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わたしを離さないで Never Let Me Go
わたしを離さないで Never Let Me Go
カズオ・イシグロ、土屋政雄/早川書房
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総合評価

1355件)
4.0
404
456
285
45
12
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    たとえが古くて申し訳ないのですが、この本を読みながら、竹宮恵子の「風と木の歌」や萩尾望都の「トーマの心臓」などの寄宿舎ものを思い出しました。これまでにない読後感を体験しました。

    0
    投稿日: 2011.07.22
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    多分3、4年前から気になって読んでみたい本の一冊だった。 3月下旬に映画が上映されるので、どうしてもその前に読んでおきたかった。 読後は2、3日呆然と過ごした。色んなことを思い出し、たくさんのことを考えさせてくれた。凄い作品でした。小説の力を感じさせてくれました。静かなのに強烈に、美しいけれど残酷に。 心は自由、何があっても自分の心だけは自由です。 それを確認出来た作品。どんなに誰かに決められた運命であっても、制限された人生であっても、その人の心は、その人だけのものです。どう生まれて、どう死んでいくか、それはどう生きたかで良いことだ。どう生きたかかが、その人の生きた証だ。 キャシー、ルース、トミー、映画の中で動く、生きる、あなた達に会うのがとても楽しみです。

    1
    投稿日: 2011.07.19
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    このレビューはネタバレを含みます。

    話はよくわからない、けれども経験したことのない律動。静けさの中に不思議な怖さを秘めている。読まずにはいられない。この本のリズムに慣れるまで少し時間がかかったが、読み終わる前には夢にこのリズムが映ってきた。キャシー、トミー、ルース…ヘールシャムから始まる登場人物達は、とりとめもない毎日を淡々と過ごしているようで、トリトメノアル終わりに向かっていた。その語りようが染み入る、染み入る。ただ読後の爽快感はなく、妙にぐったりしてしまう。これはなぜだろう。

    0
    投稿日: 2011.07.18
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    「喪失感」を書かせたら当代一という予備知識のみで読んだ。それで正解。うすうすと気付かされること、実は知っているけれど知らないふりでいること、登場人物たちのそうした心の動きを同時に体験できる。 自分が失ってしまったもの、あると思っていたけれど、初めからなかったもの、失いそうなものにすがること、失ったことを忘れていくこと…。いまの自分と重ねることが多かった。一貫して喪失について書かれているのだけど、読者には、いまあるものを愛惜しむことについて問うているようにも感じた。 just read Kazuo Ishiguro's work called "Never let me go". It is said he deals with "a sense if loss". I did capture their loss: things they believed they had had never been given, relationships were lost or changed as they grow, dreams what they were eager to come them true yet never became true. But the story told me what we have and how to adore it. we do loose something, e.g.youth, but we gain other thing instead.

    0
    投稿日: 2011.07.18
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    胸が、もやもやとして、行き場のない想いでいっぱいになる、そんな小説。 考えるべきことが多すぎて、何を思えばいいかもわからなくなる。 そういうことを描きたかったんだとおもってる。 面白かった。心打たれた。 映画もみよう。

    0
    投稿日: 2011.07.16
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    ふおあぁあ。 なんだかとても精神が不安定になる小説。 ヘールシャムという施設。保護官と生徒。 介護人と、提供者。 ミステリ?SFなのかな。一応。 詳しい状況や設定は最後まではっきりとは明かされない。 でも語り口がとてもリアル。 詳しく書くとネタバレなので書かないけど。 生徒たちは本当に哀れで悲惨な状況に置かれているはずなのに その自分たちの状況に対する恐れや苦しみの描写が全くなかった。 書きたかったのは「提供者」の可否ではなくて その状況で彼らがどのように愛し合うか、ということ。 読みながら考えることが多すぎて落ち着かなかった。 なんだろうこれは。 なんだかよくわからないけど、傑作。

    2
    投稿日: 2011.07.11
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    確かに抑制された語り口で、「提供者」「保護官」「回復室」「外の世界」といった得体の知れない、どんより霧に覆われた世界が語られます。 救いのない選ばれた人々。 もしかすると、現実に、こんな世界がどこかにあるのかも・・・。

    1
    投稿日: 2011.07.10
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    衝撃的。 私たちにとって一番大切なものは何か。 私たちがいくつになってもどうしても手放せないものは何か。 思い出というもの。 傍に誰かがいたという記憶。 謎めいていて不可解で怪しげな世界、そこから浮かび上がるのは「生」というものへの本質的な問いかけである。 人がいつまでも持ち続けられるのは、思い出だけなのかもしれない。

    0
    投稿日: 2011.07.04
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    設定には興味を引かれるのだけど、なんとなく冗長な感じがして読み進むのに力が必要だった。好みの問題か。 背表紙に書いてあるあらすじは少々書き過ぎな気がする。

    0
    投稿日: 2011.06.28
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    このレビューはネタバレを含みます。

    【概要・粗筋】 臓器移植のドナーになることを運命づけられた子供たちの施設ヘールシャム。キャシー・Hは、そこで親友となるルースとトミーと出会い、ヘールシャムを出た後は、提供者となったルースやトミーの介護人として共に生きた日々を回想する。20世紀末のイギリスを舞台に、ヘールシャムの生徒たちの過酷な運命を描く小説。 【感想】 奇妙な小説。設定自体はSFっぽくて現実離れしているけれど、ヘールシャムの生徒たちはあまりにありふれていて、現実的にありうる物語のような印象を受けた。一方で、寓話のようにも思えた。 物語には、マダムの展示会や創作活動の奨励、ポシブル、提供猶予の噂などいくつもの謎がある。けれども、その謎で読ませるものではないのが良い。 イシグロの作品を読んだのはこれで二作目だけれど、最初に読んだ『わたしたちが孤児だったころ』と同じく、この作品も何か物足りない。すらすら読み進めるのだが・・・。

    0
    投稿日: 2011.06.26
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    うまく書けないが、 子ども時代って、こういう部分あるなぁと思う。 やや現実離れした設定にすることによって かえってリアルな気持ちをわかりやすく浮き彫りにする感じか。

    0
    投稿日: 2011.06.25
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    映画の後に読んだ本。映画より詳しく書かれているから映画を見る前に読んだ方が良い作品。恋も運命も、すべてにおいて「じれったい」と感じた本です。

    0
    投稿日: 2011.06.20
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    「あなた方は誰もアメリカには行きません。映画スターにもなりません。先日,誰かがスーパーで働きたいと言っていましたが,スーパーで働くこともありません。あなた方の人生はもうきまっています。」 物語はゆっくりと,甘い雰囲気の中で進んでいく。デスマス調での翻訳が世界観とすごくあっている。 介護人って何?ヘールシャムってどんな施設なの?そんなことを考えながら読みすすめていく。しかし,次第にこれらの謎は小説の重要部分だが,それをあかすことが主題ではないことがわかってくる。しかし,それと同時に新たな疑問がわいてくる。この人たちはこれでいいの? 小説には保護官とマダムなど少数の例外を除いて,外の人間は出てこない。キャシーたちの容姿の描写はほとんどなく,純粋にその人格だけが描かれようとしている。そのことが,作品のテーマを際立たせる。 読後に寂しさ,切なさ,ノスタルジーが残る。 読んでいて,納得いかない部分について,以下のカズオイシグロ氏のインタビューを読むと,少しすっきりするかもしれない。 http://www.globe-walkers.com/ohno/interview/kazuoishiguro.html

    0
    投稿日: 2011.06.19
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    丁寧な描写で淡々と物語は進んで行く中で、奇妙さや残酷さが徐々に浮き彫りになっていきました。 最後まで掴みどころのない小説でしたが、哀しいようななんともいえない読後感でした。

    0
    投稿日: 2011.06.18
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    カズオ・イシグロが作品を書くときに一番意識することは『人間とはなにか』ということらしいが、この本もまさしくそのテーマに則った内容。あらゆる点で人間と言っても過言ではないのに提供を運命づけられている、どこまでが人間でどこからが人間ではないのか。こんな傲慢が人間に許されるのか。いわゆるSFチックな話ですが、詳細な心理描写と優しい語り口調で最後まで熱中して読むことができた。

    0
    投稿日: 2011.06.16
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    特別な環境で育つ男女。 子ども時代の少し意地悪な感情、女同士の気を許しているようで油断できないかけ引きを含んだ親しい会話、偶然が作り出した不思議な時間を共有する男女の気分、、、細かい心理描写がすごい。

    0
    投稿日: 2011.06.16
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    今まで読んだことのない、不思議な感じのする小説だった。 結末はわかっているのに、なかなか核心に触れずに 淡々と回想物語が続く。 キーワードは『記憶』 全てのことを奪われてしまったキャシーが、唯一奪われなかったものが『記憶』だった。 大事件やどんでん返しはない、ただただ切ない物語だった。 読み終わった後も、ずっと余韻が残る。 しばらくたってから、もう一度再読したい。

    0
    投稿日: 2011.06.14
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    このレビューはネタバレを含みます。

    先日、電車に乗ったら、高校生ぐらいのカップルが扉の近くにいた。そんなに混んではいない電車。だけどギュッと寄り添う二人。彼は、まるで宝物を抱くみたいに彼女を抱きしめている。 無邪気な笑顔。きっと、お互いしか目に入らない。目に入れない。少し、うらやましく思った。 この本を読み終わった時、なんだかその風景を思い出した。そういった恋愛が軸の話ではないのに、キャシーとトミーがそうやって寄り添っている姿が思い浮かんだ。 流されないように、必死にお互いにしがみついてる。私を離さないで、あの早い流れに呑みこまれてしまうから。 ドナーとして命を与えられるクローン人間達の物語。その生かされる理由のために、決められた尺度の人生を生きる。 キャシーも物語も悲しみに暮れるわけでもなく、淡々と進む。だからこそ哀しさが伝わってくる。物語が、そこはかとなく綺麗なセピア色をしているのは、回想という形で書かれているからなのか。 タイトルが秀逸だと思う。

    0
    投稿日: 2011.06.13
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    ある程度、キャシー達の運命を知ってから読んだが、知らずに読んだらもっと謎に包まれていて、さらに面白かったかも。 淡々と描写される日常生活から、次第に明かされていく、運命。特に大きな事件などなく、ダラダラと進むように見えるのに、引き込まれる感じ。

    1
    投稿日: 2011.06.12
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    静かに繊細に描かれた日常と、徐々に現れる奇妙な世界のギャップがおもしろい。読み始めに推測していたことが、だんだんと現れてくるので一気にラストまで読めました。そして後から後らかあれこれと回想してしまう、余韻の残るお話でした。

    0
    投稿日: 2011.06.08
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    謎に満ちた物語の全体像が、徐々に見えてくる。巧みなスピード感の終盤でした。 奇抜な物語の設定にも驚きでしたが、 何よりも精緻な心理描写に圧巻でした。 なんとなく気まずくなったり、小さく見栄をはったり、急にうちとけたり。人との関係のなかで湧き上がるささいな感情が、これでもかというくらい精密に書かれています。 読んでいると、いつかの自分のその感情が甦ってくるように感じました。

    0
    投稿日: 2011.06.08
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    ゆくゆくは提供者になるということが運命づけられていたとして、私ならどうするだろう。それに抗おうと必死になるだろうか。諦めてやりたいこと全部やろうと思うだろうか。 この小説に登場するキャシーやルースやトミーは、どこまでも静かに彼らの生活をしていた。 それがかなしかった。 せつないとおもった。

    1
    投稿日: 2011.06.08
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    このレビューはネタバレを含みます。

    これはネタバレをしてはいけない小説。 しかし、なんとも怖い内容。作者にとって英国とは、こういうシステムが成立し得る場所という認識なんだろう。

    0
    投稿日: 2011.06.07
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    映画予告で、何となく彼らの運命が分かっていたのが勿体無かったなぁ、と思った作品でした。ああ、でも、原作でも最初の方で読者が気づくようになってたかな。 何となく変だと思ってることをハッキリと口にされてゆく感覚が、なんとも・・・ よく、自分ならどうするかなって思いながら小説を読み進めることはありますが、この物語はもう、自分が一員になってしまってるかのようでした。 この感覚は凄い。

    0
    投稿日: 2011.06.05
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    こんな話だったのか〜。 ちょっと不思議な話が淡々と語られるが、それがかえってジーンと心に響く。 ちょうどこの春に映画公開されていますけど、小説で読んだほうが感動するのかな。 映画も見て比べたいところだ。

    1
    投稿日: 2011.06.05
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    奇妙な設定なのに、どこか共感できるような、不思議な感じ。 どうも、知らなかったけど知ってるような、でもそれを知らされたときのような。なんて言ったらいいのかわからんw NHKで前知識が入っちゃった状態でこの本を読んじゃいましたが、 何も知らない状態で読むとさらに不思議な感覚になるんじゃないかなぁ。

    0
    投稿日: 2011.05.31
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    静かで激しく、美しく、哀しかった。 キャシー、ルースらヘールシャムで育った者の宿命は後半明らかにされるが、読者はその前に薄々勘付くようになっており、それよりもトミーを含めた感情のトライアングルが物語を動かしていると感じる。読んでいくうちに3人の関係性に自分が参加しているような気持ちになっていった。読んでいる最中は淡々とした描写により、じわじわと物語世界にしみこんでいったのだが、読み終わってからのほうが色々な箇所に戦慄を覚えて、自分の生き方にまで考えが及んでいるほどだ。

    0
    投稿日: 2011.05.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    1月に映画を観てから、ずっと読みたいと思っていた本書をようやく読み終えることができました。一言で言えば映画と全く同じ感想で、先に映画を観ていた分、常に映像を思い浮かべながら読んでいたのですが、全く違和感がなかったです。それだけ映画化が素晴らしかったということですが、世界観や本書で作者が伝えたい普遍的テーマと言える人の尊厳と存在の意義?が文章でも的確に表現されています。 主人公の一人称で回想として語られる本書は、映画も全く同じ構成ですが、映画では不明だった世界観の成り立ちが多少深く表現されていて分かり易いかも知れません。ともかくも「人」とは何か、欲望の果てに辿り着く道徳的矛盾やシステムとしての社会の日陰と凶暴さなど、伝えるテーマは深く広いと思いますが、文章自体は淡々としており、情緒的な描写からは読み終える後までこれらのテーマの全貌が見えないところも緻密に計算された構成力や文章力の成す技なのでしょうか。ほんとに凄い作家だと思います。 本書の後半で主人公のキャシーとトミーがエミリ先生とマダムと再会する場面で印象的なのは、人生を賭けて会いに来た主人公たち二人とは対照的に用事の空き時間に会って話して、そして用事があるために引き揚げる描写があります。結局は味方を自称するエミリ先生やマダムも、外の世界の住人の一人であり、彼らにとって主人公たちは「人間」ではないことが明確に表現されている感じがします。 映画ではラストに主人公であるキャッシーが「外の住人と自分たちにどれだけの違いがあるのか~」というセリフを吐きますが、本書では単にキャッシーがトミーを回想するシーンで終わります。この差は表現としての違いも大きいのですが、読後に与える印象がはるかに後者の本の方が大きいですね。ほんとに某日本のベストセラー作家の本ではないのですが、読んでる最中はそこそこ面白いのですが、読み終わった後に何が言いたかったのか(何も余韻が残らない)わからない本とは比べるのも失礼な位の差があります。 作者であるカズオ・イシグロの著作は何冊か日本から持ってきたので、読むのが楽しみです。感想とは関係ないですが、私が買った文庫本の表紙は古い?のかAmazonのテープの表紙とは違いますが、こちらの方が本書の印象に合ってる気がします。。。

    2
    投稿日: 2011.05.30
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ルースやトミーとの会話や仕草感じ方に対する丹念な筆致に「親しい人」との愛憎の複雑に絡んだどこにでもある人間同士の関係性というものを思い出し、自分が一人でいる理由を思い出すようだった。期限の定められたある意味「ものとしての使命」のある人生というのは、「夢を叶えなければならない」人生から見ると非常に残酷であると当たり前に感じていたが、果たしてそうなのだろうか、と視点が変わったように思う。 NHKの特集がキッカケで関心を持ち読んでみた作家だが、数々の受賞が頷ける作品だった。 とても印象深い。

    0
    投稿日: 2011.05.29
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    映画を観てから原作を読みたくなり読みました。ストーリーを知っていたから理解できましたが、なかなか始めだけでは読み進められない感じと思いました。 しかし、ストーリーの世界観は 不思議に感じられました。

    0
    投稿日: 2011.05.29
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    しっとりと冷たい静謐な空気、なんだっけ、と思って考えてみると、サナトリウム文学のそれだと気付いた。少し肌寒くなるような読後感。

    0
    投稿日: 2011.05.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    「提供」という言葉が出現するのは、物語のかなり最初の段階。 読み始めてすぐ、映画「アイランド」を思い出してしまった。 「提供」「介護人」「ヘールシャム」「マダム」「外の世界」。 はっきりと説明がないまま、クローンを匂わせる単語は出てくるので、なんとなく先が読めてしまう。 どこかであっと驚く展開があるのかと思いきや、いつも想像通りなので消化不良。 色んな所が中途半端で、マダムの正体やエミリ先生との再会にしろ、クローンの親を探す旅にしろ、先を期待させつつ、中途半端な形で終わってしまう。 クローン人間自体、現実の世界にほんとにあるのかないのか知らないけど、彼らが、自分達がクローンである事にそれほど疑問や抵抗がないのが、理解出来ない。 ヘールシャムを出て、外の世界に馴染むにはきっと時間や苦労が伴うのに、それも一切描かれていない。 主人公の目線で語られるのに、その主人公が可愛げないし、物語の設定自体になんとなく入り込めず、最後まで心惹きつけられることなく、読了。 映画化されていて、予告編をみた限り映画の方がずっと面白そうだった。

    2
    投稿日: 2011.05.28
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    これは一体何の話だろうと読んでいる途中いまいちわからなかった。 そんなにもったいぶってラストに何が起きるのだろうと。 エミリ先生が語る事実にはあらためて驚いたけれど、人が生きるということは<使命>のあるなしに関わらず死は必ず待っていて、思い出は美しく輝くということ。 男性作家が書くからでしょうか、性別は違えど女性の主人公を自分自身の姿として共感する。

    0
    投稿日: 2011.05.27
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    久々のカズオ・イシグロ…… 『日の名残り』を読み終えた、あの読後感に再び浸っている。 語り手でもある主人公はキャシー、何の仕事をしているの? 翻訳だからわかりいくいの?「介護人」ってヘルパーさんのこと? じゃ、「提供者」って??? まだある。 ヘールシャムと呼ばれる寄宿舎での生活。 生徒たちの間に流れる噂とタブーの数々…… ミステリーと言えようか? それだけでも、ぐいぐいと物語に惹かれていくのだけれど。 最後はやっぱり、カズオ・イシグロマジック。 心が隅々まで静けさに満たされるような。 本を閉じたら、一人静かに想いを巡らせる一冊。

    0
    投稿日: 2011.05.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    以前新潮社から「禁断のクローン人間」というSF小説が出ていました。臓器移植のために作り出されたクローン、クローンに内在する人間性、彼らを救おうとする外部の人間……。クローンの側から見るか、人間の側から見るかの違いはありますが、道具だてはこの物語とほとんど同じです。映画「アイランド」とも共通するものがありますけどね。 「禁断の〜」ではクローンたちは人間的な扱いを受けていません。言葉も教えられず、この作品の中の「他のホーム」のように、大勢が隔離施設に閉じ込められて暮らしています。しかし、彼らの間に自然発生的にある芸術的な動きが……という筋書きで、作者はフランスの方なのですが、極めてヨーロッパ的な描き方だな、と思いました。 カズオ・イシグロさんもイギリスの作家ではありますが、クローンの自意識や彼らどうしの相互関係にスポットを当てた(それゆえにこの作品は文学として成立している)あたりは日本人の感覚かなと。 もし入手できれば、「禁断の〜」もおすすめです。 個人的クローン作品まとめ 「わたしを〜」欧・日:「私」の記憶にスポット。諦念が支配。 「禁断の〜」欧:社会的。虐げられた民の人間性・宗教性。少数の犠牲の上に成り立つ自由。 「アイランド」米:一人の英雄が立ち上がり自由を勝ち取る。

    0
    投稿日: 2011.05.23
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    前半中盤少し冗長なのか少々ダレるけれど、淡々とした退屈な語りのようで次第に明らかになっていく異質な状況に惹きこまれていく。そして終盤の逃れようのない喪失感の切なさと美しさ。強引ともいえる設定の中でこうも自然とこういう感情を呼び起こさせる物語、見事。

    0
    投稿日: 2011.05.19
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    今日映画もみてきました。穏やかな日常が、思いもよらない事実によって、一変する。見方がかわるというか。とにかく心が揺さぶられる一冊。

    0
    投稿日: 2011.05.17
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    私の読む本は大抵誰かに勧められたり、以前読んで興味深かった作家の別の小説だったり、ミーハーにも何かしらご大層な賞をもらってたり、そういうきっかけで手に取っているのだが、この本は珍しくジャケ買いというか表紙が印象的で読み始めた。 タイトルから子供がお母さんに対するメッセージかと思って親子の心温まる話かと勝手に想像してたが全然違った。 読んでいくと登場人物たちの正体が何なのか、結構ヒントはちりばめられているのですぐわかり、ミステリーとして楽しむ本ではないです。 使命を持って生まれてきた子供たちが、愛情をもって人間関係を築き、希望を紡ぎながら、決められた運命の限られた人生を全うしていく姿はとても切ない。 感情的にならない主人公の淡々と冷静な語り口調から、そうした残酷さも含めたすべて受け入れる彼らの強さが伝わってくる。 一方でダイレクトな描写が少ないながらも、人間のエゴが当たり前となっている世界に大変気分が悪くなる。 15年ほど前のインドで懸命に生きている子供たちをみながら、「何かのために人は生きるのでなく、生きることそのものが人間の目的なんだ」と考えたことを思い出した。

    0
    投稿日: 2011.05.15
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    2011/05/14 始めは何の話してるんだかさっぱり掴めなくて、なかなか先に進めなかったけれど、真相がわかって衝撃を受けてからは先が気になってどんどん読んだ。 映画が気になってて読み始めた作品なんだけど、こんなのどうやって映画にしたんだろう。 見てみたいな。

    0
    投稿日: 2011.05.15
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    このレビューはネタバレを含みます。

    うーん…悪くはないんですけど、どうしても読み終わったあとにものすごい違和感を感じてしまいました。 特殊な理由で生まれてきた「私の代わりは他にいるもの」な人の話なのですがそれでも与えられた役割を憎むでもなく淡々と与えられた任務のために生きている…うーん、それって結局人生とはどう生きるべきなのかというテーマに結びついていくような話だと思いました。 こういう設定の人物でない現実世界でも結局人は死ぬんだよなぁというのを嫌でも思い知っておりますが、それでも生きていく意味ってなんだろうなぁと考えさせられる作品でした。でもなーどうしても登場人物の行動に違和感を感じてしまう私がいる…。 ここまで深読みできていないけれど、瀬名秀明さんの意見にけっこう同感しています。 http://senahideaki.cocolog-nifty.com/book/2007/01/post_7cba.html

    0
    投稿日: 2011.05.11
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    深刻なテーマに独特の世界観。登場人物の心象表現が細やかで、物語を流れる雰囲気とともに味わい深い作品。良質の小説。映画もみたけれど、小説のほうが「巧さ」が引き立つ。

    0
    投稿日: 2011.05.08
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    内容は 提供者と呼ばれる子たちの寄宿舎で 自分たちが臓器提供のために育てられたクローン人間 であるということを、徐々に徐々に知ってゆく過程が 怖いという評判で、そういう話。 なんだけどー、クローンだとか提供の話にはあまり触れずで そっち方面からの恐怖はない。 表題の『わたしを離さないで』というのは 話の中に出てくる曲のタイトル。

    0
    投稿日: 2011.05.07
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    人生の定めを設けられて生み出された人。知識と理解の乖離。抗いと受容の交錯。豊かな生活を送っている私たちに、どこかで犠牲になっている人たちを思わせる作品だった。

    0
    投稿日: 2011.05.05
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    ヘールシャムを巡る設定は非日常的であるが、そこに描かれている人々の思いや生き方は普遍的なもの。 思い通りにならない人生を歩む上で、青年期の経験、思い出が重要な役割を持つ局面は、皆共通にあるのではないか。 少し切ない記憶をよみがえさせられる小説でした。

    0
    投稿日: 2011.05.05
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    2011年05月 02/025 噂で聞きつけて、初めて読んでみた。レビューはたくさん書かれていてその通りだと思うことが多数ありました。ストーリー(物語の設定)はけして珍しいものではありませんが、内省的なアプローチで綴られる世界はとてもなまなましく、考えさせられるものでした。 これから映画を観る予定です。映像の世界でこの物語を知ることはとても興味深く、この作品の世界観をよりよく理解できるのではないかなと思います。

    0
    投稿日: 2011.05.05
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    人は必ずいつかはいつかは命を終える、でもそれがいつなのかは殆どの人には分からない。もし、この小説の登場人物のように、はたらくこともない、家庭を持つことも無い、人生は長くない、と分かっていたらそこまでの時間を自暴自棄に過ごすでしょうか。そうかもしれない、でも結果的に短い人生を送る、家庭も持たない、そういう人も多く存在すると思う。 むしろ彼等のように使命も特定せずに人生を終える人も多いでしょう。それでも、人は生きている。みんな同じ。そう改めて思わせる小説でした。 現実的にはあってはならないシチュエーションですが。

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    投稿日: 2011.05.04
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    最初、この話は一体どんな話なんだ??と誰もが感じるでしょう。 しかし、読み進めていくうちに、少しずつ世界の成り立ちがわかっていく。 そして、いともあっさりとその不思議に感じてた世界観がこの物語の現実と知り、いつの間にか世界に引き込まれていく。 主人公たちの、切な過ぎる青春の物語に心を揺さぶられた。

    0
    投稿日: 2011.05.01
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    あんまり外国小説は好きじゃない。 が、映画がいいよ、と聞いたのでトライ。 淡々と進み、恵まれた環境での幸福な生活として描写されるのだが、徐々に明らかになる基本的なところでの、とんでもない状況。 けれど、この先、このようなことは絶対にない、と言えない怖さ。 抑制の効いた文章も好き。(が、翻訳系は訳者の文章なんだけど)

    0
    投稿日: 2011.04.29
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    このレビューはネタバレを含みます。

    淡々と書かれているにも関わらず、何だかぬめっとした読後感。薄っすらと気持ち悪い。 主人公たちがヘールシャムで過ごした子ども時代。 寮生活のようで、それほど特殊な環境とは思えなかった。 子どもが手に入れることができる情報は少ない。大人がふとした時に見せる表情やこぼした言葉等からあれこれ類推して、それをもとに背筋を凍らせたり、寂しく思ったりする。 大人が隠そうとしている情報は、子どもを守ろうとしていたからかもしれない。 ヘールシャムの子どもたちだけじゃなくて、おそらく普遍的な子どもの頃の体験なのではないか。 主人公たちが素直に運命を受け入れてしまうのに、私たちは感情移入がしづらい。 でも本当に、人生が選択可能だということは自明なものなのか? 私自身は、今までの人生を選び取ってきたと考えてきたが、予め私の心も身体も誰かのためとして設定されている人生なんだと諦めた方が、自然なのかもしれないな、なんて思ったりした。 SFとしては穴だらけだ。 臓器移植だけが目的であるならば、クローンよりも、もっと効率のよいやり方あるだろう。 多分、この小説でクローンは重要なテーマではないので、そのあたりを考えても意味のないことなんだろう。

    0
    投稿日: 2011.04.28
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    この小説がアジカンの「架空生物のブルース」の核なんだなってことが、よくわかりました。 最初は設定がわかりにくく、読み進めるのに苦労しましたが、読んでいくにつれ、物語や人物についての理解が進みました。 主人公たちに定められた使命は、同じ人間として生まれたはずなのに、普通の人と違っている。 そこから色んな感情が浮かび上がるはずなのに、文章からは必要最低限のものしかみえてこないです。 だからこそ読者がそれに思いをはせることで、より一層主人公の感情が浮かび上がるのかなと思いました。

    0
    投稿日: 2011.04.27
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    このレビューはネタバレを含みます。

    小さな小さな模様を積み重ねるように組み上げられてゆくカズオイシグロのこまやかな心理描写。 何故、人は、世界の不条理を、残酷さをそのまま受け入れるのだろう。 そう思うと涙がでる。

    0
    投稿日: 2011.04.25
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    再読。初読でも衝撃的だったが、再読しても強烈。何故逃げないのか。逃げない方が楽だから?それ以外の可能性ご想像できないから?

    1
    投稿日: 2011.04.25
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    ボリビアに行くフライトの中で読んだ作品。 初めてのカズオ・イシグロです。 こう、なんというか非常に抑制の効いた文章で、淡々とラストまで描かれるといった印象です。 しかし、細部に渡って描写が美しく、心地良いものでもある、いいですね!こういう文体も嫌いではないです。 しかし、どうもこの世界の設定に納得がいかず、入り込めませんでした。 SFとして割りきろうとしても、他の設定は現実と変わらないから余計に引っかかるものです。 いくらそういった教育を受けたとしても、提供者として納得はしないだろうし、またそういった制度に反対する人はいるだろうに、てか倫理的に破綻しすぎだよと。 医療従事者になる身として、というか人としておいおいと思います。 でも歴史を振り返ると、奴隷制が存在し、現在も人身売買や臓器売買は行われているわけだから、ありえない話ではないよね。 世界が嫌な感じにならないように考えていきたいものです。

    0
    投稿日: 2011.04.24
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    このレビューはネタバレを含みます。

    女性は、美しく、穏やかな言葉遣いで自らの現在と過去を語る。 ヘールシャムはどんな場所で、自分たちはどんなふうに育ったのか。 介護人という、現在の職をもうすぐ辞めること、などを。 一見、幸せな半生をすごしているように見える。 彼女の穏やかさは最後まで変らない。 ただ読者は、読み進めるにしたがって、彼女たちが置かれていた、もしくは置かれている状況に戦慄を覚えるだろう。 臓器提供のためだけに生まれたクローン人間。16歳になると、施設を出、1、2年の猶予ののち、臓器提供者の介護人となり、いずれ臓器提供者となる。その先に待っているのは死のみだ。その運命を受容して生きた人々が描かれている。 彼らが生きているのは、彼らのような存在を生み出し、社会のシステムとして組み込んでいる世界だ。 彼女はその世界を受け入れ生きる。自分たちの身の上を嘆き、社会と戦ったりはしない。介護人を辞める彼女は、おそらく親しい人々が向かった場所へといずれ旅立つのだろう。 わたしをはなさないで。随所で見られるその言葉は、静穏に包まれた彼女の訴えに思えてならない。

    0
    投稿日: 2011.04.22
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    このレビューはネタバレを含みます。

    ある特殊な環境下で育てられる子供たち。成長するにつれ、図らずも自分たちが背負わされた原罪と向き合うことに…。尊く生きるとはどういうことか?人間とは何か?「わたし」とは誰か? 深く考えさせられる一冊。まとめると、『記憶抱き 静かに宿命 受け入れる』といったところでしょうか?

    0
    投稿日: 2011.04.21
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    このレビューはネタバレを含みます。

    映画を観ようか、DVDを待ってもよいか、と思案中。 それは別にして、ちょっと違った観点から。多分、もう指摘している人は多いのだろうけれど。 本書は、著者本人は、先日のNHKでも語っていなかったし、他の機会にも話しているのかどうか、知らないが、明らかに、「アンドロイドは電気羊の夢を見るか?」、そう、フィリップ・K・ディックの名作であり、映画「ブレードランナー」のレプリカントたちを念頭に置いて、本書のクローンたちの苦悩を描いていると思う。 なぜなら、ロボットやアンドロイドという言葉で想像する姿とは異なり、レプリカントという名称(これ字体、複製を表す)で呼ばれる人造人間たちは、遺伝子工学の成果として生まれたものであり、その姿かたちは、人間と全く『見分けが付かない』のである。 しかも、レプリカントは寿命4年。それを伸ばして欲しくて、彼等は反逆し、異星から地球を目指す。そうして、バディとプリスは、より延命されることを望んで、造物主たるタイレル社長に会おうとする。 違いは、従順に死を受け入れて行く本書のクローンたちに比べ、レプリカントは体力的にも人間に勝り、暴力的に破壊を続け、ついにタイレル社長にも、手をかけてしまう。これは、親殺しの物語。 こちらは、運命を受け入れ、せつない想いを抱いたまま死んでいくストーリー。いずれにしろ、人と同じ姿をしながら、人ではない存在を描いている、という点でそれぞれの分野において、秀逸な作品なのだと思う。

    0
    投稿日: 2011.04.20
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    はじめからこんなことだろうと思ってはいたけれど、あまりにも痛ましい結末にただただ言葉もない。とても冷静で淡々としていながら、臨場感がすごくあって、読み応えのある一冊でした。

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    投稿日: 2011.04.17
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    このレビューはネタバレを含みます。

    バリ島で寝そべって、一息に読み通した。 設定は、今の段階では現実的ではないのだけれど、(毎度この人の場合はそうかもしれないけれど)そのありえないような設定の中に、気がつくと引きづり込まれていて、ひょっとしたら自分が今いる側こそが非現実なのではないか?などと思わされる始末・・・。 文章の力がすごい。 ややレイドバックしたような印象があるが、なかなかの傑作。 と、本日NHKでカズオイシグロ特集番組がやることを記念して、書き込んでみる。 2017.10.5追記 ノーベル文学賞!おめでとうございます!

    0
    投稿日: 2011.04.17
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    衝撃的と言われている物語の核心部分よりは 主人公達のヘールシャムでの生活描写が印象に残りました。 介護の場面等はレベッカ・ブラウンの「体の贈り物」と なんとなくダブってしまいSF的な設定も相まって 今イチのめりこめなかったです。残念。 「日の名残り」の方が個人的には好みです。

    0
    投稿日: 2011.04.10
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    このレビューはネタバレを含みます。

    勘がいいひとはすぐにわかっちゃうかも。 この話が何の話で、どうなっていくのか。 トミーとの関係が、それでいいの?そういう感じ?だったのが、 ルースの言葉で切なく明かされる。 3人の誰も悪くないのに、あの時どうして・・・と思うこと多々。 キャシーの言葉は淡々としていて、読みとりにくいようで、端々に溢れるくらいの感情を感じる。

    0
    投稿日: 2011.04.08
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    物語世界が特殊なのに、結局普遍的なところに戻ってくる。淡々と情緒的。 医学・物理的に捉えられる機能を持つ物体としてのヒト(提供)、そこから漏れ落ちる感受性のかたまりとしての人(創作)どちらも欠かせない。性交渉について繰り返し語られるのは、そうした機能と感受性の狭間にあるのが性だから?

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    投稿日: 2011.04.06
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    ジャンル的にはSFになるのでしょうか。 SFとしては使い尽くされた目新しくも何ともないテーマですが。。 SF的純文学として考えた方がいいかな。心理描写や情景や背景のディテールが書き込まれていて、思わず引き込まれます。 ネタばれになるので、あんまり言えません・・

    0
    投稿日: 2011.04.06
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    友だちに薦められて読み始め、たまたま読み終わったら映画公開中で、ipodでタイトル曲をリピートし、この一週間never let me go漬けです。 とっても悲しくて切なくてステキなお話。 まだ読んでない方は、予備知識なしにお読みください。

    0
    投稿日: 2011.04.05
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    このレビューはネタバレを含みます。

    世界のどこかにいる子どもたちに、思いを馳せさせてくれる一冊。 以下ネタばれ。 臓器提供のためにつくられたクローン人間の子どもたち。 世界は彼らなしには生きられないけれど、彼らの扱いに困っている。 多くの場所でヒトとして扱われずにその存在すらも残さずに使命を終えて死んでいく。 しかし中には、普通の人間と似たような生活をおくって自分をだましだまし生きている子たちもいる。 彼らにとって最善の生きる道とはなんだろうか? 幼い頃から事実をそのまま受け止め、夢も見ずに生きていくことだろうか?それとも、騙されても儚い夢をもち続けることだろうか? 私は後者だと思う。 だって死ぬ間際に思い出す、優しい思い出がひとつも無いなんて、悲しくて泣いて笑っちゃうわ。 優しい思い出は嘘でもいい。虚構でもいい。騙されてもいい。 だから、信じさせて?私がほんの少しでも誰かに愛されていたって信じさせて? だってクローンだって人間だもの。 感情だってあるし、愛されたいし愛していたかった。 って思うんじゃないかな~? エゴで生まれてきた子どもたちに出来る一つの償いとして、最後くらいはやすらかに眠ってほしい。この世にも一つくらい良い思い出があったって、そう思えるだけでだいぶ救われると思うなぁ。 けどさ、実際問題、メディアではクローンなんてまだ動物実験の範囲だとかいってるけど、ほんとは人体実験してると思うだよね。 だからこの本はフィクションなんだけど、なんだか本当のことみたいに切実でせつなくて、とてつもなく悲しいんだ。 人間のエゴが生んだ子どもたちは、まぎれもなく人間なんだけどね。私たちの心はそう簡単にそれを許せない。 だけど、彼らを無碍にも出来ない。 だって彼らも人間なんだもの。 うん。やっぱクローン反対。 私たちの心じゃ彼らを受け止めきれないよ。 クローンなんて一昔前に流行ったニュースだけど、近い将来ひとが本格的に目を向けなければならない話題だろう。それを考えさせてくれる一冊でした。

    0
    投稿日: 2011.04.05
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    実際、何をどう 提供したのか?クローン人間の経緯など、わからないこと、知りたいことが残り、スッキリしなかった。

    0
    投稿日: 2011.03.19
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    精緻で美しい物語。 SF的でもありながら、語り手である主人公も含む3人の友情の描写が瑞々しく、懐かしい気持ちになる。特にルースの、賢い少女に特有の残酷さが痛ましい。

    0
    投稿日: 2011.03.17
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    ありふれた人間関係なのだが、とても丁寧な語り口で語られ、そしてこのヘールシャムという環境がその人間関係をより切実なものとしているため、ありふれたエピソードなのに胸にせまる。 この作品世界は特異な感じがしますが、現実世界を少し誇張して描いたにすぎないと私は感じました。私たちもある意味においては提供者であるような気もします。「自分とは何者であるか」という事柄の取り扱い方についての葛藤が、作品全体に緊張感を与えていると思います。 また、読む人の年齢によって読後感が異なるような気がしました。

    0
    投稿日: 2011.03.15
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    SF的な要素はあまり興味がないしそこの部分はあまりおもしろくなかったけど、幼少時代の思い出やトミーとルースと主人公との友情の緻密な描写が素晴らしい。 特にルース。ルースみたいな人はよくいるし、自分の中にもルース的な部分はある。嫌な人間・悪い人間とまではいえなくて、嫌なクセを持った人という感じかな。悪党じゃないんだよね。いわゆる優等生的なキャシーよりもルースにシンパシーを感じる。 文章は、説明や時間軸の移動が自然で上手。風景描写やことばが美しい。ただ、ですます調が個人的に好きじゃないので星4つにしました。

    0
    投稿日: 2011.03.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    苦手な洋書だが、読み始めたらすぐのめりこんだ 淡々としているようで、そこかしこにスリルと刹那とあたたかさが滲み出ている ずっと読んでいたいけど早く読み終わって解放されたい葛藤がつきまとっているようなナマモノのお話 私と同じ環境で育った英和のみんなに是非読んでほしい◎

    1
    投稿日: 2011.03.05
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    キャシーとトミー、ルースの三人のやりとりが、青春の喪失感を思い出させる。 若さゆえの残酷さや率直さ。 自分の言動で人を傷つけることの怖さを知らないことの恐ろしさ。 悔やんでも戻らない過去への追憶。 次第に明かされる彼女たちの置かれた特殊な環境が、より切なく胸に響く。 心の奥の方が、締め付けられてなんとも言えない痛みを感じさせられた。 映画化されることを読み始めて暫くしてから知った。 これがどんなかたちで映像になるのか、気になる。

    0
    投稿日: 2011.02.28
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    「日の名残り」に似てて、主人公が語る過去という形をとっている。(誰に向かって話しているかはわからない。)語りを楽しむ小説ですね。すごく読みやすい。あらすじだけ言っちゃっても全然面白くないけど、まあ読んでみたらわかるから、としか言いようがない。

    0
    投稿日: 2011.02.28
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    <poka> 何とも悲しく、悲壮感が漂い、読後、やるせない気持ちになる。 映画も楽しみ。 <だいこんまる> 暗い気持ちになりましたぁ。イシグロさんのは、なんだかはっきりしなくて、イライラしますぅ。

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    投稿日: 2011.02.26
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    「抑制のきいた文章」とはこういう文を言うのか、としみじみ思った。土屋政雄さんの翻訳は、翻訳くささがほとんど感じられない。ネタバレなしの感想はブログに→ http://ucchy.tea-nifty.com/osa/2011/02/post-acd0.html

    0
    投稿日: 2011.02.18
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    ミステリーでも、SFでもなく、ノンフィクションに近いフィクションと言うのでもなく、現実にはまだ出来ていない不思議な背景に生まれた子供達の人生。 例えば親の価値観に左右される子供が大人に変わる時や、例えば戦時中に生まれて御国のためなら命までも投げ打つのが美徳、とされる価値観をふと外から眺めて「おかしい」と思う時、つまり今までの捉われた世界と新しい広い世界の間に立っているストーリー。 人は環境によって価値観に影響を受けやすい。そういうなかで、逆に、じゃあ、本当のことって何なのか。そう考えさせられる。非常に面白い。淡々と予測どおりの結末が現われても、やはり胸にじんわりと何かが残る。 検索をしてみてインタビュー記事を発見し、そういう感想は先に意図されていたことと知る。すっかりやられた。 【国際フリージャーナリスト大野和基のBehind the Secret Reports、「カズオ・イシグロ/Kazuo Ishiguro『わたしを離さないで』 そして村上春樹のこと」一種のミステリーとも読める最新作の意図とは?日本で育った幼年時代から作家としての作法、最も気になる現代作家・村上春樹まで旺盛に語る。(文学界 2006年8月号)】 http://www.globe-walkers.com/ohno/interview/kazuoishiguro.html つまり、カズオ・イシグロ氏の言葉を上記から引用すると、 「私はこの世界を子供時代のメタファーにしたかったのです。つまり、中にいる人は、外界が十分理解できないということです。」 「私が昔から興味をそそられるのは、人間が自分たちに与えられた運命をどれほど受け入れてしまうか、ということです。」 そして、柴田元幸氏によるあとがきの中でのカズオ・イシグロ氏の言葉。 「何年も前には正しかった声に、作家が固執してしまう。でももはやそれは正しい声ではないのです。」 感じつつもうまく言葉に出来ない客観視と主観の切り替えを、こんな風に作品に表現することに驚き、好きな作家の一人になった。正しい物事を見つけるには、流動的であることもとても重要だろうという考えが頭を過ぎる。このカズオ・イシグロという作家は論理的で整然としてメロドラマ風な空想物語を書く人ではないように思うので、そこもとても好きなポイント。

    0
    投稿日: 2011.02.14
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    英国特有の曇天の下、ぐちゃぐちゃのオートミールおなかいっぱい食べた気分。 彼らに決定的に欠如しているものに対してわたしが抱く執着心が、相反するものとしてまるで汚いものに思えてくる。

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    投稿日: 2011.02.09
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    このレビューはネタバレを含みます。

    人の頭ん中をそのまま覗いてるみたいな文体だった。 そのせいか読むのにかなり苦労した。 ただ、構成はほんとに精密機械みたい。 どこまでもクールに、心の柔らかいところを突いてくる感じ。 臓器提供のためのクロ―ン人間生成是非だとか、善悪だとかそういうものじゃなくて キャシー、ルース、トミーの関係やこころの微妙な揺れの描き方 それが読んでてすごい切なかったし苦しかった。 映画も2011/3/26に公開予定なので絶対見に行く! 小説と同名タイトル「わたしを離さないで」 「パイレーツオブカリビアン」のキーラ・ナイトレイがでてまふ。

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    投稿日: 2011.02.06
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    このレビューはネタバレを含みます。

    P111  この歌のどこがよかったのでしょうか。ほんとうを言うと、歌全体をよく聞いていたわけではありません。聞きたかったのは、「ベイビー、ベイビー、わたしを離さないで」というリフレーンだけです。聞きながら、いつも一人の女性を思い浮かべました。死ぬほど赤ちゃんが欲しいのに、産めないと言われています。でも、あるとき奇蹟が起こり、赤ちゃんが生まれます。その人は赤ちゃんを胸に抱き締め、部屋の中を歩きながら、「オー、ベイビー、ベイビー、わたしを離さないで」と歌うのです。もちろん、幸せで胸がいっぱいだったからですが、どこかに一抹の不安があります。何かが起こりはしないか。赤ちゃんが病気になるとか、自分から引き離されるとか……。歌の解釈としては、歌詞のほかの部分とちぐはぐで、どうも違うようだ、とは当時のわたしにもわかっていました。でも、気にしませんでした。これは母親と赤ちゃんの歌です。わたしは暇さえあれば、飽きずに何度でもこの歌を聞いていました。 P408~P409 ・・・ 「悪い子ではありませんでしたね。ルーシー・ウェンライト。でも、しばらくいるうちに、いろいろと言いはじめたのですよ、生徒たちの意識をもっと高めるべきだ。何が待ち受けているか、自分が何者か、何のための存在か、ちゃんと教えたほうがいい……。 ・・・ わたしたちはルーシーの意見を検討して、誤っていると結論しました」 ・・・ ルーシーは理想主義的でした。それ自体悪いことではありませんが、現実を知りませんでした。わたしたちは生徒に何かを――誰からも奪い去られることのない何かを――与えようとして、それができたと思っています。どうやって?主として保護することです。保護することがヘールシャムの運営理念でした。 P431 ・・・ 「おれはな、よく川の中の二人を考える。どこかにある川で、すごく流れが速いんだ。で、その水の中に二人がいる。互いに相手にしがみついてる。必死でしがみついてるんだけど、結局、流れが強すぎて、かなわん。最後は手を離して、別々に流される。おれたちって、それと同じだろ?残念だよ、キャス。だって、おれたちは最初から――ずっと昔から――愛し合ってたんだから。けど、最後はな……永遠に一緒ってわけにはいかん」 読了日:2011/02/13

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    投稿日: 2011.02.01
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    切なく、そして、何とも言えない重い余韻を残す作品でした。「わたしを離さないで」という本の題名と表紙が、いつまでも頭から離れませんでした。

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    投稿日: 2011.01.31
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    カズオ・イシグロの作品は『日の名残り』しか読んでいない。 けれど、少し抑制が効きすぎてる感はあるが、なにか惹かれるものがある作家だなと思った。 その後も興味はあったので、評価が高いという本書を手にした。 正直、あまり精神的に良い状態ではなかったのでたびたび中断してしまったが、それでも最後まで読ませる力のある作品だった。 もう少し良い状態で読んでいたら、今感じている気持ちを言葉で表現することができただろうか。 無理にまとめると、「人間的であることが切ない」。かな。 人によって読後感は辛くも、切なくも、逆に清々しくもなりそうな微妙で複雑で繊細で、しかし案外シンプルな作品だと思う。 今はそうとしか言えない。 レビューになってない…苦笑

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    投稿日: 2011.01.29
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    衝撃。ものすごく考えさせられる内容。後世に残る傑作。 とても切ない。 内容を先に知っていたとしてもハラハラしながら読めると思うが、やはりまずは何の先入観も持たずに読んで欲しい。

    0
    投稿日: 2011.01.26
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    この人を現代日本の優れた小説家として紹介できないのは、とても残念! 運命に対し静かに抗おうとするのだけど、後日談風の語りなので、主人公には結果がもう見えているから、諦めの雰囲気が全体に漂っている。 設定が少し現実的でないという感想はあるけれど、始まりからして飽きない流れがあって面白かったです。ちょっと病んでる。

    0
    投稿日: 2011.01.16
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     ゆったりとした女性の独白で語られる青春の思い出。  一見、寄宿学校の生活のように見えるが、「提供者」「介護人」「保護官」などの不可解な言葉が違和感を高めていく。苦く、切なく、読み進めるほど、じわじわと心に鈍い痛みが広がっていくのに、ページをめくる手が止まらない。  初めて読む人はあらすじを調べないように。予備知識なしがおすすめ。

    0
    投稿日: 2011.01.09
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    翻訳もので文体が「~です/~ます」口調の為、始めは読みづらいと感じる人がいるかもしれないが、読み進めていくにつれて次第に文体にも慣れていくと思う。 というよりもなによりこの文体で訳す事にした翻訳家は大英断だったのではないだろうか。 主人公キャシーの穏やかで理知的な(それだけで語れない部分もあるが)人柄がとても丁寧に表現されていて心地いい文章だった。 悲しい運命を背負わされているにもかかわらず前向きに生きて、穏やかな心を忘れないヘールシャムの子供達。タイトルの由来は序盤で判明するのだが、キャシーの穏やかな人間性から時折見え隠れする激しい感情をも切り取ったかのような、良いタイトルだと思う。映画化が楽しみだ。

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    投稿日: 2011.01.08
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    アジカンの後藤さんがツイッターで薦めていて。ネタバレ読まなくてよかった。こういう話は好きだし考えたこともあるのでじんわりきた。外国の作品はまったく読まないし苦手意識があったけど、これは読んでおいてよかった。

    0
    投稿日: 2011.01.06
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    カズオ・イシグロは長崎生まれの英国籍作家。1954年生。映画化された「日の名残り」で、1989年ブッカー賞を受賞。5歳で日本を離れてからというもの、英国式教育をうけて育っているため、日本語は殆ど話せないという。ただ、日本への想いが彼の中の想像力を育てたことはゆるぎない事実である。 2011年に読んだ最初の本が、この本だった。こんな本を選んでしまうとは、一体どんな一年になるのだろう。自分の中に漠然とした不安が起こった。イシグロの筆力にぐいぐいひきこまれながらも、何かに臓腑がじわりじわりとしめつけられるような、心地のいい読書とは言いがたい、でも思わず先を読まずにはいられない、そんな読書であった。 イシグロの本は、「日の名残り」に続いて2冊目である。テーマは共通しているのだが、「日の名残り」の設定よりも、現代に近く、同時代性を感じさせる。だからこそ、その奇異なバックグラウンドにもかかわらず、自分の立ち位置に近いものを感じた。「日の名残り」の場合は、主人公の執事が流す涙に対して共感する余裕があったのだが、今回の主人公に対しては、自分との同時代性を感じる分、共感する余裕をもつことが私にはできなかった。 イシグロの設定した「仕掛け」については、当然、賛否両論あるだろう。正直申し上げると、私も、100%成功しているという意見には首肯できない。しかし、その「仕掛け」が突飛であるにもかかわらず、自分の心の中にその主人公たちと同じ現象を見出し、なんともいえない心苦しさを体験しているような感覚になるのは、小説の中に描かれる主人公たちの日常風景が、実に「日常」として描かれているのと同時に、主人公たちの抱えているものと私たちの抱えているものとに間に普遍性が見出されるからなのだろう。大人になると何か見えてしまっているような気分で生きているのだが、やはり私たちも彼らと同じく、何も見えない、本当に大切な何かについては覆い隠されている世の中を、どうにかこうにか生きているにすぎないということを、まざまざと感じさせられる。 この本について、著者のインタビュー http://www.globe-walkers.com/ohno/interview/kazuoishiguro.html

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    投稿日: 2011.01.04
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    内容には惹かれるものがあったけど、一人称で語られる文章の口調が好きになれなかった。その口調のせいで主人公も好きになれなかった。映画が楽しみキーラ・ナイトレイのルースはきっとはまり役に違いない。

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    投稿日: 2010.12.30
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    最初のページを読んだだけで「あぁ、これか」と判るほど古今東西で使い古され、また今後も使い続けられるであろうプロット。しかし、著者の類い稀なる想像力と冷徹な筆致は、行き付く先をはっきりと理解している読者にすら、不安を抱かせずにはおかない。そして、「その展開はやめて欲しい」という願いは一度として叶えられることなく、物語は進んでいく。このプロットで描き得る最高の作品の一つと言えるだろう。 子供たちのためと言いながら、生理的な嫌悪感を隠せず、またそれを恥じようともしない人間の醜悪な姿を、こういうスタイルで描かれると、胸にくるので、やめて欲しい……。

    0
    投稿日: 2010.12.24
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     ちょっと気になってたカズオ・イシグロさんを古本市場で見つけたので購入。面白かった。  「提供者」と呼ばれる人々が子供時代を過ごすヘールシャムという場所について、主人公が回想する形で話が進行する。  その中で徐々に提供とは何なのか、この施設はどのような目的をもって作られたのかが明らかになっていく話。  主人公たちが置かれている状況はある種絶望的なんだけど、そこからの救いを特に求めていない感じがしたのが印象に残っている。主人公たちは自分たちの置かれた非人道的な(と言っていいのかどうか微妙だけど)状況から脱出しようともしないし、疑問も抱いていないように感じられた。求めていたのは提供の猶予だけだし、その意義についても何の異論もはさんでいなかったと思うし。  それとも、提供者の立場からするとそこに疑問を持たないのはむしろ当然っていうリアリズムなんだろうか。  解説によると「運命は不可避」というのはカズオさんの中心的なテーマの一つらしいけど、なるほど、という感じがした。運命をどのように受け入れるかというのがこの話では大切にされていたと思う。  それがつまりタイトルで、お互いを離さないでいようと。たとえ無理に決まっていても。  悲しい話だった。  全体的にとても穏やかな雰囲気で話が進行していたのも印象的だった。非現実的な状況の中で、特に大きな問題もなく物事が進行していく感じは、とても穏やかというか、ある意味平和だったし、ある意味不気味だった。  あと、カズオ・イシグロさんは練りに練って話を作る人なのかな、という印象も受けた。伏線がするりするりと回収されて行く感じは見事だったし、おそらく計算通りにばっちり心を揺さぶられた。  印象に残っているシーンは、キャシーとトミーとルースで船を見に行くシーン。エミリ先生との話のシーン。話を聞いた後に、暗闇の中でトミーが暴れるシーン。主人公が泣きじゃくりはしないラストシーン。  カズオさんの小説は初めて読んだんだけど、主人公の女の人が語っていくって言う形式の話だったから変に女性的なイメージがついてしまった。  たぶん他のやつは違う文体だろうから読んでみたい。  今まで好きだったようなタイプの小説とは違う感じなのに面白かったのが嬉しかった。ちょっと幅が広がった気がする。

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    投稿日: 2010.12.14
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    心理描写は良いのだけど、全体のストーリーとしてはなんだかスッキリしない。集中の意識を解けない。難しかった…

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    投稿日: 2010.12.10
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    著者いわくネタバレOKらしいですが(訳者解説より)、いやそれはだめだろうと思うので、そうならないように頑張って書きます。 読者は状況がわからず、語り手によって徐々に説明がされていきます。どういう物語なのかを把握していくにつけどんどん嫌な予感をかき立てられますが、何より終始淡々とした語り口調で綴られ、それが読者の思い浮かべるこの世界の情景を灰色の空に染め上げるような効果を与え、明るい気持ちになることがありません。仮に語っている内容が「トッテレペーのアジャパー」だったとしても嫌な予感がしてしまうような語り口です。そのような暗雲たちこめる重苦しい雰囲気をそこここから放つ小説で、はっきりいって二度と読みたくありません。 大筋はさておき、わたしたちが幼少時に体験したんだけれどもできればそこには触れずに一生過ごしたい、そこにフタをしておくことが自分や当時の友達に対して暗黙の了解となっているようなことがこれでもかと書き込まれていてこれが結構効きます。でもこんなに緻密に描写する理由はちゃんとあるので、その理由の明らかになるあたりまで読み進めたときの重さはかなりのものに感じます。 多分テーマとしては難しいもので、わたしには何が正しいのか正しくないのかわかりませんし、時や場所や立場によって善悪の変動するものだと思いますが、独善的であったり自分の価値観をうたがわなかったりすることについて考えたり、また、じゃあ自分はなんなんだ、何で生きているのか、喜びとはなんだろうかとかあんま考えたくないものを考えなきゃならないような気がしてしまうのでもう読みたくありませんが、そうぐらいに影響力があるという意味で読んでよかったと思う作品です。

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    投稿日: 2010.11.29
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    ミステリだと思って読み切ってしまって消化不良。そののち翻訳者の解説にバッチリこの作品はミステリではないと書いてあったのでやっと納得。 落ち着いて再読したい。SF純文学といった感じでは。

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    投稿日: 2010.11.27
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    静かな文体で心の動き、細かい描写がずっと続く。ずっと何か不安な靄に覆われている中で生きる主人公達に心を打たれました。

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    投稿日: 2010.11.20
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    抑制が効いた文体 読者を緩やかにひっぱっていってくれる感じで 静かな展開なのに夢中になった 提供者を支えるのが介護者なのがつらいなぁ 生きる部品の魂の価値とかそんなお話

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    投稿日: 2010.11.19
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    読んで2日たっても、自分の頭の中で物語について整理しおえることができない。とても濃厚な読書体験。この物語世界は、何度でも反芻して、味わうことができる。

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    投稿日: 2010.11.14
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    人から聞いて初めて手に取った作者の作品でした。 しかし、すっかり世界にはまってしまいました。 淡々とつづく主人公の生い立ちにちりばめられた数々の謎。 自分の力で変えることのできない運命に流されながらも投げやりにならずに自分の仕事をこなしてゆく中で、迫りくる自分のタイムリミットをどう受け止めてこの主人公はこれから生きていくんだろう… なんだかいつまでも彼女のその後が気になりました。

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    投稿日: 2010.10.26
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    随分、長い間、小説とか読めていなかったんだな。この本棚開いてびっくり。 このカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』は、新聞の書評がきっかけで読み始めたもので、最初はそこまで期待もしていなかった。だけど徐々に、先が気になって気になって仕方ない!という感じになる。最終的には読書への情熱を取り戻させてくれたような、思い出深い1冊となる。 「介護人」、「提供者」…なんとなく予想はつくものの、徐々に明かされていく真実に、心臓が高鳴る。 おかしな話かもしれないけど、これを読んでるときの感覚は『ハリーポッター』読んでるときの感覚に似ていて、施設の生活描写は、ホグワーツ魔法学校の生活を想起させた。

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    投稿日: 2010.10.24
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     最初はワケが分からない。  ところどころに不思議なほころびが見えて、徐々に明かされていく秘密に辿り着く頃には凍えるような怖さすら感じるようになる。  離さないで。  わたしを離さないで。  読み終わってからその意味を考える。これをこの年代に書けたって凄過ぎる。  だってこれって今からの世界の話だもの。

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    投稿日: 2010.10.24
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    キャリー・マリガン、キーラ・ナイトレイ、アンドリュー・ガーフィールド で映画化され、映画を観るまえに読みました。物語の核にいくまでは、もやもやしながら読み、ラストに近づくたび悲しくなりました。細かい描写がさらに悲しくなりました。映画を観たらまた違う感想かも...。

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    投稿日: 2010.10.21
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    わたしを離さないで、という曲は架空のものらしいけど聴いてみたいなぁ。 「やっとできた赤ちゃんに語りかける母親」の気持ちになって踊る幼い日の主人公があまりにも・・・。

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    投稿日: 2010.10.10
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    とても好みで、少しでも長く読んでいたいと思う一方、先を知りたくてそのジレンマに悩んだ。 SF的な要素もあるのだが、ヘールシャムにおける日々や人間関係の描写が緻密で、現実離れした印象は受けない。特にルースとキャシーの関係が非常にリアルで驚いた。これ書いたの男性作家だよね?と途中で確認したくなったほど。 「仲良し」の友達なのに、だからこそ時に相手に対して強い負の感情も抱いてしまう微妙な関係。普段相手に近い分、傷つける時には容赦がない。 キャシーもルースもトミーも、「こういう子いたな」とどこか懐かしい、身近な子達だった。 文章は淡々としており、衝撃的な内容を扱っているにも関わらず、終始抑制の効いた調子で紡がれる。だがその静けさが却って作品全体に強い哀愁を漂わせていて、本を閉じた後も、強い余韻を残した。 この後の日々も、きっとキャシーはこれまでと変わらず淡々と過ごしていくのだろう。 冷静に考えればやりきれない結末の筈なのに、彼女のその態度にどこか救われた気分になった。

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    投稿日: 2010.10.07