【感想】明暗(新潮文庫)

夏目漱石 / 新潮文庫
(73件のレビュー)

総合評価:

平均 4.0
22
25
11
5
0

ブクログレビュー

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  • ⭐white

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    「明暗」の題名は(意)。漱石が小説執筆中に芥川龍之介と久木正雄に示した漢詩のなかの語「禅家で用ひる熟字」と説明された「明暗双々」の解釈を中心に論議されてきた。たとえば小宮豊隆はいわゆる「則天去私」と結びつけて、「私の世界」とそれを超越した「天の世界」と明・暗と考え、禅語との関りに消極的な荒正人は、登場人物各自の立場や状況に応じた価値観の「明と暗の交錯」に題意を求めている。昼の世界と夜の世界、日常と非日常、現実と異界など、明と暗を分つ説は従来ささまざまだが、人間関係・因果関係に視覚的問題も加えて、見える(と思っている)ものと見えないものとの別を措定することも可能だろう。諸説それぞれに異同はあっても「其話を己は聞きたくないのだ。然し又非常に聞きたいのだ」39頁などの「Aであるとともに非Aでもある」という文型の頻出が示すように、矛盾対立する価値観の並立とそのたえざる反転が、小説世界を形成するについては、近年ほぼ共通の理念に達しつつある。なおこの小説は漱石の死によって未完に終わった。

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    投稿日:2025.04.20

  • 雷竜

    雷竜

     流石に漱石の小説は文学的だと感じる。心理描写がまるでドフトエフスキーのようだと思った。お延ぶの溌剌とした魅力とお清のしっとりとした魅力がよく描けている。自分だったらどちらに恋するのだろうかと考えたが、自分は津田と異なり、おのぶにはまって後悔するタイプなのだと思ったt続きを読む

    投稿日:2025.02.27

  • 1884380番目の読書家

    1884380番目の読書家

    このレビューはネタバレを含みます

    全体の中盤に差し掛かるまで「これはどういうお話なんだろうか?」というビジョンが掴めず、読み進めるのがやや苦痛だった。
    加えて主人公をはじめとする登場人物の言動に全く共感できなかった。

    だが、これが最期の執筆になるかもしれないという状況下でなにを書きたいのかと考えた結果にこの内容が出力された、ということを一歩引いた視点で冷静に見つめ直すと「夏目漱石」という人間の生きた価値観にこれほど触れられる作品はないと思う。

    それはそれとして、小林は家にお帰りください。

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    投稿日:2024.12.05

  • azuki1062

    azuki1062

    このレビューはネタバレを含みます

    漱石の死去により未完となった大作。

    勤め先の社長夫人の仲立ちで半年ほど前にお延と結婚し、平凡な毎日を送る津田由雄には、お延と知り合う前に将来を誓い合った清子という女性がいた。
    ある日突然津田を捨て、津田の友人・関に嫁いでいった清子が、一人温泉場に滞在していることを知った津田は、痔の手術後の湯治という名目のもと、密かに彼女の元へと向かった…。

    これまでの漱石の作品には似ていません。大上段に構えるでもなく、飾り過ぎない筆致で描かれる市井の人々の日常ですが、これが滅法おもしろい。
    一応、主人公は津田ではあるものの、彼も数ある登場人物たちの一人にすぎないという点で、かなり相対的に描かれています。
    そして、登場人物たちが、強烈な個性をぶつけ合う展開は、ドストエフスキーの小説を髣髴とさせるスリリングなもの。
    とりわけ、これまでの作品では恋愛の対象として対岸の存在だった女性たちが、いきいきと、饒舌を振るう様子が、先の予測を許しません。
    思うとおりにいかない他人の言動。そのしがらみに絡め取られた津田の葛藤が読者のそれとして迫り来る。漱石最後の小説にして、実は漱石の新境地ではないでしょうか。

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    投稿日:2024.07.28

  • 雅本棚

    雅本棚

    新婚の男には、忘れられない女がいた――。
    大正5年、漱石の死を以て連載終了。
    人間のエゴイズムの真髄に迫った、未完にして近代文学の最高峰。

    勤め先の社長夫人の仲立ちで現在の妻お延と結婚し、平凡な毎日を送る津田には、お延と知り合う前に将来を誓い合った清子という女性がいた。ある日突然津田を捨て、自分の友人に嫁いでいった清子が、一人温泉場に滞在していることを知った津田は、秘かに彼女の元へと向かった……。
    濃密な人間ドラマの中にエゴイズムのゆくすえを描いて、日本近代小説の最高峰となった漱石未完の絶筆。用語、時代背景などについての詳細な注解、解説を付す。
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    投稿日:2024.07.11

  • Taro

    Taro

    お互いのことを労りあっているようでいて、何処か無関心である。他者のことを考えているようでいて、自分のことを考えている。決して自分からは本音を言わず、腹の探り合いのような掛け合い。そのような人間模様が長々と、ある意味冗長に続き、そこから、やっと本音の部分が現れてくる。そのような、主人公の夢現と言えるような霧の中で生きているような心持ちがどうなるかであろうことの要因である、消え去ってしまった元恋人との掛け合いが最後の最後に現れる。その掛け合いの端緒において、絶筆となってしまう。気持ちは幻の旅館に取り残され、、続きを読む

    投稿日:2024.07.03

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