【感想】脂肪と人類―渇望と嫌悪の歴史―(新潮選書)

イェンヌ・ダムベリ, 久山葉子 / 新潮選書
(5件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
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ブクログレビュー

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  • ととせひ

    ととせひ

    ●人類の味方にも敵にもなってきた「脂肪」について、人類にとって脂肪という存在がどのように受け入れられてきたのかの変遷を辿る。

    投稿日:2025.06.13

  • bqdqp016

    bqdqp016

    スウェーデン人で食文化を専門とするジャーナリストが、脂肪について書いた本。スウェーデンなど北欧を中心に脂肪に焦点を当てて、その考え方や食生活について歴史的に分析している。定量的ではないが、脂肪についての考え方の変遷が面白い。

    「原始の祖先たちは肉を目当てに狩りをしたわけではない。求めていたのは脂肪だ。脂肪は生きるために欠かせぬ存在、命そのものだった」p11
    「脂肪は栄養であると同時に、身体の一部でもある。目に見える豊かさ、そして権力の証。胴回りがでっぷりとしているのは富の象徴で、女性なら子を宿し育む余地を示したものだが、今では1キロ増えるごとに「我慢する知性を欠いた人」だと思われてしまう」p11
    「ロンドン下水道の「ホワイトチャペルの怪物」はその地区に多く並ぶレストランによって育まれた。130トンの巨大なファットバーグは62%が脂肪、19%が灰と塵、10%が水で、その他の9%にウェットティッシュが含まれていた。80トンの脂肪の約半分がパルミチン酸つまり調理した肉やバター、それにコンディショナーや保湿剤にも含まれる飽和脂肪酸だ。18%はオリーブオイルやアーモンドオイル、石鹸に含まれるオレイン酸だった」p19
    「(1856年、ロンドン大悪臭)窓の外を流れる悪臭の凄まじさに議会を招集できないほどだったのだ。「我々はこの地球上で遥かかなたの国々を植民地にし、インドも征服した。しかしテムズ川を浄化することはできない」。イラストレイテッド・ロンドン・ニュース新聞にはそんな文字が躍った」p20
    「重さにして1.5キロにも満たず、成人なら体重の数%にすぎないが、その脳が身体に必要なエネルギーの約1/4を消費しているのだ。脳の神経1グラム1グラムが筋肉の16倍のエネルギーを貪る」p23
    「人間は大人になってからも他の霊長類より脂肪を溜める能力が抜群に高く、平均的な体重の男性なら体脂肪が15〜20%で、女性の場合は30〜35%。このレベルを維持できるのはアザラシなど海に生息する哺乳類だけだ」p24
    「(デンマークのトランス脂肪酸の厳しい規制)デンマークでは1980年以降心血管疾患による死者が70%も減少していて、その傾向はまだ続いている。同じ傾向が他のEU諸国にもみられるが、デンマークは特に顕著だ」p143
    「地球上には食べられる植物が5万種以上存在するが、人間が食料としているのは数百種程度だ。その中でわずか15種類の作物が人類のエネルギー供給の90%を支えている。国際食料農業機関(FAO)によれば、米、トウモロコシ、小麦だけで今日の世界人口79億人の栄養の半分以上を担っているという」p150
    「私は本書を読んで、スーパーで売っているベーコンはもう食べたくないと思った。スウェーデンでもかつては家庭で豚を飼い、年に一度屠殺して余すところなく食していた。一匹解体するにも何日もかかる大仕事だが、そうやってできあがるラードやソーセージは今でいうところの「完全自家製のオーガニック」で、さぞ美味しかったことだろう(子供の頃に読んだ『大草原の小さな家』でもローラが年に一度豚のしっぽをあぶって食べるのを楽しみにしていたのが印象に残っている)」p222
    「今では定期的に農場に通うようになりラードやヘット、くん液や亜硝酸塩を使っていない本物のベーコン、穏やかに生きた豚や牛の各部位が常に冷凍庫にある。そんな美味しい肉を焼いて出た油は捨てずにとっておき、他の炒め物にも使っている。昔のスウェーデンの家庭のようにコンロの横に油脂を集める壺ならぬタッパーを常備しているのだ。なぜタッパーかというと、蓋をしておかないと飼い猫がやってきてぺろぺろ舐めてしまうから。スーパーで買った肉の油には興味を示さないのに、本物の肉の美味しさは猫にもよくわかるらしい」p223
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    投稿日:2025.05.05

  • kei1122

    kei1122

    このレビューはネタバレを含みます

    脂肪は命そのものだ。(P11,裏表紙)

    ポテチ大好き!ちょっと脂肪が健康のために気になるお年頃(50代)、なのでかなり面白かった。今は悪者にされることが多いけれど、脂肪がどれだけ人類に貢献してきたか…脂肪は大切、自制しつつ食べたい。

    著者はスウェーデンのジャーナリスト・作家。内容はスウェーデン、デンマーク、アメリカに関することが多い。日本に関してはほんの少し「縄文土器(脂肪が豊富な海産物を入れていた)」が取り上げられている。

    印象に残った内容の書き抜きと感想↓

    第1章
    2017年秋、ロンドンの下水道でホワイトチャペルの怪物ー下水道の脂肪を含んだウエットティッシュは鉄筋となり、長さ250メートル、重さ130トンの塊ーを退治していた。

    下水にこれだけの油。凄すぎる。

    第2章
    「そもそも私たちが人間になれたのも、油が決定的な役割を果たしたと主張する専門家もいる。」(P23)

    ・祖先がなにを食べていたのか(哺乳類の骨髄には脂肪がある)
    ・狩りで生きていた人々にとって赤身の肉は価値がなかった

    脂肪、美味しいよね

    第3章
    バターは神々の食べ物とされてきた。(P47)

    ・もともと乳製品は女性が働いて作っていた。
    ・乳製品に経済的関心が集まると男性が進出。
    ・免罪符には断食中にバターを食べるためのバター符があった。

    バター符には笑ってしまった

    第5章
    ・古代エジプトの家畜管理において豚は管理しづらく独立心や個人主義という抑圧すべきものの象徴として見なされた。暑く乾燥した土地では豚は自分の排せつ物を食べる傾向がある。
    ・給食に豚肉を出すべきかどうか、スウェーデン人なら豚肉を食べて当然(ユダヤ系とイスラム系は食べない)

    豚肉美味しいよね

    第6章
    ・20世紀になり新しい病気(動脈硬化など)が問題になりはじめる。
    ・デンマークで飽和脂肪酸の含量の割合で決まる脂肪税が導入されるが、食品会社の事務作業が増えたりシングルペアレントの経済的負担が増えたため廃止される。

    脂肪税、免罪符から変わっていない

    第7章
    ・1950年代キャノーラ油が開発される。
    ・地中海食の流行
    ・2010年代、ココナッツオイルが再評価される。
    ・アメリカにおける大豆ロビー活動による熱帯油脂(パームオイルなど)の敵対視。

    アメリカのロビー活動は多岐に渡る

    第8章
    ・カニバリズムの極致とも言える冒頭の芸術家による実験(自身(芸術家、著者ではない)の脂肪を調理に使って食べる)はさすがに引いた
    ・ダイエットのため低脂肪・脂肪カット→炭水化物を抜くに変化
    ・1957年、ダイエット本『祈りで痩せよう』、1976年『モアー・ジーザス、レス・ミー(もっとキリスト、私は少なく)』と『脂肪に対する神の答え:減らせ』が出版される。
    ・6世紀末、キリスト教では貪食は大罪だった。

    カニバリズム(しかも自分を食べる)はちょっと…。
    祈りで痩せられたらいいよね?

    第9章
    良いものを食べよう、ということでしょうか

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    投稿日:2025.03.26

  • kun92

    kun92

    かつて、脂肪は人間の重要なエネルギー源であった。
    獣を獲るのは、タンパク質の補充ではなく、脂肪を得るためであった。

    なるほどから始まったが、間も無く、何だっけモードに突入。

    チーズとバターの話。
    そこから、女性搾取になった。

    豚の話は宗教に。

    肥満の話は、女性蔑視に。

    最後は、美味しいよね、いい脂肪は。レシピはこれよって。
    結局いいのか悪いのか。何でもバランスよくねという結論みたいで、読んでる時はスイスイだったが、何を読んだのかさっぱり残らなかった次第で。

    ただあれだなあ、ケンタロウさんがレシピ本で、塊でないベーコンではなぜかうまくできないと書いてた記事があったら、あれ、多分、ベーコンじゃないからだなとは分かった。

    うちの嫁はんが作るベーコンは美味いよ。
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    投稿日:2025.02.27

  • Go Extreme

    Go Extreme

    脂肪の歴史的背景
    - 脂肪は古代から人間にとって重要な食材であり、宗教儀式においても神への奉納物とされていた。
    - 初期の人類は脂肪を多く含む動物由来の食品を摂取し、脳の発達に寄与したとされる。
    - 脂肪は常に美味しさの象徴であり、食文化の中で重要な位置を占めてきた。

    現代における脂肪の役割
    - 脂肪は単なるエネルギー源としてだけでなく、調理法や保存法にも大きな影響を与える。
    - 本書では、脂肪の種類や特性、健康への影響について詳細に述べられているが、特定の脂肪が健康に与える影響に関する結論は出されていない。
    - リスクや健康に対する心配にとらわれず、脂肪の多様な利用法や楽しむことの重要性が強調されている。

    栄養と健康
    - 現代の食事において、脂肪の摂取は健康に対する懸念と密接に関連している。
    - 植物性脂肪と動物性脂肪のバランスが重要で、必要な栄養素を確保するためには多様な脂肪源を取り入れることが推奨される。
    - 脂肪の摂取が糖尿病や心血管疾患に与える影響についての研究が紹介され、脂肪を適切に摂取することが健康維持に寄与するとされる。

    文化的側面
    - 食における脂肪の重要性は、国民の価値観や文化に深く根付いている。
    - 脂肪は家庭料理や地域の伝統料理において、独自の風味や食感を生み出す要素として重視される。

    料理における脂肪の利用
    - 脂肪は料理の風味や食感を豊かにするために不可欠であり、特にバターやオリーブオイルが多用される。
    - 本書の最後には、脂肪を使った美味しい料理についてのアドバイスや簡単なレシピが紹介されている。

    脂肪と持続可能性
    - 環境や持続可能な食材の選択に関する議論も行われており、脂肪の生産がどのように環境に影響を与えるかについての考察も含まれている。
    - 地域の食材や伝統的な製法を尊重し、持続可能な方法で脂肪を利用することの重要性が述べられている。

    結論
    本書は、脂肪に関する多様な視点を提供し、歴史的、文化的、栄養的な観点からその重要性を再認識させる内容で構成されている。脂肪は単なるエネルギー源ではなく、私たちの食生活に深く根付いた重要な要素であり、楽しむべきものであることが強調されている。
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    投稿日:2025.02.16

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