
総合評価
(1355件)| 404 | ||
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powered by ブクログ結構時間をかけてしまったが読了。 読み進めるのがいろんな意味でつらかった。 まず、読む前に最大の衝撃を受けるであろう事実を知っていたため、それをどのようにドラマチックに公開するのかと勝手に期待。 しかし物語は一人称で淡々と、しかも長い年月の出来事を行きつ戻りつしながら進んでいく。 この「抑制がきいた」文章が、逸る私の気持ちにかなりブレーキをかけた。 読みにくくはないが、ガツッと読み進めたいのに過ぎる程の丁寧さで綴られる文章は、私にはストレスだった。 そのせいか、主人公キャシーたちが自分等の運命を知ってて尚且つ生き続ける強さに当てられたせいか、読み終わってもあまり感慨を感じず。 ただ、解放された自身の安堵感、やるせなさと強い孤独、穏やかな悲しみが残った。 翻訳モノのぎこちない硬さと四角四面な表現、「正しい日本語であろう」とする姿勢がやっぱり苦手だとも思った。 この抑圧された文章には良く合っていると思うが、感情移入は出来なかった。
1投稿日: 2013.06.30
powered by ブクログ・ミステリの技巧がすごい ・テーマがすごい ・人物描写がすごい 決して読後感が良いとは言えないけど、どんな感想も陳腐になるような、素晴らしい作品だと思う。 イシグロの作品は、日の名残しか読んだことないんだけど、あとがきにあるように、ほんとに緻密で、抑制されていて、なおかつ読者の心に深く染み込んでくる、凄い作家で、彼が日本人だったら…とまでは言わないけど、日本語で書いてくれないかな!と思ってしまう。(笑)原語で読めたらいいんだけどね〜。 本題でないと知りつつも、陰謀論を求める人間の欲望とか、そのむなしさとか、そういうことも考えちゃった。ネットに毒されてますね。
0投稿日: 2013.06.29
powered by ブクログ淡々とした一人称視点の語り口ですが、登場人物の描写は細部まで描写されており、感情移入もしやすいです。 後半に進むに従って、どんどん引き込まれます。 読後感がとにかく心地良い、とても良い小説でした。
0投稿日: 2013.06.24
powered by ブクログ期待したりされたり。そういうのの繰り返し。すげーせつない。読み返したらミステリー的に面白そうだけど、苦しくて読み返せない。
0投稿日: 2013.06.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
2013/6/8 感想を書けない。 とりあえず今は読後の余韻に浸っていたい。 --- 2015/12/6 『彼女は一人で歩くのか?』『アンドロイドは電気羊の夢を見るか?』に続いて再読。このタイミング、この順番で読んだのは全くの偶然(それも運命的な偶然)だが、完璧だったと言えるだろう。 “ウォーカロン”と、“アンドロイド”と、“提供者”。人間が作り出したにも関わらず、人間を脅かし得るという人間自身の認識(或いは思い込み)によって、「生」を奪われるヒトたち。 彼等は紛れもなく人間と同じく「生きている」けれど、人間の利益のために作り出されたがために、不利益になる可能性を限りなくゼロに近づけようとする思惑によって、「人生」を侵される。そのために無理矢理にでも「区別」される。 さて私達は、自分に不利益を及ぼしうる相手に対して、「区別」し遠ざけ侵略することで自分の領域を保持しているのではないだろうか。個人でも、集団でも、国家ですらレベルは違えど行っていることは同じであって、重要なのは、不利益を減らし自分を維持していくこと、それだけなのでは。
0投稿日: 2013.06.08
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「謎解き」でもない。「恋愛」でもない。一言で言うなら「人生」のような物語。主人公が当時の様子を振り返るように語られている。じわじわとその時の出来事が明らかになっていくに連れて、今現在これを綴っている主人公の気持ちが痛いほど伝わってくるようになる。それも本当に少しずつ。とても場面場面が丁寧に語られていき、突然変化することがない。これによって主人公が感じたこと、思ったこと、悩んだことを読者が同じように同じペースで追体験することができるのだと思う。全体にやさしさがあると思うが、それでも冷淡で現実を直視させられる作品。
0投稿日: 2013.06.05
powered by ブクログ大学の授業でこれを映画版と共に読んだのを覚えている。クローン技術が発達した現代?の話であり、施設に入れられた少年少女らは強制的な臓器提供者達である。これを読んだとき映画『アイランド』を思い出すと共に、日々発展している医療などの科学分野において、この作品は警告を発しているといえるだろう。生を受けて死を迎えるまでの人間、そして全ての生物における一連までの流れにメスを入れるのが科学という人間の作り出した分野である。その一連の流れにメスを入れること自体に疑問視を抱いている作品だと私は感じた。
0投稿日: 2013.05.19
powered by ブクログミステリーの風合いも残しつつ、作中の登場人物に起こっているのと同様、読者にも「教えられているようで教えられていない」様に話を進めるので、いざ最後のミステリー解決の場面になると、そうだったのか!という驚きというより、そうだったのか…というため息が出た時点で、この作品にすっかりはまっておりました。 しかしそのミステリー小説の体裁を借りた構成も差し置き、キャシーの物静かで考えがちな女の子としての自分語り、ルースの自分が中心にいないとなんだか気がすまない女の子としての描写が、本当に細かくてピントばっちりです。 こういうひといる! 自分が物静かな、でも思ったよりは気が強い女の子になったみたいな気分になります。 いやー、いるわ。キャシー。
0投稿日: 2013.05.09
powered by ブクログ題名に惹かれて読みました。 登場人物の心理描写が見事で、他に類を見ません。著者が日本とイギリスの二つの文化背景を持っているからと思われます。 残酷なテーマを扱っていますが、それを感じさせない筆致となっていますので、この『わたしを離さないで』という題名に惹かれた方、ぜひ手にとってみてください。
0投稿日: 2013.05.06
powered by ブクログ厳格で閉鎖的な全寮制の学校。そこで育てられる子供達には、ある残酷な運命が待ち受けていた。 似たような全寮制のような特殊で閉鎖的な環境で育った自分には、子供達の葛藤や思い出がリアルに感じられて (勿論、小説の中にあったような目的の場所ではなかったけど)とても心に響く小説でした。
0投稿日: 2013.05.04
powered by ブクログこの小説のいいところは、悲劇性を前面に出して作品全体を陳腐にしてしまわなかったことだと思う。 これで登場人物がなにか説教めいたセリフでも吐こうものなら、一気につまらなくなってしまっただろうから。 愛とか絶望とかいうことを端的な言葉で表さなかったことも良かった。 回想が大部分を占めるせいか、どこか淡い、眩しいような感覚を受けながら読み進めた。 他の作品も読んでみたいと思わせられる構成力。
2投稿日: 2013.05.03
powered by ブクログもし自分が、何か大きな目的のために作られたものだとしたら?人の形をした物。でも、悲しいかな、人のDNAを持つゆえ、感覚がある、感情がある、知恵がある…。構成力も秀逸。衝撃。
0投稿日: 2013.04.25
powered by ブクログまるで映画を観ているように、小説を読んだ気がする。 味わいたくない気持ちも、でも、味わったことのある気持ちを重ねながら読んだ。 ♪わたしを離さないで を聴いてみたいし、 ノーフォークにも行ってみたい 早川epi文庫にも興味を持った
0投稿日: 2013.04.24
powered by ブクログ知り合いにカズオイシグロはいい、と勧められ、本当は日の名残が欲しかったのだけれどこちらしか書店に無かったので読んでみた。 しかし、私には読みにくくてなかなか読み進まず、途中で他の本を何冊か挟んでやっと読み切ったものの、やはりよく分からない。 とにかく合わなかった。 結局何の話なのか…。ただめんどくさいなーと。。 誰かが、「私の子供の頃ね…」と、時系列もばらばらに、思い出したことをべらべら喋ってくるんだけど、聞いてるほうはそんなこと興味ないよ!!!と思ってる感覚。 まだこれを読むには自分の年齢が足りないのかなー。
1投稿日: 2013.04.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
この本は切ない、本当に切ない。 彼らは「提供者」という宿命に向かって生きているけど、普通の我々と同じように、愛情、友情、怒り、妬み、性欲、所有欲と、人間のあらゆる感情を抱えて生きている。唯一欠けているもの、それは希望。しかし三人は希望を見つける。たとえ希望の行く手に、自分がいないとしても。 その愛と葛藤をドラマチックに描けばそんなドラマになっただろう。しかしカズオ・イシグロは現代イギリスを代表する文学家、そんな安直な真似はしない。あくまで淡々とした語り口で物語を進めながら、いつしか読者は巻き込まれ、クライマックスの高みへと登っていく。細部まで抑制が利いていて、入念に構成されていて、かつ我々を仰天させてくれる小説、という巻末の解説に、もはや付け足す言辞はない。 そして読み終わって思う。普通に生きられる我々は、希望を持って生きているかと。
1投稿日: 2013.04.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
臓器提供用に作られたクローン人間たちの養護学校時代とその後を描く。臓器提供用なので、当然未来はない。人権はない。主人公たちはみんな静かにその現実を受け入れている。豚や牛が人間並みの知性を持っていたらこんな感じでしょうか?設定が残酷で受け入れられませんでした。
0投稿日: 2013.04.14
powered by ブクログ休日というか、土曜日に上京したこともあって、割と一気に読んでしまいましたが、作品世界への没入が求められるタイプの小説だと思うので、都合が良かったと言えましょう。 ネタバレについて隠す機能もありますが、ネタバレを書いてはいけないだろうという気にさせる小説であるという仄めかしをしておきます。とはいえ、ミステリーのように、なにか一つの謎に集中していく話ではありません。もちろん、登場人物にとっては、その真偽を確認するためのプロセスが極めて重要な行動として位置づけられていますが、そんなことが吹き飛んでしまいそうなほどの、言ってみれば当人達にはどうしようも無いことのほうがずっと重い。そのギャップが成立させる印象みたいなものが、この小説の味わいの本質部分になる、それはある意味ではSense of Wonderとも言えると思います。ああ、もちろん、皮相的にはディストピアSF的な設定ではありますし、一方で倫理がどうのこうのという言い方もありますが、今となっては現実の方がそのあたりを超越しつつある気もしますので、ちょいとレトロフューチャーっぽく感じる部分も。とはいえ、そんなことはあくまで皮相的なものであり、まあ、四の五の言わずに読んでご覧なさいというところでしょうか。
0投稿日: 2013.04.14
powered by ブクログ施設の謎が深まる序盤から中盤にかけては不明瞭な部分に惹きつけられたけど、後半で少し失速したように感じた。 しかし、これは自分の読み方に問題があったようにかんじる。 なので、2日以内に一気に読んでしまうことをお薦めしたい。 題名の「わたしを離さないで」は原題の英語より、日本語の方が深く胸に突き刺さる。
0投稿日: 2013.04.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読後数週間が経ち、「人はそれぞれ事情をかかえ、平然と生きている」という言葉を思い出した。 もし本作品の主人公たちと、現実社会に生きる我々をこの言葉で一括りに出来るとしたら、彼等と僕等との違いは何なのかと考える。 目に見える違いといえば、彼等は子孫を残せない事、必ず誰かに提供する事、決して長生きできない事。 でも、本当の違いはそんな事なのだろうか。 実のところ決定的に違うのは、彼等は必ず誰かの役に立ち死んでゆく、という事ではないだろうか。もし僕等が死に際に一生を振り返った時、実際に誰かの役に立ったなどと、思い起こす事ができるのだろうか。 読了直後から暫くは、作品中の彼等の過酷な運命に対し、哀れみの様な感情を抱いていた。しかし、本当に哀れみを受けなければいけないのは、現実社会に生きる僕等の方ではないかと感じた。 最期の役目を終えて、人知れず息を引き取る彼等の姿を想像してみると、それはとても穏やかな表情だったのではないかと思う。
0投稿日: 2013.04.05
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
自他共に認める優秀な介護人キャシー・Hは、提供者と呼ばれる人々を世話している。キャシーが生まれ育った施設ヘールシャムの仲間も提供者だ。共に青春 の日々を送り、かたい絆で結ばれた親友のルースとトミーも彼女が介護した。キャシーは病室のベッドに座り、あるいは病院へ車を走らせながら、施設での奇 妙な日々に思いをめぐらす。図画工作に極端に力をいれた授業、毎週の健康診断、保護官と呼ばれる教師たちの不思議な態度、そして、キャシーと愛する人々 がたどった数奇で皮肉な運命に……。彼女の回想はヘールシャムの驚くべき真実を明かしていく――英米で絶賛の嵐を巻き起こし、代表作『日の名残り』を凌駕する評されたイシグロ文学の最高到達点。(Amazonデータベースより抜粋) これは果たして物語の領域であると言えるのだろうか。もしかしたら今現在、すでにこのようなことが行われているのではないだろうか・・・と想像せずにはいられなかった。 “提供”とは臓器移植のこと。 臓器移植のためだけに、作られ、純粋培養されたクローンの子どもたち。 寄宿舎を出たあとは、数年間社会を知る時間を与えられたあと、提供者の介護者となりその有様を見守り、やがて、臓器提供の通知を待つ身となる。そして4回の移植をもってその使命は終わる。死だ。 この小説内で、死はあまり直接的には描かれていない。おそらく、4回の臓器移植を経て、身体の内部はどんどん切り取られ、生存不可能になり、その生命のスイッチは切られる、ということ。なんて恐ろしいのだろう。 プロセスも、行間でそれを想像させる文体も。 このプロセスは、小説の中でも異様なほど淡々と語られているのがまた不気味である。 物心つく頃から、直接語ることはタブーとしながらも、誰もがその運命を知っていて、やがて自然に頭に、心に浸透し、受け入れているのだ。 彼らはクローン人間と呼ばれるものではあるけれど、心は持ち合わせているのだ。考え、悩み、感じて、人を愛する。そして生きる、生きたいという生命力も持ち合わせている。 もう何十年も前に、人類はクローンの生命体を創り出すことに成功している。それを人間に応用することは、倫理的観念から禁じられてはいるものの、科学者たる者たちの知的好奇心を抑えていられるものだろうか。どこかで、すでに、誕生しているのではないか。 今現在は、この小説のような運命を背負わされていなくても、やがて、このようなことになるのは自明なのではないか、と想像するだけで、恐ろしく、悲しい。 現に、貧困にあえぐ国々では、臓器移植を目的とした子どもの人身売買が少なくないという話は、ただの噂の域ではないだろうことは想像がつく。 どうかこの世が、利己ではなく、愛の上に繁栄するものと、人々が気づきますように。 カズオ・イシグロの小説はどれも本当に静謐さがただよう。 果たしてこの文体が好きかどうかはわからないけど、惹かれて読んでしまう。
1投稿日: 2013.03.27
powered by ブクログ出生の秘密を抱えた子どもたちのエピソードが、主人公の思い出として語られる。主観から語られるために様々な謎が答えの出ないまま飛び出してくるが、確信の部分は何となく察しがつくので答え合わせ感覚で読める。設定としてはSFのような近未来を思わせる内容だけど、主役となるのが子どもたちであり語られるのも誰にでも覚えがあるようなたわいもない出来事がほとんどなので、現実味があり思い出ならではの切なさと美しさを持って迫ってくる。人を選ばない良作…ではないでしょうか…?(自信はない)
0投稿日: 2013.03.20
powered by ブクログここ最近読んだ外国人作家の小説ではピカイチ! 僕の最近の読書は、本当に面白い小説に恵まれています。 この本は映画を先に観てから、一年ほど経過した2013年に読んでいます。 なぜ一年置いたかというと、映画があまりにも面白かったので、その余韻のまま本書を読みたくなかったのがその理由 そして、、、一年置いたかいがありました! 久しぶりに夢中になって読みふけってしまいました。 抑制の効いた文章。精緻に組まれた構成。伏線や謎がラストで収束していく時のカタルシス。 どれをとっても最高の小説です。 もし本書を読みたいと思っている方はぜひ映画も御覧ください! ストーリーへの没入感がさらに増すこと請け合いです。 本物の小説体験を望んでいる方にぜひ読んでいただきたい小説です。
1投稿日: 2013.03.19
powered by ブクログ生まれながらに背負った運命を明確に教えられずに徐々に感じていく過程がとても繊細に描かれています。 自分が何者かを知ることの意義も大切だが、全てを受け入れて生きていく主人公や仲間に切なさを感じながらも、何か勇気付けられる気がしました。
0投稿日: 2013.03.15
powered by ブクログクローンの倫理的問題や科学技術の暴走がテーマになっていないことは明らかだ。小説や下らない映画がその諸問題について疑問を投げかける時代はとっくに終わった。素晴らしい作品。
0投稿日: 2013.03.11
powered by ブクログ、臓器提供を目的として作られたクローン集団の話。言いたいことは「クローンに感情や性欲はあるか否か。そして必要か否か。クローン自身は人間でいうところの人権を持っていいのか否か」的なね。そもそも息をし始めた瞬間から、いやむしろ生命体になり得た瞬間から、人間様のために生きて、そして時が来れば当然のように身を捧げるための存在。 どうなんでしょうか?!人間の欲やら発展とかの行き着く先はやはりここなんでしょうか。 面白いと思ったのは、この話の語り手が、クローン自身だということと、そのクローンたちが、当たり前のように来るべき運命を受け入れているということ、でも愛し合うクローン同士が、どこかで臓器提供の「時」を遅らせることはできまいかと望み悩んでいるところ。でも結局は逃れられないということ。「死ぬ」のではなく「使命を終える」というこの表現の意味に・・・はぁ。エゴというかなんというか。じわじわと後から考えさせられる。 (2009年1月5日 記)
0投稿日: 2013.03.11
powered by ブクログ何の話をしているのか何の説明も無いまま主人公の独白が続く。全体を覆っているのは静かで悲しげなそして不思議な雰囲気。 ページをめくるごとにこの小説世界に深まる疑問と、なんとなくそういう事なのではないかと思う自分の想像力を追いかけ、気づいたらどっぷりはまってしまっていた。 この作者、気になる!
0投稿日: 2013.03.10
powered by ブクログ私がなぜカズオ・イシグロの『わたしを離さないで』を手にしたかを語るためには、まず後輩のHについて話さなければなりません。ナンバースクールを卒業して以降、仲の良かった同級生たちと疎遠になり、反対に後輩たちと遊ぶようになっていったことは、今思い返していても本当にふしぎなことでした。多分に、境遇の違いが起こしうる摩擦が、年代の差によって逆に和らいで感じられたのかもしれません。なかでもHは、スクール時代よりもずっと深く親密に話し合える間柄になっていました。 とかいう冗談は置いておくにしても、一歩進んで二歩下がり、三歩め下がって大ジャンプ、という輪唱が、(全く別ジャンルでありながらも)一歩進んじゃウィット言う『日の名残』を彷彿とさせた。
0投稿日: 2013.03.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
カズオ・イシグロのNever Let Me Go、邦題 わたしを離さないで。 記憶の世界をぐるぐるまわる形の小説でした。友人から紹介され、クローン人間をテーマにしているということで興味を持ちました。 個人的にはもっと衝撃を与えてくれるようなものだと思っていたので、星は4つに留めました。 しかし、面白いものではあると思います。じわりじわりと後から心にくるものです。 先生方にとっては、彼らクローンである生徒を思った行動であり、全体的に見れば素晴らしいことをしたのかもしれませんが、果たして先生方は生徒ひとりひとりをきちんと見ていたのか。外の世界の人々と同じく、クローン人間という一括りで物事を見ていたのではないか。それがトミーの言葉から感じられたように思います。 科学は進歩しています。いつか私たちもこんな問題と向き合わねばならないのかもしれません。
0投稿日: 2013.03.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
テーマが実に深刻で切実なのだけれど、あまりそう感じることはなかった。いや、感じることはないというのは正確ではない。なんというか、素直に受け入れられたとでもいうのだろうか、抵抗感のようなものは感じなかった。 この作品のようにテーマが大きければ大きいほど、押しつけがましくなり、作家が自分の作品を通じて人を啓蒙しようとするもの(のような気がする)のだけど、これはそうではない。小説、物語として素直に受け止められた。 この作品は、最初のうちはなにがなんだかわからない。「介護人って?提供って?」と疑問が山のようにあるまま読んでいく。そして物語が進んでいくうちにぼんやりと、なんとなく「見えて」くる。 「これはこうこう、こういうことなんですよ」という説明は一切なく、日常の描写から読みとっていくので、読者はいつの間にか理解している。この日常の描写が実に緻密で、緊張感がある。なのでさらっと読み飛ばすようなことはできない。読むのにある程度の覚悟というか、気合いは要る。だけどそれだけに「ああ、いい小説を読んだな」という思いになれる。 文章がいい、構成が巧い、テーマが素晴らしい、とか、そういうようにひとつの作品に対してあるカテゴライズをして評価する、というのはこの作品ではそぐわないように思える。 とにかく面白い。それだけに止めたほうが、小説はあくまで娯楽であると考えている僕にとってはいいように思える。
0投稿日: 2013.02.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
人間だけが、同じ種をこんな風に扱うんだ。 この作品の中では世間が、社会が生み出した『提供者』だけど、 個々の心の中で、人は他人をこんな風に扱っているのかもしれない。 提供したりされたり。 それでもいい。それぞれの人生を生きて行く。 誰かの感想を読みたいような、読みたくないような。 自分一人の考えに浸っていたいような、誰かに教えを乞いたいような。 色々考えさせられた。 テーマは?『生』でいいのか?
0投稿日: 2013.02.11
powered by ブクログSF・人道的社会警鐘・哲学小説といえばいいのか?どこまで話せば、ネタバレにならずにすむのか悩む作品。 キャシーと言う女性の一人称物語もあってか、最初は『ライ麦畑で・・』を思い出した、が読み進めていくと案外的外れでもないことにも気が付き、甲殻機動隊のスタンドアローンコンプレックスをも思い出させてもらいました。あとスタートレックのボーグまでも・・ いやいやココまでSFじゃないけど そうだ漫画『輝夜姫』読み直したくなったなぁ
0投稿日: 2013.02.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
終始冷静な語り口調で淡々と語られるけれど、書かれていることは実際とても異様だったり激しかったりする・・・というふしぎなギャップを映画と同様感じ続けました。 「臓器を提供する子達がどんな苦しい生活をしているか、どれだけ社会的にひどく扱われているかよりも、自分の恋人、友人、配偶者が死なないことが重要なのです」 というような言葉はぐさっと来た。 映画も小説も、ルースに一番感情入れこんでしまいました・・・。 悲しい子だな
0投稿日: 2013.02.11
powered by ブクログこの小説の印象はかなり衝撃的でした。 しかも 真綿で首を絞める?じゃないけど、じわじわと、 ゆっくりと差し込んでくるかんじ、氷の刃のようなもので。 ユニークな設定もさることながら、描写やシーンがとても 絵画的(映画的ではなく)に感じます。 静謐な読後感。ちょっと他に無い冷たい感動でした。 日の名残、の方は読んでないのでそのうちに。
0投稿日: 2013.02.09
powered by ブクログ機内で映画をみた。 原書で読むべきだったかも。 回想は正直でいて利己的、といってもこの物語世界のなかでは些細な 己。
0投稿日: 2013.02.09
powered by ブクログTVで紹介されてたので読んでみた。最近は余り翻訳ものは読まないのだけど、とても読み易かった。中盤で大体の事情は飲み込めて来るが、終盤まで本当の所は分からない。やや日常の出来事の描写が多いためか、展開が遅く感じられ、焦れったくなってしまった。奥が深い物語。たぶん原文の方が心に響くのだろう。
0投稿日: 2013.02.08
powered by ブクログ切なくて悲しくて、でも美しい。 非情な運命の下、抗うわけではなく、目を逸らすわけでもなく、ただ淡々と受け入れる主人公達。 その佇まいに、もっと若い頃の私なら、諦めを感じて苛立ったかもしれない。(今はむしろ強さというか、聖性を感じるけれども。生贄の子羊のように…?) 文章のリズムもとても好みなので、(音楽を感じた)他の作品も是非読んでみたい。
0投稿日: 2013.02.04
powered by ブクログ以前に一度手に取ったものの読みそびれ、映画が話題になった折にいつかまた読もうとずっと思っていた。 だが、映画公開時、この物語の一番大事な部分を予備知識として知ってしまった。知らないで読み進めていたら、この核心に気づいたときの衝撃は大きかっただろう。読み方もきっと違っていただろうと思うと残念だ。書評家はみな、この部分を明かさずに本書を評するのに苦労した、とあとがきにあったが、映画関係者はいとも簡単にそこを破ったようだ。 だが、イシグロはその部分については「最初から知っていても知らなくても、関係ない」と断言したらしい。 確かに。読むべきところはそのような「驚愕の種明かし」的なものにはない。 イシグロの本は大昔に『日の名残り』を読んだ。 『日の名残り』の、私的な感情を一切出さない職業である執事の主人公に、本作の主人公が重なる部分もあった。ささいな出来事、印象的な事件、すべてが交錯し積み重なって形づくられた人生を静かに物語る。 巻末の柴田元幸さんの「あとがき」が秀逸。
1投稿日: 2013.02.02
powered by ブクログ生きるとは、どういうことなのかと考えさせられた。 その人が、どんな境遇で生きてきても、どんな偏見を持たれる特徴があっても、本当に見るべきなのはそこじゃなくて、その人自身を見ないといけないんだと思う。 人間も平等、命も平等であるべきだし、そうであってほしいと思った本でした。
0投稿日: 2013.01.26
powered by ブクログすごかった。びっくりした。 涙が出るってよりは、胸が締め付けられて苦しいって感じ。 激しく心を揺さぶられて上手い感想が思いつきません。 とにかく圧倒的な描写力。 書かれているのは日常生活にある本当に些細な出来事なのに、 色や匂いを伴うくらいに鮮明に頭に描けます。 SFってことに全く気付かなかったくらい。 そして、このお話のある秘密。 何となくな予感を促すポイントがあちこちに散っていて、 せっかちな私は先に急ぎたくなるんだけど、 絶妙なタイミングで躊躇いもなく明かされます。 もう操られてるんじゃないかって思っちゃう。 使命を終えるまでの短く儚いスケジュール。 淡々と運命を受け入れて暮らす登場人物たち。 そのリミットのない私たちは生きている間に 何をし、何を考えるのか。静かに残酷に問う作品でした。
21投稿日: 2013.01.26
powered by ブクログ参ってしまった。 有名な作家だとは思っていたけれども、まさかここまですごいとは。 これはもはや想像とか妄想とかいったものではない。 緻密に緻密に積み重ねて作られた物語と構成。 端正で静かな語り口による斬新で残酷な物語世界。 こういう物語をこういう形で終わらせることの出来る才能。 もう駄目だ、カズオ・イシグロ読むべき作家。 日本人だけど日本人ではない、この才能。 うううううううううううううとうめくばかり
2投稿日: 2013.01.23
powered by ブクログ映画が印象に残ったので本も読みました!キャシーと同い年だけど、キャシーって大人っぽいなって思いました!面白かったです!
0投稿日: 2013.01.21
powered by ブクログ静かな口調で語られる残酷な物語。 心のどこかに小さいけれど沢山の引っ掻き傷を作られた感じ。 でもその傷により忘れられない本となった。 読んでよかった。 そう思った大切な物語。
1投稿日: 2013.01.20
powered by ブクログクローン人間による臓器移植。 近い将来、現実に起こりそうな話。 倫理が確立しないうちに技術だけが先行していく危うさ。
0投稿日: 2013.01.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
Kindle版で読了。叙情的な少女時代の回想録という体裁をとった、実際にあるかもしれない物語。つまりSF。 一人称の語り口だからこそ、その語られる真実がわかったとき、こちら側の「わたしたち」が当たり前に持っていて、あちら側の彼らに欠けていたものが際だつのだろう。もし、わたしがこちら側の人間だったなら、彼らは当然もっているのに「もっていない」と思い込もうとするだろう。その人間心理の業の深さに胸の空くような思いをさせられる小説である。
0投稿日: 2013.01.15
powered by ブクログ死ぬために生まれて、そしてやがて使命を果たして死んでいく。最初から決められた生を受けながらも、もがいて、笑い時には泣き怒り…どんな出生であれ、人はいとおしい生き物だなあと読み終えてそう感じた。
1投稿日: 2013.01.07
powered by ブクログ「そこ」から目を隠してこそ生きていられる。 食事のたびに「それ」に涙していたら、生きていられない。 代名詞でひとくくりにされた不特定多数の命の上に生かされてる。 『逆戻りはできない』 当たり前を疑問視する視点、が刺激される。
0投稿日: 2013.01.05
powered by ブクログ介護人、提供、ヘールシャムの生徒など、はじめからもしかして?と思う部分はあれど、だんだんと真相が明かされていくのが面白く一気に読んだ。 真相を置いた内容だけみても面白かったし、切なかった。 作者の本は「日の名残」「浮世絵の画家」に引き続き3冊目だけれど、訳文だからか、独特のテンポや感じを受ける。愛情とか友情とかの描きかたがやはり日本の作品とは違うように思う。
0投稿日: 2013.01.05
powered by ブクログ今までに読んだことのない本。 なんだろう?この物語は…と思いながら読み進めていく。 ネタバレになるので言いたいこたは書かないけれど虚しく深い作品。 好みは分かれる作品かなぁ…と思いました。
0投稿日: 2013.01.04
powered by ブクログ少々作者の意気込みが空回りしている感がなくもないが、現代社会への痛烈な批判も含め読者への挑戦状的作品だと思う。 注意深く、目を凝らしてストーリーを追う必要がある。 惜しむらくは訳文、正直いまいちだと思う。 どうも原文自体が短いセンテンスを連続させているような気もするが、日本語って短い文章を連続させると逆にノリが悪くなる傾向が強く、この弱点を克服するには相当の力が必要となると個人的には思っているので、翻訳にそこまで要求するのは酷かもしれない。
0投稿日: 2013.01.02
powered by ブクログ映画版も見たのだが、 特に独自エピソードなど入れず原作に忠実であるものの 尺の都合でボリュームがかなりダウンしてます。 絶対に書籍の方から入った方が良い。
0投稿日: 2012.12.22
powered by ブクログみなさん高評価なのに・・・挫折でした。 坦々としたストーリー、私には無理でした。 映画観てみようかな。
0投稿日: 2012.12.19
powered by ブクログ一気に読めなかったのと、映画を先に観てたから、感想難しいなあ…笑 でも、きれいだなあって思った。 なんか、描写というか頭の中に出てくるイメージとか風景が。 映画を観てたからかな? 悲しい運命だったけど、なんか、そんなにどん底に落ちるわけでもなく、淡くて、少し色褪せた絵画みたいな感じだった。 でも、提供のために生まれてきたことを知ったら、こわいなあと思う。やっぱり。
0投稿日: 2012.12.18
powered by ブクログ静かで、淡々としていて、切ない。でも衝撃的で、残酷。こういう小説は初めてかも。考えさせられる、とても重いテーマ。トミーの叫びが悲しかった。
0投稿日: 2012.12.17
powered by ブクログずっとずっと読みたかった本。やっと読めました。 何が題材になっているのかは耳にしていたので、ストーリーに対する衝撃は無かったけれど、読後には本当に強い余韻が残った。イシグロカズオ氏の本、いいわぁ。
0投稿日: 2012.12.16
powered by ブクログ小説「わたしを離さないで」。31歳の主人公、キャシー・Hの一人称で物語はつづられていきます。キャシーが回想する、イギリスの田舎で過ごした牧歌的な少女時代。子供らしい友情や喧嘩。しかし、読み進めるうちに、実はサイエンス・フィクションであることが分かります。 続きはこちら GUEST 068/アンドロイド研究者・石黒 浩:スミスの本棚:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京 http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/2012/11/post139494.html
2投稿日: 2012.12.13
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ちょっと不思議な、そして考えさせられることの多い小説でした。 でも、この物語で描かれている世界そのものについて言うなら、KiKi はあんまり感心しなかったかも・・・・・です。 物語は1990年代のイギリスを舞台に、臓器提供のために生み出されたクローン人間というちょっとSFもどきな存在によって展開されています。 主人公で語り手のキャシーをはじめとする友人たちは世間とはちょっと隔離された施設ヘールシャムで育てられ、成長するとまずは既に臓器提供をしたクローン人間(提供者と呼ばれるらしい)の介護者として外の世界に巣立っていきます。 そしてその介護生活を終えると今度は自分自身が「提供者」となっていきます。 優秀な介護者として活躍するキャシーがその介護活動をして英国内をあちらこちら走り回りながら出会う風景から過去を追想し、ところどころ自分の主観を交えた(つまりは彼女に都合よく捏造・歪曲された)記憶を語るというスタイルをとっているのですが、その語り口に何とも言えない歯切れの悪さみたいなものを感じながら読み進めました。 長々と語られる個人的思い出話には、思春期に近付くにつれて普通だったら現れてくるだろう葛藤とか自己嫌悪といった情緒の変化・混乱といった要素が乏しく、これもまた施設の閉鎖性を表すエピソード もしくは語り手の信頼性を落とすための仕掛けなのかもしれないけれど、正直なところ読んでいてちょっと辟易としました。 物語の骨格にあるのは「遺伝子工学」と「臓器移植」の問題だと思うんだけど、この物語の英国政府(?)はクローン人間の製造とその臓器提供をいわば制度化していると思われ、キャシーたちは「提供者」としての運命を甘受して死んでいくしかないという前提のもとに全てが描かれています。 KiKi にとってどうにも居心地(読み心地と言うべきか?)が悪かったのは、とどのつまりこの物語では、臓器移植やクローン人間という科学の進歩に対する倫理的な問題が扱われているようでありながらも、その実、まったく扱われていないということに気がついてしまったことに理由があるように感じます。 自分に課せられた運命を粛々と受け入れるしかない人間の姿はあっても、そこにはその運命に抗う姿、逃避する姿は皆無なんですよね~。 ファミリー・ネームさえ与えられない「提供者たち」が、ただひたすらいずれは臓器を提供するという目的だけのために生かされ、生かされている間に何をするのか?を扱っているとも言えるわけだけど、彼らは自分たちの運命を「漠然と」しか知らされていなかったりもするわけで、「限られた生」「生まれ持った運命」という大きな障壁がありながらも、どこか「人間的な何か」が欠落した(これはもちろん本人たちの責任ではない部分が大きいんだけど)存在に成り果ててしまっていて、感情移入のしようもない・・・・・そんな雰囲気なんですよね~。 クローン人間である以上、そのモデルというか、遺伝子のもとを持つ存在というか、そういう人がいるわけだけど(物語の中では「ポシブル」と呼ばれる)、その「誰それのポシブルと思われる人発見」というプロットでも、彼らの反応の仕方がどこか薄いというか淡白に過ぎるというか・・・・・。 一方では普通の人間として自由に生きることができる存在がいて、その人の遺伝子から作られた自分は「提供者」としてしか生きられないな~んていう現実(いやフィクションだけど・・・・ ^^;)を前にして、あんなに淡々としていられるものなのかなぁ・・・・・・。 ただ、この物語を読んでいる間、KiKi は物語で扱われている主題とはちょっとだけ離れたことなんだけど、「人間という生き物のエゴイズム」みたいなものだけはヒシヒシと感じていました。 自分や自分の家族が何らかの病に倒れた時、拒絶反応を起こすリスクが極めて低いクローンの臓器なんていう都合のいいものを求めたがるエゴ。 原子力発電所と同じように、そこから得られる恩恵だけには浴していてもその背景にある問題を知ろうとさえしないエゴ。 そんなものは感じました。 と同時に、もう1つ思ったことがありました。 たまたま KiKi はつい先日健康保険証の改姓手続きと言うヤツをしたばかりなんですけど、その時改めて再認識したのは最近の「国民健康保険証」には裏面に「臓器提供の意思表明欄」があるんだけど、KiKi 自身はなかなかそこに署名する気分になれずにいたりします。 心の奥底では本当に自分が助からないことが明白な場合、もしくは植物状態になってしまうことが分かっている場合には、延命措置なんかをするよりはKiKi の臓器や網膜で助かる人がいるなら有効に使ってほしいと思っているんです。 でも、そこに署名することがためらわれるのは、どこかで現在の医学・・・・というか、医療体質みたいなものに不信感を持っているからなんですよね~。 それを自分の意思で選ぶことができるという現実が目の前にあっても逡巡する自分 vs. それを前提として生かされているこの物語の登場人物たちという対比に、言葉では説明しきれない大きな隔たりみたいなものを感じ、そこにも自分の偏狭さみたいなものを突き付けられているような気分で、あんまり気持ちの良い読後感とはいかないものがありました。
1投稿日: 2012.12.12
powered by ブクログ初めて読むカズオ・イシグロの本。 最初は設定が分からず、戸惑いつつ読んだが、出来事や登場人物とその心理が丁寧に描写されるため、少しずつ霧が晴れるように物語の断片が分かってくるのは不思議な感覚。丁寧に、丁寧に書かれていく文章(翻訳)に心地よささえ覚える。 近未来的でありながらも、設定が少し過去。でも、あり得ない世界の物語。SFでありつつ、少年少女が大人になる物語でもある。これほど複雑な世界観なのに、読み手を迷わせない、でも、ちゃんと驚かせて、心に響かせる。 今年読んだ本では一番面白かった。
1投稿日: 2012.12.08
powered by ブクログ購入したままずっと本棚にしまいっぱなしだったのを激しく後悔した1冊。ストーリーはありえない世界の話なのだけれど、主人公の行動や気持ちの揺れなどがリアルに感じられて、残酷な運命に感情移入してしまった。翻訳も素晴らしい。いつか原書を読んでみたい。ここ数年で読んだ中でベスト5に入る名作。
1投稿日: 2012.12.04
powered by ブクログれっきとした世界観は、それだけで大きな魅力だと思った。 翻訳も良いし、装丁には驚きました。 マダムのネタバレ(?)を読み、最初の部分を読み返して、そういう話だったんだと納得。 あり得ないと信じてる世界だからこそ、素直に驚き、悲しみ、考えることができる本です。
0投稿日: 2012.12.04
powered by ブクログ設定が切実。読後、言葉を失うとともに、死にゆく存在である自分と誰かの犠牲の上に成り立っているこの社会に対して深い揺さぶりを感じた。社会に向かって、歴史に向かって、科学技術に向かって、自分の生きる意味を問うていかざるをえなかった。単なる感動作という位置づけでなく、文学史を画する作品であることを確信した。
1投稿日: 2012.12.02
powered by ブクログ100年経っても色褪せない!みたいな小説がある一方で、「このタイミングで読んでおくべき本」ってのもあって、これは後者タイプの小説だわーと感じた(そして残念ながら遅かったみたい)。作家がクローンを描くのなら、クローン達の反逆や脱却の成功/失敗を物語るのが一般的なのだろうけど、実際はきっとこうして世界の不条理なルールを受け入れてしまうんだろうなぁと思う(押井守監督の『スカイ・クロラ』もこんな感じだったような)。「生まれてきた意味」を探す人はいつの時代もいるけど、あったらあったで虚しいものなのかもですね。
1投稿日: 2012.12.02
powered by ブクログ彼らが何者か考えながら読みたかったのに、チラリと目に入ったレビューであっさりネタバレされてて驚きが半減。それでも十分打ちのめされる話だったので、なにも知らずに読んだらもっと衝撃的だったと思う。
1投稿日: 2012.11.30
powered by ブクログはじめての感覚。 ことばによって世界が作られていくのではなく、すでに存在する世界をたまたまことばという方法で表現しているよう。
0投稿日: 2012.11.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
最後の50ページまでは、ずっと「私には合わないな……」と思って読んでいた。 抑制が効いた、端正な文章で、押し付けがましいところが微塵もない。ささいな人間関係の難しさ、それ故の複雑でほぼ無意識のような愛情、そして登場人物たちが過ごしてきた時間が丁寧に綴られており、それだけでも青春小説として楽しめる。 しかし私にはそれらがどうにも「お上品」に感じられ、読んでいてじれったくなってしまうのである。彼らを待ち受ける<運命>を思って不安になりながらも、けれどそれのためにこの丹精な文章の全てが用意されたものだったとしたら、それはそれで興ざめだな……と思ってしまったのだ(なんと意地が悪いのだろう……)。 しかし、そうではなかった。いや、そうだった、と言うべきかもしれない。そうでありすぎた、と。 本当にそうだったのか、と私は思ったのだ。ラスト50ページほどで、そのことが伝わってきたのだ。用意された設定などではなく、本当に、このお話はこれが全てであり、それをこの物語は描いているのだ、と。どこまでも、最初から最後まで、このお話はこのことを書いていて、そしてそれはあまりに静かに、あまりに自然に、そしてあまりに密かに、息づいていたのだと気が付いたのである。 驚いてしまった。長編小説の凄さを実感した。時間と量をかけて語られるべきお話を読んだ、という気がして、私はとても驚いた。
1投稿日: 2012.11.24
powered by ブクログ非常に抑制され構成された文章という解説に納得。途中にあっけないくらいに話の肝となるようなネタバレがあるけれど、それでも作品全体の神秘的な雰囲気には全く影響がないのはこの文体故か。映画も見てみたい。あと日の名残も次回読んでみたい。全然本編と関係ないけど、文庫版の表紙のイラストが最初カセットテープだと分からなくて気づいたときはびっくりした。細部だけみていたので車輪の絵だとしか気づけないのだった。
0投稿日: 2012.11.21
powered by ブクログ提供が使命。介護人として提供者を平静に保つ。子供の頃、へールシャムでの日々。 読後、映画を見たのですが、ビジュアルだと全然違う表現になる、たぶんそれが必然。 見ているうち、根底にある同じコアなものは見えてきましたが、別の作品であるとも思いました。
0投稿日: 2012.11.19
powered by ブクログ設定からして今まで読んだことないような小説で背筋がぞくっとした。 なんの話だか背景が分からぬまま、淡々と独白が続いていくけど、その裏にある「提供者」「介護人」の輪郭がうっすら見えはじめると先が気になって気になって気になって・・・。 早く真実とその先が知りたい気持ちが先行してきて、青年期までを過ごした施設の話とか、大半の部分がくどく続くんだけど、それがあるからこそクライマックスの真実味が響くというか胸を打つというか。 ネタバレしてから読むと衝撃とストーリーの面白味が半減しそうなので、人におススメしにくい本かなwww
0投稿日: 2012.11.08
powered by ブクログ友人から「読み進めるうちに理解できるから!」「力のある小説はこれだよ」と薦められて読みました。 最初はよく分からなくて気になって後ろのページを捲ってしまうのを堪えながら読みました。 読み終わってみると、何とも虚しくなる。でもしばらく頭から離れなくて、考えさせられる。 本屋さんのポップに「夏におすすめ!」って書いてあったけど、私は冬の寒い日がいいとおもいました。
0投稿日: 2012.11.05
powered by ブクログ切なくて悲しくて、深く考えてはやるせなさを感じてしまう作品でした。 未来を選択できることはどんなに自由で幸福なことか。
0投稿日: 2012.10.31
powered by ブクログ臓器移植のために生を受けたクローンの子供たちを描いた本です。提供者よりも、同じ提供者でもありながら介護者として、仲間を見守って行く主人公に悲しさを感じました。科学の進歩として、クローン技術よりもipsの技術が進歩してくれれば何よりですが。
0投稿日: 2012.10.28
powered by ブクログ心に残る物語。 自身の存在に対して、主人公、友人や先生たちそれぞれの葛藤や苦悩が垣間見えていく。 希望と真実。人間の美しさと醜さ。どちらも切なく静かに響いた。
0投稿日: 2012.10.28
powered by ブクログ同時代人としては、最高の作家。他と比べて、読みやすいけど、仕掛けに気がついた時に、ああ!と思う。その分、映画の構成には不満。出オチかよ。
0投稿日: 2012.10.27
powered by ブクログなんだか突拍子もない話じゃないのか〜?と中盤は思ったのですが、 どうにもならないこの感じ、わかってるんだけど切ないし、でも諦められない!!!って躍起になるわけでもなくて・・・ うまく言えないのだけど。 恋の物語ともまた違う。じわじわと悲しさや虚しさが来る。 個人的に映画はつまんない。
0投稿日: 2012.10.22
powered by ブクログもし、ヒトがパーツとして使われたら… その一つの仮定で、あらゆる立場の人々の気持ちが揺れ動く。 厚みがある。 どの登場人物の思いも重い。 最後まで読んで、メインの3人がどうゆう状況下に置かれていたかわかったとき、回想すると悲哀感が涙としてあふれてくる。 じっくりと時間をかけて読むといい。
0投稿日: 2012.10.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
物語は「私」、キャシー・Hの回想という形で、3部に分かれて語られる。文章は終始穏やかで淡々としているが、それ故に作品全体が暗く物悲しい印象に包まれているように感じた。内容は、「ヘールシャム」という施設で育った、運命を決められた子供たちの話である。その「運命」は主人公たちが成長とともに徐々に学んでいくといった感じであり、「大どんでん返し」や「衝撃の展開」といったようなものはラストまで無い。運命は不可避でありそれを受け入れるということと、それでも決して忘れずに持っておきたいものは何か、ということを考えさせられた。「提供」というテーマも私達の世界における医療問題と重なって面白く読むことができた。
0投稿日: 2012.10.09
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
読み終わって最初の感想。なんて残酷な話だろう。悲しくなりました。 マダムの正体が明かされたとき、残酷さとやるせなさがパワーアップしただけだった。無力感。 希望のない未来を知ったほうがよかったのか、夢のままにしておくほうがよかったのか…。 背表紙のあらすじらしいものには目をとおしたけど、最初は、漫然とした回想録で、話が前後することが多くて流れについて行くのが大変だった(=_=) 核心に触れずにあらすじ書くのは難しかったんだろうな。
2投稿日: 2012.10.07
powered by ブクログ原書で途中まで読んだのですが 昨日病院の待ち時間に図書室で和書を発見! 「英語でどれくらい理解できてるかなぁ?」 と確認の意味で読んでみました。 結果は・・・ 「結構理解できてるじゃん!」 という感じでした。 でも日本語になると何か違う・・。 独特な感じが・・。 翻訳の越えられない一線ですよね。
0投稿日: 2012.10.06
powered by ブクログ静かで、力強く、細やかで、そして残酷な物語。読み終わってしばらくしたら、泣きそうになってきた。哀しいけど、考えさせられる小説。
1投稿日: 2012.10.05
powered by ブクログ風景の描写が美しく、イメージが脳裏を離れない。 内容も文章もこんなにショックを受けた本は初めてです。
0投稿日: 2012.09.15
powered by ブクログ静かに、淡々と語られる思い出は郷愁に満ちていて、重苦しい事実の影も光で照らし出すようでした。 それだけに、影が現実に避けられないものだと分かったときの悲しみ、切なさ、やりきれなさは痛々しかったです。 読後の悲しい余韻も好きです。 出自なんて関係なく、登場人物は皆とても人間らしかったです。
1投稿日: 2012.09.05
powered by ブクログSFなんだよね?と思わずにはいられない作品。 主人公から語られる内容から次々に恐ろしさが明らかになっていき、まさか本当のことじゃないよな、と不安になってくる。
1投稿日: 2012.09.02
powered by ブクログ物語に力がある小説というのは、よくも悪くも余韻がある。 読み終えた後に、何度も何度も物語の意味を考えたり、登場人物の書かれていない行間に潜めいた感情を思ったり、物語の中に取り残される。 この話にはそんな力があると思います。 読んで数日、私はこの物語のことばかりを考えてしまいました。 幸か不幸かはこの物語は大して重要じゃない。 読み終えた後、もやもやする方も、意味が分からないと匙を投げたくなる方も、切なさや悲しみを覚える方も、結局の所この物語が持つ引力に引き込まれたのでは。 そんなよくも悪くも「嵌って」しまう魅力がある一冊です。 多くの情報を入れずにこの話を読むことをお勧めしますが、 個人的には、「ノーフォーク」という場所のエピソードが胸に刺さりました。 ノーフォーク、遺失物保管所。 亡くしたものが必ず見つかる場所。 彼らが失ったものは一体なんだったのか、見つけたものは何だったのか。 見つけたものは思い出のテープだけなんかじゃなかったし、彼らがノーフォークで本当に取り戻したかったものはそんなものでもなかった。 日本の小説とは違い、細部まで抑制の利いた語りすぎない物語です。 個人的にはいつも海外物で気になってしまう訳し方も気にならず、素敵な文章でした。 映画とセットで見るのもいいと思います。 映画を見てから小説にたどりつくのも悪くない。 この映画の風景を取り出しているすばらしい映画だったと思います。 ぜひとも自分なりの出会い方で出会ってほしい一冊。
19投稿日: 2012.09.01
powered by ブクログ素晴らしかった。内容も奥深いうえに、書き方やイメージもすごい綺麗でした。 フィクションと忘れてしまうほど、切ない気持ちになりました。 ただ一つ一つの行動や、言動が「どうして?」と思うことが多々ありました。
1投稿日: 2012.08.30
powered by ブクログ映画を観る前に原作をと思って読みました。最初どういう事だろう・・・と考えてしまったけど。こういうこと起こりえそう・・・
0投稿日: 2012.08.25
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
なんのことを言ってるのか初めの方はサッパリ。ただ、本の雰囲気から良くないことなのは想像していた。提供、介護者…一体何を言っているのか?と読み進めていく。次第に提供の意味が静かに漂ってくるのが分かる。この子たちって何なの?と何処か翳る部分があった。ヘールシャムの回想章は特にそう。 あの子たちはどうして提供者や介護者になることを受け入れて、自分の人生だと語るのか。そうなるように教育されているのだろうけど、違和感を感じる。こんなことが本当に起こっているのか、現実味がない。きっと俺がこういう世界に身を置いていないから思うことなんだろうな、差別的になるけど。 人間関係の描写が緻密ですごい。ルースとは最後まで友達になれそうにない……。ルースの最期が来るまでずっと我儘で嘘つきな奴と毛嫌ってた。どうしてトミーはルースと付き合うようにしたのかが分からん。そんな私を置いてみんな随分大人っぽい。尻込みしてしまう。はあぁ。
0投稿日: 2012.08.22
powered by ブクログ映画の方で、なぜ平然と運命を受け入れることができるのか、と書いたが、本を読んでもその辺りがよくわからなかったのだけど、カズオイシグロさんのインタビューを読んで腑に落ちた。 映画では省かれていたカセットを探すエピソードがよかった。 クローンの是非だとか、SFだとか、そんなことはこの小説の本質でないんだろうな
0投稿日: 2012.08.19
powered by ブクログ「ものを書くには郷愁が必要だ」と、誰か(文学者か作家)が言った。 本書は、そんな郷愁に満ち満ちている。 舞台はおそらく20世紀後半のイギリス。 ヘールシャムという施設では、将来「提供者」となる使命を帯びた子供たちが共同生活を送っていた。 主人公キャシーをはじめとした生徒たちは、避けようもない運命に薄々気づきながらも、保護官や仲間に囲まれて、幸せな子供時代、青春時代を過ごす。その一方で、「使命」を果たす日は近づき、彼女たちの運命の真実が明らかにされていく・・・。 架空の世界を舞台にした物語だが、いや、だからこそか、多くの感情を呼び起こされた。 読みながらふと、過去の記憶と感情(今となってはそれが現実のものだったと言える自信はないが)を思いだし、その手触りを確かめることがたびたびあった。 そして読後に、6年くらい前に読んだ、恩田陸「麦の海に沈む果実」を思い出した。 これも架空の寄宿学校での物語で、一見幸せだが、様々な秘密やほのめかしに満ちた世界観だったような。
0投稿日: 2012.08.12
powered by ブクログ大学四回のときに課題の一環で流し読みして、もう一回じっくり読みたいなぁと思って再読。 主人公の回想という形で物語が展開していく構造ですが、激情のほとばしるような文章ではなく、むしろ緻密に計算された、整然とした文章です。 臓器提供のために生み出されるクローン人間、というSF要素の強い作品でありながら、もどかしくてせつない青春と恋愛を描いたお話でした。 読後感がすごく複雑なんですが、なんと言い表せばいいかわかりません。悲しいような、さみしいような、それなのに安堵するような。 映画もあるようなので、ぜひ観てみたいなーと思います。
0投稿日: 2012.08.11
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
どこにもない、あってはならない、けれどあり得たかもしれない世界。 過去からの選択の連続によって今の世界が形作られているとしたら、 どこかの分岐点で自分も「あちら側」の存在になっていたかもしれない。 淡々と進む語りは静謐な佇まいを崩すことなく 読者を世界に引き込み、 読み終わったとき ふわりとこちらに送り届けてくれる。 でもそのとき、こちらの世界のどこかにも、 キャスやトミー、エミリ先生がいるのではないか、 そんな気がしてしまう。 誰もが手にすることのできる穏やかな日常が、 何の、誰の上に成り立っているのか。 「わたしを離さないで」、誰が誰に向けた言葉なのか。 見えてはいけない、存在していてはいけない「わたし」から、 存在することを許され、権利を行使する「あなた」へ。
0投稿日: 2012.08.07
powered by ブクログカズオ・イシグロの本は初めて読んだ。 よーやく、読めた。 買ってから随分ほっておいたもんだ。 話の筋立てが推測しやすくてなんだかなぁと思いつつ…。そしてその推測通りなんだけどなんか、すっきりしないかんじ。 最期に残された主人公のその後ってせつねーなぁと思ったりもして。たぶんその気持ちが読後感にも影響してんだろーな。 これ映画にもなってんだな…観たいとはあまり思わないなぁ。
0投稿日: 2012.07.28
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「何か大事なものをなくしてさ、探しても探しても見つからない。でも、絶望する必要はなかったわけよ。だって、いつも一縷の望みがあったんだもの。いつか大人になって、国中を自由に動き回れるようになったら、ノーフォークに行くぞ。あそこなら必ず見つかる、って……」(105頁) 初めて読むカズオ・イシグロの本は『わたしを離さないで』だった。 まず先に映画を見てしまったから、文章を読みながら映画で表現されていた世界観を頭のなかに思い描いていた。それがプラスになったのかマイナスになったのかはわからない。 でも、映像を見ていようと見ていまいと、この物語が終始まとっているある種の儚さの印象はおそらく感じたのだろうと思う。 この本の登場人物に感情移入をするには、少しの迂回がある。 というのも、彼らは臓器移植のために作られたクローンだからだ。生まれた瞬間から、彼らの人生のゴールは定められている。生まれて、健康に育って、内蔵を取られて、死ぬ。 でも、だからといって決して感情移入できないわけではない。主人公であるキャシーの一人称で語られる主観的な記憶にまつわる「名付けようのない感情」は、自分の同じ頃を照らし合わせると身に覚えがある。 この小説について語られるべきことは数多あるだろうけれど、1番印象に残ったのはその幼いころの「名付けようない感情」のようなものの描写だ。 主人公は女の子なのだけれど、小学校高学年くらいから中学、高校にかけての年齢でよくあるようなどうでもいいことでの諍いや、嫉妬、ちょっとした喜びといった感情の揺れがめちゃくちゃ細かく描写されている。しかも、ここで「名付けようのない感情」という形容をしたのは、思い返しているキャシーが「なぜだかは分からない」といった意味の言葉を多用しているからだ。 この小説の大きなテーマの1つはおそらく「記憶」。 クローンの子どもたちのための学校である「ヘールシャム」や、その後の「コテージ」での生活の記憶をたどるという形式で書かれた文章は、あくまでキャシーの「主観」であるという姿勢が貫かれている。 臓器提供のために育てられる子どもたちという特異な設定ながら、子ども特有の感情が事細かに記されていることによって、驚くほどのリアリティを獲得することに成功している文章だと思う。 繰り返しになるけれど、それが『わたしを離さないで』に最も強く抱いた印象だ。 映画の配役はキャシーとルースは良かった。特にルース役のキーラ・ナイトレイ。文章を読んでいても、ルースが出てくる部分にはキーラ・ナイトレイが頭のなかで立ち回っていた。トミーがちょい合わなかったかな〜。 でも、映画だけだとやはり少し物足りない感じもする。 とりあえず、久しぶりにガッツリ読んだ小説は正解。なかなか不思議な読後感だった。
0投稿日: 2012.07.26
powered by ブクログ読後の寂寥感、無力感。 あきらめ、希望、微笑み…何と供に生きるのか、まだこの物語を読む我々は選ぶことができるのだ。
0投稿日: 2012.07.22
powered by ブクログたんたんと語られて、緻密な印象。 先入観なく読むと面白かったんだろうけど、読んでいる途中で、この話の大事な設定について相方が話しているのを思い出してしまった!! あるべき衝撃がなくて、なんか読んでて切なくなった。 でも設定が解っていても心情の移ろいが面白く、淡々とした書き方も読みやすいので結構よかった。
0投稿日: 2012.07.15
powered by ブクログ村上春樹氏がエッセイで推薦していた本。 多分、日本人の作家の本を推薦していたのはこの本が初めてだと思う。 話の中盤までは主人公の回想シーンがゆっくりと始まって、正直なかなか読み進められませんでした。 ただ、言葉で表現できないような後読感はすごいものがあります。 人が生きることの意味を改めて考えさせられました。
0投稿日: 2012.07.04
powered by ブクログイシグロを読んだのは、「日の名残り」以来かな。ストーリーの面白さ、登場人物の魅力、読後の余韻・・・。フィクションの素晴らしさを改めて味わった。こういうテーマをノンフィクションにすると、往々にして、堅苦しくなるか、現実に描写が追いつかないか。最近こういうスケールの大きな小説にお目にかからないような気がするのは、僕が本を読まなくなっているからか、それともそもそもそういう小説が減っているからなのか。
0投稿日: 2012.06.30
powered by ブクログ1、2年前に読んでましたが、登録していませんでした‥。 途中までは子供の思い出が事細かに書かれていて、長く感じられたが、途中からは登場人物と同じ気持ちになっていきました。 朝日新聞の2010年の50冊に入っていた気がします。 そこで科学者が「私たちはこのような本を読まなければならない局面にきている」というようなことを言っていた気がします。 ここには、少しでも延命したいと願う人間の欲、臓器移植の倫理観、先ほど読み終えた「生きるかなしみ」で山田太一さんが伝えていた、「欲が止まらない日本人」にも通じるところがあります。
0投稿日: 2012.06.27
powered by ブクログこれは森岡正博の生命倫理にも通づる設定。とてもリアリティのある心理描写だ。そして我々がいつか死ぬという点において、知っているけど先延ばしにするという点において、全く我々自身の物語でもある。
0投稿日: 2012.06.20
powered by ブクログただ異常なまでに淡々と進む文章に、途中ブランクを置きました。 一回目の読書では、登場人物が何かとてつもないことに人生を翻弄されていることは理解できたのだけれどそこに感情移入するまでには至りませんでした。 もう少し、時期を置いて読み直す一冊にしておきたいと思います。 内容とは別に、本のジャケットのカセットテープがこの物語の中心であり、それが全編にわたって重要なアイテムで終始一貫、物語に横たわっていることはわかりました。 人生や世の中の動きは常に変わっていくけれども、自分は自分てしか生きられなくて自分はもちろん、大切な友人、恋人によって記憶は捏造されていくしそれはネバーエバーではないけれども、それが日々のことであるんだなぁと感じた。
0投稿日: 2012.06.09
powered by ブクログ美しい文章、抑制のきいた語り口、なのにその内容はおそろしい。キャシーの半生を客観的に描いてはいるが、あくまでも彼女が客観的に語っているのであって、捻じ曲げられた印象が垣間見えた。読了後、はぁ....とため息がでてしまうようななんとも複雑な作品。
0投稿日: 2012.06.04
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ある意味ではディストイピア小説かもしれない。私たちは何の目的も持たずに生まれるが、彼女たちは目的を持たされて生まれくる。 非常に面白かった本。
2投稿日: 2012.06.02
