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わたしを離さないで Never Let Me Go
わたしを離さないで Never Let Me Go
カズオ・イシグロ、土屋政雄/早川書房
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総合評価

1355件)
4.0
404
456
285
45
12
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    ・読み終わって感じたこととしては、また綾瀬はるかが主演をやっていたドラマ版を無性に見たくなった。ドラマは少ししか見ていなかったのに当時の中では異色な作品だったので結構印象に残っていた。ドラマには本にはない臨場感があったから、もう一度ドラマを見ることで、この世界観に新しい発見ができる気がした。

    0
    投稿日: 2018.03.18
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    子供たちが暮らす不思議な施設での話。施設で育った主人公の幼き頃の回想に沿って物語が進んでいくので、読者も主人公と同じレベルで施設の謎に少しずつ迫っていくことが出来る。じわりじわりと辛い真実が明かされていき、最後は一気に読んだ。 ちょっとSF要素もありで、かなりの読み応えだった。ドラマ化もされたらしいけど、映像化はあまり意味が無さそう。むしろ繰り返し読みたい作品。

    0
    投稿日: 2018.03.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    主人公への共感が、搾取される側、豊かさのために犠牲になる側、知ってるけど見ようとしてないものに対しての共感に気づいたら移り変えられていた そういう人達に対してどういうアクションを起こせばよかったのか、保護と自由どちらを選ぶべきだったのかっていう終盤のエミリ先生との会話のシーンは昨日見たブラックパンサーとのリンク 見たくないものから目を逸らしたら自分のコミュニティの心地よさを保つことができる、でもそれはコミュニティの周りに壁を築くのと同じで、コミュニティ間の分断に繋がる そうならないように、限りなく広い視点、限りなく多様な視点で人に対する想像力を持てる人になっていきたいと感じた

    1
    投稿日: 2018.03.12
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    ノーベル文学賞を受賞する前からイシグロ氏の作品は気になっていて、いくつかの作品は読んでいたのだが(お気に入りは「日の名残り」)、一番有名なこの作品だけなぜか未読で、遅ればせながら手にとってみた。 だが何年か前に放送されたこれが原作のテレビドラマを見てしまっていて、ページをめくっていてもキャシーがすべて脳内で綾瀬はるかに変換されて困った(笑) 結論から言うと、やっぱりドラマを見る前にこれを読みたかった!氏の独特の世界観や、追憶と回想、少しずつ明らかになってくる異質な世界…。これらの良さはやはり丁寧に書き込まれた設定や、抑制された端正な語り口あってのものだろう。 好きです、カズオ・イシグロの世界。 2018/03

    2
    投稿日: 2018.03.10
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    提供者の介護人として働くキャシー。提供者? この世界の医療事情が少しずつわかってくる。 提供者となるべく育つ子供たち、子供のうちに提供させられる事はないのだろうか。 人としての倫理をどう考えればいいのか…… しばらくグルグル考えていそう。

    2
    投稿日: 2018.03.02
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    このレビューはネタバレを含みます。

    柔らかい語り口で比較的読みやすかったが、提供者とは何かというのがなかなか理解できず、終盤まで話に入り込めなかった。臓器提供者となるために育てられているという、現実では考えられない世界観が大筋だとわかれば、理解も進むと思う。キャシー(女)、ルース(女)、トミー(男)の3人の関係性を意識して読むと読みやすい。

    1
    投稿日: 2018.02.28
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    まあまあの面白さ。 ディストピア要素もあるが、二度と戻らない過去、取り返しのつかないものを慈しみながらも、強かに生きるキャシーとトミーの姿が印象的だった。

    0
    投稿日: 2018.02.27
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    この本を知らない人たちに対してあれやこれやと論うのは些か不適当かもしれない。逆に、この本を知っている人たちと鳩首凝議して納得のいきそうなゴールを目指すのは大変有意義なことかもしれない。ただ、いずれにせよこの本について何かを語ろうとするならそれ相応の勇気が必要なのかもしれない。この本に対して何かしらアプローチをしかけようとすると忽ち「かもしれない」が連発してしまうのはなぜだろう。理由は分からないが、少なくともこの物語の構造上、何かを語ろうとすれば不確定な要素を持ち出さなければ何も語れないだろう。この本をたった今読み終えた私はこの「何とも言えない読後感」をどうにかこうにか行き着く先まで伸ばしておきたいと思っている。それは大樹の根がはみ出して通路まで伸びてくるようなイメージに似ている。この物語を読んで感じ取れることは山ほどあるが、その中でも私が感銘を受けたのは彼/彼女たちの世界が秩序から始まり、秩序で帰結していることである。今日ではグローバルが当たり前になり、私たちは必然的に全世界が混じり合った、例えるならコーヒーとミルクをかき混ぜたような、カオスな空気感を受け入れている(と、少なくとも私は感じている)。それは広い価値観を持つ「私」と一貫した軸を持った「私」を裂けるチーズみたいに分離させ、結局自分とは何かが分からなくなったり、今自分がいる場所がどこなのか分からなくなったりする。そして何か大惨事が起きた時に上手く対応できない自分が誕生する。なら、グローバルではなくローカルに生きるべきなのかと聞かれるとそういう訳でもない。閉鎖的な環境がどういうものなのかはこの小説がよく示してくれるところであろう。ただし、そういう視点からこの小説について語るのも少しズレている。この物語の真髄はそういう環境による作用ではなく、そこにいる人々の内側にある心情にあるからだ。「記憶は捏造する」、「運命は不可避である」。それがイシグロ氏の掲げるテーマであるからだ。そのテーマはそれとなしに私たちの脳内に語りかけるが、それが最も大切なテーマであるような感覚が後から追いかけてくる。私たちはそういう感覚を知っているのに知らないように振る舞うし、知らなくても知っているように振る舞う。そしてその結果として表れる人間の行動は客観的に見て猛烈に空疎であるのが関の山であるが、大概の行為はそれに当たるし、大抵はそれで何の支障もなくやり過ごされるのだ。それは不安定そのもので、生きた心地がしないというのが私の意見であるが、そういう風潮はいつまでたっても改善される気配はなく、むしろ私の中のそういう拒否反応でさえ時間の経過とともに消え去っていく。何と言えばいいのだろう。私はこういう漠然とした大切なものをみすみす逃しているような気がする。この小説ではそういうものを何とかして掬い出そうとしているのではないだろうか。天網恢恢疎にして漏らさずとまではいかずとも、金魚すくいのように何とかして何かを掬い出すことはできないのだろうか。私の場合、そういう一人歩きの理論がこの本の読後から生まれた。この本を読んだあなたは何を想うのだろう。それが私にとって気がかりであったりする。

    2
    投稿日: 2018.02.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    主人公たちは自分たちの運命をあたかも「当然のこと」のように思わされている。その運命を受け入れつつ、心のどこかでそこから逃れる(猶予される)ことを切望している。 彼らの犠牲によってベネフィットを享受するマジョリティ社会は、至って冷淡で、主人公らの存在を知っても、知らぬふり。まして、彼らの境遇のことなど努めて考えようとしない。 そして今日も誰かが犠牲になる。 今の沖縄に似ている、と思った。

    1
    投稿日: 2018.02.24
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    読もう、読もうと思っている間に、ついにノーベル文学賞受賞! 読めば読むほど、自然と内容について考えさせられる時間が増える。気が付いたら、「提供」「ヘールシャム」「使命」などについて考えていた。本当にこんなことが起こっていると思ってしまうほど、現実と作品の境目がわからなくなり、考え込んでしまうほど。 しばらくはもう一回はなかなか読めないけど、少し時間をおいてまた読んでみたい一冊。

    2
    投稿日: 2018.02.19
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    翻訳モノに対して苦手意識があったため読みきれるか不安だったが、なんとか読了。 なかなか物語の世界に入り込めず、第3部に入ってようやく面白さを感じ始める。 臓器移植に関する話というあらすじを先に頭に入れて読み始めたため、なかなか核心に迫らない展開に少しモヤモヤした。 始めのうちは取るに足らないどうでも良いエピソードが続いて退屈に思えたが、それも彼らがどれだけ閉塞された環境におかれていたかを強調するものだったのだろう。 映画やドラマではどのようにこの世界が表現されているのか、見てみたいと思った。

    1
    投稿日: 2018.02.15
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    ノーベル賞を受賞し、有名になってからしたり顔で読み出す自分はミーハー野郎であると自覚はしているのですが、想像以上に感動してしまい、強く心を動かされてしまいました…広島旅行中にもかかわらず、何も頭に入ってこないレベルにです。笑 ご存知の通り本作は、将来的に臓器を提供することを目的に生まれ育てられた若きクローン達を巡る物語。内容からしてSFのジャンルに含まれることが多いけど、SF的な要素は割と少なくて、行き過ぎた科学に対する批判とか、生命の尊厳といった道徳的な問題にまで言及することは特にないんですね。 これはNHKの文学白熱教室でカズオイシグロ氏が語っていた、「描きたいテーマがあり、それを表現するために舞台を選んでいるのであって、舞台設定そのものは特に重要ではない」という内容をよく表しているなと思いました。(実際、カズオイシグロ氏は、日本を描いた初期作品では日本という特殊性ばかりが注目されるのを嫌がり、初期作品のテーマはそのままに舞台を英国に移した「日の名残り」を完成させ、自分が描いているテーマは普遍的であることの証明に成功した…とのこと) 話を戻すと、本作ではSFチックな前提を敷いているものの、そこに焦点はあてられていない。そうではなくて、その前提があることで「命に限りがある若者たち」を生み出すことが出来ていて、その群像劇が儚さや別れの悲しさをうまく描いているのかなと思いました。 実は同じ様な感動を覚えた作品として、「レナードの朝」という映画がありまして。この映画は実話をベースにしているのですが、「眠り病」という不治の病により長年植物状態にあった患者たちが、ある医者の努力により一時的に目覚めるものの、最後はまた元に戻ってしまうという物語です(「アルジャーノンに花束を」に結構近いですね)。この映画も別れの悲しさを描いているのですが、悲しい話のはずなのに不思議な温かさがある、というところが本作とよく似ている点でしょうか。 本作では「記憶」という側面がフォーカスされていて、カバー表紙にも描かれているカセットテープがその象徴となっているように思います。どれだけ悲しい別れがあっても、記憶があれば前を向いていける。本作には、悲しいだけではなく、そういう優しさがあるからこそ、こんなにも自分の心を動かしたのかなと思っています。素晴らしい作品でした。

    11
    投稿日: 2018.02.11
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    明晰な記憶、若さ、取り返しのつかない後悔の念、科学と倫理の問題、三角関係、教育倫理、全体を覆う虚脱感。自分にも覚えのある色々な苦いものが詰まっていて、上手く言えませんが「何か良くないものを代わりに背負ってけじめをつけて終わらせてくれた」感じがしています。何も終わりはしないのですが。 当初、本作を読もうと思った最大の要因は、主人公のキャシーの人生の記憶を巡る物語であるということでした。それも彼女は人と比べて随分と細やかに様々なことを覚えています。人の記憶は主観によって形成されるものである以上、客観的事実や第三者にとってのそれ、あるいは心のうちなどとはズレがあっても何も不思議ではありません。とはいえ、自分の人生を巡ってせっせと形成してきた記憶を持ち続けるということはどうやら当たり前ではないようで。 物語の中でキャシーは人の記憶の薄れる早さに驚きますが、私も同じように驚く側の人間です。あらゆるベクトルで記憶力が長けているわけではありませんが(むしろ暗記は大の苦手)、人と話していると、幼少期からの記憶が人と比べてえらく鮮明なことに自ら驚くことが少なくありません。そうさせる理由はぼんやりと頭にはありましたが、本作を読んでいくぶんかはっきりしたように思われます。 たとえば、場所に対する依存心や執着心。自分のアイデンティティが刻みつけられている場所、それも物理的にはその痕跡を辿るのが難しくなったような場所がある者にとって、記憶は唯一無二の頼りの綱です。 強烈な悔恨が残る出来事などもいつまでも心に留まるものです。キャシーが取り上げるエピソードには、ルースやトミーとのやり取りの中で取り返しの付かないマズい発言をした瞬間とそのときの鮮明な心理描写が多く出てきます。コトを起こしてしまった直後にもそのコトの重大さや問題点に気付くものの、気付いたときにはもう遅かった、という絶望感には覚えがあります。修復のしようもなければ、最早その必要性もなくなったような状態になったとき、こういった記憶はどこにしまうのがいいのだろう、とたまに考えます。ずっと覚え続けているのも決して精神衛生上よくないような気がするし、でも、都合の良いものだけを取っておくのも、誰にともいわず卑怯な気もして。キャシーも、何だか仕方なく全て抱きしめているようにみえました。 あとは、恋を巡る思い出。特に片思い。 より潔くさらさらと生きていたら、叶えたいものをきちんと叶えていたら、あるいは無茶な高望みをなければ、記憶にしがみつくことはなくなるのでしょうか。ここでは、しがみつく、という表現をあえて使いましたが、私自身にとって記憶に残っている思い出はどれも大切なものだし、キャシーにとってのそれもかけがえのないものであるはずです。 と、ここまで綴ってみたものの、それでも究極的に嫌なことは上手いこと忘れているのだろうな、と思ったり。 そしてここまで記憶の話しをだらだらと続けてきたものの、このような複雑な記憶の問題を抱えているキャシーがクローン人間であるということを忘れてはいけません。それでも、彼女の使命はただ一つなのだと思うと何とも気分が悪くなります。 でもカズオ・イシグロの物語作りの素晴らしいところは、キャシーたちの運命を通して、クローン人間の問題を超えたところに踏み込んで訴えかけてくるものがあることです。クローンだとか、DNAだとか、といったものを巡る倫理の問題はヤヤコシイけれど、人間という存在そのものは更にヤヤコシイはずだから。使命とはなんだろうな。子どもの頃に刷り込まれているばかりに、当たり前だと思っていることは色々あるな。大人になれば仕事をして、定年になれば年金生活を送る。早いうちに「本当のこと」を知っておいた方がいいのか。早いうちといっても、理解力は追いつくのか。そもそも「本当のこと」なんてあるのか。ノンストップで色々なことを考えてしまうけれど、物語がゆるやかに閉じているように、白黒なんてつきようがないのだとも思わされます。そこで味わう虚脱感。 この物語の凄みの神髄には迫り切れていない感じがしますが、何だか疲れてしまったのでこの辺りでひとまず。

    8
    投稿日: 2018.02.11
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    ・当時、わたしには秘密の遊びがありました。辺りに誰もいないとき、立ち止まって無人の光景をながめるのです。窓の外を見るのでもいいし、戸口から部屋の中を覗き込むのでもかまいません。とにかく無人でさえあれば、どこをどうながめてもよく、要は、ほんの一瞬でも別世界にいることを想像したかったのだと思います。ここは生徒であふれかえっているヘールシャムではない。静かで穏やかなどこかの館。住んでいるのはわたしとあと5,6人・・・・と。この遊びでは、自分を夢見状態にし、漂ってくる騒音や人声をすべて閉め出さなければなりません。たいてい、かなりの辛抱が必要でした。たとえば、窓から運動場の一部を見るとするなら、視野が無人になるほんの数秒間のために、延々と待ちつづけることもありました。あの朝も、教室から忘れ物をとり、四階の階段わきに戻ってきたとき、私はその遊びをやっていました。 ・「なんか変。もうなくなっちゃったと思うとさ」 わたしはすわったまま、ローラに向き直りました。「うん、ほんと妙な気持ち。もうあそこにないなんて、とても信じられないわね」 「とっても変。あろうとなかろうと、いまのわたしには関係ないはずなのにね。でもやっぱり関係がある」 「それ、わたしにもよくわかる」

    1
    投稿日: 2018.02.06
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    ノーベル賞受賞作とゆうので読んでみた。とても恥ずかしいが、カズオイシグロ氏の作品は一冊も読んだことがなく、他の受賞作も興味がなかった。と、ゆうわけで読んでみた。読み進めてゆくうちにこれが特別な施設で育てられる子供達の話だとゆうことがわかってくる。そう、特別な。。。人格とはなんだろう?科学の発展って?表紙のカセットテープの意味がわかってとても切なくなった。何故か「攻殻機動隊」や「ブレードランナー」に似てるなあと思った。。。

    5
    投稿日: 2018.02.06
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    180202*読了 日系とはいえ、英語で書かれた小説なので、文体は海外文学そのもの。 全てがキャシーの回想。 提供者、介護人、ヘールシャム。その意味が読むにつれて、当時の細かなエピソードを通して、だんだんと分かっていく。 もしこれが現実なら、わたしは提供者のことをどう思うだろう。 この小説に関しては、好きな文体だったけれど、訳者にもよると思うので、他の作品はどうだろう。 他の作品も読んでみたい。現時点では好きな作風。

    0
    投稿日: 2018.02.02
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    恥ずかしながらノーベル賞のニュースで彼の存在を知り、導入としてこの一冊を選択。 臓器移植の臓器提供者となることを前提に生み出されたクローン人間の少年少女たちが、特異な環境の中で育てられ、少しずつ自らの使命、運命に感づいていく過程が、成人したキャシーという女性の一人称で描かれる。 もしもの世界とは思わせないディテールの数々。そのすべてに彼らの絶望的な運命がちらつく。 一人称による静かで落ち着いた語りだからこそ、人間が科学の進歩を武器にどこまでも傲慢に突き進んだ結果の悲劇が胸に迫ってきて、これ以上ない警鐘となっている。

    0
    投稿日: 2018.01.24
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    会社の方からお借りしたので読んでみた。 ノーベル文学賞受賞者の作品とのことで、難しい作品なのだろうと気合いを入れて読み始めたが、これが意外と読みやすい。 語り手の回想で、誰にでもあるような子供時代の人間関係の話から、次第に違和感を覚える。 先日読了した雪の鉄樹のような構成で、物語は最後までその世界が姿を現さない。 上品な文章で語られる、上品な文学。 村上春樹が訳したらどうなるのかな?と少し思ってしまった(*^^*)

    21
    投稿日: 2018.01.23
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    難しい言葉や難解な表現もなく、とても読みやすい文章で、何処かにいる女の子の日記を読んでいるような印象でした。 普通の女の子のように悩むし、傷つくし、痛みも感じる。でも、女の子には「提供」という使命がある... その「提供者」なるものも読み進めれば、あぁそうかと腑に落ちてしまうような自然な文章、作者の技術、翻訳者も善いのでしょう。 ドラマも見ましたが、原作の方が淡々としていて逆に考えさせられ揺さぶられるるような気がしました。 他の作品も読んでみたいです。

    1
    投稿日: 2018.01.18
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    このレビューはネタバレを含みます。

    なんでもない口調で、ごくありふれた過去の回想記録を語る。小さな頃の友とのケンカや淡い恋心。その中に時々に現れる違和感。「介護人」や「提供者」などの聞きなれない言葉。 最後まで、主人公が、直面する現実社会のことを、近い将来のことを明言せずに語る文体は、強い意志を感じさせました。 臓器提供や科学の発達についていくら知識で知っても得られない、想像をさせてもらうことができました。

    2
    投稿日: 2018.01.17
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    突き刺ささりました。何故だか読むのを止められなくなった。 語られることの終着点が見えてこないのにキャシーをはじめとした登場人物の行先を追わずにいられない。 まずうまいと思うのは、情報の提供の仕方。 「提供者」「介護人」という言葉からなんとなく想像はつくのだけど、幼かった彼らがどうやって自分たちの運命を知り、そして受け入れていくのかとても気になってしまった。 読者に与える少ない情報からの想像のさせ方がとてもうまい。 ある意味ミステリ的で、これをサスペンスホラー的にとらえる人もいるのは納得できる。 そういった中で中心軸としての三人の物語がある。 キャシー、トミー、ルースの三人の関係にある繋がりの危うさと緊迫感が、とてつもない力強さで迫ってくる。 物語が切れ切れに語られるので、最初にすでにルースとトミーの運命については察せられるけれど、この三人の間にあった微妙な関係性は読み進めないと見えてこない。 当初からキャシーとトミーにはなにか親密な関係が見えているように思えるけれど、それがはっきりした形に上がってこない。もどかしい反面、「いや、違うのかも」なんて思うわけです。ルースとのやりとりも見ていて「この二人は仲たがいしてもおかしくない空気はあるけれど、介護人として世話をしているから、そうじゃないのかな」とか想像させる。 既知の情報からいろいろ想像していくけれど、どれも外れていく。 そして最後にそれが埋まっていく形なので、もう一度読み直したくもなる。 こういう構成の小説はあまり見たことがないので、ものすごく引き込まれた。 残酷で切なくて、不思議な透明感と美しさがあって…。 ラストのマダムの涙した理由にうるうるした。

    0
    投稿日: 2018.01.16
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    つらい、悲しい、苦しい。 主観というよりもすべてが回想ですすんで行きます。繊細な中に違和感が付きまとう不思議な感覚。 私の特性上あまり入り込まないように普段意識してはいたはずなのですが、主観と描写の繊細さで思わず自己移入も投影もぼちぼちしてしまったほどです。読後の虚無感、途中も頭から離れない。 トミーに対して特に、個人的に当てはめてしまった人がいるのでよりつらいものでした。最後の数ページはどうしても画面がぼやけます。 再読すると、違った印象を受けると思います。特に序盤。違和感がなくなったからこその。 この問題、すでに議論されていたこともありますが、この道は歩まない。大丈夫だと思います。

    1
    投稿日: 2018.01.13
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    2017.10.27 ストーリーを読み進めるうちに将来がわかってつらくなってくる。本人たちが淡々としているのがこわい。 キャシーの目線で語られるヘールシャムでの日常は、友達や先輩、先生とのやりとりすべてがリアルだった。

    0
    投稿日: 2018.01.13
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    このレビューはネタバレを含みます。

    非現実な設定でありながら、本当にキャシーが存在しているのではないかと思うほど、物語がきめ細かく作られているように感じました。 キャシーの心の中で思っていることや、人間模様は、誰にも話せないけれど私も日々感じていることばかりで、感情移入しながら読んでいました。ルースもまた、身近にいる友人、家族、時には自分と重なりました。 最もドキドキしたシーンは、キャシーとトミーが共にマダムに会いに行くシーンです。 ヘールシャムの秘密が明かされるとき、これはクローン人間と臓器提供だけではなく、これから人類の進歩によってもたらされるあらゆることに当てはまる問題の芯を突いているような気がしました。 ただ、まだなんとなくモヤモヤとしていてこの本を消化しきれていない感じがするので、また時間を置いて読み直してみたいと思います。

    1
    投稿日: 2018.01.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    漫画も愛する私は、読みながらずーっと、清水玲子さんの『輝夜姫』が頭にあった。テーマとしての臓器提供は輝夜姫の方が先かな? 幸せとは何をさすのかとかを考えさせられるのは、やはり文学だなぁと思うし、ルースとのやり取りの嫌~な感じとかも文学だと思う(笑)

    0
    投稿日: 2018.01.07
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    2周しても味わえる作品。 大人になった主人公が語り手で子供時代のことなどを語る構成→戻れない時間を余計に素晴らしくかけがえのないものとして思い出す様が息苦しくで切なくて美しい。

    0
    投稿日: 2018.01.07
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    文体に慣れるまで少し時間がかかりましたが、その後は内容が心に染み入って来ました。この本に出合えて良かったと思います。

    0
    投稿日: 2018.01.06
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    翻訳本は苦手な自分にとっては、これもやはり苦手な部類に入ったのだけど、何となく途中で本を閉じる気にはなれず、最後まで読んでしまった。 物語は終始淡々と進んでいって、少しずつ明らかになっていく、語られる内容の残酷さとのギャップがどんどん大きくなっていって、背筋がすーっと冷たくなっていった。 多分、自分が回収しきれていない伏線がそこここに張られていたのだろうなと思う。 そういうのが好きな人にはおススメ。 2018年最初の本がこれか…重い…

    0
    投稿日: 2018.01.03
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    読んでみて昔一度読んだことがあったことに気づいた。人からあらすじを紹介されて買ったけど、聞いた時点では全く気づかなかった... 文学性とかはよくわからないけど単純に面白いですね。

    0
    投稿日: 2018.01.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    提供者と介護人、最初はよくわからないながら、出てくるキャラクターが人間的で馴染みやすく、どんどん読み進めていけた。 外国の学園生活っぽさはありつつも、なんだか不思議な謎を潜ませながら話は進み、キャシーとその周りのトミー、ルース達は微妙な関係を持ちつつもお互いの良さも悪さも知りながら成長する。 トミーとルースが付き合ったのは意外だったけど、ルースが提供者になってから、キャシーとトミーが介護人か提供者になるのを猶予される可能性が出ないように、本気でお互いを思っているとマダムに認められないように、そうしたというのはルースらしいし、なんだかその気持ちもわかるような、でも悲しいような感じがした。 作品展の意味、マダムの役割、ヘールシャムの実態、すべて中にいるときには分からなかったけれど、後半わかって驚いた。 というか徐々にうすうす気づかされていたかもしれない、そのかんじがとてもキャシーたちの感覚とリンクしていたような気持ちにさせられた。 クローン人間とまでは推測できなかった、臓器移植系だな、とは思ったけれど。 人間の尊厳が、科学によって無視されなければならなくなった事態である。 怖い事だけれど、クローンが実現したらこういうこともでてくるんだろうか。 残念な結末で終わってしまったけれど、こういう作品で現代人は科学の発展に付随する問題について事前に予測して、こういう悲しい事態を防げるようにしていかないといけないとは思う。 作者がノーベル賞をとられたということで、初めてちゃんと読んだ。もう一冊読みます。

    0
    投稿日: 2018.01.01
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    このレビューはネタバレを含みます。

    臓器移植のための「提供者」としてクローン技術で生まれた子供達。同じような題材の近未来SF映画を見たことはあるけれど、文章での心理描写などはそれとは比べものにならないくらい、深く、それを受け入れていく語り手たちの気持ちは重く胸に残る。 ノーベル文学賞も納得。 村上春樹さんがノーベル賞候補とされて久しいが、私的にもカズオ・イシグロに1票。

    0
    投稿日: 2017.12.27
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    序盤から少しずつ違和感を感じ、違和感が恐怖になり、読後は荒涼とした大地に取り残されたようなやるせない気持ちになる。カズオ・イシグロらしい抑えた筆致がいい。

    1
    投稿日: 2017.12.26
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    全く立場の違う人たちの話。 生活自体に違いはあっても、悩み、考え、生きて行く上での感情は全く同じ。 そこを丁寧に描いているからこそ、余計に切なくなります。

    0
    投稿日: 2017.12.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    臓器提供の為だけに作られた存在が主人公のお話。ヘールシャムでの不思議な教育を受ける中で、徐々に自分達が何者なのかを悟るキャシー達。報われることのない内容ではあるが、悲観だけに満ちたものではなく、第一部ではヘールシャムでの暮らしが暖かく描かれていた。悲しい境遇であるにも関わらずキャシー達が絶望に打ちひしがれることが無かったのは、ヘールシャムでの教育によって、それが「自分達に与えられた普通」であるとある程度受け入れることができたからなのか、暖かい記憶に支えられていたからなのか、それともクローン特有の感情の希薄さ故なのか…と気になりながら読み進めた。最後はバッドエンド。運命には微かな抵抗さえできなかった。人間は人間、クローンは人間のために作られたクローンなのだ。しかし、最後に 1人残されたキャシーが涙するシーンは クローンも普通の人間と変わらない心を持っていることが象徴される、非常に美しく切ない、清々しいシーンだと感じた。

    0
    投稿日: 2017.12.26
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ノーベル文学賞受賞で本屋さんにたくさん並んでいます。読んだことがなかったので、手に取りました。五つ星。 せつなくて、かなしくて、登場人物たちの想いは、行き場がなくて。その姿が、人生のいろんなことにオーバーラップしてきて。でも大袈裟に広げることなく、哀しさを品良く読者に訴えかけてくる。 こんな感じです(わかりにくいかもしれませんが)。 久しぶりにエンディングで目元が潤った本です。

    1
    投稿日: 2017.12.25
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     物語の語り出しは、英国の全寮制のパブリックスクールを思わせる。普通の子供たちの日常だ。背景を一気に説明するわけではなく、時々出てくるキーワードを基に彼らの置かれた状況や、その出自が徐々にわかるように構成されている。彼らは臓器移植のための健康な臓器の培養母体で、言わば臓器牧場で養殖されている存在だ。  自意識のある彼らの日常から切なさを感じるとき、ページの左上を見ると、本書のタイトルである「私を離さないで」の印刷された文字が目に入る。一層の切なさに私の心は覆われる。限られた運命の中で可能性を見つけようとする彼らの生きざまに、私自身の在り方を問われている錯覚に襲われる。  経済的格差が大きくなった現在、本書の写し絵のような状況が健康格差として現れているように感じる。

    0
    投稿日: 2017.12.18
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    妙な小説だなと思った 誰にでもあるような人と人とのすれ違いだとかが多く書かれてて、そのバックには普通とは違う主人公たちの置かれた環境が横たわっているという 彼らの行く末はどうなるのだろうかと思って引き込まれた

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    投稿日: 2017.12.17
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    本格的なSF小説を読んだのは1984、華氏451に次いで3冊目。 この本は背景はSFだけれど、内容は恋愛小説のようだ。 主人公の淡々としたナレーションが最初から最後まで貫かれている。盛りあがりもそんなになく、とにかく主人公が過去を思い出しながら淡々と進んでいく。 最初は様子がよくわからないので、いつまでこの淡々とした調子が続くのかと、読むのをやめそうになったが、後半にさしかかってから、そう、彼らがコテージに移ってからは、段々と物語が終わりに向かって展開し、状況もよめてきたので、読むスピードが上がった。 ただの恋愛小説と違うのは、物語の背後には、自分ではどうすることもできない運命を受け入れなければならないものたちの悲しさが横たわっているということ。そのことで、何度か心に訴えかけられるものがあり、涙してしまった。 読み終わって、心にずしりと来るものがあった。 深い小説だと思った。

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    投稿日: 2017.12.16
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    カズオ・イシグロ作品として初めて読んだ「日の名残り」とは、また異なる作風の小説でした。 あらかじめ喪失することが宿命づけられている子どもたちの物語と言えましょうか。 主人公とその友人たちは「提供者」と呼ばれています。 なぜなら、彼らは将来、臓器を提供するために造られた子どもたちだからです。 読者は本作の冒頭から、それを知らされます(ただし、あからさまではありません)。 子どもたちは、施設の中という隔絶された場所ではありながら、普通の子どもたちのように授業を受け、友情を育み、恋をし、喧嘩をし、感情のすれ違いを経験し、大人へと成長していきます。 ひとつひとつのエピソードが、抑制の利いた文体で優しく丁寧に描かれます。 読者は、彼らが「提供者」であることを分かっていながら、それを読みます。 ですから、一つひとつのエピソードが、たとえどんなに明るいものであっても、切なく、また愛おしい。 彼らが、彼らを生んでくれた親(ポシブル)を思い、また親かもしれない人物をみんなで遠方まで探しに行く場面は、涙で目が潤みました。 実に素晴らしい作品です。 お恥ずかしい話、ノーベル文学賞を受賞しなければ、恐らく読まなかったはずなので、スウェーデン・アカデミーの皆様に率直に感謝申し上げたいです。 それにしても、カズオ・イシグロ作品は実にリーダブル。 「日の名残り」を読んだ時も感じましたが、難解さや読みにくさは全くありません。 本書を読んで、カズオ・イシグロの小説は、全ての読者に開かれているという印象を強くしました。 少し技術的なことで気付いたことも書いておくと、たとえば終盤、もっと正確に言うと、ラストの手前、いわゆるラス前です。 最も物語が盛り上がる場面。 作者なら一番熱を入れ、あるいは加速度を付けて書きたいところです。 ところが、カズオ・イシグロは、最後まで抑制の利いた文章で描き切ってしまうのですね。 そこがまた、強い訴求力として作用しているのが大変に魅力的です。 実に冷静で、辛抱強い作家だと脱帽した次第です。

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    投稿日: 2017.12.15
  • 祝! ノーベル文学賞受賞

    名前は知っていたものの、作品は読んだことがなかったけど、ノーベル文学賞受賞の報を聞いて読んでみたいと思って購入した口。 シチュエーションを知らないで読んだら、途中で衝撃を受けたことは予想できるけど、実際あらかじめシチュエーションを知っていて読んでも、何気ない日常がどちらかというと淡々と綴られていくことに、運命の悲しみをじわっと感じた。

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    投稿日: 2017.12.13
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    物語の大半は、現在ではなく過去の出来事が描かれています。語り手シャシーが生まれ育った施設ヘールシャムと、そこで出会った友人たちとの思い出は輝いているように見えて、だからこそ、切なくなりました。 物語の初めから、“提供者”や、“介護人”という言葉が出てきますが、最初は何のことかよくわかりませんでした。しかし、だんだんと真実が明らかになります。 訳者あとがきにも“イシグロ自身が(中略)、そんなことは本書の小さな一部にすぎないから、なんなら本の帯に「これは……についての物語である」と書いてくれてかまわない、とも言っている。(p449)”とあるとおり、その謎は物語の本質ではないのかもしれません。それでも、物語の途中で真実に気付いたとき、知らずに読めてよかった、と思いました。 とても繊細で、好きな雰囲気の物語でした。

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    投稿日: 2017.12.10
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    舞台は90年代のイギリス。 閉鎖的な寄宿学校で育つ子供達。 友人や保護官(先生)達との日常生活の中で、次第に彼らの出自や将来に関する事実が明かされていく…。 衝撃的な運命。なのに、サラリと語られていて戸惑う。 これは、よくあるクローン達の反逆ものでもなければ、運命に逆らう逃避行ものでもない。 与えられた短い人生を素直に受け入れ、その人生をどう生きるか、彼らは模索する。 なぜなんだろう? もう少しだけ長く生きたい、という小さな希望さえ打ち砕かれても、使命を帯びて生まれた事を教えられて育った彼らは、抵抗をする事もない。 受け入れる他に術を知らないからだろうか?あまりにも悲しく理不尽な人生…。 大袈裟な描写はなく、淡々としていて細やかで、それでいて異様。 不思議と引き込まれる物語だった。

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    投稿日: 2017.12.07
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    2017/11/19ー2017/12/05 原著のほうがよい。 トミーはああいう男くさい口調ではなかったはず。 ほかは全て良かった。

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    投稿日: 2017.12.05
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    彼の作品の細やかさ、圧倒的な筆の力にあっという間にのめり込んでしまった。 どうしてこんなに描写できるのだろうか。 直接的なことを言わずに、すべての空気まで、まるで私が本人のように感じられる。 ストーリーは知っていた。 彼自身も内容をバラしても構わない、と言っていたように、この衝撃的な内容を凌駕するこの筆の力。 私はカズオ・イシグロの「女たちの遠い夏」が大好きで、たまらなくて何度か読んだ。あまり評価されていないようだけど、あの美しさや空気が好きなのだ。 だから、日の名残りもあまりに違ってずっと読まずにいた。ノーベル文学賞を受賞したのを機に、一番評価の高い本書を手に取った。圧倒された。 すごいなぁ。 こんな作品を書ける、作家に巡り会えたことは幸せだ。他の作品も読みたいが、まだしばらく浸っていたい。

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    投稿日: 2017.12.03
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    ノーベル賞を取った作家ということで、予備知識なしに手にした本。 なんらかの施設に入れられて育つ子供たち。世間から疎外されるような障害を持った悲しい子供たちと最初は思っていたが、全く違っていた。衝撃だった。 移植のために生み出されたクローンたちであり、その宿命ゆえ短い人生を同じ境遇の仲間たちだけで支え合って生きていく。 人格を否定され、それを取り戻すために奔走するが、結局は宿命に飲み込まれ、本当の愛も知らず散っていく短く悲しい人生。 臓器移植、優勢人類、デザインベイビーと科学技術の発展とともに近い未来に必ずでてくると予想される問題を強烈に描いている。 人間のエゴで生み出される人類を許容する世界は多様性を失い滅びるだろう。

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    投稿日: 2017.11.29
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    12月の読書会の課題本。日本でテレビドラマ化までされたイシグロ氏の代表作。日本では「このミス」などで注目を浴びたそうだが、ミステリー小説として読むと物足りなさを覚えると思う。しかし抑制の効いた文章と共に「生とはなにか?死とは何か?」をじっくり考えさせられ、読み応え十分な一冊である。

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    投稿日: 2017.11.29
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    どこか郷愁が感じられる文章と思っていたら、途中で架空の世界の物語であることがわかった。 登場人物たちはその特異な運命を葛藤しながら受け入れつつ、普通の人と同様に人間関係に悩んだりするのが不思議な感じがした。

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    投稿日: 2017.11.28
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    カズオイシグロのわたしを離さないでを読みました。 臓器提供を行うために育てられている少年少女たちが主人公の物語でした。 彼らが孤児院のような施設で育てられていくなかでの、悩みや友情・恋愛そして監督者たちとのかかわりが描かれています。 そして成人した彼らは臓器の提供を行って順番に使命を終えていくのでした。 テーマは重いのですが、物語は淡々と語られていきます。 なぜか、映画ブレードランナーの最後で敵役のレプリカントが「どうして俺たちの命は短いんだ?」と主人公に問いかけるシーンを思い出しました。

    0
    投稿日: 2017.11.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ノーベル文学賞受賞で興味を持ち、初めて読むカズオ・イシグロ氏の作品。 まず、とても丁寧で品のある文章というのが率直な印象。 非常にショッキングな設定ながら、大げさなどんでん返しはなく、静かに淡々と若者たちの真実が明らかになっていく。 主人公・キャシーの一人称で語られる回想は繊細さと人間味に溢れ、トミー・ルースとの傷付けあいながらも支え合う関係性やあまりにも残酷な運命に取り込まれていく若者たちの痛みがじんわりと胸を締め付けていく。 ヘールシャムからコテージ、ノーフォーク。それぞれのエピソードに映画のワンシーンのような美しい場面が散りばめられており、読むのが辛いと思いながらも気付けば作品世界に入り込んでいる自分がいる。 包み込むような「柔らかさ」と読み手を引き付ける「力強さ」のある見事なまでの傑作。 その他の著者の作品もぜひ手に取ってみたい。

    2
    投稿日: 2017.11.28
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    不穏かつ瑞々しい世界観が繊細に描かれていて、一気に読み進めることができた。 不条理な運命を登場人物達がどう受け止め、全うするのか、、 読み終わって、やり場のない怒りや切なさ、またノスタルジーなど、様々な感情が込み上げてきた。 心の片隅に美しく残り続ける作品。

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    投稿日: 2017.11.26
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    2017年ノーベル文学賞を受賞した「カズオ・イシグロ」氏、報道で紹介されるまでは恥ずかしながら全く知りませんでした。これまでも多くの作品を書かれていますが、これが僕にとって初めての出会いの小説となりました。 何かのレビューを少し見ただけで、ほとんど予備知識もないままに読み始めました。淡々と進む展開に何がテーマなのかわからず、思わず横に置いてしまいそうになったのですが何とか踏ん張りながら読み進めました。そうすると、ミステリアスな展開が徐々に表れはじめ、主人公とその周りの存在の謎がわかり始めます。 生きるうえでの一人ひとりの存在意義とは、他者との関係の中で揺れ動く気持ち、性とは何か等々深いテーマが横たわっています。 お勧めします。

    0
    投稿日: 2017.11.26
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     最初の方はコツコツ読んでいたけど、進むにつれ気がかりになってきて結局夜更かしして一気に読んだ。話がだんだん不穏になってきて、段々とわかってくるので、あまり事前情報を入れずに読む方が作者の意図に添えるかもしれない。  私的には乾くるみにちょっとにてるなーと思った(スリープとか)。読み終わったあとの気分はただただブルー……村上春樹の、世界の終わりとハードボイルド・ワンダーランドを読んだことがあるけど、それは訳がわからんなという感じだったけど、寝て起きて今思うと退廃的な雰囲気がどちらもあるなぁと気づいた。今生きていてなんの不安も感じてないと言えば嘘になるけど、所詮大学受かるかなとかそれくらいの不安で、でもこの作品からはこの先何百年をも踏まえた不安を感じた。だから読み終わったあとめちゃくちゃブルーになるのかも。でも良い作品だと思うのでもし興味あるなら読んでください 本当に(笑)

    1
    投稿日: 2017.11.26
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    最初から最後まで単調な感じであったが、 ストーリー自体は面白かった。 10年前の作品だけど、古さは感じなかった。 いつしかこういった時代が来るのだろうか…

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    投稿日: 2017.11.23
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     キャシーとトニー、ルースたちが子供時代を過ごしたヘールシャルムという場所、そして青年期を過ごしたコテージ。淡々と日常生活が描かれながら、普通でない何か違和感を感じさせる描写。実は彼らの存在がとても特別な人たちなのだということが徐々に明らかになってくる。提供者、介護人、保護官などの不思議な言葉が多く出てくる中で、危機感が高まってくる感じ。ルースとの別れ、そしてトニーとも。一体人間の存在とは何なのか、キャシーたちの人生に何の価値、意味があるのか、ということを問いかけさせられる。彼らは普通に人間として悩み、喜び、怒り、さまざまな興味を持ち、セックスを求め、かつその中に楽しみを見出していることが書かれる。しかしながら、「提供」という言葉が不気味に迫ってくる。このような近未来が実際にありうるのだろうか。タイトルは音楽の曲名から来ており、何とも寂しい心象の世界を象徴している。

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    投稿日: 2017.11.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    カズオ・イシグロ、2017年、ノーベル文学賞受賞、ということで、ノーベル文学賞に選ばれた作家の作品とは、どんなものなのだろう?という気持ちから、手に取りました。ちょうど、友人が、この本を持っていましたので、頼んで借りまして。 むう。むう。むう。これは、、、ちょっと、なんといいますか、むう、、、凄いな。という感じでしょうか。物凄く、こう、ドシン。とくるなあ。でも、語り口は、文体は、非常に穏やか。そして、物静か。冷静です。非常に冷静に、冷静に、とてもこう、大切な事を、書いている、伝えようとしている、というか、うむ。こう、凄い。めちゃんこグッと来たか?と言われると、そういう訳ではないのですが、いや、うん、凄いです。 何となく、町田康の「告白」を、思い出しました。物語が、ひたすらひたすら静かに進み、ひたすら溜めに溜めて溜めまくって、最終盤に、一気に、ホンマに一気に、全てが奔流する、といいますか。9割ガマン、1割怒涛。そんな印象です。 そして、これは、ユートピア小説なのか?ディストピア小説なのか?この小説に描かれた世界が、もし現実のものとなったならば(もしかして、なっているのか?もしかして?)、「人間」にとっては、ユートピアです。でも「提供者」にとっては、、、とっては、ディストピア、だよなあ?そうだよなあ?そうでもないのか?この物語内の「提供者」のかたがたは、何故にこうも、自分たちの「使命」を、受け入れているのだ?何故なんだ?むう、、、わからない。でもこう、凄く、凄く、こう、ちゃんと考えなければいけない、気がします。 ジャンルで言うならば、、、近未来医療SF?或いは、青春もの、といっても、いいかもしれない。ヘールシャムでの生徒のかたがたの思い出として語られる内容は、間違いなく、学園もの青春ドラマ、といって、いいんではないか。或いは、近未来医療ノンフィクション? 「提供者」を「人間」と考えていいのか?それは「動物の養殖」と、何が違うのか?倫理とはなんだ?それらの問題を、ここまで平易な文体で、決してアジテーションすることなく(と思われる)、とにかくひたすら、淡々と語る物語。むう。これは、大変に、重要な問題、なのだと思うのだが、まだ、自分の中で、消化しきれていません。むう。大変、重要な問題ですね。大袈裟に言うならば、人間存在の意義を問う小説であることは、間違いない。 イギリス制作の映画版(ハリウッドではないのですね)、日本での舞台版、テレビドラマ版も、是非観てみたいですね。この世界観を、どう、表現したのか?よりドラマチックにしたのか?それとも原作に忠実に、静かな?穏やかな?という表現で良いものか?感じで映像化したのか?気になります。大変に気になりますね。

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    投稿日: 2017.11.20
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    このレビューはネタバレを含みます。

    とても静かで穏やかな、ある種淡々としているのに、作品がまるで語りかけてくるような、包み込まれるような感覚になる。 外から迫り来る危機でなく、共存の対象としての死。 それを常に心に抱えて生きる悲しみや葛藤が静かに昇華されていく。 私はこんな過酷な運命ではないけれど、どこかで死を意識しているからか、他人事とは思えず、この穏やかな悲しみの世界にある種の安らぎを感じた。

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    投稿日: 2017.11.19
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    遅まきながらノーベル文学賞受賞おめでとうございます! 日本人3人目ということで、これまで読む機会がありませんでしたが、カズオ・イシグロの本を読む良い機会になりました! 独特の世界観の下、物語の詳細な背景や理由はついぞ明らかにされないものの、現実には哀しく辛いテーマであり社会的にも重たいテーマであるにもかかわらず、終始一貫した作者の温かい眼差しのおかげで、何とも言えない深い余韻のうちに物語を読み終えることができました。 主人公で語り部であるキャシーが介護人をしながら回想する「寄宿学校」ヘールシャムでの思い出は、時系列にではなく、縦横無尽に時間を往来します。しかし、それによって物語の筋は大きく崩れるわけではなく、むしろ読者であるわれわれの物語への深度が強まるのは、作者の卓越した文章力のためであるでしょう。 当初は普通に幼少年期の思い出を辿っているのかと思いきや、合い間合い間に次第に登場する違和感のある単語たち。 日常の物語に紛れその違和感を何となくスルーしてはみるものの、用法が明らかにおかしい言葉が増すにつれて、だんだんと尋常ならざる世界が見えてきます。 普通でない世界で展開される主人公を取り巻く学校生活の描写は、それなりに面白く、ぐいぐいと引き込まれていきます。 そんな中、主人公のキャシーと友人のルース、そしてみんなからバカにされながらも感性が豊かな男の子トミーの三者の関係が提示され、物語の輪郭が徐々に見えてきます。 最初から全てを説明せず、ゆっくりと浸み込ませるように輪郭を明らかにしていく手法はさすがに上手いと思いました。 その後、輪郭が明らかになった後も以前として引っかかるもどかしさを抱えながら、舞台はコテージに移り、そしてさらにノーフォークへ。 主人公のキャシーとトミーが連れだって、『私を離さないで』の曲を見つけ出す場面などは、映画のワンシーンのようでとても楽しかったです。ヘールシャム時代、まだ幼かったキャシーが『私を離さないで』の曲とともに踊っていたシーンも印象的でした。 舞台がコテージに移ってからは、ルースとトミーのカップルと主人公のキャシーの関わり方、これに先輩カップルが加わって関係が一層絡まっていきますが、セックスの話が増えだして、これは終盤に向けての「生」への前振りかなとも思ったのですが、これには見事に作者に裏をかかれてしまいました。 コテージを後にしたキャシーが介護人になってしばらくしてからのルースやトミーとの再会は、むしろ辛さが先に立ちますが、相変わらず柔らかい視点での描写が程良いオブラートになっていて、彼女らの最後の勝負に向けての勢いも増していくので、物語への興味が失われることはありません。 しかし、最後に明らかになったことは、結局、エミリー先生とマダムがしてきたことは、例えていうと、養殖の高級魚にキャビアとかトリュフを与えて世話をしているようなもの?あるいは豚や牛や鶏にフォアグラを与えて世話しているようなもの?さらにはそのアヒルを広い庭の中で自由で快適に暮らさせているようなもの?とも思え、まさに放逐されたルーシー先生が読者の葛藤を代弁していたんですね。 改善を努力してきたというエミリー先生とマダムって・・・。何とも言えない感覚になりました。 そしてここに至り最後は「運命」に諾々と従うキャシーとトミーの2人。 諦観とやるせなさと大切な「時間」とお互いを思いやる気持ちが複雑に入り混じり、深い余韻のままに物語が終わります。 この作品では絵とかカセットテープとかの小道具から、「寄宿学校」やコテージ、船などといった大物まで、印象的な造形物が巧みにシーンの中に「柔らかさ」として使われていて、さらに生徒同士、先生や仲間との会話に繊細さと迫真さがこめられながらも全体として抑制が効いていて、物語の構成上の「優しさ」が滲み出ていた作品でした。 インパクトとしては半減したかもしれませんが、心に刻み込まれた分、事あるごとに印象として再現してくるのかもしれません。 さあ、果たして日本人4人目は・・・?

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    投稿日: 2017.11.19
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    昔々の口喧嘩 ウェールズの丘陵きゅうりょう地帯 雨どいの破れを報告 母屋おもや 納屋なや 人道的運営のモデル施設 すいほう水泡に帰してしまいました やろうとしていたのは、丸を四角にしようとするようなことですよ 法律の定める限界を越えようとしたのです 遺伝子工学が今後益々進展していく中でその論理を考えること為の重要テクストと見做されるようになるかもしれない 作家が想像力の中にとことん沈潜したその徹底ぶりによって 加藤一二三

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    投稿日: 2017.11.16
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    静かな語り口なのに、劇薬。とてもやさしいまなざしを感じるのに、ある秘密をあっさりと明かされるとともに、世界観の異常性に気づかされ、ぞっとしました。いつひどいことが始まるのかと、終始不安なきもちにされます。それでも、ひとつのカセットテープにまつわるストーリーは、わたしをとてもあたたかいきもちにさせてくれました。

    0
    投稿日: 2017.11.16
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    ノーベル賞をとる前に「日の名残り」を読んだ。受賞したというので他のものも読んでみたくなりこの本を買った。臓器提供のためだけに生まれて育てられた子供たちの悲しいお話だった。特にキャスが、「トミーが使命を終えた」という知らせを聞いたという部分には何とも言えず心が重くなった。実話ではないが、昔ならありうるようなことだと思えた。できればこんな話はもう書いてほしくないと思った。

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    投稿日: 2017.11.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    いまひとつ乗り切れず。 登場人物が外国人名なのも理由のひとつかも。 こういう設定の話をどこかで読んだことがある気がするけど ちゃんとは覚えてないあたりこの話も後々までは 覚えてられないだろうな・・

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    投稿日: 2017.11.13
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    洋書の翻訳本自体、あまり読んだことはないのだが、少なくとも本作は日本人が書くより素直に人物の思うことが表現されているなという印象をまずもった。 それは子ども時代を中心に描かれているからだという部分もあり、そして少しずつ謎を生んでは解き明かしていきながら物語が進んでいく。 ラストはエミリ先生とマダムの対比がきれいに描かれていた。キャスらに対し、エミリ先生が「幸運な駒」と言った一方で、マダムは「無慈悲で、残酷な世界でもある。……それを抱きしめて、離さないで、離さないでと懇願している。わたしはそれを見たのです」と言い切る。 とにかく文学作品として舞台設定は異質ながらも表現が良い意味でここまできれいにまとまっているのは秀逸の一言。何度も読み返したい。

    1
    投稿日: 2017.11.12
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    この本は一度読んでいるはずなんですが、カズオ・イシグロのノーベル文学賞受賞を機会に改めて読みました。あらすじは覚えていたのですが、再読した方がしみじみと伝わってくる物語でした。 確かに物語の展開を知らないで読むことをお勧めしますが、少しずつ疑念が深まっていく物語はどこまでも悲しいです。カバーのカセットテープの画像は重要な要素です。そしてタイトルにもなっている、途中で語られる歌「Never let me go」は実在するものです。YouTubeでも探せます。

    0
    投稿日: 2017.11.12
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    ノーベル賞を受賞されてから読みましたが積読の一冊でした。何も知らずにお読み頂いた方が良いです。イギリスのよどんだ空にとても合う内容。ちょっと昔のコバルト文庫みたいな設定なので読みやすいのですが、懐かしい風景の中、切なく美しく飽きる事なく展開されてドキドキしました。わたしはとても好きです。

    0
    投稿日: 2017.11.12
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    外国の作品だからか、読み慣れない書きぶりだった。 介護人キャシーの一人称の語りで進んでいく物語。ときどき先の展開を匂わせる言い方。抑えを効かせながら、少しずつわかっていくショッキングな内容。 おもしろかったけど、どう評価すればいいかわからなかった。

    0
    投稿日: 2017.11.12
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    読みたいと思って購入しながら読んでいなかったが、読み始めたら止まらなかった。 提供者も、生がある人であり、こころがあり、恋もして、怒ったり、悲しんだりするという当たり前のことを目の前に突きつけられる。 淡々と語る一人称がまた想像を掻き立てる。ちょうど著者が、なぜ小説を書くのかを語っていた番組をみて、その答えになるほど!と唸ってしまった。

    1
    投稿日: 2017.11.11
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    以前から気になっていた作家だったが、ノーベル賞をきっかけに読んでみた。 ”提供者”と呼ばれる人々を世話する”看護人”のキャシーの一人称で、彼女や仲間たちの子供の頃からの人生を回想して語り聞かせるような構成。彼女たちが育ったヘールシャムという施設はどこか奇妙で、キャシーが成長するとともにその真実がわかってくる。かなりつらい話なのだが、キャシーの細やかな心理描写が続くので、ひたすら切なくノスタルジックである。 根幹となる設定は昨今のミステリやSFでもありがちで途中で予想はついたが、その運命を生きるキャシーたちの生き様こそがこの物語のエネルギーなのだろう。昨今は本を読む端から忘れていくが、この重い塊のような読後感はきっと忘れない。

    0
    投稿日: 2017.11.10
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    もどかしい。 というより最後まで読んでいてもやもやした。 アイスグレイ。 くど過ぎる程に丁寧に描かれた「内面世界」は、「クローン」にはとてもじゃないけど似つかわしくない。 そのアンバランスさが心を捉えて離さない、もどかしさの原因なのかなあと。

    0
    投稿日: 2017.11.10
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    とある使命ためだけに生まれ、ヘールシャムという施設で育てられた「提供者」である子ども達の姿を描く作品。「提供者」の前段階として、「提供者」をサポートする「介護人」として長年働いてきたキャシーの視点で、回想を交えながら物語が進んでいくため、とても読みやすい文体。 「提供者」自体の謎は物語のはじめの方で解けてしまうのだが、ヘールシャムで行われていたことがなんだったのか、ラストまで読むと衝撃的だった。 エミリ先生のセリフに、(当然ながら)「提供者」ではない私はハッとさせられた。

    0
    投稿日: 2017.11.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    この物語は、主人公キャシー・Hの回想という形をとって書かれています。 彼女の育った施設であるヘールシャムでのことと、ヘールシャムを出てからの日々のこと、「介護人」として「提供者」を看る日々の事が実に細やかに、そして淡々と語られていきます。 のっけから「提供者」「介護人」といった謎の言葉が出てきて、なんの説明もなく不可解なまま読み進めることになるのですが、キャシー・Hの様々な体験談を読んでいくうちに、謎が明かされていきます。 キャシーを始めヘールシャムや他の施設で育った人々は「臓器の提供者」であること。 そして「提供者」はクローンとして生まれたのであり、人間たちの病気を治すため臓器を提供することだけが使命であること。 このように書くとホントーにベタなSFのようにも思えてしまうのですが、この作品の厚みと深みは、決して既視感のあるものではなかったです。 キャシーの言葉で語られる、ルースとトミーという二人の親友との日々。時に傷ついたり、傷つけたり、微妙に変化していく友情関係。 3人は「提供者」としてその運命をまず予感し、そして確信し、やがて痛切に不安を抱いていきます。 そんな「気持ちの揺れ」が友情のそこここに影を落とすさま、そしてまた人間らしい温もりで乗り越えていくさまが、丁寧に描かれています。 読み手はキャシーに寄り添うことで、「傲慢な人間とクローン人間」という対置の構図ではなく、あくまで当事者の「内面の世界」を辿っていくことになります。 提供者を育てていったヘールシャム側の人間はどうだったのか? それはラストで明らかになりますが、ヘールシャムを支えてきた人間であるマダムがキャシーとトミーに対して言った 「かわいそうな子たち」 という言葉が印象的でした。「かわいそうな子」という言葉自体が自分勝手です。しかし、できる限りの手をつくすことで、精一杯だった、と。 このシーンではとてももどかしい気持ちになりました。 読み終えた後は、とてもじゃないが救われない気持ちになりました。 こんな救われない感は、ポランスキーの映画「チャイナ・タウン」を10年前に観た時以来です。

    9
    投稿日: 2017.11.06
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    ノーベル賞受賞ということで。 臓器提供のためのクローン人間を育てる施設があり、そこで育ったキャシーが、施設で過ごした日々、施設を卒業してからの日々を語る。過去を振り返る形で書かれているから、どんな出来事も人ごとのようで淡々としていて、あまり入り込めなかった。彼らの友情もよくわからない。いつも相手の顔色を伺っているような…友だちって、こんなに難しいものだったっけ。最後まで読んでから、最初の章をもう一度読むと、なんだか悲しくなってくる。みんな、理不尽であってもそれが自分の運命だと諦め、受け入れていったんだな。

    1
    投稿日: 2017.11.06
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    単行本は既読。著者がノーベル文学賞を受賞したのを機に、文庫の方で再び読みたいと感じて読んでみた。臓器移植する選択をせざるを得ない彼らはクローンとして生活をするが、それぞれが感情を持ち、生活していることなどを介護員のキャシーが諭す。そのことから残酷な運命を背負わされた若者の辛い気持ちやどこか釈然としないなにかがあったり、不穏な空気が漂っていたりなど、薄暗い鈍色の空の風景が浮かぶようだった。悲しくも優しい感情、残酷な選択肢をせざるを得ない中でキャシーや若者たちの思いやる気持ちが感じられてよかった。

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    投稿日: 2017.11.06
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    ノーベル文学賞受賞者のカズオ・イシグロ先生の作品。読めば読むほどカズオ・イシグロ先生の独特の世界感に引き込まれて、時間を忘れて読み終えてしまいました。ノーベル文学賞にふさわしい作品。考えさせられる内容でした。

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    投稿日: 2017.11.05
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    ノーベル賞受賞おめでとうございます。ということで初めてのカズオ・イシグロ作品。 日頃翻訳小説ほぼ読まない勢なのでおっかなびっくり読み始めたものの、どひゃーこんな読みやすいんかい!もっと早く読めばよかった。 回想の形で進む淡々とした筆致のディストピアストーリー。あらすじ知らないまま読むことをおすすめしたい。 読み終えてもすべてがクリアーになるわけではなく(わたしが読み解ききれてないだけかもだが)、でも結局わたしたちの周りの世界もそうだもんなあ。なぜ?どうして?という思いに折り合いをつけて暮らすしかない。静謐、穏やかで丁寧な文体が主人公なりの「折り合い」なのかなとも思う。

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    投稿日: 2017.11.04
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    ノーベル文学賞を日系人が受賞した、と聞き、ミーハーながらも、やはり読まねばということで、読んでみました。 内容的にはSFで、謎解き要素もあるのですが、それがメインではないのでしょう。 私の場合、最初の3分の1は、「なんか退屈だな」と思いながら無理やり読み進めたのですが、2分の1くらいに到達すると徐々に引き込まれ、最後の3分の1はあっという間に読んでしまいました。 最後の数章はほんとうに素晴らしく感じましたが、結びの数ページはもうなんというか、とにかく心に残る情景描写でした。 最後の終わり方を気に入るかどうか、そこが、この本に対する自分自身の評価を決定づける基準になると思います。 なお、この本は、おそらく若い方にはあまりおすすめできません。若いうちに読むのはもったいない。楽しめきれない。少なくとも40歳以上の方にお勧めします。

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    投稿日: 2017.11.02
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    主人公のごく普通の、ありふれた思い出話から始まって、彼女の日常を読み進めていくも何かが違う。読んでいくとそんな感覚がふと芽生え始める。 重大な秘密を、筆者が隠そうとするよりかは、主人公自身がある意味「私たち」とは少し違っていて、主人公が語り手であるがゆえに、それが見えてこない。主人公の思い出が現在に近くなるにつれて当たり前のようにさっきまでなかった事実がそこにある。まるでジグソーパズルを一つずつはめていくように、少しずつその意味がわかる。 結局、最後まで主人公たちの口からは「提供者」、「介護人」「使命」といった物語の中でのみ通用する言葉でしか真実は語られないが、エミリー先生がもっとはっきりと現実的な言葉で説明する瞬間にはっとさせられた。 やはり、キャシーやトミーは姿形、そして情緒は人間そのものだけれども、世界の認識がどこか我々と違う。それはもって生まれたものが人間と違うとかそういうことではなく、環境が人をつくるのだということ。 運命に抗えないのは、人という存在よりもクローン人間が劣っているからではなく、ヘールシャムという極めて閉鎖的な環境で育ったがゆえのことなのではないか。 ただもちろん彼らにとっての人生、感情、愛するということに私たちとなんら変わりはなく、キャシーが涙を流すときは人そのもので、あまりにも残酷な運命を読者もただただ受け入れるしかなかった。

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    投稿日: 2017.11.01
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    語り手が激昂するでもなく、ただ淡々と語っていく真実に対して、読み手の私はそれを受け入れるしかできませんでした。 彼女らに対して「可哀そう」と思う隙も与えられませんでした。 暗く、重く、救いのない、彼女らにいつか幸せをと願っても、それさえも許されない。 決して読後感が良い作品ではありませんが、読み終えた後に色々と考えさせらえる作品です。

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    投稿日: 2017.10.30
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    今後このようなことが起きるのでは…と誰もが恐れているような内容。 実際には道徳的にできないと思うけれど、独裁者が不老不死を求めて大金を注ぎ込んだら? 等も想定してしまって恐怖。

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    投稿日: 2017.10.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    そのうち読もう読もうと思っているうちにノーベル賞受賞→店頭在庫出払いでようやく手に入るようになったので入門編で読めそうな一冊から。 キャシー・Hの回想による物語は、始めはちんぷんかんぷんだけれど物語が進むにつれおぼろにいろいろなことがわかりはじめる。ヘールシャムという特別な場所で保護されて育ってきた主人公やその友人たちがしだいに自分たちの置かれた立場を自覚していくように。 エミリ先生とルーシー先生のどちらが正しかったのか、エミリ先生たちの最善はしょせん偽善ではなかったか…後戻りのできない医療や科学技術の発展とそのスピードに追いつけない生命倫理の議論、読み終えてもふと思い出しては考えにふけってしまう。 そして、キャシーやトミーのような知りたがり屋の人生と、ルースのような信じたがり屋の人生も、どちらが幸せなのかな、と考えてしまう。

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    投稿日: 2017.10.25
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    ディストピア化した夏目漱石「こころ」です。 この感性は間違いなく日本文学。 2017年にノーベル文学賞を受賞したカズオ・イシグロ氏の代表作。 時代設定は1990年代イギリスですが、近未来の世界を描いています。 優秀な「介護人」として働くキャシー。ある目的のために「ヘールシャム」で育てられた彼女らは、芸術作品を作りながら成長していく。創造的であれ、と指導する保護管らの真意はなんなのだろう。そして、社会に出て、自分らの運命に直面する彼女たち。だが、キャシーと幼友達のトミーは、その役割が猶予されるという噂を耳にしたことで、その運命に抗おうとする。 ノーベル賞受賞時の報道ではイシグロ氏が日本人なのか日本人じゃないのかで賛否両論でしたが(世界の宝であるノーベル賞受賞者に対して何小っせぇこと言ってるんだと思いますが)、少なくともこの作品は英国で、英語で出版されています。 で、原題は「Never let me go」で直訳すると「置き去りにしないで」といったところ。 タイトルだけ見ると、直訳した方がイシグロ氏が言わんとしていることが理解できます。 この作品のテーマは、「人間の存在とは何か」。 科学が発展し、社会の進歩とともに価値観が大きく変化している一方で、変わらない人間の価値を追い求めることが主題です。 ほんとに日本的な仏教的な感覚。 前述のように主人公キャシーらは、絵画とか詩とか、芸術作品を作り続けています。 その目的は、心の証明であることが作中で示されています。 芸術を生み出せるかどうかが、人間か機械かの違いであるということです。 しかし、一方でそれは、人間の価値の答えではない、ということもストーリーとともに明らかになります。 むしろ、答えを用意しないことが、作者の言いたいことであるように思います。 科学が進歩し色々な価値観が変化することで、人間が人間であることの証明が不可能となることの不安感と、それでも人間であり続けたいという思いが、イシグロ氏の言いたいことであろうと思います。 キャシーの以下のセリフにその点が現れています。 「追い風か、逆風か。先生にはそれだけのことかもしれません」とわたしは言いました。「でも、そこに生まれたわたしたちには人生の全部です」 郷愁溢れる世界観ながら、はっきりいってかなり硬派なSFです。 SF好きもハルキストも、日本人ならぜひ一度読んでいただきたい作品です。

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    投稿日: 2017.10.24
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    感想に困る小説でした。 設定そのものは特殊で、その謎解きはありますが 劇的なことが起こるわけでもなく、ある意味淡々と話が進みます。 しかし、というかだからこそ、これほど人間同士の付き合いにおける実情を、いやらしい部分と綺麗な部分を両方書いている小説はなかったと思いました。

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    投稿日: 2017.10.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    以前から気になっていたのだが、今回、ノーベル文学賞を作者が取ったときいてあわてて読んでみた。キャシー・Hが育ったヘールシャムでの出来事、友だちの事を細かく思い出すままにたんたんと回想することによって、少しずつ明らかになる異常な生活。彼女たちは、本当のことを何も知らさられず、レールに敷かれる人生を歩んでいき、小さな夢、希望も何も持てずおわりを迎える。怖かった。ずんと響いた。原文で読めればよかったのだけど。。

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    投稿日: 2017.10.23
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    ノーベル文学賞のニュースを見て読んだ。偶然にもネタバレ無しに読め、裏表紙のあらすじや前半の雰囲気からは想像していなかった。 主人公を通しての情報の中で、少し奇妙ぐらいに感じていた世界が一変してまるで別物に変わった瞬間、それまでそういう可能性があったとしても考慮に入れてなかったことにも気づかされショックでもあった。そんなことまで織り込まれたような展開でショックでありながら充実した作品だった。

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    投稿日: 2017.10.22
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    (今年)2017年ノーベル文学賞受賞のカズオ・イシグロの代表作品。 前から読みたいと思っていたので、この機に手に取ってみた。 感想の前にひとつ。何故テレビで堂々とこの作品のネタバレをするんだろう…。咄嗟にチャンネル変えたけど見てしまったよ。カズオ・イシグロ的にはネタバレOKなスタンスらしいけど、解説でも訳者あとがきでもネタバレなしで読んだ方がいいってあるし、私も激しく同意する。この作品は予備知識なしで読んで、数々の違和感を抱えながら読み進めて、次第に明らかになっていくこの世界の悲劇的な有様に徐々に対峙していく…方が面白く読めると思う。私もそう読みたかった。 感想。 淡々とした語りと物語運びには賛否両論あるみたいだが、私は賛の方。これが激しいうねりのある小説なら、かえって冷めてしまったかも。主人公たちが反乱を起こすとか、なんとかして逃げ出すとか、自分達の運命を哀れんだりとか、そういうありがちなチープ展開ではなく淡々と運命を受容する様にこそ深く心が動かされた。やりきれなく、悲しい。彼らの運命受容は幼少期からの教育の賜物なんだろうか? 印象的なキャラクタはルース。何度も嫌な子だと思ったし、なんで主人公は彼女の知ったかぶりをフォローするんだろうと思った。結局のところ、主人公はルースを愛していたんだと思う。そしてルースの愛情深いところ、自己中な振る舞いの理由が自己中な気持ちによるだけではないことをわかっていたんだろう。第三者から見れば不可解な関係だが、主人公とルースの間には特別な友情関係と愛情が成り立っていたんだと思う。 ところでこの物語を読みながら、ずっと映画「アイランド」を思い出していた。(まあ物語運びは全然違うのだけれど) どっちが先なんだろうと調べたら、どちらも同じ2005年発表のものなのだとか。このあたりの時代はこのテーマに関連することに敏感になっていた時代なのだろうか。

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    投稿日: 2017.10.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    介護人キャシーの回顧録。 彼女が幼い頃を過ごした施設ヘールシャムは他の人から身構えられる程謎めいた場所。彼女の記憶を辿る内にその実態が明るみになっていく。 静かで淡々とした文章には不思議な説得力があり、もしかしてその施設は実在するのでは…と錯覚してしまう。 極めて異質な設定。なのに彼女達の日常は我々と少しも違わずそこがちょっと怖い。 「わたしを離さないで」タイトルにもなっている彼女の悲痛な叫びが、何時までも心に残り切ない。 ラストのワンシーンで、悲しみのあまり涙は流すけれど、自制し決して泣きじゃくることのなかった彼女の強さ潔さがとても好き。 これがカズオ・イシグロ初体験。 更にイシグロの世界観を追ってみたくなった。

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    投稿日: 2017.10.21
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    話題の本なので手に取ってみた。 冒頭から、「介護人」「提供者」という言葉が出てきたので、ストーリーを予想することが出来てしまう。 あとは、寄宿学校の日常が淡々と綴られている。 もう少し情報を小出しにして、「ヘールシャム」の実態を驚愕の事実にすると、飽きずに読めたのかも。ちょっと「抑制」されすぎた感じ。

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    投稿日: 2017.10.20
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    ノーベル文学賞作家とは思えない程、読みやすく難しく無い。次は「日の名残り」を読みたいのだが、どこの書店ににも置いて無く、Amazonにも在庫が無い。 早川書房さん、早く印刷して下さい。2017.10.19

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    投稿日: 2017.10.20
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    時にミーハーな心、きっかけというのも必要なんですね。ノーベル文学賞なるほどで読みました。非現実的なのだけど、でも現実にありそうな設定に「ん?」となり、その上さらりと全く問題もなく書かれているので、後半に説明あるのかしらと思いながら読むも特に言及されておらず。それでも読み進めて行くうちに全貌が見えてくる。読了後なぜ説明を求めてしまったのか、自分の小ささにひとり赤面。このお話、今はないかもしれないけれど起こりうる未来。その時私はどう接するのか。怖い話。けれど眼を背けてはいけない。「正義」が分からなくなる。。

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    投稿日: 2017.10.19
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    実話かと、思って読んでいた。 クローン人間、臓器提供、ヘールシャム。 自分の、いまいる場所を再確認しようと思った。

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    投稿日: 2017.10.18
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    ノーベル文学賞を受賞したイシグロさんの代表作「わたしを離さないで」ですが、受賞前に読んだ印象ではただ切なすぎるの一言に尽きます。あちこちでネタバレしているような気がするのですが読者は「提供」とは何だろう?と思いながらトンネルの中を這うように序盤を読み進めることになります。物語中盤になんとなくわかってくるのですが、読み終わった後もそのトンネルから抜け出せてないことに気づくというか、読後感はあまりよくありません。 ちなみに本当にこんなことが行われているのかと多くの読者は疑問を持つでしょうが、あくまで創作のような気がします。 ではなぜ、この残酷な創作が評価されたのか。読者の心にただひたすらの切なさを残すことが狙いであればそれは確かに成功しています。ただ、それだけで文学性を認められるのはあまりにも安易です。それに荒唐無稽な話ならばここまで切なくはなりません。 やはり、作者も読者もこんなことがどこかで行われている、あるいは行われうるという蓋然性をどこかで感じ、恐れ、身も心も揺さぶられるのではないでしょうか。それをこの小説は淡々と語りつつリアリティを持たせているのです。その筆力が何より評価されたのではないでしょうか。 イシグロさんはバックグラウンドがなにかと注目されてますが、作品も丁寧に吟味してみたいものです。

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    投稿日: 2017.10.18
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    語り口がとても静かで丁寧で染み込んでくるよう。土屋政雄さんの訳がとても良いと思った。主人公たちのやりとりの切なさやもどかしさに胸がぎゅっと掴まれること度々だった。テープの歌も聞こえてくるよう。 映画を観たいと思った。

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    投稿日: 2017.10.17
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    どんよりした曇り空の下、何もない草原をもくもくと彷徨っているよう。実は、はなしの大半を「長いなあ」と感じながら読み進めていたけれど、最後の数文を読んで、どうしようもなく切なく寂しくやりきれない気持ちが一気に流れ込んできた。キャシーだけじゃなく、トミーやルースたちみんなの想いが。 なんていうか、漠然とした言い方になるが、とても内面的な本だったと思う。 直接的な展開の面白さはない(個人的に)。始終淡々とした文章ではあったけれど、確実にわたしの中に蓄積していたんだなあ。本を閉じてから、どっと余韻が押し寄せて、しばらく感傷に浸ってしまった。疲労も感じた。

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    投稿日: 2017.10.16
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    「わたしを離さないで」カズオ・イシグロ著・土屋政雄訳、ハヤカワepi文庫、2008.08.25 451p¥864C0197(2017.06.13読了)(2017.01.12購入)(2015.12.16・38刷) カズオ・イシグロさんの本は、出版されるたびに話題になって、ベストセラーになります。気になるので、1月に古書店で見つけたので購入しました。 以下は読書メモです。 第五章まで読みました。 主人公は、キャシー31歳です。介護人を11年以上やっている。提供者の介護をやっている。介護人ってなんでしょう?提供者って何でしょう? 謎です。 キャシーは、ヘールシャムの施設で育った。 ヘールシャムでの思い出が綴られています。いつもいじめられていたトミー。毎年同じ時期にやってくるマダム。秘密親衛隊のルース。保護官の先生方。 謎めいた提供ということば。あるかないかわからない、展示館。作品の交換会? 販売会。 隔離された独特の社会生活が、語られているようです。 どんな話になってゆくのでしょうか? 「日の名残り」も機会があれば読んでみたいと思います。カズオ・イシグロさんの著作は、出版のたびに話題になるようで、いい作品が多いのでしょう。 六章を読んでいたら、本の題名の意味が書いてありました。主人公の好きな曲の題名だったんですね。本の表紙を眺めていたら、本に出てくるカセットテープだということに気がつきました。なかなか面白い趣向です。 ここで、読むのを中断します。 続きを読み始めました。第十二章224頁まで読み終わりました。提供の意味が述べられていました。そういう話だったんですね。近未来SF小説、ということなのでしょう。 セックスについての話が結構出てきますね。大変大切なことだから、いいお相手が現れるまえに十分練習してその時に備えておいた方がいいのでは、とか。もっともなことです。 オリジナルにあったとかいう話も出てきます。どうなるのでしょう。 読み終わりました。近未来かと思いきや、冒頭に1990年代末、イギリス、と書いてあります。主人公の10代から、20歳ころのことが主に書かれているので、80年代頃の話ですね。物語が進むと提供人とか展示室、マダムの素性とかが明かされるので、丁寧な構成といえると思います。 ただ、設定が特殊なので、普遍的な思春期の悩みとかを描いているわけではなさそうです。個人的には、評価がむつかしい作品です。 提供人になるまでの猶予を与えてほしいという話は出てきますが、提供人を拒否するとか、介護人や提供人をやめて人間として普通の生活を送りたいというような話は出てこないのが不思議です。 そうならないための、何らかの仕掛けが施されているとか、制度や提供人の誕生の秘密についても一切語られていません。 930人もの人がレビューを登録していますが、この作品の魅力は何なのでしょうか? 追記:気になったところを書きぬきしてみると、提供人たちは子供ができないようにされている、ということがわかりました。これでは、普通の生活を望むのは、難しいかもしれません。また、提供人たちの『親』は、まともな人たちではなく、ヤク中、アル中、売春婦、浮浪者、等、だろうとも記されています。普通の人は、やはり、臓器提供者となる『子』を作ることにはためらいがあるということを云いたいのでしょう。 ということで、疑問に思うようなことに、ちゃんと回答を与えようとしていることはわかりました。 【目次】 第一部    7頁 第一章   9頁 第二章   23頁 第三章   42頁 第四章   61頁 第五章   79頁 第六章   97頁 第七章   121頁 第八章   140頁 第九章   155頁 第二部    175頁 第十章   177頁 第十一章  194頁 第十二章  212頁 第十三章  225頁 第十四章  240頁 第十五章  259頁 第十六章  284頁 第十七章  303頁 第三部    313頁 第十八章  315頁 第十九章  332頁 第二十章  362頁 第二十一章  375頁 第二十二章  391頁 第二十三章  422頁 解説     柴田元幸 文庫版のための訳者あとがき  土屋政雄 ◆実にたくさんの名前が出てきています! キャシー・H 介護人、31歳 ルース トミー アイリーン先生 エミリ先生 主任保護官 クリストファー先生 クリス先生 ジェラルディン先生 フランク先生 ルーシー先生 ずんぐりして猪首、スポーツウーマン ロジャー先生 ロバート先生 アーサー・H アネット・B アマンダ・C アリス・F アレグザンダー・J キャロル・H クリーシー クリスティ 詩の天才? クリストファー・C グレッグ ケファーズ お年寄り ゲリー・B 大食漢 ゴードン・C シャルロッテ・F シャロン・D  一年上 ジュディ・ブリッジウォーター 歌手、「わたしを離さないで」 ジェニー・B ジェニー・C ジェームズ・B シルビー・C シルビア・B シンシア・E スージー パトリシア・C カレンダー ハナ ハリー・C 一年上 ピーター・N ピーター・J フィオーナ ヘレン ポリー・T マージ・K マーチン 介護人 ミッジ・A モイラ・B ラリー レニー ローラ ロイ・J ロジャー・D ロドニー ロブ・D ●特別な生徒(108頁) 「あなた方は……特別な生徒です。ですから体を健康に保つこと、特に内部を健康に保つことが、わたしなどよりずっとずっと重要なのです」 ●「ネバーレットミーゴー」(110頁) スローで、ミッドナイトで、アメリカン。「ネバーレットミーゴー……オー、ベイビー、ベイビー……わたしを離さないで……」このリフレーンが何度も繰り返されます。 ●赤ちゃんを産めない(114頁) その二年間で、わたしたちは以前知らなかったことをいろいろと知るようになっていました。たとえば、誰も赤ちゃんを産めない体だ、とか。 ●決められた人生(127頁) あなた方の人生はもう決まっています。これから大人になっていきますが、あなた方に老年はありません。いえ、中年もあるかどうか……。いずれ臓器提供が始まります。あなた方はそのために作られた存在で、提供が使命です。 ●性行為(131頁) 外の人にとって、性はとても大きな意味を持っていて、誰が誰としたかで殺し合いさえ起こるほどです。その重要性はダンスやピンポンなどとは比較になりません。 外の人があなた方と違い、性行為で赤ん坊ができるということです。 ●正常に機能(149頁) セックスをしておかないと、将来、よい提供者になれないから、と言っていました。腎臓や膵臓が正常に機能するには、セックスが必要なのだそうです。 ●初体験(152頁) 誰かとやって慣れておけば、のちに特別な誰かと出会ったときに、すべてを正しくやれる可能性が高まります。セックスというものが、エミリ先生の言うほど二人の間で大きな意味を持つなら、うまくいくことが絶対に必要な場面に初体験では臨みたくない。私はそう思いました。 ●ポシブル(213頁) わたしたちはそれぞれに、あるとき普通の人間から複製された存在です。ですから、外の世界のどこかに、わたしたちの複製元といいますか、「親」がいて、それぞれの人生を生きているはずです。とすれば、その「親」と偶然出会うことも理論的にはありうるでしょう。 ●猶予(236頁) 男の子と女の子がいて、二人が愛し合っていてそれを証明できれば、ヘールシャムを運営している人たちが何とかしてくれるんですって。いろいろと手を回してくれて、提供が始まるまでの数年間、一緒に暮らせるようにしてくれるんですって。 ●『親』(255頁) わたしたちの『親』はね、くずなのよ。ヤク中にアル中に売春婦に浮浪者。犯罪者だっているかもしれない。ま、精神異常者は除かれるのが救いかしら。 ●展示館(397頁) わたしたちが作品を持って行ったのは、あなた方の魂がそこに見えると思ったからです。言い直しましょうか。あなた方にも魂が―心が―あることが、そこに見えると思ったからです。 (2017年10月10日・記) (「BOOK」データベースより)amazon 優秀な介護人キャシー・Hは「提供者」と呼ばれる人々の世話をしている。生まれ育った施設ヘールシャムの親友トミーやルースも提供者だった。キャシーは施設での奇妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に力を入れた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちのぎこちない態度…。彼女の回想はヘールシャムの残酷な真実を明かしていく―全読書人の魂を揺さぶる、ブッカー賞作家の新たなる代表作。

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    投稿日: 2017.10.11
  • 「わたし」は誰に語りかけているのか?

    読み終えたばかりでまだ整理がつかないが、この本の本当の主題は何なのかと考えモヤモヤしている。 理不尽で苛酷な運命に翻弄され健気に生き抜く若者の姿に涙してほしいという動機付けは著者に当然ない。 進化し続ける先端医療の危うさを警告した書でもないだろう。 ロボットやAIなどすでに身近に溢れつつある物に心が宿ることを読者に想像させるための書だろうか? それも何かしっくり来ない。 よく「ディストピアSF」と評されるが、そのSF的設定をつぶさに見ていくと、細部までよく練り上げられているとは到底いいがたい粗さや幼稚さが目立つ。 もし臓器提供用のクローンを確保しておくなら、それが誰に所有権があるのか判然としないまでも、コストのかかり脱走や自傷などのリスクを伴う運営方法よりも、可能であれば映画でよく見られる液体入りのカプセルの中でチューブに全身が覆われるような飼育方法の方がリアリティがありそう。 保護人の監視下を離れて寄宿舎から巣立っていくという設定もよくわからないし、提供の回数は語られるが何が提供されたのかも触れられず、最後の猶予を認められる認められないも求められる親の健康状態次第でそもそも希望自体に無理がある。 こういうSF的要素は物語の背景に過ぎず、拘泥していては著者の本当の意図を見誤るのかもしれないが、それ以外にも不可解な点はいくつかある。 特にピエロの登場の場面。 「わたし」たちの関係性を暗示するための風船であり、それだけのために都合よくピエロが「わたし」の目の前に現れる。 介護人という制度も「わたし」がルースやトミーと物語上、少しでも長く結びついておくためだけの作為にしか見えない。 そもそもこの「わたし」というのは誰に語りかけているのか? 同じ臓器提供者予備軍なのか、被提供者も含めたすべての人なのかよくわからない。 "どんな環境下におかれても「心」を失わないことの大切さ"であるとか、"困難な制約下でも生き抜いていくことの素晴らしさ"であるとか、そんな健全な課題図書風のものが主題であるとは到底思えない。 クローンが自分の親を探しに監視下を離れ自由に出歩く様などの描写は、常人の倫理性を試すギリギリのところを平気で狙っているようで、著者の本当の意図の理解に苦しむ。 臓器提供するためだけの若者たちを、読者の誰もがノスタルジックな共感を示す寄宿舎での青春の一コマとして丹念に描いたら面白いだろなという、ごく単純な実験的な試みなのか?

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    投稿日: 2017.10.10
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    積読だった本。読むならこの機にと思って。 独特な世界観に静かに引き込まれ、出てきたので心の抑揚の意味で星3つ。 2017.10.9

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    投稿日: 2017.10.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    クローン人間として生まれてきた人々についての、さまざまなエピソードは、どれも、読んでて辛くなってくる。 全体的に重くて辛い小説。 文章は難しくない。 ネットの辞書で、2、3回、知らない言葉を調べたくらい。 簡単に読めるよ。 調べたのは、キャシーが着てる「海老茶色のジャージ」とか。どんな色?って思って。ネットだと、色がすぐ分かるから便利。 あとは、Judy BridgewaterのSongs after darkのジャケットを見たり。 キャシーがそれを聞いて踊ったという曲Never let me goを聴いたり。 小説に出てくるのと同じ地名をグーグルマップで調べて、その街の風景を眺めて、道路をアチコチ進んでみたりした。 U.K.やスコットランドは、都会から、ど田舎まで、アチコチ泊まり歩いたことがあるので、小説に出てくる風景はイメージできる。 実際に行った場所もあるような気がする。 この小説自体が、u.k.のどんより曇った空や、さびれた海辺の風景を思わせる。でも、空気は乾いている。 子供同士の、子供と大人の、大人同士の、女性同士の、男性同士の、女性と男性の、人間関係の精緻な心理描写が生々しくて、自分も今その場所に居るみたいな気がしてきて、グッタリした。 寮での集団生活の中で、注意深く空気を読みながら行動する子供たちが描かれてて、その様子はまるで日本人みたい。 子供たちを子供らしく描いていて、女の子も、男の子も、本物の生きた子供たちみたいで、可愛いなって思えてくる。それだけに、悲しい運命が、重くのしかかってくる。 以下、読書メモ。 p.60 キャシーがルースと仲良くなるところで、ルースから、透明の手綱を受け取って、空想の馬に乗って遊ぶシーンが可愛い。 p.79 『わたしが大事なテープをなくした』 これ読んで「テープって何?」って思った。 表紙の絵がカセットテープだから、カセットテープを連想するのが普通なんだろうけど、セロテープ(scotch tape.sellotape)みたいなものを連想してしまった。 子供に、この表紙を見せて 「コレ、何だか分かる?」って聞いたら しばらく考え込んだ後 「ラジオカセット」と答えた。 ラジオカセット? ラジカセ? Radio Cassette Recorder? 「見たことある?」って聞いたら 「ない」って答えた。 だよねー。 p.81 エミリ先生がノーフォークを、静かな良い所だけど僻地なので、イギリスの「ロストコーナー」だと説明すると、生徒たちが、「忘れられた土地」以外のもう一つの意味であり、ヘールシャムの4階にもある「遺失物置き場」をイメージして、定番ジョークになるところが好き。 ここも大切な伏線になってる。 p.84 マージが、ルーシー先生に「煙草を吸ったことがあるか?」と尋ねたので、生徒たちが固まってしまう。 ルーシー先生が「煙草を吸ったことがある」と答えると、生徒たちの間に衝撃が走る。 あなた方は特別な生徒で、体の内部を健康に保つことが、わたしたちよりずっと大切だから、と先生が話す場面は、生徒たちが内臓を提供するクローン人間として生まれてきたことの残酷さを表していて、読んでて辛くなる。 ウォークマンの話題が出てくる。古いなあ。 p.88 「ベイビー、ベイビー、わたしを離さないで」という恋の歌を、キャシーは、お母さんが赤ちゃんを抱いて「わたしを離さないで」と歌っているのだと解釈して、寮で、ひとり、枕を抱いて踊るシーンが、子供らしくて可愛い。 こういうのって、ホントにあるよね。 そこをマダムに見られて気まずい思いをする、というエピソードも。 小説後半の展開に繋がってゆく。 p.102 先生が生徒たちにセックスの説明をするときに「あなたたちには赤ちゃんは生まれない」という情報を紛れ込ませる、という描写が、臓器提供のためだけに生まれてきたクローン人間の残酷な現実を垣間見せる。 p.117 どう考えてもセックスしたとは思えない女の子が、わたしはセックスしてるけど、彼女はまだだから、というふうに振舞う時、「いつ、どこで、誰としたの?」って聞くのはマナー違反で、誰も聞かない決まりになっていた、というエピソードが笑える。 女の子同士の間にある、ウソだと分かっていても追求してはいけないという暗黙の了解。 『パラレルワールドがあって、すべてのセックスはそちらですませているのだろう』 このフレーズはp.148で、形を変えてもう一度、出てくる。 p.119 ハリーとセックスするために、何度も何度も一人でイメージトレーニングするキャシーの混乱ぶりが可笑しくて、声を出して笑った。 『まるでノイローゼだ』 ここが、一番、笑った箇所だった。しばらく笑い続けたもん。 p.148 キャシーが本を読んでたら、ルースがやってきて、知ったかぶりをして、その本の話を始める。 誰かが『戦争と平和』の話をした時も、知ったかぶりでうんうんとう頷く。 『コテージにもパラレルワールドが存在し、読書の大部分はそちらで行われていた』 ここも可笑しかった。 p.154 凍るように寒い真っ暗な部屋で、1トンもの毛布を被ってセックスするイメージ。 まるで寝具の山を押しのけながらしてるので、男の子としているのか毛布としているのか分からなくなる、という話も笑った。 p.191 クリシーとロドニーが見つけたルースのポシブルらしき女性を、トミーとルースとキャシーも一緒に、ノーフォークのオフィスまで見に行く。 ルースのポシブルがいるというピカピカのオフィスをみんなで覗き込むシーンは、なんだか胸が痛くなった。 父親と母親の愛情をしらない、というのが、残酷すぎて、読んでて辛くなる。 p.208 トミーに連れられて、キャシーが亡くしたテープを、ロストコーナーであるノーフォークのお店を捜し歩いてついに発見する。 <内容は、まだまだ続く・・・・> ---------------------------------- 2017.10.07.sat ノーベル文学賞受賞のニュースを聞いて、図書館にネットで予約したら、2日後に届いた。 オレが予約した時点では、2、3人待ちだったんだけど、本を借りる時点で120人待ちくらいになってて、これは早く読んで絶対に期限内に返さなきゃ、と思って、気合入れて読み始めた。 この小説は映画化され、日本でもドラマ化されたらしい。全く知らなかった。 ストーリーを知らないまま読めたのは良かった。 5、6時間かけて、読了。 一言で言えば、重い。 深い作品だなあとは思うんだけど。 読んでいて、どんどん辛くなってきた。 でもこれは、ただ単に、対岸にいる可愛そうな人たちについてのお話ではなく、わたしたち一人一人についての物語であることもよく分かる。 わたしたちもまた、彼らと同じように、いろんな宿命を背負って生きてるから。

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    投稿日: 2017.10.07
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    子供の頃からのSF・ファンタジー好き 早川から出ているカズオ・イシグロの「私を離さないで」は出版当初に読んだ。 主人公の語りとなんとなく不思議な生活感が終わりに向かって驚愕の事態へと。その押さえた語り口が、なお一層怖い。 読み終わって深く深く考えさせられる作品だった。 作者のルーツは長崎にある。被爆地に生きる長崎の人は広島と同じく様々な意味で差別されてきた。 このたびの震災で福島の人々が言われなき差別を受けることで、改めて広島・長崎の人々の痛みに気づかされた。 考えすぎかもしれないが、カズオ・イシグロの心象風景には核実験の対象とされた長崎の人々の痛みが刻まれていたのではないだろうか。 人として扱われないことの悲しみと痛みが胸に突き刺さる作品だった。

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    投稿日: 2017.10.07
  • 極上のS F作品

    宇宙人は出てこない。タイムマシンも出てこない。 これもSF。いや、これこそSF!と思わせてくれる傑作です。 何の変哲も無い町でごく普通の人達の物語。 ほんの少しの違和感が、少しずつ膨らんで世界が裏返って行く。静かな恐怖と戦慄が味わえます。

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    投稿日: 2017.10.05
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    映画の番宣を見ていたため、クローン技術を使った臓器提供の話であることは織りこみ済みだった。ヘールシャム出身の女性が回想する語りが、幼年期~青年期~「提供」期を通して淡々と進行する。何の予備知識を持たなくても、序盤から語られる内容に違和感が出てくるはず。介護人と提供者、ヘールシャムでの隔離された生活、コテージでの生活などなど。中盤では、読者も興味があるであろう彼らの性生活も語られるが、自分としては、それ程の紙数が必要か疑問だった。表紙のカセットテープの絵も、本書を読了して見ると新たな味わいがある。

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    投稿日: 2017.09.03
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    第一部、ヘールシャム、キャシー・B、トミー、ルース、交換会、マダム、展示館、エミリ先生、テープ、ノーフォーク行き、ルーシー先生。 第二部、コテージ、ポジブル、クリシーとロドニー、ケファーズさん。 第三部、介護人、回復センター、キングスフィールド、提供者、マリ・クロード、モーニングデール・スキャンダル。

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    投稿日: 2017.09.03
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