【感想】美少女フィギュアのお医者さんは青春を治せるか

芝宮青十, 万冬しま / 電撃文庫
(1件のレビュー)

総合評価:

平均 5.0
1
0
0
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • 渡鴉

    渡鴉

    「青春ってなんやァァァァッ!?」/ 吉野晴彦

    「青春とは人生の或る期間を言うのではなく心の様相を言うのだ。」/ サミュエル・ウルマン




     青春は、恋は、愛は、
     刹那か、永遠か。

     答えは当然__『  』に決まっている。





     ときめく胸キュンと情熱の物語に出会いたいあなたへ。

     何かに真剣に向き合って、つらい想いをしたあなたへ。

     心の処方箋として、この本を、
     どうか手に取って頂けましたら幸いです。

     




     ※
     以下、ネタバレを含みます。
     感想、兼、個人的雑記となります。
     時間の許す方のみ、お付き合いください。







    ・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー








     医療器具と美術の工具が同じ名前であったことや、ギリシャ神話と日本神話の親和性など、例え話がうまくて、とても読みやすいです。

     一方、基本は一人称ですし、治くんの言動が、長年続けてきてきた照れ隠しゆえか、若干キザなモノローグは目立ちます。とはいえそれも味わいで、むしろ好きな人はドッとはまれると思います。なんと言いましてもそもそも私が文学寄りのキャラクター小説が大好きなので、芝宮さんの文章は、スッと心に溶け込む読みやすさを覚えました。どこか、入間人間さん(安達としまむら)の雰囲気に似ている気がします。あだしまファンは必見!!

     歴史オタクの私から見ても楽しい作品でした。なんといっても、日本は任那加羅を通じて、大陸の文化とは交流がありますし、新羅に至っては、「新しい羅馬」と書く名前です。実際、ローマの装飾品が、数多く新羅に見られることからもそれは確実ですし、その時点で、日本人、秦氏(ユダヤ人)、ローマ、そして、ギリシャ(バルカン半島の人たち)と交流があったであろうことは十分に察せられるのです。※田中英道氏の著作等参照
     ギリシャの伝統であるオリンピックはとても友好的で、人が犠牲にならない競技でした。対してローマのコロッセオは、人が犠牲になることを娯楽とするようなものです。どちらかというと、現代の日本人が思い描く西洋とは、ローマ文明以降であり、私としましては、それ以前の、ギリシャの、ゆっくりとした、多神教を受け入れるような世界観の方が、日本人の八百万の神の思想に似合っていると考え、是非とも知ってもらいたいと日頃から思っておりました。そこなところ、セレーネさんと治くんの絆を通じて、日本とギリシャの似たところを描いてくれるこの物語は素晴らしいと思います。

     神話という大衆娯楽を形だったものが芸術と呼ばれるなら、フィギュアもまた、現代の芸術__この例えも見事でした。私が尊敬するブシロードさんも、短歌は現代のSNSの短文投稿と同じであり、浮世絵はインスタと例えてるのが、うまいなぁと思ったものでした。 
     私にとって、歴史は、遠い、意味のないことではなく、むしろ私たちとほとんど同じような感性を持った人たちの、「何か」と繋がれるような、とても楽しい学びだと思うのです。
     突き詰めて何かを学びたい、知りたい、そのために情熱を込めて生きるのがオタクなら、オタク諸君よ、青春に、虫になることに、自信を持っておくれと伝えたいです。
     なんといっても本作の治くんが、虫になること__治虫の名前になることで、物語が完結しているところも、まさに、漫画の神様、手塚治虫さんを連想させるものでしたから。ちょうど例に挙げた安達としまむらは、虫プロさんがアニメ化してくれたこともあり、サウンドトラックを聴きながら本作を読んでいた私としては、「おお、そうきたか!」と嬉しくなったものです。笑
     オタクのサブカルは堂々と自信を持っていいという根拠のひとつとして、もう一つご紹介したいのは、パンターフランチェスコさんの『実践アニメ療法』という本が素晴らしく、科学的事実にも明るい内容であったことが由来します。ぜひ一度、読んでみてくださいませ。

     かぐや姫の例え話も、天野羽衣の名前の由来も、歴史オタクとしては、いろいろ考えてしまいました。神武天皇と長髄彦が戦っていた理由に、かぐや姫の出生の根があるという仮説を知ってからは、これまで聞かされていた話のその先を、想像するようになりましたから。Toland Vlogさん等はその辺り、大変面白く解説されています。



     そして先日、『夏を待つぼくらと、宇宙飛行士の白骨死体』/ 篠谷巧 を読んでいたばかりなので、「青春」とは何かを、もう一度じっくり考えていたところ、本作のテーマはとても胸を打つものでした。まさにウルマンの如く、心の有様を指すことです。決して、冒険の字の如く、険しさを冒すことだけが正解ではないと私は思いますが、少なくとも、秩序に従うだけが、絶対ではないと__傷つくことを恐れない、向こうみずな勇気が、青春の心を作っていたと、それだけはハッキリと分かっています。

     自己犠牲を人に迫るのは良く在りません。
     本作にも、尊いはずの、ヒポクラテスの誓いを逆手に取って、私は病人なのだから、医者のお前は自己犠牲に尽くせと迫るのは間違いだったと記されています。
     とはいえども、自己犠牲が最大の愛情表現であることも事実。ときと場合を選ぶのなら、それをして悔やむことがないのなら、向こうみずな勇気とともに決断することも、また尊いと思います。

     つまりは他人の生き様に、無関係な人はどうこう言う必要はないということです。プロパガンダとは、資源のない国が、資源国に仕掛ける戦争の手段です。等身大の私たちにとって置き換えて考えてみましょう。大袈裟な嘘を吹聴する人がいて、それを信じる人が大勢居れば、たとえそれか嘘であっても、不利益を被った人は、追い詰められ、退くか、惨めな想いをしながら生きるより他になくなるのです。
     言い換えれば、いじめです。
    『嫉妬探偵の蛇谷さん』においても、同様の場面が描かれ、若者に限らず、自分の考えを、自分の不遇を慰めるために正当化したがる人というのは一定数おり、そうした人たちは、なまじ自分が考えることのできる人間だと思い込んでいるからこそ、騙されていることに気づかず、加害者に加担してしまうことが往々にしてあるのです。
     現時点で起きていることは全て、悲しいですし、悔しいことですが、真実は決して分からないのです。後から、公開情報や資料が残るだけです。だからこそ、過去に起きた事例を振り返り、人は少しずつ、間違えないように賢くなっていけるのだと私は信じます。上から眺めたら同じところをぐるぐる回る愚かな人類に見えても、横から眺めたら少しずつ上がっていく姿が見えるように。螺旋的成長こそ、DNAの姿で在り、歴史と、今と、未来とを繋いでいく、人の心の有様そのものだと思いです。まさしく、青春。

     本作の最後に、医者であることを辞めた月子さんの様子も、スッと心に響きました。日本の本来の医療は、『手当』です。薬事法によって、ロックフェラー医術以外は認めないとされた令和6年現時点の方が、よほど歪なのです。彼女がそれらから距離を置き、自分なりに、人の心を救う道を見つけられる日が来ることを願ってやみません。
     もちろん、秦氏をはじめとして、ユダヤ人の歴史を学んできた私としましては、ロックフェラー氏もまた、生き残りをかけて懸命に生きてきた人であり、尊敬するべき人であって、決して諸悪の根源だとか、そんな単純なことを申してはおりません。
     ですが、現時点での西洋医療では、点数性で在り、不健康な人が増えれば増えるほど儲かる仕組みなのです。『私たちは売りたくない!』/ チームK のように、ヒポクラテスの誓いに叛く医療には、疑問を投げかけるという勇気がある人たちが、真っ当に評価され、ごく普通に生きていけるように……一旦、一度、ロックフェラー医術の常識から離れ、東洋医療のおもしろさが、また世の中に知られていって欲しいと、心から祈ります。



     伝えたいことはまだまだあるのですが、なににおかれましても、作者の芝宮青十さんに深い感謝を。何かに真剣に向き合って傷ついた人が、もう一度勇気を抱くにふさわしい、すてきなお話だと思います。
     
     そ、し、て!

     セレーネさんが!

     かわいいすぎぃ!!

     もし2巻が発売されるのであれば、セレーネさんがモデルになって恥じらうところなど、読みたい場面がたくさん在ります。是非とも、芝宮さん、よろしくお願いいたします!電撃文庫企画部みなさんも、よろしくお願いいたします!


     財政破綻してものんびり生きる。
     まさに、財務真理教に囚われた令和の日本の心を救うような、ギリシャ神話の、何度でもやり直して、失敗を愛に変えていく、成長していける姿は、大変な参考になると思います。
     セレーネさん、癒し、すてき、ちゅき!!








     最後に、個人的脳内劇場の配役を紹介。



     治:内山昂輝 月子:佐倉綾音

     セレーネ:雨宮天 かぐや:洲崎綾

     クズ部長:水島大宙 




     主演は、ピンと来る人は来るでしょうか。
     Charlotteのお二人です。
     入間人間さんの面影がある作品、つまり、麻枝准作品も似合うという私の思い入れからお招きしました。

     セレーネさんは、天然かわいい人といえば雨宮さんという判断です。笑

     かぐやさんは、月島まりなさんの印象に由来します。どちらかというと八千代命ちゃん?(リリスパ)

     部長もCharlotteの高城くんから連想しています。

     他にも登場人物はいますが、適宜、想像で補っています。

     そういえば、ギリシャ多神教と日本の世界観が近しいといえば、創作に携わるうちに、口が開かないはずの相手と話が出来てしまうという、本作の、人形製造中に、フィギュアの精神と語り合う治くんの様子は印象的でした。あれこそ、縄文時代のテレパシーに似ている気がするのです。

     と、語り出すとまた長くなりますので、このあたりで。

     ここまで、私の散文にお付き合い頂き、ありがとうございます。

     あなたのこれからの毎日が、

     あかるく、やさしく、おだやかな、

     そんな日々になりますように。
    続きを読む

    投稿日:2024.11.26

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

セーフサーチ

  • アダルト(性表現・暴力表現)

  • グラビア

  • ボーイズラブジャンル

  • ティーンズラブジャンル

ONにしたコンテンツはトップや検索結果で表示されません

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。