【感想】国萌ゆる 小説 原敬

平谷美樹 / 実業之日本社文庫
(3件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
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ブクログレビュー

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  • Ryohei

    Ryohei

     『柳は萌ゆる』から繋がる原敬の一生が描かれる本作は、若年期から死までを時系列に沿って丁寧に追っており、どこか吉村昭作品を思わせるようなリアリズムを感じさせる。賊軍とされた盛岡出身の原が、薩長閥に対する反発や複雑な感情を抱えつつも、国のトップへと上り詰めていく、その過程における原の心の動きが、この作品の大きな軸となっている。
     首相就任後も、原は護衛を嫌った。その姿勢には、先日読んだ『光陰の刃』の團琢磨の精神と通じ、国家と心中する覚悟がある。團は軍部の過激化によって暗殺されたが、原は民衆により暗殺された。この時代は民衆による爆破・放火・襲撃だらけ。当時の日本社会には、政治への不満が直接的な暴力に転じる素地があったということ、裏を返せば、現代のように民衆が制度を通じて声を上げられるようになったのは、原が掲げた四大綱領のひとつ、「教育」の成果だとも言える。
     興味深いのは、平民宰相と呼ばれた原が、終始一貫して普通選挙の導入には反対していた点である。平民の味方=特権の排除を目指した政治家だと思い込んでいた。今の感覚から見れば限定選挙は時代遅れに映るが、民衆の教育水準がまだ十分ではなかった当時、選挙権の売買や不正が横行することを考えると現実的判断であったことが理解できる。
     最後のシーンはとても印象的だった。『柳は萌ゆる』に登場する楢山佐渡の言葉を踏まえ、妻・浅が語る「ほら、ここにも、柳は萌えていますよ」という一言に、時代のうねりの中で生きた原の人生が静かに結ばれていく。静謐でありながら力強いラストだった。
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    投稿日:2025.05.19

  • kitarouchan

    kitarouchan

    侍の世界の終わりから国を開き未知の文化が怒涛のようにやって来た時代を駆け抜けた
    原敬と言う人物が心を持って目の前に現れた
    思ったより普通の人だと感じた
    良いところも悪いところも色々な面を持ち、少しだけ政治に向かう意識のある人

    当時から見て今の日本は成長しているのかな?
    政治の世界はまだまだ未熟に感じてしまう
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    投稿日:2025.02.19

  • オールマイティ

    オールマイティ

    正直言って原敬という人については、名前を聞いたことがある、という程度で、あまり興味がなかった。「平民宰相」と呼ばれたことは知っていたけど、どういう政治家だったかも知らなかった。この作品で、結構面白い(こういう表現は失礼かもしれないけど?)人物だったことが分かって、今まで「地味」だと思っていた人でも、深く知ってみると、意外と面白いと思った。続きを読む

    投稿日:2025.01.24

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