは耐えて生き続けた、という事実である。「生きていても意味がない」とは知りながらも。 精緻な語りによって隠しながらも、最後に生きることの悲しみとそれに抗う葛藤を読者自身に読ませる、というなかなか類を見ない表現だと思う。素晴らしい小説。
0投稿日: 2017.03.01
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
クローン人間を題材にしたいわゆるSF的なミステリー風小説だけど、それはあくまで舞台設定の手段に過ぎないように感じた。 自分のルーツを知ることは自己・アイデンティティの確立に欠かせない。 自出が不明な子供達にとって生きていく上で拠り所となるもの。ここではヘールシャムであり保護官であり仲間達。 それを考えると、キャシーがなぜ暴君のようなルースと友情を続けたのか、なぜトミーはキャシーではなくルースと付き合ったのか、そしてなぜキャシーはそれを指をくわえて見ているしかなかったのか・・・が理解できるような気がする。 【映画版】 キャシー役の役者がかわいい、上手いくらいで、見るべきものは特になかった。 舞台となるイギリス南部の街の様子をうまく思い浮かべることができない場合、補足資料として観るのはあり。
0投稿日: 2017.02.22
powered by ブクログこの「私を離さないで」について 「細部まで抑制が効いた」というのがあとがきの英米文学者柴田元幸の言葉だが、これに勝るものはないように思う。 丁寧に丁寧に、こぼれ落ちることのないように、心の動きまで書き取られている。緻密に、かつゆっくりと進んでいくストーリーは、それでいて冗長さを感じさせない。
1投稿日: 2017.02.15
powered by ブクログ中々話がつかめなくて苦戦した記憶が。 ケアヘルパー、寮みたいな場所、それを卒業したあとのモラトリアム、"提供"という言葉に含められた行為。
0投稿日: 2017.02.14
powered by ブクログ"将来に何が待ち受けているかを知って、どうして一所懸命になれます?" 生殖能力のないクローン人間が、臓器提供用に育成されているというグロテスクな世界観が静謐な筆致で描かれている。ぎょっとする設定だが、「情報が意図的に隠されている」、とか「人間はある認知の枠の中で生きている」、「世の中の暗部にあえて無関心でいることで心の平穏を保つ」などの点で、実は現世と大して変わらない。
1投稿日: 2017.02.08
powered by ブクログどこにでもあるような、思い返せば誰もが少しは思い当たるような、幼少期〜10代の人間関係。 散りばめられたエピソードのどこかしら共感できるところがあると思う。 でも、全体に漂う「曖昧さ」「つかみどころのなさ」「不可解さ」が、自分と「彼ら」は違うのだとぼんやり教えてくれる。 最後の最後に、靄で見えなかったものの正体がほのかな絶望と切なさとを伴って明かされる。 独特の読後感。
0投稿日: 2017.02.05
powered by ブクログ昨年、ドラマ化された時に凄く気になっていた作品、ようやく読む時間がとれました。 巻末の解説で柴田さんが、また、文庫版あとがきで土屋さんが述べているように緻密な構成ゆえにあまり具体的な感想を語れないけれど、このテーマに対してこういった設定を創造できるなんて…と感嘆しながら読み進めていました。その一方でキャシーやルース達の日々のやりとりがあまりにも可愛らしく、背景にかすめる彼女達の境遇に関する違和感を除けば、その年代の子どもらしい心の動きが細やかに描かれていて、物語にすっと引き込まれてゆく理由はここにあるんだな、と感じました。 あとは、全体を通して流れるどんより寒々しい空気はイギリスの気候そのもののような気がします。イギリスへいったことがないので上手く言えないけれど、特にラストシーンでそう強く感じました。
1投稿日: 2017.01.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
解説の土屋政雄さんが「作品世界を成り立たせている要素一つひとつを、読者が自分で発見すべき」といった通り、単一のテーマ、問題意識によって形作られているものでなく、現実よりはわかりやすいにしても、様々な問題の上に成り立っている社会をキャラクターや設定をフルに使って面白く読ませてくれます。 けれどその中で”核”を挙げるとするならば、「あなた方は教わっているようで、実は教わっていません」というセリフでしょう。私たちの視野はそれまで生きてきた世界の教育によって形作られているものです。その事実の恐ろしい側面を、この世界を通して見ることができました。
1投稿日: 2017.01.26
powered by ブクログたまたまドラマを見て気になったので、 原作も読んでみました。 おおまかなストーリーは変わりないのですが、 これは珍しくドラマの方がいい気がしました。 ただドラマはドラマで納得出来ない部分や きれい事にまとめ過ぎた感もあるのですが、 解りやすさはだんぜんこっち。 小説の方はよく構成されていて、 最後まで抑制の利いた一人語りの回想文になっています。 いい本じゃないかなーとは思うのですが、 ドラマを見た後では抑制されすぎててある意味パンチがナイ。 でもドラマ見てなかったら主人公たちが何者か知った時点で、 パンチがないどころかかなりびっくりするかもしれませんね。 残酷な運命を当り前の人生として受け入れ、 日常として淡々と語る静謐な文章は嫌いではありません。 良くも悪くも印象深く、 あまり他にはない本だと思います。
0投稿日: 2017.01.06
powered by ブクログ少しずつ少しずつ読みながら、やっと読み終わった。長かった。 優しい語り調のまま、静かに始まり終わる。しかし題材がものすごいダークなものを抱えてると、だんだん気付きながら、最後近くなって明らかになって…やっぱり救いないダークで、優しい語り調とは裏腹に沈んだ。救いがない存在。じわじわとズシーンとくる。
1投稿日: 2017.01.02
powered by ブクログ重く衝撃的な内容にも関わらず、感情を抑えた語り口で淡々と進む。 だが、それが良い。 透明な膜が周りに張り巡らされたような、そしてその膜を破ろうにも破れない心持ちがして辛い。 いや、辛いというよりは虚しい…のかな… そんなにみんな長生きしたいの?? ひょっとしたら反抗したり逃げられるかもしれない状況なのに、誰もそう思わない。それがとても怖かった。
4投稿日: 2016.12.14
powered by ブクログカズオ・イシグロの物語には幻惑され、心を揺さぶられる。それは「記憶は捏造する」「運命は不可避」というテーマのためで、読み進めて行く中でどこに立っているのかわからなくからだ。静謐で歪んでいる世界。
0投稿日: 2016.12.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
終始霧が張ったような、靄の中を見ているような雰囲気があった。 私は最初アンドロイドの話かと思っていて読んでいたが、すこし近かったようだ。 ドラマで少し見ていたからか、配役そのままに読んでいたように思う。 読んでいる途中で何点か首をかしげるようなシーンが出てきたが、結局それについては触れられることなく過ぎてしまっているのだけどどういう意味の表現だったのだろうと気になる。 クローン人間が人によっては恐れられるということだけれど、私はあくまでクローンだとしても細胞の分裂から生まれた人であってそこまで恐怖の対象にはならない。 そのためもっと機械的なアンドロイド、ロボットに近いものなのかなと思ったのだと思う。 時間がたってから読み返したい作品。
1投稿日: 2016.11.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読んでいて息苦しくなるような小説だった。 クローン人間だけどここに出てくるのは 私たちと同じ感覚を持った『人間』。 笑い、泣き、傷つく同じ人間なのに、 生まれながらに提供という残酷な運命を背負わされている。思いテーマだけど、物語は静かに静かに進んでいく。 キャシーが女の友情とトミーへの愛情の間で揺れているのがもどかしい。とにかく登場人物の感情の描写がすごくリアルだった。それだけに読み進めていくのは辛いものがある。
0投稿日: 2016.11.08
powered by ブクログ終始物静かな感じで淡々と文章が綴られている。主人公の回想という形式のため余計に抑揚が抑えられている感じを受けた。 所々、繊細な心理描写がありそこは非凡なものを感じた。 翻訳も良かった。
0投稿日: 2016.11.05
powered by ブクログ(*01) 周到な作話であり、当代一ではないかと感銘を受けた。 論点はいくつかあるだろう。 ジャンルとしては、SFというよりもユートピアないしはディストピア小説として、まず読める。 この造られた物語世界では、いくつか避けられているものがある。周到に描かれてないものがいる。 触れることなく伏せられていたのは、第一に神であった。第二に色であった。これはどういうことだろう。 神については、すぐに創造という主題が思い付かれる。マダムは、アダムでもイブでもなく、マリアの寓意であった。前半のヘールシャムはその他の点で全き宗教施設であるが、神が不在である。ヘールシャムの彼女ら彼らが神の創造物でないために神がいないのだろうか。もっと勘ぐれば、人間は神のクリエイションの失敗を体現しているのであって、ゆえに不具合のある臓器を神に替わってクリエイションすることで、神を非難し、神に抵抗する世界がこのユートピアであると疑うことができる。つまり究極の錬金術としてのホムンクルスというオカルトの伝統の延長にこの物語は位置づけられる。 色が無い世界だからといって色欲がないわけでもないが、彼女ら彼らの性がどこかのだれかの管理下に置かれているようなカプセル感には現代への戯画が込められている。色彩がない、彩度がないからといって、灰色とも言えない、白とも言えない、黒とも言えない世界は、クリアであるのだろう。 後半に、ありえたかもしれない自分の可能性、ポッシブルに会いにいく場面がある。オープンオフィスのガラス越しのクリアさは印象に残る。しかしそこには予感をともなうグラビアと同じように、あちらとこちらの隔たりしか感じさせない。 このようなカプセル感覚やガラスケース感覚を破るものとして、風があり音があり揺れがある。風は最終盤の重要なモチーフになっている。風はガラスに入ったひびや穿たれた穴を暗示している。音は光とともにガラス越しに入ってくるが、光には触れることができない。音にはガラスを通して鼓膜で触れることができる。磁気で記録されたカセットテープではあるが、ラジカセで再生されたこの音楽はどこか懐かしい。 ところで、この世界にはテレビジョンもテレフォンもないように感じる。ラジオはあるだろうか。ライブ性に欠け、中継基地をもたない世界のようでもある。写真と録音、こちらとあちらとの生の繋がりを定立することができない世界のようでもある。 ヘールシャム、コテージ、施設といった前半から後半までの軸となるロケーションに感じるのもやはり、風の噂と耳から入ったものの増幅である。彼女ら彼らの行動はいつも確証のない噂に左右されている。子宮になすこともなく蠢きあれこれと世界を夢見る胎児のようでもある。そのような姿こそが、このユートピアによって戯画化された現代のこちらの世界を生きるわたしたち人間の姿なのかもしれない。
1投稿日: 2016.10.10
powered by ブクログ何年か前に興味を持ち購入。途中まで読んだもののいまいち入り込めず離れてしまった。それから数年、ふと読みたくなって本棚から手に取ることに。これはレビューというよりも、再度手に取った際の出来事について。 最初に読んだ時は一体何の話なのかわからなかったことが離れた原因であったが、再度一から読み直そうと思った今回はネットでこの作品を検索。映画にもなっていたことを初めて知り、そこに書かれていたあらすじでこの話の根幹に気づいた。 提供者って、そういうことだったんだと。 すっきりしたしちょっとした衝撃もあったが、少し残念な気持ちにもなった。文庫本の裏表紙にあるあらすじにははっきりとは書かれていなかったのに、映画のあらすじには何のことはないようにさらっと書かれていたからだ。 そのおかげで初回ではよくわからないままだったことがすっきりし興味が復活して、再び手に取ることができて読了したのだが、知らずに読み進めていたらさらに衝撃を受けて面白みが増したのではないかと惜しいことをしたように思ってしまう。穏やかな語り口で物語が進んでいき、そんな語り口だから穏やかな話だわなんて錯覚を読んでいて起こしたような気もする。 何日間かかけて読み進めていて、最後の方は結構なページ数だったが一気に読んでしまった。どんな最後を迎えるのか、終わり方が気になったからだ。ああ終わってしまったというのと、夢を見ていたような、あれは何だったんだろうというのが率直な感想。とにかく物語を追っていったら覚めた感じ。 時間を置いてまた読んでみたい。その時の私が何を思い、考え、どう感じるのか楽しみである。
0投稿日: 2016.10.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
たんたんと進み、あまり感情移入ができなかったが、そこが普通の人間と同じなんだという風にも思えた。猶予のために行動し始めてからが胸に迫ってきた。今でも、闇で臓器売買はあるのだろうし、小説のようなことも起こりうるなと思う。
1投稿日: 2016.10.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度……。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―――全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。(裏表紙より) ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 綾瀬はるか、水川あさみ、三浦春馬がドラマで演じていて、 この原作が気になって読んでみた。 ドラマとは違って、小学校時の脱走もなければ、即事解体のことばもなかったし、園長先生のクローンの話も、出てこなかったし、終わり方も違ったのだけれど、大意は変わっておらず、脚本家の力を感じた。 テレビドラマを見ていなかったら、この話が人類のための臓器提供者を、クローン人間の話だとはおもわなかったと思う。 文章が奇麗で、日本人が書いた英語を和訳したからか、まどろっこしい言い方がなかったので、違和感無く読むことができた。
0投稿日: 2016.09.29
powered by ブクログこの感情はなんだろう… 最後まで穏やかな語り口なのに、突きつけてくる 特に主人公の親友・トミーの純粋さ、いつも明るく振る舞う姿は目に浮かぶようで心が痛む じぶんの普段のペースからすると、かなりページをめくるスピードが速かった それにしても回想が大半を占めるこの物語を、どうドラマ化したんだろう…?
0投稿日: 2016.09.22
powered by ブクログイギリスを舞台にしてはいるものの、この物語の中の世界はカズオ・イシグロが頭の中で造り出した世界。現実世界ではあり得ないお話。 でも、どこかで歯車が狂っていたら・・・ もしかしたら現実世界でもあり得た話しなのではないかと感じた瞬間、背中がゾッとしました。 カズオ・イシグロの文章はとても柔らかで静か。物語に引き込まれて、するするっと読めてしまいますが読後、心の奥底に重いものがズシッと乗っているような感覚になります。 今回もそうでした。 色々と考えさせられます。
4投稿日: 2016.09.10
powered by ブクログヘールシャムと呼ばれる施設で生まれ育ったキャシー達。そこでは保護官によって良い提供者となるための教育が施される。頁を繰るに連れて明らかになるヘールシャムというシステムの全容と、特殊な環境下で生活する少年少女達の揺れる心を主人公の視点で描いている。 今後科学や医学の進歩によって現実でも議題になるであろう倫理的問題考えさせられる。
0投稿日: 2016.09.10
powered by ブクログ【自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春 の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇 妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々 がたどった数奇で皮肉な運命に……。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく――英米で絶賛の嵐を巻き起こし、代表作『日の名残り』を凌駕する評されたイシグロ文学の最高到達点】 (BOOKデータベースより) 実は以前、挫折した作品。 大きな展開がなく、退屈だなぁとは思ってしまったのです……。ですが、読んでいくと、細部まで練り込まれた伏線が素晴らしく、胸を締め付けられるような苦しさまで感じました。
1投稿日: 2016.09.05
powered by ブクログずっと気になっていた作品。 なんとも言えない作品だ。好みではないが、凄い。 人は自分が生きてきた範囲で物事を考え、捉えているということを突きつけられる。 設定されたこの世界が、嘘に思えない。 どこかに存在しているようで、いつかはそんな時代がやってくるかもしれないと思ってしまう。 劇的ではなく、そこにあるものとして描かれているからこそ、静かな恐怖を感じる。 しかし、この作品。 映像化されているけれども、あまり意味はないのではないだろうか。 機会があれば、見てみたいとは思うが、文章で読んでこその作品なのではないだろうか。
0投稿日: 2016.09.04
powered by ブクログ久しぶりに感想をメモしておきたいと思った。 とにかく、衝撃を受けた。 内容がショッキングだからではない。 語り口調がとても穏やかで、その回想は静かに始まる。イギリスの穏やかな田園風景と子供時代の誰もが経験するようなやり取りの思い出。その記述はとても細かく、その回想はあちこちに行っても決して、支離滅裂ではなく、本当は緻密に計算されていることが伺われるのに、でも誰かの回顧録を読んでいるように自然な文体で、飽きることがない。 その静かな文体もとても好ましい上に、内容はありきたりのものではない、その発想は一体どこから…と思ってしまう。 臓器提供のために作られた子供たち。その子供時代をその子供自身の目線で語らせるという手法は、作者が訴えたいことを大きな声で論じず静かな語り口調ではっきりと示していると思う。 ずっと、読んでみたいと思っていたカズオイシグロですが、最近ドラマ化されていたのと、村上春樹がエッセイの中でカズオイシグロの作品は出版されたら必ず読む、と言っていたのを読んで読んでみようと思った。 作家の方々好んで読む翻訳ものは、下手すると回りくどい表現が多かったりして、こうゆう静かな語り口調のものほど、単調で面白くなくなって、内容いかんが入らず最後まで読めない私ですが、これは、面白かった、その感じたことをとにかく記しておかなければ!と思いました。
0投稿日: 2016.08.27
powered by ブクログ設定などはそこまでひねることのないSFもの。 ただ得意な環境にありながらの心の動き、猶予についてのエピソードが本当に痛い。 本当の愛があれば、魂があれば。 そう感じ、願う心も全ては離れていってしまうのだろうか。
0投稿日: 2016.08.15
powered by ブクログううん、どんな感想を持てばいいのだろう。 全編通して灰色で、でも淡い光を放っているような…。まず作者は外国人と捉えて良いのかな?ヘールシャム時代が黄金色なのは外人作家だからか。水彩画のような、ふわっとした読後感… 淡々としてるからこそ余計ぞっとするのでしょうか。キャシー以外の本心は分からない作りだし。 ルースの、自意識が大きくてイラっとさせる感じは生々しかったなあ。
0投稿日: 2016.08.15
powered by ブクログ映画化も、日本ではドラマにまでなった作品 興味深い近未来のSF設定です 人間はどこまで思うままに生きていくのかと 人の命について改めて考えさせられます 追記:祝ノーベル文学賞 カズオイシグロさん!!
0投稿日: 2016.08.14
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読み始め、さっぱり話についてけなかったけど。。 臓器移植のためだけのクローン人間のお話でしたか!? 難しい問題だけど、クローンが、感情をもてば、当然な世界。 最後まで読むのが切なくなった。
0投稿日: 2016.08.14
powered by ブクログなんだこりゃ。 最後に面白くなるかと思って頑張って読んだけど 面白くならなかった。 読んでる間、苦痛だった。 好みがあるだろうけど、読んで損した気分。 星一つじゃないのは(☆一つだと思ったのは、ブクログに登録しません)、 「提供」について、ちょっと考えることがあったから。 しかし、これが代表作なら、 もうこの作家の本を読むことはないと思う。
0投稿日: 2016.08.09
powered by ブクログ初めは全寮制の一貫教育校か何かの施設のような話で,その中でのいじめやら仲良しグループの描写,主人公キャッシーの心の動きが語られる.しかし生徒ではなく提供者とか先生ではなく保護官と言った言葉が出てきたり全体的に謎めいていて,ページをめくる手が早まる.
0投稿日: 2016.08.02
powered by ブクログ昨年テレビで放映していたドラマの原作本。なんと衝撃的な内容なのだろう、この先みるのがつらいなぁなんて思いながら見ていた。でもなんだか引き込まれて、どうしても原作を読んでみたくなった。 人の命、倫理観を深く考えさせられる内容だった。 物語は主人公の語り調子で淡々と進む。とある施設で育てられた子供たちが成長し、世の中に出ていく。ふつうの少年少女たち。笑ったり泣いたり、恋したり、夢を持ったり。でもその先にある彼らの人生は、あることで定められているのだ。 絶対あってはならないことだが、あるかもしれないと恐怖を 覚えてしまうような重厚感だった。静かに静かに流れる文章の中に、ずしんと鉛の玉を読者に残す、そんな小説だった。 イシグロさんのほかの小説も読んでみたい。
0投稿日: 2016.07.31
powered by ブクログドラマは見てないです。 ドラマではクローンやドナー提供に対しの葛藤が多々あるみたいだけど、小説ではただ受け入れますよ〜だった。 最後の先生の言葉はなんとも言えない気持ちになったな〜 外国小説だからこんな表現の小説になるだけで日本の作者だと提供者の気持ちが沢山書くだろうと思い、外国と日本の視点の違いも気づいたな
0投稿日: 2016.07.23
powered by ブクログ臓器移植のために生まれた子たちが自分たちの使命を背負いながら生活をし、成長していく。人権的に大丈夫なのだろうか(?)と色々な面で自分の命の重さや命の価値を考えさせられました。とにかく重い。
0投稿日: 2016.07.23
powered by ブクログさらさらっと、淡々と読めてしまうのに、 読み終わったあとの気持ち悪さが半端ないです。。。 特異な状況ではあるけれど、人はそれでも淡々と、嫉妬したり寂しがったり、思い出を探したりしながら、生を全うするのだろうか。。。 戦時中であったり、奴隷であったり、難民であったり、そういう環境の人たちとも重なって、いろいろ考えさせられました。
0投稿日: 2016.07.21
powered by ブクログ閉塞感たっぷりの話でした。登場人物たちの境遇は、私たちが置かれている境遇に比べ、悲劇的なものですが、登場人物の気持ちに共感できることが多かったです。それは、登場人物の境遇は、私たちが生きる「今」と、ただ単に似て非なるものではなく、元を辿れば同じ部分があったからだと思います。人間って結局、最後は1人ぼっちになる。そうなったとき、自分はどうするのだろうと考えさせられる小説でした。
0投稿日: 2016.07.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「ずいぶん昔のことで、多少は記憶違いもあるかもしれません。」 主人公の独白にもあるように、これは「記憶」を辿るお話だ。 昨年末か年初に図書館に予約を入れ、やっと回ってきた。ちょうどドラマ化のタイミングと重なったからか、半年は長かった。昨年読んだ福岡伸一著『芸術と科学の間』という本で、本書を、というか作者カズオ・イシグロが紹介されていて興味を持ったというのは記憶違いではない。映画、ドラマのほうは全くの未見だが、その福岡氏の文章に”臓器提供者として生み出された…云々”の記述があり、本書がSFで、古典的題材、いわゆるクローンを扱っているものという前知識で、いざ読み進んだ。 世界観を理解する言葉は、「提供者」とその「保護官」、国内にいくつかある提供者の暮らす施設のうちのひとつ「ヘールシャム」、そこで提供者は先生役の保護官に見守られながら思春期の頃まで育てられる。その後、社会に出るが、提供者として使命を全うする者と提供をはじめた提供者を世話する「介護人」に二分される。 基本、この3種類の人間しか出てこない。 物語は、「ヘールシャム」で「提供者」として育ち、今は「介護人」をしているキャシーの回想として語られる。ヘールシャムで子供から成人していく数年、社会へ出る前の準備期間的なコテージでの日々、提供者の最後を見届ける役目を全うする介護人としての近年が、どこにアクセントがあるのかも分からないまま淡々と描かれていく。話者のキャシーと、同じく提供者であるトミー、ルースを軸に、閉ざされた環境で暮らす彼等の視点からの風景は、まるでピンホールカメラで眺めたかのような輪郭のはっきりしないおぼろげな「記憶」として語られるから。そこは著者の類まれなる構成力のなせるワザだろう。読者をゆったりとした時の移ろいの中に漂わせる。 漂いながら、この世界が構築された謎、仕組みなどが解明されることを期待して読み進める。葛藤、抵抗、逃亡劇でもあるのかと予想もするが、これらが全くといっていいほどない。手塚治虫の漫画で描かれた世界、あるいは近年の映画『アイランド』(ユアン・マクレガー主演)を想い描きながら読み進むが、不思議なほど抑制されている。それが著者カズオ・イシグロの筆致によるものか、意図的にそのように描かれているか、その双方が混然となって物語全体のトーンを構成している。 もちろん、微かな抵抗、疑問の提示、何かを求めようとする行動を提供者たちは起こすが、過去のこの手のSF作品で見られる反乱めいた激しさはなく、その世界観を納得するための行為に過ぎない。彼らは、答ともいえない答を得て自分の使命を全うしていく。 事態は当たり前のように進行し、当人たちでさえも何の違和感も持たないように、巧みに教育されて馴らされ、諦観という人生観を身に付けていく。世界がこの仕組みを良しとした場合は、実はこんな風に自然に物事は運んでいくのかもしれない。 変に隠蔽しようとすると、どこからかボロが出て(『アイランド』の場合は外の世界から通気口を通じて紛れ込んだ蛾の存在だった)、世界が破たんしていく。隠蔽などせず、それが当たり前と思いこませること、当人たちに自然に納得させることが出来ている世界を描いているところが、この作品の恐ろしいところだ。 「あなた方は教わっているようで、実は教わっていません。」 これはキーフレーズのように、作品の中で何度か繰り返される。それでも、 「将来は決定済みです。」 と諭され、 「みっともない人生にしないため、自分が何者で、先に何が待っているかを知っておいてください」 と教えられる。先に待っているものは、「遠からず、最初の提供を準備する日が来る」ことだと明言される。それでも彼等「提供者」は反旗を翻さない。あたかも去勢された飼い猫、飼い犬の如く、その運命を受け入れていく。 ヘールシャムというキャシーを含む主要人物たちが育った施設は、そんな世界の中でも少し特別な場所だったということが最後に明かされる。 経緯、詳細は伏せるが、その場にいた、かつての保護官エミリ先生の、この言葉でまたも彼らは納得させられる。 「チェスの駒と同じだと思っているでしょう。確かに、そういうふうに見えるかもしれません。でも、考えてみて。あなた方は、駒だとしても幸運な駒ですよ。追い風が吹くかに見えるた時期もありましたが、それは去りました。世の中とは、ときにそうしたものです。受け入れなければね。人の考えや感情はあちらに行き、こちらに戻り、変わります。あなた方は、変化する流れの中のいまに生まれたということです」 「ヘールシャム」が特別で、美術作品収集を行い、提供者同士でも愛し合えるよう、そのための「提供者」の精神の存在を実証しようとする試みは、頓挫して終わってしまうのは、少し残念だったが、本作をベースに別の解釈で映画化や舞台化が行われるとしたら、その実験が成功するというエンディングもありだなと思った。いや、むしろTVドラマなどで視聴率を獲りに行くなら、クローンにも心はある、愛しあえるということを勝ち取るための抵抗とカタルシスといった安易な結末に持っていけるだろう。 が、カズオ・イシグロはそうは描かなかった。運命はただ受けいれるものだと言わんばかりに。 最後の最後までそんなトーンで物語が進むうちに、これは、いつの時代も、どの共同体でも、どんな世代でも起こっていることなんだろうなと、なんとなくジワジワと思えてきた。 このように静かに運命を受け止めるのも、逆にその共同体の外の世界へ抵抗することも同じなのだ。今の現世でも、自分たちの外の共同体に向けて攻撃をすることが正義と教え込まれた集団は、「ヘールシャム」の彼らと同じように自分の命を”提供”して使命を全うしている。そこには受動的か攻撃的かの差しかない。 なんだ、今の世界も同じじゃないか、いや昔から何も変わってないことなんだと、時間をかけて納得させられていく。納得の根拠となるのが、ゆっくりと時間をかけて回想される過ぎ去りし日々の積み重ね、遠い昔の「記憶」なのだ。それは民族、国家、共同体に置き換えた場合は「歴史」と言ってもいいのかもしれない。 卒業後(もうキャシーが介護士として仕事をこなしている頃)、ヘールシャム閉鎖の話を聞かされる。キャシーはとっさに「生徒たちはどうなるの」と問うが、それは今いる生徒たちのことでなく、「ヘールシャムで育ったという共通の一事で結ばれているわたしたちのことです。」と独白が続く。 彼女たちはみな”共通の一事”、それは「記憶」と言っていいと思う、そこに拠り所を求めている。タイトルのNever Let Me Goは、遠い記憶に向かって”わたしを離さないで”と呼びかけているのかなと思うようになった(最初は提供者としての思いか、それこそ提供されていく臓器の叫びか何かかとさえ思っていた)。 こうして「記憶」をたどることで、実は自分たちは運命というものを受け入れるよう仕向けられていた、納得していたと主人公たちは気づいていく。「教わっているようで、教わっていない」ではなく、我々は「教わっていないようで、実は教わっている」のではないかと。これまでの人生の日々を通じて、あらゆることを知らず知らずに教わり、我々は大きな運命の波に流されるままに流されていっているに過ぎないのだ。 さらには、提供者だけでなく保護官でさえも、そのように”教わって”いる。ゆえにそこに隠し事も、秘匿された事実も、抵抗を示す対象も存在しない。ただただ、大きな運命が横たわっているだけ。疑問を差し挟む余地すらない世界なのだ。最後は、そう思えるに至った。そして、それは今この現実世界も大差ないのかもしれない。 怖いなぁ、実に恐ろしい。 漠然とした恐怖を感じさせるてくれた読後感だった。 いや、恐怖じゃないのかもしれない。 最後の一文は、主人公キャシーの独白だ。 「やがて地平線に小さな人の姿が現れ、徐々に大きくなり、トミーになりました。トミーは手を振り、私に呼びかけました…。空想はそれ以上進みませんでした。私が進むことを禁じました。顔には涙が流れていましたが、私は自制し、泣きじゃくりはしませんでした。しばらく待って車に戻り、エンジンをかけて、行くべきところへ向かって出発しました。」 行くべきところへ我々は行くだけ。それが運命だとしたら、なにも怖くはないものだ。
0投稿日: 2016.06.14
powered by ブクログ期待値が高かった分、少し物足りない感じになった。 物語の設定が世界観そのものを作れているのに登場人物のキャラが濃いため、世界観を潰しているような気がした。 使命を負ってこの世に"生まれた"主人公たちが、どんなことを思い悩んでいるのかがもっと欲しかった。 特にルースの女王様気質は読んでいる途中で呆れてくる。 (そういえば、"生きる"・"死ぬ"という表現は物語を一貫して使われてなかったような気がする。) ただ、物語終盤のルースがこれまでのことを謝って2人に希望を託すところから最後まではぐっと面白くなった。 ここを読んでやっと、2度読みしてもいいかなと思えてきた。
0投稿日: 2016.06.10
powered by ブクログ長い時間をかけて読んだが、一回一回、読み出すと物語に引き込まれていった。 語るキャシーに共感や提案をこちらから求めているような感覚だった。 読み終わりたくない気持ちが強かった。 テレビドラマのイメージが付きまとってしまって、少し残念。もう一度時間がたったあとに読み直したい。
0投稿日: 2016.06.10
powered by ブクログ主人公であり語り手のキャシーは31歳で、「介護人」という職業に11年間ついている。優秀な介護人であるが、もうすぐこの職業をやめる決意をしている。介護人は「提供者」と呼ばれる人々の介護を生業としており、キャシーは「ヘールシャム」という特殊なところで幼少期を過ごしたらしい、、ということが冒頭部分で語られる。提供者とは何者なのか、ヘールシャムとは地名なのか施設なのか、あるいは学校なのか?そしてキャシーはなぜ介護人をやめるのかという次々に謎が出てくる状態で物語は始まる。 物語の大部分はキャシーの回想である。その回想シーンから、ヘールシャムとは臓器提供のために生まれた子供たちを養育する施設であり、その子供たちが施設を出た後に臓器提供をする「提供者」になるという、えげつない真相が解き明かされる。 彼らはみんな提供者になってその使命を全うするという運命が定められている。人権なんてあったものじゃない。だが彼らはみんな自分の運命を静かに受け入れている。こんな制度に反抗しようとか、普通に暮らせる唯一の方法を見つけるとかは全くなくて、そこが浮世離れしたテーマにもかかわらず、たまらなくリアルで恐ろしくなる。わたしたちと同じように友達と喧嘩したり、恋愛をしたりしている彼らなのに、そこに抵抗心がないところがたまらなく虚しい。 設定が緻密なので何回も読んで内容を咀嚼する必要があるかも。読めば読むほど発見がありそうだし。ただテーマがテーマなだけに読むのに結構体力を消費した感じ。読みやすいけれど、さらっと読みはできないな。 ドラマの評判がなかなかいいので見てみよう。
0投稿日: 2016.05.30
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
カズオイシグロの現時点での代表作、という自分の理解。 「介護人」という職業を終えるキャシーHのモノローグで語られ、幼少期から現在まで物語は進行する。 何かおかしいと思うが、物語の途中で物語の全体像を明らかにする「ある未来」が明らかになる。著者自身はとくに秘密とも思っていないようだが、なかなかに衝撃的。 そこで初めて、臓器提供のために育成された若者たちのことを、提供者であるキャシー自身の視点から描いているとわかる。芸術作品を提出させる理由は、提供者の中に芸術的な天才が万が一発生した場合の方策だと思っていたが、作中世界ではたとえ天才的な作品を発表したとしても救済策はなさそうなのでだいぶ厳しそうである。 自分としては、幼少期から環境を完全にコントロールしているとはいえ、臓器を取られるだけでしかない自分たちの運命を皆が皆たやすく受け入れるだろうか?という疑念が最後までぬぐえなかった。 あと、あまりにもヘールシャム以外の世界が出てこず、キャシーの半径5メートル以内の話に終始してしまい、動きがなさすぎるので途中何度か投げ出そうと思ってしまった。もちろんキャシーほか友人の動きはあるのだし、あえてそういう世界観で書いているのはわかるのだけれども。 ということで、自分には合わなかった。
0投稿日: 2016.05.28
powered by ブクログテレビドラマで見てから、原作を読んでみたくなりました。提供者として生きるクローン人間達を登場人物として設定した小説であるという特異性。その特異性の裏側に描かれた、私達のリアルな世界の一面。なんとも言えない不思議な世界。
6投稿日: 2016.05.24
powered by ブクログ2016年4月の課題本でした。 開催レポート http://www.nekomachi-club.com/report/33139 ********************** 自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々がたどった数奇で皮肉な運命に…。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく―英米で絶賛の嵐を巻き起こし、代表作『日の名残り』に比肩すると評されたイシグロ文学の最高到達点。アレックス賞受賞作。(「BOOK」データベースより)
0投稿日: 2016.05.10
powered by ブクログ切なかった。クローンとして生まれた彼らは無実なのに、自分の人生を選ぶ余地もなく、逃げることもできない。特に猶予の件が判明した後から、最後まで絶望的な気分だった。
0投稿日: 2016.05.08
powered by ブクログTVドラマを見てから、本を読んだ。 抑制の効いた文体の中に、震撼する様な近未来を淡々と映し出していく。 どうしようも出来ない哀しいクローン達の未来。結末も、救いようが無く虚しいのに、哀しい中に響くものがあるのは、なんだろう。 ドラマでは、日本を舞台にして、脚本も役者達も素晴らしかったと思う。 骨組みはそのままに、いろいろと変化があったが、よりドラマチックに心に迫ってきた。
0投稿日: 2016.05.07
powered by ブクログTVドラマと、同時進行だったはずなのに…。 やっと、本当にやっと読み終わった。 名作と、何処かで聞いたはずだが… 思いだせない。 その場所は、きっとノーフォークだったのかも。なんちゃって。 重い。重過ぎる。 何故、生を受け生きているんだ。 夢も希望も何も無い。 クローンとして使命を全うするだけ。 現実、臓器提供は、脳死の人からのみだけど。 実際に人が人の為、クローンを作り生きた人を治療として使うなんて事はあってはならない。 だけど、動物は既にクローンが出来ている。 ペットの死の悲しみを乗り換える為「だけ」と信じたい。 ’16.05.02読書完了
0投稿日: 2016.05.02
powered by ブクログ語り口が主人公のモノローグであることもあって、静かな抑制された印象がある作品だが、そのテーマは重い。 内容としては、映画「ブレードランナー」のモチーフでもある、アンドロイドは何のために生み出されたのかと共通するものがある。
0投稿日: 2016.04.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
人間に臓器提供するために生み出されたクローンの子供たちの成長と運命のお話。 TBSのドラマを観ていて原作も読みたくなったので。 ドラマ、良くできていたなという印象。 ラストは原作の方が好きかもしれない。 現状をひっくり返そうとか、革命を起こそうとか、劇的な展開がないところが、かえって不気味さと不安と残酷さとをリアルに感じられて、ある意味とても惹かれた。 人として自分達を振り返ってみる切っ掛けになるような作品。 珍しく何度も読み返したくなる小説だった。
1投稿日: 2016.04.14
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
イギリス人って日本人っぽい、察しろとか空気読めてきなところがあるんだなと思った ドラマにはめちゃくちゃはまったけど、こっちは希望がなさすぎる! ドラマのあのハーフの人が言ってた、心を持たないように作ってほしかったって言葉が今刺さる
0投稿日: 2016.04.09
powered by ブクログドラマを見てから読んだためか演者で物語が脳内再生されて残念だった。 ドラマととも期待しすぎたかなというのが正直な感想
0投稿日: 2016.04.02
powered by ブクログ読了後、なんともいえない気持ちが数日続く。 カズオイシグロの作品はどれも、読了後、余韻が続く。 自分なりに考えてみたり、想像してみたり、また読みかえしてみたり。 このスッキリしない余韻が残るのが彼の作品の魅力かもしれない。
0投稿日: 2016.03.27
powered by ブクログ読み始めて、これは『1984』みたいな世界観、と思った。 極端なひとつの思想を絶対として社会が動いている世界。 絶対的にちがうのは、臓器移植をすることで治る病気があり、助かる命があるという命題にはある種誰もが認める“善”が潜んでいるということ。独裁政権にのみメリットのある恐怖政治とは命題のあり方がことなる。 多くの人の病気が治る、助かるという大きな物語の前に、提供者の人生という小さな物語があえて見過ごされる。いや、ないってことにされる。 表立ったテーマは臓器移植だけど、大きな物語と小さな物語の対比、光が強ければ陰も強い、そういうことなんだなぁと思う。臓器移植というテーマは象徴的だけど、原子力発電だって女性の活躍する社会だって私たちの社会生活の問題の根には同じことがある。 大きな命題と小さなそれぞれの人生。 実際には淡々と主人公の主観的な語りだけで物語が進むから、そんなテーマは突きつけてこないんだけど、だからこそ小さな人生の悲しみが伝わる感じがした。
0投稿日: 2016.03.26
powered by ブクログ綾瀬はるかのドラマの閉鎖的で病的な雰囲気がワクワクしてすごくハマったのが、原作小説があると知ったので。でもドラマはコテージに行った回までしか見てない。 ざっくり簡単に言うと、臓器提供のためだけに生み出されたクローンが人里離れた場所で囲われて学校生活を送っていて成長していく物語。 クローン人間に人権はないの?定められた運命しか許されないの?…なんてことが描かれている。 舞台はイギリス。全てのなくし物が集まるノーフォークというのがなんだかステキだと思った。 登場人物がものすごく多いけどキャシーとルースとトミーとエミリ先生とマダムくらいがわかればなんとかなる。 小説を読んで、ドラマはかなり作り変えられてはいるものの、原作を上手になぞってオリジナリティもある感じで仕上がってたのだなぁと思った。 どっちがダメとかなくて、どっちも面白かった。ドラマの方がドロンドロンしてる気がする。 ハヤカワ文庫って初めて読みましたー。SFなんて滅多読まないので今まで一番縁遠い出版社だった。
0投稿日: 2016.03.25
powered by ブクログ読み始めてすぐ、「この話、知ってる!」と思ったら映画版を見たんだった。原作があったのを知らなかった。 キャシーという女性が自分の人生をしたためた本?を読んでいくという形で進むストーリー。 主人公のような人間(性格とかの話ではなく)には悲しい運命が絶対的に待ち受ける世界。 そこで描かれる精緻な人間関係が素晴らしかった。 最後の方、マダムとエミリ先生の態度が偽善的で腹が立ったが、(もちろん自分含め)原発問題や環境問題などでもわかるように、暗い部分は見て見ぬ振りをしそのうち本当に忘れてしまっている現代社会では、ありそうな話だった。 幼少から洗脳のように頭にたたきこまれている「提供」。主人公たちが、その運命を変えようとしてもっともっとあがいて、何かを変えてほしかった。マダムを訪ね、失望した主人公たちが、その後どこかへ逃げるでもなく運命を受け入れるところがまた悲しかった。
0投稿日: 2016.03.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ヘールシャムとよばれる閉塞された空間。 そのなかで育ったこどものはなし。 まだ序盤ですが、まるでのほんとうの事にも感じられるくらい世界観がしっかりしていて、グイグイよめます。 ヘルマン・ヘッセを彷彿とさせる雰囲気でふ。
0投稿日: 2016.03.22
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
抑制のきいた文章が魅力的。 ネタバレを知ってから読んだので、まったく情報なしに読んだらどんな風に読めただろうとちょっと残念。
0投稿日: 2016.03.22
powered by ブクログこのミスベスト10、2007年版海外編10位。 友人から回ってきた。事前情報が全くなく、ジャンルさえも分からないし、裏表紙や帯とかもみないで読んだ。この本の作り自体が、特殊な小説世界が徐々にあきらかになっていく構成で、まあ正しい読み方だったと思われるんだけど、前半はこれはなんの小説なの?ってのを考えるのが疲れる。3分の1ぐらい進んで大体、この世界のルールが解ってくるんですが、ミステリー好きの自分的には、世界のルールは最初に教えてくれなきゃって思ってしまう。あと筒井康隆のやつぐらい途中からいきなりルールが変わるってのも面白いけど。この小説は抑えたトーンで登場人物の微妙な心の動きを丁寧に追っていくんだけど、特殊な世界の設定の細部が良くわからず、科学的な説明とかもないので、世界感が共有できず作者のイメージがあんまり伝わってこない。それゆえ、登場人物の行動の必然性とか理解できず、感情移入がイマイチできない。作者の独りよがりっていうか。そいで、読み終わってネットで調べたら海外で映画化されてるし、今、民放でドラマ化されてるって知ってビックリしました。このミスベスト10にも入ってたし結構評価されてるようです。
0投稿日: 2016.03.18
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2015年に10年ぶりとなる長編作「忘れられた巨人」を発表し話題になった際、なんとなく気になった作家「カズオ・イシグロ」氏。 その時に読みたいと思ったのが、最新作ではなくこの「Never Let Me Go 私を離さないで」でした。 臓器提供のためのクローン。 イギリスが舞台であった為か、非現実的な話なのになぜか心に深く突き刺さり気になる本でした。 そして2016年、綾瀬はるかさん、三浦春馬さん、水川あさみさんがキャスティングされドラマ化されました。 ドラマの脚本とキャスティングがはまっていたためか、異次元で実際に存在する世界のように感じました。 技術的には実現できそうな世界、それが存在してしまったら人はどのように考えどのように行動するのだろう? 恐ろしい気もしますが、人間のエゴについて考えさせられる、考えておかなくてはいけないと思う一冊でした。
1投稿日: 2016.03.18
powered by ブクログずいぶん前に買ってはいたけど読んでなかった。ドラマ化されたのを機にようやく手に取る。 「提供」という大きなテーマがありながらそれ自体を前面に出すことはなく、登場人物の描写を通して読者に考えさせようとしているような気がする。 エミリ先生たちがへールシャムを作ったのは結局自己満足のようなものじゃないかと思わないでもない。へールシャム創設の時点で「『提供』そのものはしかたがない」って認めちゃってるようなものだから。それに会話の至るところに「私は頑張ったのよ、良くやった。私は悪くない」っていう感情が表れていてそれも不愉快。 そしてもうひとつ。ルースとは友達になれそうもない。
0投稿日: 2016.03.17
powered by ブクログ非常に月並みな表現だが、人間であるというのは一体どういうことなのか、そんな命題に正面から向き合って、物語は綴られている。 設定こそショッキングなものの、細部では奇を衒わず、どんでん返しも大仰な事件も仕掛けられていないが、本筋だけで充分読ませるだけのパワーを持っている。 どんよりと低く雲が垂れ込めた、英国の暗い空が似合う作品だ。
9投稿日: 2016.03.15
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
初イシグロ。母親がドラマ版を視聴していて「気持ち悪い」ということは耳にした。よく聞いてみると“臓器提供”が絡んでいるようだ。これは面白そう!と思い、購入。事前にイメージした内容とは全く違う印象を受けた。臓器提供メイン(ドラマ版はそのようだ)だと思っていたが、主題は別のことのようだ。クローン人間の在り方そのものや魂の存在など・・かなぁ、と。彼ら三人を思うとちょっと哀しい気持ちになるのだった。読んでいていろいろ考えさせられる作品で大変良かった!
0投稿日: 2016.03.15
powered by ブクログ寄宿学校の学園物という雰囲気で話が進む。保護官が主人公たちに、それとなく少しずつ秘密を話すように、著者もすこしずつ読者に漏らしていく。 提供という言葉が出てきて概要がわかってくる。 しかし、その秘密そのものがストーリーのポイントではなく、この抑制の効いた雰囲気の展開がこの小説の読みどころか。 個人的には、作風はあまり好みではなかった。
1投稿日: 2016.03.14
powered by ブクログ翻訳の問題かもしれないけど、全般読みにくい。すんなりと言葉が入ってこないカンジ。そもそも物語に親切さがないことに起因しているのかもしれないので、翻訳の問題でもないかもしれない。 物語も後半に入ると、その主題がもつ吸引力にからめとられるかんじで、文章は気にならなくなる。まるで、3D映画の後半が3Dであることを忘れて見入るみたいな? 希望がないところに絶望が描かれないことをどう考えるべきだろう?マダムに会いに行い、そこで語られる内容には、まるで白黒のように何の感慨も描かれず、とつとつと進むさまは寂しいとも不安とも違う、なにか置き所のないモノを感じる。
0投稿日: 2016.03.12全ては神が創造した。そして…。
キャシーとトミーとルーシーの淡い青春とこの物語が作る奇妙な世界の内部と外部をきれいに描き切った素晴らしい作品です。 作者は日系人と聞きます。おそらく私たち日本人と同じように神が世界を創ったという一神教を、キリスト教を外部から覚めた目で眺めたことがあるのでしょう。 そして、その虚しさを知っていることでしょう。 芸術がこの作品の山場までの重要点としてあります。 アートとは神が人に与えた天分でしょうか? それとも自然に畏怖する人の心が紡ぐ虚妄でしょうか? マダムやヘームシャルの関係者は展示会の作品を集めこの世界の内部と外部をつなぎながら、大きな流れに逆らおうとします。 ヘームシャルの生徒たちにとって特別な外部だったマダムたち。 あるいは彼らはヘームシャルの生徒たちにとっての神としてあらわされているのかもしれません。 山場はそこにあります。 マダムたちも人間に過ぎないのです。 神が創りたもうた一個の人間に過ぎないのです。 ヘームシャルの最大の主眼だった芸術も結局、作者が描き出した結論に過ぎないのかもしれませんね。 iPS細胞がある今ではこの作品は色あせて見えてしまうかもしれませんが、この作品は紛れもなく人間を描いています。 あまりに美しい物語です。 星5つ。
6投稿日: 2016.03.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
私を離さないで、の世界は、我々の世界からは少し遠く見えるかもしれない。 物語の主人公は、臓器提供のために生産された、生殖機能を持たない提供者というクローンたちだ。 彼らに許されるのは臓器提供が完了するまでの束の間の青春だけ。 とても過酷な運命に思えるが、それは彼らの世界だけの話ではない気がする。 私たちの世界でも、病気や、障害、紛争、貧しさ故に、極めて不条理な状態を余儀なくされる人たちもいる。 そして、私たちは、臓器提供によってではなく、様々な原因で、その生を終える。 私は、25歳の時に病を得て、40歳くらいまで苦しんだ。 15年の歳月の中で、仕事に就くことも、結婚して家庭を持つことも100パーセント諦めていた。 私自身の屈折した気持ち、25歳から、40歳までの15年間苦しんだことは健康に生きてきた人には決してわかってもらえないと思っている。 病気が改善して、パートの仕事ができるようになっても、何もかもに恵まれているような人を見ると、 とても寂しい気持ちになる。 病気になり、多くを失ったから、私を離さないで、の登場人物が抱く悲しさに少しだけ触れることが出来ると感じるのかもしれない。 私を離さないで、は、単に臓器提供のSFの話ではない。 失うことをわかっていて、最期まで生きていく悲しみの物語である。 何かを得れば、何かを失い、何かを失えば、何かを得る。 病に苦しむことによって、得たものが私には 沢山あった。 ならば、臓器提供を使命として生きる提供者も 引き換えに得るものがあるだろう。 我々の人生も、彼らの人生も、差し引きしてみれば プラスマイナスゼロかもしれない。
0投稿日: 2016.03.08
powered by ブクログ『カズオ・イシグロ』は初読み。 う~ん。 ミステリとしてもSFとしても半端感が半端なかったんで 途中から文学として読み始めたんだけど そしたら退屈になった。困った。 期待しすぎたかなぁ。 なんかね、「あっ!」と言いたかったんだ。 ディックみたいのを期待してたんだよぅ。
1投稿日: 2016.03.07
powered by ブクログ不思議な世界観だった。よく分からないまま、読み進めました。だんだん分かってきましたが、再読が必要かも。なんとなく思ったのは、運命が決まってるのに生きてるって辛いな、と。決まってないから面白いし、自由で。それができてこそ、人間なんじゃないかなって思った。
1投稿日: 2016.03.07
powered by ブクログドラマを見てちょっと話が日本では違和感があったので、原作を読んでみようと思いました。 ドラマの予備知識がないとはじめ難しかと思いますが、やっぱり外国の設定のほうがシックリきました。
1投稿日: 2016.03.06
powered by ブクログ怖かった。万が一にもこんな世界になったら、 と思うと、怖くて堪らない。 家畜と同様の人間を造るなんて。 へールシャムに何があったのか、 猶予て何だったのか。 ゾワゾワしながら、早く早く!と 読み進めたら、謎が多すぎた。 でも、読み返すのにも勇気がいる。 もう、いいや。
1投稿日: 2016.03.06個人的には高評価で、かなり楽しんでいます。
初めのころは、あまりにも突拍子のない独特の 世界観(いずれ臓器提供者となる運命の子供たち を閉鎖された学園で教育している。そして彼らは クローン。)に違和感を感じましたが。話が進む につれ雰囲気に慣れて、出演者たちの演技力の高 さに魅了されていきました。綾瀬はるか、 水川あさみ、三浦春馬という演技力のある人たち が、ややパラレルワールド的な独特のストーリー の中で存分に存在感を放っています。 クローン人間、臓器提供、シェアハウスといった 普通ではあり得ない個性の強い脚本ですので、 演技力が無ければとても見られたものにならない であろう作品ですが。綾瀬さん筆頭に、鋭いセリフ 回しと表情の演技で、レベルの高いドラマに出来 上がっています。 ドラマを見ていると、原作本も読みたいという 欲求に駆られて小説を読み始めました。 割と分厚い長編です。ドラマと原作は、基本的な ストーリーこそほぼ同じですが。その雰囲気は かなり違います。小説では、テレビのような 強い演出は必要ないので、かなり静かに淡々と 進んでいきます。主人公のキャッシー (綾瀬さんのキャラ)の完全な一人称回想と いう展開になっています。 ドラマは、もうすぐ起承転結の結の部分へと 入っていきそうですが。読んでいる小説は、 まだ転に入ったところです。 こうやってドラマと小説をシンクロ的に味わう のも面白いものですね。
1投稿日: 2016.03.05
powered by ブクログドラマ化されているようですが、予備知識なしで手に取った本でした。読み始めてはじめは、『何の話なんだ??』と思うことが多くて、途中で読むのを辞めようかと思ったくらいでしたが、読み進めていくうちに感じるこの本の不思議さ、いい意味での違和感、ミステリアスさを感じてからは、物語の展開が気になりました。 全編を通して記される主人公とその周りとの人間関係は、恐らく誰もがきっと昔感じたことなあるような描写が多く、私も自分の学生時代(なぜか小学校時代)と重ねていました。 後半以降主人公たちの出生の秘密を知ってかららラストにかけての展開の盛り上がりは、ミステリアスさがありながら、どこかノスタルジックな人間関係があり、ドキドキしながら読めました。
1投稿日: 2016.03.02
powered by ブクログドラマを見てある程度ストーリーがわかったうえで読んだので、この本の意図してる部分が理解できた。ドラマを見ずに読むと難しかったと思う。 自分が知らないだけで、この世の中には提供者と介護人が現実にいるんじゃないかと思えてくる少し怖いお話ですが、わたしは好きです。
0投稿日: 2016.03.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
生物科学が進歩した世界。主人公が語る形で、話は進行していきます。幼少時より隔絶された世界で生き続ける主人公たち、徐々に自分たちの運命を理解し、受け入れることがせまられます。先生たちが語ったことの意味、先生の感情の高ぶりの意味を、徐々に理解していきます。提供者、介護人となることを運命づけられた人々。静かな語り口で、冷酷な社会を表していきます。クローン人間が現実化することがあるのかは知りませんが、人々は当事者意識がないと、不都合な事態から目をそむけて生きていける、生物科学の進歩に対して、いかに当事者意識を持って、向き合っていっくことの重要性を示していると思います。
0投稿日: 2016.02.27
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「信頼出来ない語り手」に嵐が丘を思い出しつつ、役割はいくらも違うなと思った。読み始めからいくつも分からない点があり、それを彼ら提供者が少しずつ垣間見て行くように、彼らの成長とともに感じ取って行く。入念に構築されながら、とても繊細で引き込まれる作品だった。ラストの別れのシーンは思わず涙が出そうになった。本では久しぶり。 読みながら、彼らの人生と自分らと、何が違うのだろうと思わされた。死を思い生きるなら、何も変わらないかもしれない。我々はただ、彼らより上手に、自分の終わりから目を逸らせるだけかもしれない。
0投稿日: 2016.02.27
powered by ブクログネタバレ要素あり。 臓器提供が産業化される社会を舞台にして描かれるけれども、その淡々とした書き振りはまるで焦点が過渡期にある青年期の成長の軌跡を辿った小説のようだった。 と考えると、この舞台背景がどこまで話の展開に寄与したのだろうか?主人公が観察し、洞察する自分や周囲の人間の内面的変化は彼らが閉じられた社会、しかも暗黙の了解やタブーの多い社会だからこそ、発達したものなのか。また一つ一つ丁寧に対処していこうとするのは彼らが支え合わざるをえない状況に置かれているからなのか。 では逆に、我々は日頃どれだけのことをやり過ごしてしまっているのだろうか。付き合いたくない人や環境からの、ある程度の自由があるために、無視してしまっているものや感情の襞はどれくらいえるのだろうか。
1投稿日: 2016.02.24
powered by ブクログ残酷な運命が待ち受けているにも関わらず、キャシー視点で淡々と端正な文章で語られるというのが、空恐ろしく感じる。 人間に食べられるために生まれて死んでいく家畜と同じだから運命を受け入れているということなのだろうか? だとしたら、家畜とは違い偏っているとはいえ、教育を受け、子供時代の思い出がある分だけ彼らは幸せだったと言えるのだろうか? 自分の幸福は他者の不幸によって成り立つとしたら、自分自身はどんな選択をするのだろうか、など科学と倫理の問題について読後も考えさせられてしまいました。
3投稿日: 2016.02.24
powered by ブクログあぁやっぱりそうか、て思ったこの感覚こそが、主人公たちと同じなのではないかと思う。 違和感と切なさ。
0投稿日: 2016.02.24
powered by ブクログこれも珍しく、ドラマ化されてるのを見て本の方を後から買った。 ドラマの進行と本の読み進み具合がちょうど同じぐらいで、シンクロ。面白い体験ができた。 不思議な世界観。 臓器提供をすることを目的に生み出された人間たち。 彼らを育てるための専用施設。閉ざされた世界。 提供という“使命”を終え死んでゆく仲間たち。 彼らは自分の宿命をそういうものだと信じ込まされて、だけど心の底ではこの理不尽に気付きながら生きてゆく。 自分の力ではどうしようもできないことに対するもどかしさが見事に伝わってきた。 とてつもなく悲しく、虚しく、空虚な気持ちになって、読みながら何度も泣いた。 結末のあいまいさなど、ちょっと中途半端な感じもあるけど、「理不尽」に対して泣いたり怒ったりしたいときに読むのには一番。 ドラマで綾瀬はるかさん演じるキョウコが「もういいよ。もういい」と言って、泣きも怒りも笑いもしなくなるところ。 全てがどうでも良くなって、半ばやけくそのような。自分なんてどうなってももういいから、というような感情だったんだろうなぁ。 非常に共感する。自分を重ね合わせて、ドラマを見てて号泣した。
1投稿日: 2016.02.24
powered by ブクログあの日、あなたが踊っているのを見たとき、わたしには別のものが見えたのですよ。新しい世界が足早にやってくる。科学が発達して、効率もいい。古い病気に新しい治療法が見つかる。すばらしい。でも、無慈悲で、残酷な世界でもある。そこにこの少女がいた。目を固く閉じて、胸に古い世界をしっかり抱きかかえている。心の中では消えつつある世界だとわかっているのに、それを抱き締めて、離さないで、離さないでと懇願している。わたしはそれを見たのです。
0投稿日: 2016.02.23
powered by ブクログミステリー的な要素の強い,人間とはなんだろうと今までの哲学的な意味ではなく,本当に人間としての存在に関わるような,根源的な問! 最初から出てくる「介護者」と「提供者」の意味に背筋が凍りつくような怖さを感じた.淡々と語られる様々な思い出の中で,時折透けて見える抑えきれない熱い思いに胸が締め付けられるようだった.
0投稿日: 2016.02.21
powered by ブクログ人はひとりで生まれひとりで死んでいく―。誰が言ったか知らないが、たしかにそうなんだと思う。いくら人間が群れをなして生きる生き物であるとはいえ、結局は孤独。愛したい、愛されたい。生きたい、夢を叶えたい。切実な想いになればなるほどますます孤独。 臓器提供という「使命」のためだけに作り出された者たちの「切実」さがぶつかり擦れ合いやがて流されていくまでの物語。私たちにそんな大それた「使命」はなくとも、やはり「切実」さは抱えて限りある道のりを歩いてる点では彼らと同じなのかも知れません。
0投稿日: 2016.02.20
powered by ブクログ2016-12 臓器提供のために作られたクローン人間であり介護人のキャシーの回想で進んでいく。 淡々とした語りが余計に残酷さを際立たせている。
0投稿日: 2016.02.19
