中島岳志 / 新潮文庫 (4件のレビュー)
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tokyobay
内容的には朝日平吾について論じたものだが、著者の視点として加藤智弘との類似性から、相模原の植松聖や京アニの青葉真司、そして安倍元総理の山上徹也まで、同列に扱うのは少々雑に思える。
投稿日:2025.05.11
syuulou
寂しさというものがテロを起こさせるのか。どう見ても、本人が悪いと三者的には感じるが、本人はそんな気もないのだろう。 そんな中、文庫版あと書きで元首相銃撃に関して「社会を変えるには、こんな手があったか…」という声が書かれていた。恐ろしいベクトルだ。自分として、周りの人が少しでも良い状況でいられるようにつとめたい。続きを読む
投稿日:2023.04.27
やまたく
テロルの原点 安田善次郎暗殺事件 中島岳志 凄い本を読んでしまった。少なくとも2023年では暫定1位である。 個人的に、今年の年始にタモリが番組内で「2023年はどのような年になるのでしょうか」と…聴かれた際に、「新しい戦前になるのではないでしょうか」と発言したことが、ずっと印象に残っている。 そうした中で、今年に入ってから同じく中島岳志氏の『血盟団事件』、小島俊樹氏の『五・一五事件』、そして本書を手に取った。なぜなら、新しい戦前の起点をどこにするかということの参照点は、やはり私自身も安倍首相の銃撃事件にあり、1930年代のテロリズムの脅威と、この事件に重なりを見出さざるを得ない。 私自身、これらの3冊を読んだ感想としては、現在27歳の私と同年代もしくはそれより若い人々が、貧富の差に喘ぎ、社会の在り方を希求するがゆえに暴走してしまった結果として1930年代のテロリズムがあるというものである。 本書の文庫本あとがきには、私も共有する中島氏の確かな危機感を表した以下の文章がある。 テロやクーデターは、必ずや国家の治安維持的暴力を肥大化させる。だから、賢い方法ではない。しかし、むき出しの資本主義が人間の生存を脅かし、その実存までも揺るがすとき、社会の片隅から漏れ出した鬱屈が、テロリズムという凶行となって表出する。「自己であることの欲望」がそのまま暴力へと繋がってしまう。そして、そのような暴力を、社会が「世直し」ととらえるとき、悲劇は時代とともに加速していく。 私たちが、朝日平吾以降の歴史の顛末から学ぶべきことは、実は多い。(P244) だから、そんなテロが起きないように、社会を立て直していかなければならない。多くの人の居場所を作っていかなければならない。承認格差が是正されるような社会の在り方を構想し、実現を目指していかなくてはならない。「社会的包摂」や「地域社会の相互扶助」を本気で考えなければならない。(P245) 不幸にもテロが起きてしまったとき、私たちはもう一度、朝日平吾以降の歴史のプロセスに遡行して、現代社会を見つめなおす必要がある。朝日以降の社会が、テロの連鎖を生んでいったプロセスを直視し、その結果がいかなる悲劇を招いたかを知らなければならない。(P245) 私は、無論テロを賛美しないし、暴力に断固として反対する。しかしながら、本書で描かれ、苦悩し続ける朝日平吾や、血盟団事件の井上日召や小沼正が苦しんだ社会像もまた、凄惨なるものであり、中島氏の言うようなむき出しの資本主義によって、実存的不安をも持てない状況を現代に再現してはならない。サルトルによれば、我々人間は何をなすべきかの目的を持たずに生まれてくる。実存が本質に先立つのである。自分の本質はわからないが、近代では完全なる自由の下、あらゆる行動が自己責任として自分の前に降りかかる。そんな自由の刑の下で、私たちは葛藤しながらコミュニティや活動に心血を注ぐことで、自分自身の自由の刑を縮小しつつ、自身の本質を見出していく。 朝日平吾は、その性格も理由ではあるが、徹底的に家族やコミュニティから拒絶され続けてきた。また、労働者のための、世直しのための事業に関しても渋沢栄一を除き、多くの富裕層から拒絶された。逆恨みでこそあれ、朝日の実存を承認し、自己の本質を見出すプロセスが悉く頓挫している。拒絶され続けた結果、彼の計画は誇大的となり、虚しい妄想と化していく。映画でホアキン・フェニックスが演じたJOKERそのものであろう。社会はますます混迷を深め、新たな戦前の岐路に立っている。 朝日とJOKERは自分の周囲から徹底的に見放され、凶行に走った。そのプロセスを再現させてしまうのでは、私たちが歴史を学ぶ意味がない。 これは三島が『文化防衛論』でもは話していることだが、人間は徹底的に怖いものである。自分自身への恐怖、他者に内在するどう猛さへの恐怖、これらが社会を成り立たせる。社会に総取りはない。社会は人間に内在する凶暴性にもっと関心を向けるべきであろう。そんなことを学んだ本である。続きを読む
投稿日:2023.03.27
takeshishimizu
いまでいうと空気が読めないとか、コミュニケーション能力が低いとか、そういう感じの青年だったのだろうか。志は高いような気がするが、根回しができたりするようなタイプではなかった。体当たりで行って、うまくい…かなくて鬱憤を募らせていく。それを、世の中のせいだと言って良いのだろうか。朝日平吾、そんな名前は聞いたことなかった。1921年、安田善次郎が殺される。被害者の名前も知らない。その事件のすぐ後に原敬が殺される。テロの連鎖が始まるのだ。そして、若者たちの思いとは逆に、次第に国家権力が強くなっていく。著者はその状況を今の世の中と照らし合わせている。科学技術などが進んで行ったとしても、人間の脳がそれほど変わらなければ、また同じようなことをくり返すのだろう。ならば、歴史をひもといてそこから打開策のヒントを見つけていくしかない。私が本書を読んでなんだかいやな気持になったのは、朝日が事件を起こしてその場ですぐに自死を遂げた後、世の中が朝日を持ち上げる方向に動いて行くことだ。北一輝がどんな思いだったか分からないが、生きている間は見向きもしなかった人物なのに、死後、自分の考えを世に広めるために利用しているようにも思える。その潔い死に方が評価されたということだろう。そういう意味では何だか三島につながるような気もする。三島の小説の中にも、この事件をモチーフにしたものがあっただろうか。それと、本書に少しだけ登場した辻潤の名前は知っていた。伊藤野枝のドラマを見たからである。そこから、時代の雰囲気を知ることはできた。続きを読む
投稿日:2023.02.26
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