
総合評価
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powered by ブクログ『神様のカルテ』を読んでまず感じたのは、これは地方病院で奮闘する医師の物語ではなく、「人を救う」とは何を意味するのかを静かに問い続ける作品だということだった。 舞台は、深刻な医師不足に悩む地方病院。主人公の栗原一止は、昼夜を問わず患者と向き合い続ける内科医である。過酷な勤務の中で、末期がん患者との出会いと別れ、大学病院への転職という選択、そして家族や仲間との日常を通して、自分がどんな医師でありたいのかを模索していく。命の危機が次々と訪れる医療ドラマではなく、一人の医師が患者の人生と向き合いながら、自らの生き方を見つめ直していく物語である。 この作品が描いているのは、医療の最前線ではない。命には救えるものと救えないものがあるという現実を前に、それでも医師は患者に何ができるのかという問いである。一止は決して天才医師ではなく、自分の無力さに何度も苦しむ。しかし、そのたびに患者を「病気」としてではなく、「人生を生きる一人の人間」として見つめ続ける。その姿勢が、この作品を単なる感動的な医療小説では終わらせていない。医療とは病気を治す技術である以前に、人の人生に寄り添う営みなのだということが、一止の日々を通して自然と伝わってくる。 印象的だったのは、病院の外で描かれる穏やかな時間だった。妻・ハルとの何気ない会話、御嶽荘での暮らし、親友たちとの交流。そのどれもが派手な場面ではない。それでも、その静かな日常があるからこそ、一止は命と向き合い続けることができる。読んでいて何度も考えたのは、人を支える力は特別な瞬間だけで生まれるものではなく、何気ない日常の積み重ねから生まれるのではないかということだった。患者に寄り添う医師にも、寄り添ってくれる誰かが必要なのだという事実が、とても温かく描かれている。 そして心に残ったのは、この作品が死を敗北として描いていないことだった。どれほど優れた医師でも、すべての命を救うことはできない。しかし、その人らしく最期まで生きられるよう支えることはできる。その考え方が物語全体を貫いているからこそ、別れの場面にも悲しみだけではない静かな尊厳が宿る。一止が悩み続けた「良い医師とは何か」という問いは、そのまま「人と向き合うとは何か」という普遍的な問いへとつながっていく。 『神様のカルテ』は、命を救う医師を描いた物語ではない。限られた命の時間の中で、その人らしく生きられるよう寄り添い続けることの意味を描いた作品である。読み終えたあとに残るのは、医療への感謝や感動だけではない。誰かを本当に支えるとは、相手の人生を変えることではなく、その人の人生に最後まで誠実に寄り添うことなのではないかという静かな問いだった。
18投稿日: 2026.07.26
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
私が好きそうとのことでチャットGPTにおすすめしてもらったので読みました(笑) でも、主人公の栗原先生のしゃべり方が古風過ぎてちょっといまいち現実感がなかったのと、安曇さんのエピソードは良かったけど、私は看護師なので、終末期の患者さんに対しての対応としてはまぁないことはない対応かなと思って、なんかそこまで感動できませんでした。急変時の対応をどうするかはあらかじめ本人・家族に確認しているはずなのに、栗原先生が悩んで勝手に決めているのもおかしいと思いました。
1投稿日: 2026.07.21
powered by ブクログ『スピノザの診察室』『エピクロスの処方箋』を読み終わり、夏川草介作品を遡ってみた。今回もオーディブル。 「孤独を取り除く」というフレーズが印象的だった。 ナレーターさんの節回しの影響もあるかもしれなけど、なんとなく森見登美彦の「四畳半神話大系」な空気もチラリ感じた。それはそれで楽しい。 ”電子カルテを入力……”というフレーズに「おっ」と小さく反応てしまう(『スピノザの診察室』『エピクロスの処方箋』のときも同じだった)そして。「あぁ、普及したんだなぁ」と妙な感慨を覚えた。ITベンダー社員時代「電子カルテ」の普及(まずは利用が認められる必要があった)はビジネス的に重要テーマだったのだ(特に公共・医療系システム関係者にとって)。
1投稿日: 2026.06.21
powered by ブクログイチ先生の信念に感動しました。こんな先生がいればいいなと思います。 医師の使命感の片鱗が伝わる小説でした。
1投稿日: 2026.06.16
powered by ブクログ医療が患者を一人にしない、孤独にしないでいてくれる場所があるのはとても大切なことだと感じられました。
0投稿日: 2026.06.13
powered by ブクログとても泣ける。し、爽やかに終わる。 人の生死や思いやりに号泣するが、お涙頂戴という感じでもないので良い。主人公が漱石好きのため古風な語り口だったり、周りの全員いいひとかつユーモラスなひとたちで、妻もとてもいい子で、童話を読んでるような気持ちにもなる。
1投稿日: 2026.06.07
powered by ブクログ「スピノザの診察室」と「エピクロスの処方箋」を先に読んだので、当作も京都の雄町雄介シリーズだと思っていたら全然違った。文調もいささかギャグ路線で上記2作とのギャップに読み始めのうちは戸惑った。 しかし読み進めるうちに、雄町雄介シリーズと同じく味わいを感じるようになった。舞台は信州松本。さりげなく地酒が紹介されたり、豊かだが厳しい自然の空気感が伝わったりと、その風土の想像を楽しめた。当作も大学医局と地域の草の根医療の対峙という社会テーマをベースにしている。そのジレンマの中で描かれる人間と人間の関わりには深く感銘を受けた。読後の余韻も良かった。傑作に出会えて満足である。
1投稿日: 2026.06.07
powered by ブクログとても面白かった。医療ものだからもっと小難しい話かと思ったら意外とぽんぽん読める本だった。一止のような医者も必要なんだなと思った。
1投稿日: 2026.06.03
powered by ブクログ地方医療に従事している病院関係者の苦労と誇りを垣間見ることができた。シリーズ化されているので、1冊ずつ噛みしめて読んでいきたい。
9投稿日: 2026.06.03
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
一止先生がとても良かった。安曇さんみたいなすてきおばあちゃんになりたい。出来ることを全てやるのが正解だとは限らない時代に、どこまで治療をするのかという決断を何度もしないといけないのが苦しいなあと思った。お医者さんはすごい。
0投稿日: 2026.05.27
powered by ブクログスピノザやエピクロスと比べたらちょっと読みにくいかも…と最初は思ったが、読み進めていくうちにじわじわと心に沁みてきた。
0投稿日: 2026.05.16
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
夏目漱石に心酔してるにしても言葉遣いに違和感があって お話に入り込めなかった。 みんな良い人でさらっと最後まで読めた。
1投稿日: 2026.05.16
powered by ブクログ栗原一止という主人公の、どこか不思議で温かみのある行動にハマりました。 特に夏目漱石から影響を受けたという話し方が、段々とクセになって、作品の魅力が増す要因に。 今後、仕事や人生の中の分岐点で選択を迫られる時には、この小説を思い出すのではないかな。 そんな小説です。
1投稿日: 2026.05.15
powered by ブクログあたたかいなぁ。夏川さん、スピノザとエピクロスを読んで、優しくてあたたかい文章を書く人だなととても好きになった。何度でも読み返したい。長野の情景も美しい。 終末期の高齢の癌患者、もし自分の親だったら。配偶者だったら。自分だったら..。最期がひとりはやだなぁ、でも置いていかれるのもやだなぁなどと思ったり。 続きも読みます。
1投稿日: 2026.05.12
powered by ブクログ前もきっと読んだことがあるけど、2.3新章の後、あらためて読んでみた。 学士さんの話、阿曇さんとの話、どれも一止先生だからこその関わり方で、とても考えさせられたし面白かった。
1投稿日: 2026.05.12
powered by ブクログhibuさんの本棚から だいぶ前におすすめ頂いたのだが、すっかり遅くなってしまいました でもちゃんと覚えていた ひぶ〜にすすめてもらったのをちゃんと覚えていた そんな自分が愛おしい っていうか何よこれ! わいの大好きなやつじゃないか! もうね10ページくらい読んだところでがっつり掴まれちゃいましたよ だが調子にのってもらっては困る これが漱石先生だったら2行で掴んでくるからな そういえば、こないだ読んだマハさんの『晴れの日の木馬たち』に漱石先生出てたんよな なんかわいって知らず知らずに連続して繋がりのある物語を読むこと多いんよな なんか働くんだろうな霊感が 『草枕』も久しぶりに読み直してみようかな まぁ、とにかく榛名姫が超絶可愛いかったので、★7,284ということにする 読めて良かった! なんしかありがとう!
73投稿日: 2026.05.11
powered by ブクログ医療現場の厳しさと、そこに向き合う医師の強さと温かさが伝わってきた。 衝撃的な出来事はないけれど、優しさと小さな奇跡が随所に散りばめてある心温まる素敵な作品でした。 人生についても深く考えさせてもらいました。
6投稿日: 2026.05.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
初めて読んだのが中学生の時。そこから何度かの本の断捨離を経て、未だに残り続けている私の本棚の中でも古参の1作。 何回か読んだはずだけど、最後に読んだのは何年も前な気がする……。 きっかけがあり本当に久々に読み返して見て、改めて素晴らしい作品だなと感じた。 当時は夏目漱石について名前しか正直知らなかったが、読破を目指すほど(全然達成する気配がないが)好きになった今感じる面白さが段違いである。クスっとなるポイントが確実に増えたし、槌と鑿の話が夢十夜の第六夜だとすぐ気がついた時がなんかすごく嬉しかった。 ちなみに草枕はまだ読んでおらず、後回しにしていたことを若干後悔している。 そして、イチとハルの関係はこんなに心地よく温かくて可愛らしいものだっただろうか……。 第二話 門出の桜が大好きだ。個人的に精神安定剤を飲んだ経験を経て、眠剤を飲まないと眠れない今、学士殿にかけた「眠れぬならば眠剤も飲もう。不安であるなら安定剤も飲もう。だが飲みすぎはいかん。酒と同じだ」、に、泣きそうになってしまった。イチの静かな優しさが好きだ。 「大学などに行かずとも、あなたの八畳間はまぎれもなく哲学の間であった。」 「バンザイをします!」 なんて温かいんだろうと、ほぼ泣いていた。 命に向き合う覚悟とその辛さ、だけれども温かい人たちに、優しさと励ましを貰える作品。
0投稿日: 2026.05.06
powered by ブクログ長野を舞台にした24時間営業の病院勤務員の日常は、激務、患者の死とネガティブな要素が多いにも関わらず、病院の上司、同僚、妻、御嶽荘の住人、患者と主人公一止全員の雰囲気がとてもあたたかい。 延命に意味がないと判断する場面は命の在り方を考えさせられる決断だった。 心温まる医療現場の物語。
0投稿日: 2026.04.30
powered by ブクログ医療を舞台にした小説は初めて。現場で働いていたことがあるので、物語に入り込めなそうで避けていたけど、そんなことすぐ後悔してしまう物語だった。 生死に関わる緊張感のある医療現場で、悩み葛藤しながらも真摯に患者に向き合う姿、個性的で魅力的な登場人物たちのやりとり、それに加えて文体の美しさと優しさが読んでいてずっと心地よかった。 現役の医師で、こんな心温まる物語を描ける夏川先生の虜になりました。
3投稿日: 2026.04.25
powered by ブクログエピクロスの処方箋を読み、夏川草介さんの本が気になって読んだ。 この本でも一人一人の哲学があり、個性があり、全員がそれぞれの方法で感情や命に向き合っているのを読んで心が暖かくなった。
1投稿日: 2026.04.24
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
医者の仕事は病を治すことのイメージが強い。これは私が30代で大きな病にかかることなく元気に過ごしているからだろう。神様のカルテでは、死にゆく命に対しての医療も考えさせられるものだった。人間として幸せな死に方とは何だろうか。自分で食事が出来なくなった時、それは寿命なのでは無いだろうか。安曇さんは良いスタッフ達に恵まれて良かった。 考えさせられる物語だったけれど、終始主人公の一止が寝てなさすぎて患者より死にそうで心配になる。寝不足で酒を飲んで体調不良で出勤して帰宅させられるのは社会人としてどうなのか。
4投稿日: 2026.04.23
powered by ブクログ読了(25/06/2011) 話題本だけに読んでみました ほのぼの感満載の ほのぼのした内容でした。 2もあるようですが きっと内容はさほど違いがないような バチスタシリーズとは違った 医療問題を扱った作品です。 とはいえ 医者と患者の関係をしっかりと感じさせられる 作品です。 のっぺりしたいときにはいい本です。
0投稿日: 2026.04.22
powered by ブクログ良い。 以前、夏川草介さんの『エピクロスの処方箋』を読み、夏川草介さんの描く哲学や情景に深い感動を覚え、『神様のカルテ』にも手を伸ばす。 夏目漱石に影響を受けていると主人公が言うように、文体や表現の小難しさがまた味が出ており良い。 読む度に、夏川草介さんの見えている世界を深く味わいたいというが欲求に駆られる。 小説に登場する安曇さんも人間的によく出来た人だなと。生きていく上での辛さや悲しみを知っているからこそ、相手の気持ちを理解しようと、寄り添う姿勢が素敵だなと。 私自身も、誰かの小さな灯火になれるようになりたいと思った次第。 ◾️学問を行うのに必要なものは、気概であって学歴ではない。熱意であって体裁ではない。大学など行かずとも、あなたの八畳間はまぎれもなく哲学の間であった。あの部屋には思索と英知が溢れ、ひらめきと発見があった。こんなことは今さら言葉にするまでもないことだ。八年をすごしたその探究の道に何を恥じ入ることがある。 ◾️笑う者あらば笑うがいい。貴君は常に前進してきたのだ。我々がその証人だ。 ◾️川を堰きとめ山を切り崩して猛進するだけが人生ではない。そこかしこに埋もれたる大切なものどもを、丁寧に丁寧に掘り起こしてゆうその積み重ねもまた人生なのだ。
0投稿日: 2026.04.22
powered by ブクログ医療モノが好きなわたしにとっては面白くてスラスラ読めちゃった。私も医療従事者になったけど急性期じゃないから"死"に向き合うことってなかなかないけど、この本を通して人生を見つめ直すキッカケになった。私も、死ぬ時に、幸せな人生だったって思える人生を歩みたいな。
1投稿日: 2026.04.18
powered by ブクログ息子へ) 最近、このブログで、君には、本屋大賞の過去受賞作品をたびたび薦めている。本書は、こんなにいい本なのに、大賞ではなく、第2位の作品。 ちなみに、本屋大賞関連の本は、ことごとく映画化・ドラマ化されていて、本作品も映画化。映画のほうも見たが、やっぱり原作がおもしろい。原作がおもしろかったから映画化する訳だが、さすがに、時間や映像化に制約がでるので、原作を超えることは難しいようだ。 地方の救急病院医の物語。 主人公の医者が特別すごい訳でもなく、患者の病気が特別難病であったり、シチュエーションが特殊なわけではない。 命の数だけ、死があるわけで、そのいくつかを取り上げた医者と患者の物語。ひとつひとつの命の物語に、涙と感動がある。 お父さんも本を読んで、久しぶりに涙した。君にも時々、本書のような良質の命の物語に触れて、死生観を研ぐを薦めたい (お父さんの本の買い方) BOOK・OFF \105円 (読め、もしくは、読むな) 必ず読め! (君が・・・歳のころに) いつでも。
7投稿日: 2026.04.07
powered by ブクログ著者の別の本を読むつもりでいたが、図書館ですぐに読めるのがこちらだったので先にこちらから読むことに。救急医療、地方医療の大変さがヒシヒシと伝わってきました。息子が医学生なので、将来の姿と重ねてしまい、患者に寄り添える医師になって欲しいけど、自分の生活も大事にして欲しいなと思ってしまいまひた。改めて医療現場で働く方たちに感謝と敬意を表します。
0投稿日: 2026.03.24
powered by ブクログ地方の病院で働く医師の話。物語の大テーマは、【このまま忙しい地域医療を続けるか、大学病院でじっくり学ぶか】を選択すること。患者さんや友人たちとのエピソードとおし、どちらを選ぶかを決めます。 実際にお医者さんが執筆されているということで、心の揺れ動きにリアリティがありますね。こんなのを子供の頃に読んでいたら、医師を目指してしまっていた気がします。笑 総評、全体に刺激的というよりは、ふんわり優しい作品でした。勝手に「容体が急変!!どう救うか!?!?」みたいな、激しめのドラマっぽい作品を想像していたので、「いつ事件が起きるのかな…?」→「あれ終わっちゃった…」みたいな寂しさ?残念感?がありました。
0投稿日: 2026.02.23
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
ずっと気になっていた一冊。2026年の本屋大賞に夏川先生の本がノミネートされたことをきっかけに手に取りました。 劣悪な勤務状況の病院に勤める主人公・栗原一止。夏目漱石のような独特の話し方で変わり者として周囲に見られているが、実は優しく誠実。患者に親身になって対応している姿勢が胸を打つ。最後の安曇さんからの手紙にはグッときた。 迷った時には立ち止まろう、という筆者からのメッセージは、日々何かを目指さなければいけないような雰囲気の私達をホッとさせてくれる。 一止と看護師・東西とのやり取りが面白い。一止が私には妻がいるから‥のくだりで、東西が呆れる場面があるが、本当は東西は一止が気になっているのでは?と思ってしまった。 一止の妻のハルが素敵で可愛らしいと思ったが、それはハルの使う言葉が綺麗だからかなと思った。会話が一昔前の夫婦みたい。 読みやすく、時にユーモアを交えながら、淡々と物語は進む。しかしながら、描かれている内容は人の生き方や尊厳である。結構深い。続編も全て読みたいと思う。
2投稿日: 2026.02.19
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
栗原一止 イチ。本庄病院に勤務する五年目の内科医。信濃大学医学部卒。夏目漱石を敬愛している。南3病棟。御嶽荘の桜の間の住民。御嶽荘でのニックネームはドクトル。 外村 救急部看護師長。年齢三十?歳にして独身、有能で美人の看護師。 海先生 研修医。 山先生 研修医。 砂山次郎 北海道の牧場農家の生まれの大男。一止とは医学部生時代からの知己で、学生のころは同じ寮の隣りの部屋で四年間も生活してきた腐れ縁がある。 卒業後は大学病院の外科医局に入局、三年後に大学病院の人事にもとづいて本庄病院の外科へ派遣される。水無陽子に惚れている。 水無陽子 病棟看護師。栗色の髪をショートカットにした笑顔が可愛らしい。一年目の新人。気立ても良く気のつく性格。 南4病棟。 栗原榛名 ハル。一止の妻。一見すると華奢な普通の女の子。幾つものカメラを抱えて世界を飛び回り、数々の驚くべき写真を撮影してくる山岳写真家。 1年前に一止と結婚した。元松の間の住人。旧姓片島。 大狸先生 消化器内科部長。太った腹をゆすりながら豪快な笑い声で患者たちを魅了する。一止は大狸先生と呼んでいる。驚くべき内視鏡のテクニックの持ち主で、信州のゴッドハンドと呼ばれる。 古狐先生 消化器内科副部長。痩せぎすで三日徹夜で働いても三日ゆっくり休んでも変わらず顔色が悪く、大狸先生とは対照的な姿から古狐先生と呼んでいる。 豊科 糖尿病教育入院の患者。糖尿病三羽がらす。 明科 糖尿病教育入院の患者。糖尿病三羽がらす。 倉科 糖尿病教育入院の患者。糖尿病三羽がらす。 安曇清子 胆のう癌の患者。七十二歳のおばあさん。 田川 六十二歳の膵臓癌のの男性。 東西直美 二十八歳にして病棟の主任看護師にまでなっあ極めて優秀な女。頭がいい上に、危急の際にも絶対慌てない冷静さに定評がある。南3病棟。 男爵 御岳荘の桔梗の間の住人。一見すると四十代にも五十代にも見えるが、ふとしたときには少年のようなそぶりを見せる年齢不詳の男。売れない貧乏絵描き。 学士殿 御岳荘の野菊の間の住人。信濃大学文学部哲学科、大学院博士課程に所属し、ニーチェ研究に没頭している。古今東西のあらゆる書物通じ、その博学博識は、ほとんど異常と言ってもよい領域に達している。本名は橘仙介。 大村 外来患者。六十五歳。男性。 旭 外来患者。八十二歳。男性。 桐 外来患者。二十八歳。女性。 横田 外来患者。五十四歳。男性。 老紳士 金曜日に必ず現れる不思議な老紳士。昔、安曇の旦那に救われたことがある。 後藤 松本平広域救急隊の隊長。 自若 循環器内科の先生。 橘楓 学士殿の姉。 雲之上先生 信濃大学医学部附属病院の医局長。
1投稿日: 2026.02.11
powered by ブクログ本好きは一度は目にし、手にも取るほど、話題の本だった。 主人公の栗原一企は信濃の国、本庄病院に勤務する5年目の内科医。愛読書の漱石「草枕」をはじめ彼のすべての著作の影響をうけて、言動がいささか現代向きでない、見方によっては変人に分類されるような人柄である。 外面はそうであっても、こころの奥は柔らかな熱い医師魂を秘め、患者第一で、過酷な生活に身をおいている。 結婚一年目の記念日を忘れて、妻に申し分けなく思うような愛妻家であり、いまだに松本城に近い、古いアパートに住み続けている。 外から見れば奇態な住人たちも、それぞれ付き合ってみれば、深いつながりが生まれていて、酒を酌み交わしているだけで心地よい。 患者には死を迎える高齢者も多い。死に向かい合う姿勢もそれぞれで、一企は、仕事とはいえ人生の終末を迎える人たちにどういう治療をすればいいのか悩んでいる。 延命治療と自然死の境目で苦悩する姿が、彼が誠実であるために、現代の高齢化する社会の悩みを反映していて、他人事には思えない。 いい妻と友人、先輩に囲まれた栗原一企という新進の医師が、直面する今の医療と、死に向かう終末医療の問題も考えさせられる。 患者とのエピソードが暖かい。 彼の誠実な悩みが受診者側にも希望を持たせる。福音書だ。 人気の本は、図書館にすぐに予約しても今になる。 限られた時間でいい読書が出来るよう、目を開けて耳を澄まさねばと思う。
4投稿日: 2026.02.07
powered by ブクログ「学問をするのに必要なのは、気概であって学歴ではない。」 これがこの小説に通底するメッセージではないかと思う。高度医療だけでは救えない命があるし、看取れない命がある。大きな歯車だけではカラクリは精緻に動かない。小さな歯車と大きな歯車がうまく組み合ってこそのカラクリだろうし、社会もそうあるべきなのだろう。この小説には決して大きな歯車ではないが魅力的な人たちがたくさん登場する。主人公の一止先生も大学病院で高度医療を極めることより街場の医者として患者と向き合う道を選ぶ。どちらが優れてるとかどちらが良いということではないけれど、私自身も目の前の患者さんと真摯に向き合うような生き方をしたいと思う。 バブル崩壊以降の日本からは社会的な紐帯や地域的な紐帯はズタズタにされて地方は壊滅的だ。でもやっぱり地方なくして東京はないし、街場の臨床なくして高度医療はないし、現場なくして理論はないのだろうと思う。 こじつけかもしれないけれど、衆院選間近だからかもしれないけど市井の生活まで降りてこれない政治家や復興庁創設を手形にした前の総理なんかに特に読んでほしい。
3投稿日: 2026.02.02
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
映像化で有名な著者の作品ですが、実は本で読んだことはありませんでした。 著者のことをTVで拝見する機会があり、とても誠実で優しさに満ちた方だなあと好印象だったので手に取りました。 医療系って他のジャンルで扱う生死とは違い、フツーの市井の人が死と向き合わなければならないんですよね。 そこがリアルで重くて避けてきたのですが、どんな人も避けて通れないのが死なんだなあ、と改めて思いました。 「病むということは孤独なことです。(中略)たとえ病気が治らなくても、生きていることが楽しいと思えることがたくさんあるのだと(先生は)教えてくださいました。」というセリフに涙が・・・ こんな風に患者さんから感謝される一止先生の真摯な姿に私自身も胸を打たれたし、でもそれと同時に、あなたが誠実に優しく思いやりをもって人と接するから、一止先生という素晴らしい先生と巡り会えたのですよ、と患者さんにも声を掛けたくなりました。 優しさに満ちた作品。
2投稿日: 2026.01.31
powered by ブクログ生徒用の本の先読み。 医者の忙しさは、医者をしている親戚から漏れ聞く話によると書かれている通りのようだ。大変な毎日だが、その忙しさに心が摩耗されてしまうのではなく、ほうっと心が温まったり深く揺さぶられたりする、そんな医者の姿にそうであってほしいなあと祈りに似た気持ちを持つ。
1投稿日: 2026.01.29
powered by ブクログ話し方とか考え方とか、すごく独特だけど、とても温かいお医者さん…こんな人が主治医ならいいですね。そして、素敵な奥さん! 安曇さんの件はめちゃくちゃ泣けました…
10投稿日: 2026.01.25
powered by ブクログ今更、読んだ。主人公の語りが飄々として淡々としているが、それも面白い。松本の地名が出てくるのも好き。続編も引き続き読んでみよう。
2投稿日: 2026.01.22
powered by ブクログこういうお医者さんに出会える事は、人生での幸福なのかもしれないなと思って読んだ。 自分も父を亡くしてから読むと、また違う印象になった。 それぞれ医師に対して理想はあると思うが、「優しく」あって欲しいと感じた。
29投稿日: 2026.01.01
powered by ブクログ面白かった 地域医療の現状が書かれていた 医療の話によく出てくる 難しく珍しい症例の治療をするような話ではなく 看取り看護をする終末期病院の話 ドクターも色々な考え方があり色々な人が いると考えさせられた
2投稿日: 2025.12.30
powered by ブクログ『スピノザ』『エピクロス』がよかったので、題名を聞いたことがあった出世作(デビュー作)を読んでみることに。 主人公が古風な話し方をするのをイタイと思ってしまって、話の内容よりそっちが気になってしまった。 発刊されたのは16年前、著者は同い年なので30の頃か。若気の至りがまだ残っていたのかも。 でもここから『スピノザ』『エピクロス』につながると考えると、成長なんて言うのはおこがましいが、お医者さんを続けながらよくぞという思いになった。
1投稿日: 2025.12.30
powered by ブクログ正直もっとギスギス、バタバタしたテレビドラマのような作品かと思った。 本書の主人公の栗原一止は夏目漱石を敬愛し古風な口調の風変わりな内科医だ。 まぁ確かにこんな口調で話されたら「この医者大丈夫か?」なんて思ってしまう。 この病院は24時間365日対応の看板を掲げ患者側にはとてもありがたい病院だが、医師は何日も休みもなく常に疲弊していて大変だろう。 でも、そんな状況でもミスは許されない! 医師だって人間だ、疲弊した状況ではいつかミスを冒してしまうのではないか。 つい最近行った病院の医師も「全然休みがない」「ちょっとしたことでクレームが入り下手なことが言えない」とも言っていた。 それでも、合間を見て様子を見に来てくれる。何とも有り難い話である。 それだけでも患者は安心する。 もちろん古風な口調ではない。 私達にとって良い医師とは? そして生命の有方について考えさせられた。 威圧的な態度でパソコンの画面ばかり見て患者の方を見ない、心ない言葉に遭遇する時がある。 でもそれは忙しさ故なのかもしれないけれど、 私が患者だったら栗原医師のような医師に診て貰いたいと思うだろう。 患者の安曇さんの手紙が心に響いた。 「たとえ病気が治らなくても生きていることが楽しいと思えることがたくさんあるのだと。」 神様が書いたカルテ(運命)は変えられなくても安曇さんのように「生きてて良かった」と思える そんな風に寄り添って貰える医師と出会いたいと思ってしまう。 私の家族も良い医師に巡り会えて良かったと心から感謝してます。
81投稿日: 2025.12.29
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
「形にならぬ哀感と対象の定まらない憤り、それらが走馬灯のように近づいてきては駆け抜けてゆく。人が死ぬとはそういうことである。」
0投稿日: 2025.12.26
powered by ブクログ考えさせられました。 安曇さんの終末期の過ごし方を読むと少しの延命と人生の充実、どっちが大事かを。 もちろん生死がリアルではないときは、もちろん人生の充実という人が大半なのだろう。 それが妻だったら、子供だったら、親だったら、友人だったら・・・ 自分が、終末期、特に命の期限を告げられた後の過ごし方をどうするか。自分だったら・・・ 自分だったら・・・ 最後何をしたいだろ、何を口にしたいだろ・・・ 本当は自分は何をしたかったのだろか・・・ こんな重い命題、結論でません。ただでさえ年末でバタバタしてるのに。もう寝る。 と思いきや、しまった! 「妻だったら」を最初に書いてなかったーと気づき無事訂正。 死生観を考えながらも結局はしょうもない日々の積み重ねです。こんなもんです人生は。
0投稿日: 2025.12.24
powered by ブクログ安曇さんからの手紙は号泣だった。 医師も日々迷い、格闘しながら働いているんだなって、夏川先生が、医師だからこそ、説得力というか、正直に書いてくれて、身近に感じるというか。。。 高齢者やガン末期の方の医療は、どこまでしたらいいのか、難しい所を、一止は看取ってくれた。 安曇さんは、孤独ではなく、本当に幸せだったと思います。 素敵な作品をありがとうございます。
2投稿日: 2025.12.21
powered by ブクログ地方の医療の現場はこんな風に多忙なのだろうか。 睡眠時間も確保できないほど。 コロナ期はさらに厳しかっただろうと 想像できる。 夏川草介さんの著者ニ冊目。 タイトルだけは知っていたが、もっと早く出会いたかった一冊。 安曇さんとのくだりも、学士殿の門出も、もう感極まる。 ハルとイチの関係性もすてきだ。「細君の笑顔の前には、道行く女性ことごとく路傍の石である。」 文体も夏目漱石的でツボってしまった。高校時代読んだ『草枕』は「智に働けば角が立つ。情に棹させば流される。意地を通せば窮屈だ。とかくに人の世は住みにくい。」しか覚えてないが、再読したくなる。 縄手通り、女鳥羽川、松本城も何度も訪れているから情景が目に浮かぶ。 イチが、「足下の土に無心に鑿をくわえよ!」と自分のこれからを決めた。その覚悟に胸が熱くなった。 是非続編が読みたい。
99投稿日: 2025.12.18
powered by ブクログずっと読んでみたかった小説。医療現場で勤務したことがありますが、著者が医師ということでとてもリアルな描写で入り込めました。主人公視点の文章で、古風な堅い語り口調であるところが、重いテーマを重すぎない印象にさせていて良かった。タイトルの“神様”が何を表していたのか、自分の中ではまだ答えが曖昧なので、続くシリーズも読んでみたくなりました。
1投稿日: 2025.12.17
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
栗原一止(いちと)は信州にある「24時間、365日対応」の病院で働く、29歳の内科医である。ここでは常に医師が不足している。専門ではない分野の診療をするのも日常茶飯事なら、睡眠を3日取れないことも日常茶飯事だ。妻・ハルに献身的に支えられ、経験豊富な看護師と、変わり者だが優秀な外科医の友人と助け合いながら、日々の診療をなんとかこなしている。 そんな栗原に、母校の医局から誘いの声がかかる。大学に戻れば、休みも増え愛する妻と過ごす時間が増える。最先端の医療を学ぶこともできる。だが、大学病院や大病院に「手遅れ」と見放された患者たちと、精一杯向き合う医者がいてもいいのではないか。悩む一止の背中を押してくれたのは、死を目前に控えた高齢の癌患者・安曇さんからの思いがけない贈り物だった。(紹介文より) ーーーーーーーーーーー 再読なのに号泣の1冊。 スピノザの診療室を読んで、やっぱり好きだなと感じ 神様のカルテシリーズを一気買い。 久しぶりに読み返してみたけど、安曇さんのくだりで涙が止まらない。嗚咽。 医者とは、命とは、という、それぞれが信念を持っているようなテーマで、 ひとつの核となるような考え方を学ばせてもらったような。 医療はこうあって欲しい、という理想の物語。 「病で怖いのは孤独」というセリフが染みる。 それを救ってくれるような医者が現実にいるのだろうか。 心揺さぶられる。 イチとハルの関係性も素敵で、 ハルの動じなさや包み込む雰囲気が憧れる。
1投稿日: 2025.12.12
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
面白かった(笑)現役のお医者さんが書いたんですね~。医療制度や地方医療の問題なんかも難しくなくわかりやすく書かれているのが良いですね。読みやすいし登場するキャラクターたちが良いですね(笑)「御嶽荘」に住む学士や男爵、患者の安曇さんみんな好きです(笑)そして泣かされましたね。これはもっとシリーズとして書いて欲しいですね(笑)そして夏目漱石が読みたくなった(笑)
0投稿日: 2025.12.11
powered by ブクログ描写や感情が丁寧に表現されていて、映像を見ないと伝わらないような景色が、この文章を読むだけで想像できたのですごく驚きました。 主人公・一止の医療に真摯に向き合いながらも葛藤をしている感じや、一止の優しくさんの通った良い人という特徴が伝わってきて、読んでいて心が温まるような感覚になりました。
1投稿日: 2025.12.06
powered by ブクログ何かオチがある訳ではないけど、心がふわふわするような優しい雰囲気の話だった。 かといって完全に暖かいだけの話ではなく、医療現場の厳しさや人の死にも関わってくるので、しっかりと考えさせられる話でもある。 学士殿と男爵とのやり取りは何処となく森見登美彦っぽさがあって自然に受け入れられたが、それ以外における主人公の話し方は過度なキャラ付けに感じてしまった。 ハルさん可愛い。
0投稿日: 2025.12.01
powered by ブクログ最近続いているが、これもまた再読かもしれない。 ところどころ微かに記憶に引っ掛かるものがある。 とはいえ、そんな程度の記憶なのでしっかり読んだが。 じんわりじわじわ 読後あたたかい気持ちになれるイイ話だった〜 御嶽荘がとても気になる。 シリーズのようなので、続きも読みたいなー たぶん続きは未読だと思うし。 題字のフォントが美しい。 特に「の」のくびれとか、「テ」の接続部分 上橋菜穂子さんの解説に同意です。
17投稿日: 2025.12.01
powered by ブクログ医療現場のリアルや生きることの本質に気付くことのできる良本。前を見続け、苦しみながら成長を追い求め続け、目の前にある足元にある幸せを大切に出来ずに見失う。自分自身は悩まない方であるが、それは考えないようにしているだけで、足元の幸せを大切に出来ているかと問われればイエスとは言えないかな。続編も読みたいですな!
10投稿日: 2025.11.21
powered by ブクログ一止って名前がいいですね〜なんか好きになった! 簡単に言うと…医療現場は色々忙しくって大変だけどお仕事頑張って続けます!というタイプの本 奥さんもいいし周りの人もいいし…続編も気になりますね〜
1投稿日: 2025.11.12
powered by ブクログ順番が逆になってしまった気もするけれど。 『神様のカルテ』は『スピノザ』に比べて、よりキャラクターや出来事が立っている気がする。 小説として書きたいことが、浮かび上がってくるようにも感じる。 『草枕』を愛する、一風変わった言葉遣いをする主人公。だけど、仕事や患者に対する、ひたむきさは『スピノザ』と共通する。 いいなと思うのは、妻の存在かもしれない。 医療モノは、家族の立ち位置が難しい。 視点を変えると、仕事に没頭するパートナーの存在は、家族思いとは言えない見方もある。 けれど、妻自身の「やりたいこと」をしっかり見せているから、いつも一緒ではなくとも、通じ合っている夫婦なのだとよく分かる。 シリーズ。主人公の思いがどう変わるか。
15投稿日: 2025.10.20
powered by ブクログどんな仕事をしていても、忙しい時に人の本性が出てしまう。 忙しい医師は、人の死に慣れていかないとやり切れないのだと思うけれど、こんなに心優しい自分を保てる栗原先生みたいなお医者さんも、きっとどこかにいるんだと思う。 昔の医療だったら、 できる限りのことをして! というのがちょうどよかったけど、 今では医療が発達したので、 身体を痛めつけるだけの延命 になってしまうことがあるという話には、心から同感。 私の祖母は、脳梗塞で倒れてから、大好きなお喋りもできず、美味しいものも食べられず、テレビさえ見れなくなって、ただ病院の白い壁を見ながら3年寝たきり。 歩き回るのが大好きで、いつも笑っていて、明るくぽっちゃりしていた祖母が、痩せ細ってただ生かされている姿は、本人も望んでいなかったと思う。 口は悪いけれど、心優しい栗原先生。 ユーモアもあってとても心地よい気持ちになる小説でした。
8投稿日: 2025.10.15
powered by ブクログできるだけ長く生きること、できるだけ長く延命させることだけが、ぼくたちの、医者の生きる道でしょうか。 「とにかく長生きしたい」「肩をこわしてもいいから次の一戦で勝負したい」「寿命が短くなってもいいから酒タバコを嗜みたい」「息子のことを忘れるくらい呆けるなら生きるのを終えたい」「自分を覚えてる人が誰もいないなら死にたい」一人一人の生き方は異なってあるべきだし、それを最終的に決定するのは自分自身であるべきでしょう。様々な人生観がある中で、自分のそれを、他人に介入されたり干渉されたりすることは耐え難い苦痛です。 もっともパターナリズムという考え方があります。本人の判断能力の未熟さを理由に、専門的知識をもつ人や立場の強い人が、彼の利益を思って、行動に介入したり干渉したりすることです。 小学生の頃、毎週父から作文の課題を与えられてました。当時は嫌々取り組んでいたのですが、現在少しはまともな文章が書けるのは、その添削のおかげかなと思ってます。当時のぼくの判断力では将来の利益に気付かなかったでしょう。 小学生の頃、音大を出ている母からは冗談まじりにこんなことをよく言われました。「音大行くのはやめときなさい。才能があっても厳しい世界。特にあんたは男なんだから家庭をもちたいなら学校の先生になるしかない。」辛辣な意見ですね(そんなこと言われる前にぼくには音楽への情熱も才能も欠けているのですが……)。母は確かにぼくの将来の利益を考えてくれたのでしょう(介入や干渉と呼べるほど強いものではありませんが)。しかしこの言説がぼくに将来の利益をもたらしたかどうかはわかりません。最近までこれ以外の考え方はぼくにはありませんでしたし、自分でこの思考に達するという経験が欠けているからです。音楽の世界の厳しさを知りませんし、あきらめる経験をしていないのです。 子どもに対する大人の影響は非常に大きいものです。細心の注意を払ったとしても、違う意図で伝わってしまったり、自分の価値観を強いる形になってしまったり、本人の意思を認めず単にその未熟さを嘆いてしまったり。 学校という場所では意図するしないに関わらず「生き方の見本」みたいなものが示されています。椅子に座る時は、両足は床につけて、背もたれには寄りかかりません。背筋は言わずもがな垂直に伸ばします。それ以外の姿勢は勉強に相応しくありません。友達は「くん」か「さん」をつけて呼ばなければいけません。それ以外の呼び方はいけません。 また今を楽しむことよりも、将来の苦労を減らすことが重要です。我々の人生は常に次のステージへと準備を続けていかなければなりません。つまり次のステージを知らない我々は、年長者・教師の言うことを素直に聞き、従うことでそれが可能となります。 ある程度の指針は必要かもしれませんが、我々はここまで生き方を決められなければならないのか?? その人にとって何が利益で何が幸せなんてことは誰にもわかりません。外野の意見は所詮、参考にすぎません。専門的知識をもつ他人に決められ続け、それが自分にとって幸せかどうかを考える、判断する機会を失った子どもはどうなるでしょうか。 ぼくは思います。可能な限り本人の意思に従うことが、真実を掴むための唯一の手段なんじゃなかろうか。 医療現場では近年患者自身の意思が大きく尊重されるようになってきたと聞きます(実際ぼくにはさっぱりわかりませんが)。教育現場はどうでしょうか。我々は子どもを未熟な者と決めつけ、対等に渡り合うことはなかなか困難です。人の人生は専門家の一元的な価値観で決められるものなのか。 未来の可能性溢れる子どもと、狭い価値観しかもたないぼくがどう付き合うか、日々悩んでいるのですが、少なくともぼくはぼくの人生を生きたいと考えています。
1投稿日: 2025.10.10
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
十分楽しめる内容。しかし妻であるハルの描写に思わせぶりな箇所が多く、何か叙述トリックが潜んでいるのか?と気になって本編に集中できなかった ・御嶽荘の住人としかハルが話している描写がない ・ハルの話を出すと東西看護師とかが妙な反応をする ・いかにも非モテ男性の理想像のような外見、性格 ・貧乏独身男性しか住まないようなボロ家に同居 ・不在が多く多忙な医者に都合の良い設定 ・性的な接触をしている気配がない いかにも怪しい。 2巻目途中でギブアップし、ネタバレ調べたらハルは実在する普通の女性らしい。紛らわしすぎる
1投稿日: 2025.09.24
powered by ブクログ栗原一止は、信州になる病院で、殆ど休みなしで働く内科医。母校の信濃大学医局から誘いの声がかかる。大学に戻れば最先端の医療を学ぶ事ができる。だが大学病院では診てもらえない、死を前にした患者のために働く医者でありたい.悩む一止の背中を押してくれたのは、高齢の癌患者、安曇さんからの思いがけない贈り物だった。2010年本屋大賞2位。 私が一番心に残ったのは仏師が仁王を彫る話「あれは木に仁王を彫り込むじゃない.最初から木の中に仁王が埋まっているのを掘り出すだけだから、容易なものだ」思えば私の仕事も同じようなものかもしれない.点滴やら抗生剤やらを用いて絶える命を引き延ばしているなどと考えては傲慢だ。もとより寿命なるものは人智の及ぶところではない。最初から定めが決まっている.土に埋められた命を掘り起こして光を当て、より良い最期の時を作り出していく、医師とはそういう存在ではないか。
1投稿日: 2025.09.11
powered by ブクログ松本市にある救急病院の内科医が主人公の医療小説。 作者の日常を小説にしているからか、目の前で起きているような臨場感がある。 特に安曇さんのエピソードは親しい人の病と同じだったので涙が止まらなかった。 患者にとって主治医は心の支えであり、人生の最期のかけがえのない出会いになる。 また、終末期医療と聞けば「死」がイメージされるが、逆に「生」との向き合いの方が問われるのではないか。人生の最期、いくつものポンプにつながれて死に行く人、家族の都合で延命治療を余儀なくされる人、幸せな死とは何か、生きることの本質を考えるきっかけになった。 読後、ドラマも観たが小説の方が小気味よく、何倍も物語に没入できる。 ドラマで本作を見た人にも小説を読んでほしい。
0投稿日: 2025.08.31
powered by ブクログ文体、表現、ユーモアが、センスの塊のような文章。 どのページを見ても面白い。 どのエピソードも心が揺さぶられるストーリー。 映像化されているが、文章で読まないと、この面白さは伝わらないと思う。
13投稿日: 2025.08.21
powered by ブクログ安曇さんの手紙に涙、ハルさんの可愛さにニヤニヤ、他にも周囲のキャラの個性で読後幸せの気持ちで包んでくれる素敵な小説でした。
3投稿日: 2025.07.31
powered by ブクログ大好きなミスドで読書することが多いので、読みながら泣けてきて大変でした。 私はこの病院で働く人たちのように、周りの人たちを思い遣っているか、安曇さんのように感謝して死んでいけるのか、ハルさんのように夫に幸せと安らぎを与えることができているのか。毎日少しずつでも心に留めて生きて行きたいと思う。
1投稿日: 2025.07.31
powered by ブクログ信州にある「24時間、365日対応」の病院で働く、内科医の栗原一止の喋り方が独特で夏目漱石を尊敬している面白い内科医。 経験豊富な看護師と、変わり者だが優秀な外科医の友人と助け合いながら、狸のような先輩内科医とか登場人物の例えとか主人公とのやり取りが面白い笑
1投稿日: 2025.07.06
powered by ブクログ医者というのはキツイ仕事かも知れないが、主人公の周りの人物はみな優しく愛嬌があり、心が重くなることも無くやんわりと読むことができた。 やはり面白かった。
2投稿日: 2025.06.26
powered by ブクログ医者という職業に驕らず、過酷な労働環境の中、ひたむきに患者と向き合う主人公。クールで知的ながらも内に秘めた思いやりが心に響く。周りの登場人物もそれぞれ個性的であるが、共通して熱い思いが伝わってくる。生きているからこそ人に感謝することができ、優しさを与えることができる。命の尊さを考えさせられる一冊。是非シリーズを読み進めたい。
16投稿日: 2025.06.17
powered by ブクログやっと読んだ。いつ買った本かな? 確かに面白い。何かイベントがあるわけではないが良い話が進んでいく。こう言ったのもアリなのかな。
0投稿日: 2025.05.31
powered by ブクログ2025/05 オーディオブック 優しい話、あまり病気の技術とか病気そのものについてというより、病気の人たちとの交流とか、周りの人との交流がメインで、医療ものというよりはヒューマンドラマな感じ。
0投稿日: 2025.05.30
powered by ブクログ医療をテーマにしている小説は初めて読んだが、誰でも読めるように配慮されているなと感じた。 また、登場人物のキャラクターと安曇野の描写がとても自分好みで早く2を読みたいと思った。
6投稿日: 2025.05.26
powered by ブクログ地方の救命救急病院で働く若い内科医が、過酷な毎日に辟易し自分の進む道に迷いながらも、友人や患者との触れ合いを通して未来を見定めていく。 読み易く、低年齢向けに配慮されていると思われる一方で、あえて難解な言い回しを多用して文体を古風に近づけているように感じるのは「難読漢字に慣れてもらいたい」という作者から子供たちへのメッセージだろうか。 キャッチコピーは『神の手を持つ医者はいなくても、この病院では奇跡が起こる』だが、作中では難病患者が劇的に回復するような奇跡は何も起こらない。当たり前の日常として、当たり前に患者の死を看取ること、それも一つの奇跡ということかもしれない。医者の本分は何か?という主人公の迷いを通して人生や生命の意味を問いかける秀作。
0投稿日: 2025.05.24
powered by ブクログ主人公・栗原一止(くりはらいちと)は、信州松本にある本庄病院に勤務する内科医である。彼が勤務している病院は、地域医療の一端を担うそれなりに規模の大きい病院。24時間365日などという看板を出しているせいで、3日寝ないことも日常茶飯事。自分が専門でない範囲の診療まで行うのも普通。そんな病院に勤める一止には最近、大学病院の医局から熱心な誘いがある。医局行きを勧める腐れ縁の友人・砂山次郎。自分も先端医療に興味がないわけではない。医局に行くか行かないかで一止の心は大きく揺れる。 そんな中、兼ねてから入院していた安曇さんという癌患者がいた。優しいおばあちゃんという様相で、看護師たちには人気者だが、彼女は「手遅れ」の患者だった。「手遅れ」の患者を拒否する大学病院。「手遅れ」であったとしても患者と向き合う地方病院。彼女の思いがけない贈り物により、一止は答えを出す。 ------------------------------------------------- あぁ・・・最高な医療小説ですよね・・ ずっと読みたかったのですが、やっと巡ってきました。 大きな感動というよりは、心の奥底を少しずつえぐってくるような感動を覚えます。 そして、ときどきかまされる「ユーモア」栗原先生のキャラクターが本当に愛すべきです!夏川草介さんの描くお医者様は本当に素敵過ぎます。 勢い余って、映画も少しかじってみたのですが・・・主人公が全然イメージと違って・・・「ちがーーーーう!!」と心で叫びつつ、見ています。。 もう少し考えて欲しいものです。。うぅぅ それから、長野の話なのでおいしい地酒の話がでるのもいいですよね 私の大好きな「佐久の花」があったときは 目がハートでした。 佐久の花は爽やかなりんごの香りがしてとてもジューシーなところがお気に入りです! 夜明け前・飛露喜もいい♪ とにもかくにも、この先2~3+新 と続きますが、全て読破します!!
28投稿日: 2025.05.22
powered by ブクログ読んでいて心地の良いお話だった。 一止が悩みながらも地方病院の内科医としての生き方に確信を持つまでの過程に、胸がじんと熱くなった。 それにしても、ちょっと変人の一止と次郎に可愛くてよくできた奥さんや彼女がいるのはどうしてだろう。そこが現実離れしてるなぁと思いつつ、この作品の魅力でもあると思った。
1投稿日: 2025.05.18
powered by ブクログ読み終わった最初の感想は、とてもほっこり、心温まるお話…と思う。 正直、最初の1/3ぐらいまでは、小説と私のテンポが合わない感じで、物語に入り込めずなかなか読み進められなかったけど、そこを過ぎたらまあまあ読めました(上からな感じでごめんなさい)。 優しいお話だなぁ〜と思うし、安曇さんのエピソードは、涙なしでは読めない部分もあった。 だけど全体としては私の好みの小説ではなかったと思う…好みの問題なのでね。 ちょっと脱線しますが、読み終わってから映画化の時のキャストを見たら安曇さん役が加賀まりこでめちゃめちゃびっくりした!! イメージとしては正反対。 まあ、映画を見てもないのにそんなこと言うのも我ながらどうかと思いますが…。
1投稿日: 2025.05.13
powered by ブクログ何年も前から読んでみたかったが、シリーズ何作もあり、読むなら全部読みたい自分はなかなか手に取らなかった。 何の予備知識もなく一気に読み終えることとなった本作は、人の死を扱っているにもかかわらず温かな物語と強く感じた。それは登場人物のキャラクターによるところが大きく、特にハルさんには大変惹かれ楽しませてもらった。 と同時に病気についてもあらためて唸らされた。 病むということは、とても孤独ということです、という一文には強く共感した。 30年以上にわたり持病を抱えている自分にとっては沁み入った。 ただそれさえも前向きな物語としている本作はホントに素晴らしい。 出版と同時に読んだ読者は、この作品がこれから何作にもわたるシリーズになることを予想していたのだろうか? 今頃初めて読んだ私は幸運にもシリーズ化を知っているので、この温かな物語をゆっくり味わっていきたい。
2投稿日: 2025.05.09
powered by ブクログ夏目漱石が好きな主人公らしく(?)難しい言葉が多く辞書を引きながら読み大変語彙の勉強にもなりました 作者は医者ということである程度現実に近いものという前提で地域医療の凄まじさに感服した。まさに命を削って日々奮闘しているけどやっぱりその姿勢には疑問が大きい。それでいいのか?と 物語としては 砂山先生東西さんに安曇さん大狸先生古狐先生、ハルさんに男爵、学士殿、魅力的な人物が沢山出てきてそれぞれの関係も素敵だった 信州には行ったことないけど1度行ってみたいな
2投稿日: 2025.05.05
powered by ブクログ一に止まると書いて「正」を意味する。 主人公の栗原一止は医者不足の中、地域医療に従事するが、その中でも人との関わりの大切さだけは忘れない。 高齢者ばかりで、死を待つのみの人に対しても、真摯に向き合い、そして、自分の医療に対して葛藤する。そんな姿が美しい。 自分の名前に込められた哲学を体現できる人って実は少ないんじゃないかと思う。けど、それが実現できる主人公はかっこいい。 読んでいて、心が落ち着くような物語だった。
0投稿日: 2025.04.25
powered by ブクログ古風な言い回しや 特定の街並みを行き交ったり 気持ちの良い登場人物など kojiさんが好きな 森見登美彦センセの 世界と繋がっているのでは? なんて、思わせるくらい 雰囲気が似てて 好き☺️
2投稿日: 2025.04.19
powered by ブクログうっかり電車で読んでしまって、初めは古風な語り口からいまいち入り込めなかったけどどんどん感情移入してしまって 電車で読んじゃダメなやつだった、最近涙腺弱くてボロボロになってしまった笑
0投稿日: 2025.04.13
powered by ブクログ良かった。 仕事の昼休みに読み、危うく涙しそうになった。 安曇さんの手紙は展開としてはベタだが、それでも良い。 非常に読みやすく、すぐに読み終わる。 なんだか、もっと読んでいたい気分になる。 続編も引き続き読みたい。
1投稿日: 2025.04.07
powered by ブクログこの小説の主題は何かを考えたところ、勿論人の死に対しての、宿命性と周囲のありようというところが見え隠れするところだが、サブタイトルとしては逼迫する地方医療と人材不足か。 24時間、365日対応の本庄病院内科医の栗原一止を通しての病院激務を説明する。 そしてこの作者の好みなのであろうか主役をして夏目漱石の影響を受けたとして、古文的な話し方といい、登場人物の渾名のつけ方も大狸先生、男爵、学士なども坊ちゃんかとツッコミを入れたくなる。 医療系小説にしては説明すぎず、サラッとした文体であり、少し主役の住む御嶽荘の個性的な面々の設定はありなのである(個人的には御嶽荘の話しのところは好みである)が、あまりにサラッとしているためか、生命を取り扱っている題材にしては重さを感じない。計算してそうしているのか、もう少し何処か踏み込みが欲しくなるのは自分だけだろうか。
3投稿日: 2025.03.25
powered by ブクログ再読。 主人公で内科医の一止が、漱石フリークな故に話し言葉がちょっと変わっているが、優しいお話しでした。
2投稿日: 2025.03.22
powered by ブクログ映画化される前に読んだ時はそれほどはまらなかったのだけれど、久しぶりに続きを読んだらすごく沁みて、一巻から読み直しています。 大切な人を亡くす痛みを知ると、一止先生やその周りの人たちの良さがまだじわじわとわかってくるのだなと思いました。
2投稿日: 2025.03.19
powered by ブクログ一止が古めかしい言葉で話をするのが、いまいち受け入れられなかった。その設定には意味があるのだろうか。妻のハルさんも、男性の理想のなかにしか存在しない幻の女性では?と思った。 しかし患者の最期に際し、医師としての役割と、患者個人の想いや願いを大切に思う気持ちとの矛盾に苦しむ描写には心揺さぶれるものがあった。夏川さん作品は【スピノザの診察室】で初めて出会い、静かながら深い感動があり、逆流して本書を読んでみた。冒頭に書いた部分について不思議さを感じてしまうものの、根底にながれている生死に向き合う医師の答えのない哲学的な思想に出会えた。
1投稿日: 2025.03.08
powered by ブクログ再読。 「24時間、365日対応」の病院で働く若い医師栗原一止の物語。読み終わった後の心地よさが忘れられない一冊。櫻井翔さんや宮﨑あおいさんの映画版もよかった。私の好きな松本が舞台になっていることもあり、何度でも読みたくなる。 何と言っても主人公の栗原一止の古風な時代錯誤の話し方がおもしろい。「右顧左眄」(うこさべん)や「須臾(しゆゆ)」「挙措(きょそ)」「希死念慮(きしねんりょ)」「献酬(けんしゅう)」「恩寵(おんちょう)」など普段あまり見ないような難しい熟語も使われている。 慢性的医者不足の地方病院では、外科でも内科でも耳鼻科でも皮膚科でも、ひとりの「救急医」が診療を行わなければならない。しかもベテランの医者は少ないし、食事をとる暇もなく、昼も夜も眠れない。それを研修医たちの力を借りて、かろうじて乗り切っている。そういう厳しい状況の中で、自分のこれから進むべき道に悩みながらも患者さんのことを真剣に考え患者さんに寄り添って対応している一止の姿に感動した。 一止の細君であるハルの可愛らしさも、一止が住んでいる御嶽荘の住民である男爵と学士殿の個性的な面白さも、同僚の次郎や上司の大狸と古狐の思いやりも、安曇さんのやさしさも魅力的に描かれている。 学士殿の門出の場面、安曇さんが残した手紙を読む場面では思わず涙が出てきてしまった。 心温まるステキな物語で、手元に置いて何度でも読みたい一冊。 心に残った言葉 「一に止まると書いて、正しいという意味だなんて、この年になるまで知りませんでした。でもなんだかわかるような気がします。人は生きていると、前へ前へという気持ちばかり急いて、どんどん大切なものを置き去りにしていくものでしょう。本当に正しいことというのは、一番初めの場所にあるのかもしれませんね」(安曇さん) 長い人生だ。いずれまた道を見失い戸惑う時も来るであろう。右往左往して駆け回り、瑣事にとらわれて懊悩することもあるであろう。そんな時こそ、私は声を張り上げて叫ぶのである。 立ち止まり胸を張って槌を振り上げよ! 足下の土に無心に鑿(のみ)をくわえよ! 慌てずともよい。 答えはいつもそこにある。 一に止まると書いて〝正しい〟と読むではないか。
31投稿日: 2025.02.20
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
娘が研修医1年目の彼と結婚したのを機に読んでみました。医者という職業の大変さや凄さがヒシヒシ伝わってきました。義理息子くんも夜勤があったり大変そうだけど、この素晴らしい仕事に誇りを持って、全うして欲しいです。一止の今後も気になるので、続編もこれから読みます。 御嶽荘の廊下が満開の桜になったところが震えるほど感動したのと、安曇さんが屋上で見たアルプスの山々を見たいので、映画も見てみようと思います。
1投稿日: 2025.02.05
powered by ブクログ私の中で最高の1冊。 人としての在り方を最も考えさせてくれた本です。 主人公の風変わりな語り口調で進んでゆく物語。 少し古風な文章に抵抗がなければ、とても読みやすい小説だと思います。 まず全てのキャラクターが濃い! 登場人物を覚えることが苦手な私でも全登場人物を認知できました!笑 患者さん含めると多くの登場人物がいます。 それぞれの人間がそれぞれの意思を持って生きている、当たり前のことですがそれを更に強く実感させてくれました。 日々の仕事の中でたくさん考え、たくさん悩んでいる主人公を応援したい。 もっと感想を書きたいけれど、読み終わったあとの感情を表す言葉を私は知りません。 みんなに読んで欲しい本です。
2投稿日: 2025.02.01
powered by ブクログかなり昔に読んだもの。安曇さんのくだりは毎度号泣。実際に安曇さんに会ったことはないのにこういう患者さんなんだろうっていうのがリアルに伝わる。
5投稿日: 2025.01.17
powered by ブクログそういえばまだ読んでない と 今更感はあるけど 読みました。 おもしろい。文章も内容もテンポ良く 読みやすいし。ご自身の経験があるからこそ 書けたお話ですね。医療用語や病状名もすんなり読めました。 死という 余りにも重たい話でも真面目で朴訥で一生懸命な一止先生の対応で 暖かく感じられてしまうほど。第3話 月花の雪は思わず涙でした。 こんな先生が近くにいてくれたらと思うけど 患者さんの為に無理をしてしまう一止先生の身体が心配になってしまいました。
18投稿日: 2025.01.17
powered by ブクログ不治の病や、心の病を通して、生きる意味を考える。登場する人物の優しさに泣ける。 主人公の一止という名前が、とても素敵な意味の込められたものだと知る。苦しいときには、あれこれを手を尽くしてみるものだが、一度立ち止まって、今ある恵みを噛み締めることを忘れないようにしようと思う。 やっぱり医療っていいなぁ!
1投稿日: 2025.01.13
powered by ブクログ独特な語り口に最初は戸惑いましたが、それも不器用な一止をよく表していて、途中からはこの作品の良さになっていると思いました。 御嶽荘の仲間や職場の同僚たち、上司、そして何と言っても患者から愛されているのは医者冥利につきる。 優しい気持ちになれるシーンが多かったです。 細君のハルはどんな人なのだろう。
14投稿日: 2024.12.27
powered by ブクログ2009年、単行本出版。「今更、読みました」だけど。現役医師で32歳の時に、初めて書いた作品でコレかっ!?…って出来ですよね、今更ですが。「この著者の他の作品は?」と検索してみて、デビュー作だと知って驚愕。面白いし圧倒的だし、かと言って妙に重過ぎないし、リズムが良いが決して軽くない。立ったキャラが浮くことも無い。信じられないなぁ…。続刊、これから読みます。
2投稿日: 2024.12.18
powered by ブクログ強い信念のもとに医師として人間としての生き方を教えてくれているような本でした。 またしても素敵なシリーズものに出会ってしまった♪次も読むぞーて感じになった本です。
2投稿日: 2024.12.14
powered by ブクログ友人に借りた本、3冊目 ドラマなどで話題になっているので名前は知っていたけれど、読んだのは初めて 第二章で泣いた〜 病院の場面ではなくて、友人が故郷に帰るシーン 夏目漱石が愛読書という主人公の独特の語り口調も私は好きです
1投稿日: 2024.11.25
powered by ブクログちょっと他とは比べものにならないくらい思い入れがある本作。主人公の一止が「草枕」を擦り切れるほど読み込んでいるように、私は「神様のカルテ」をことある事に読み返しています。 今、留学先にいるのですが、お守りとしてどうしても肌身離さず持っておきたく、限りあるスーツケースの容量を割いてこの文庫本を連れてきました。苦しくなった時、自分の軸がブレそうな時、優しく力強く正してくれるのはいつも夏川作品です。私にとってバイブルのような作品です。
5投稿日: 2024.11.18
powered by ブクログ主人公栗原一止は地方で終末期の患者と真摯に向き合う心優しい医師。ちょっと変わり者ではあるものの、その純粋さと優しさが周囲の人々の心を救い、物語を豊かに彩ります。主人公が、不器用で生きにくさを感じる人々や、死を目の前にして孤独に苦しむ患者に寄り添う姿は美しく、「優しさの本当の価値」について深く考えさせられます。正解が見えない中で、思い悩みながらも前進する姿はとても綺麗で、この作品を読んで良かったと心から思いました。また、夏目漱石が好きな著者ではありますが、技巧を凝らした難しい文体ではなく軽やかな文体で書かれてますので、サクサク読めるのもポイントかと思いました。
5投稿日: 2024.11.14
powered by ブクログ主人公の独特な語り口で進んでいく話。 僻地医療で最前線で働く医師のリアルな現状あり、いろんなことが混じり合っていく。
4投稿日: 2024.10.12
powered by ブクログ松本に行ってみたくなる。 深志神社や松本城、アルプスが見たくなる。コーヒーが飲みたくなる。 こんな医師がいたらいいなぁ、と思う。
1投稿日: 2024.10.07
powered by ブクログこのレビューはネタバレを含みます。
夏川作品の読後に訪れる、 この温かく揺蕩うような心地が好き。 『本を守ろうとする猫の話』シリーズ、『スピノザ』に続く4冊目の夏川作品も相変わらずの傑作だった。 ここまで人の気持ちを心地よくできる作家さんを 夏川先生以外私は知らない。 イチ(一止)は、本庄病院で地域医療に密着し動き続ける医師。イチは大学医局から誘いを受けているが、自分が本庄病院の患者を置き去りにしてまで、医局の最新医術を学ぶべきなのか自問する。彼が最後に選んだ選択、そして患者さんを通して彼が成長していく姿に胸を打たれた。 また本作の見どころは登場人物にあるといっても過言でない。イチを支える細君ハル、イチの友人の男爵や学士殿、そして医者仲間…みんなイチを慮っていて、すごく優しい世界だったなぁ。 またイチやみんなに会いたい! p.151 学問を行うのに必要なもの(第二話 門出の桜) 「学問を行うのに必要なものは、気概であって学歴ではない。熱意であって体裁ではない。」 p.200 一に止まると書いて…(第三話 月下の雪) 「一に止まると書いて、正しいという意味だなんて、この年になるまで知りませんでした。でもなんだかわかるような気がします。人は生きていると、前へ前へという気持ちばかり急いて、どんどん大切なものを置き去りにしていくものでしょう。本当に正しいことというのは、一番初めの場所にあるのかもしれませんね」
1投稿日: 2024.09.01
powered by ブクログ人生とは何か、幸せとは何か、正しさとは何か、ひとつ進むごとに問い直すことが、人間らしい生き方なのだと思います。わたしも栗原先生のような医師になりたかった
2投稿日: 2024.08.21
powered by ブクログスピノザが良かったのでこの作者の他の作品ご読んでみたいと探したら、神様のカルテの作者だったことにびっくりした。そっかこの方だったのか。 普段は人に道を譲るような一止、でも信念だけは譲らない姿勢に感動した。 学士殿への言葉も、男爵の描いた桜の花道も、万歳も。これ以上の餞はない。誠意を持って生きれば、小さいけれどちゃんと前進するんだって信じられる。 幸せな涙が止まらない素敵な1冊でした。もっと早く読めばよかった!
9投稿日: 2024.08.15
powered by ブクログ良い話だった。草枕が好きな主人公だけあって、坊っちゃん風あだ名を持つ脇役がみんな個性があり面白い。それにしても、勤務医が忙しすぎるのは、患者側としては心配。80歳過ぎたら、若い医師の時間を奪うような過度な治療は断ろう
76投稿日: 2024.08.13
powered by ブクログちょっと?変人である栗原一止が内科医として勤務する病院は、24時間365日対応なので、とにかく忙しい。 そんな一止に母校の大学病院から誘いがかかる。 大学に戻って最先端の医学を学ぶか、それとも大学病院では診てもらえない死を前にした患者のために働くか。 悩む一止の周囲の人々、写真家の妻だったり、同僚の熊のような医師だったり、また死を前にした心優しい患者や看護師さんが個性豊か。 どのように最期を迎えるか、考えさせられた。
1投稿日: 2024.08.09
