【感想】伊藤忠

野地秩嘉 / ダイヤモンド社
(11件のレビュー)

総合評価:

平均 3.5
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5
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ブクログレビュー

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  • NAMI

    NAMI

    伊藤忠の社史について書かれた本でした。
    伊藤忠がなぜ商社としてトップに躍り出たのか、そこには人を大切にしてきた歴史があります。
    私の上司が常々「商社(卸業)は情報力と開発力が勝負なんだ」と言ってることに通じます。
    自身で勉強することは当たり前でそこをカバー
    できない部分を会社がフォローしていくことが
    大切だと感じました。
    トップが会社を細かく様子見しているからこそ
    発言に説得力が出てくるので、社員はより一層
    やる気が出てきます。
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    投稿日:2024.03.23

  • きのP

    きのP

    伊藤忠の社史のような1冊。
    「近江商人」というルーツから、繊維商社、アイデアによる「発明ではなく発見」のイノベーション、トレーディングから事業投資へのシフトチェンジなどなど、伊藤忠が大きくなっていった歴史について書かれた本でした。
    財閥商社と違って資本力が決定的に足りていない分、仕入れやアイデアなどで発展を遂げた伊藤忠は、本当にビジネス力のある企業だと思う。
    元社長の丹羽宇一郎氏の書籍は何冊か読んだが、バイタリティ溢れる企業のイメージが強い。
    「か・け・ふ」の理論については、伊藤忠に限らずどの企業においても大切にすべきマインドだなと読んでて思いました。

    冒頭に書いたように、伊藤忠の社史というかどのように発展してきたかについて書かれた1冊なので、自身に応用できるような参考になる箇所は少ないように感じたが、1企業がどのように発展してきたかという読み物としては非常に面白かったです。


    【抜粋】
    1.ルーツは「近江から来た商人たち」
    近江商人とは、近江に本宅を置き、他国へ行生して歩いた商人の総称で、大阪商人、伊勢商人とならぶ日本3大商人の1つ。
    ただ、忠兵衛は小売ではなく、持ち下り(卸売り出張販売)で起業した。
    そうすることで、広い世界を見ることができる。

    2.商社の役割とは、時代を肌で感じて、伸びていく分野を見つけ、そこで商売を考えることだ。
    工場を作ったり、新製品を開発するような金がかかる事はメーカーに任せて、仕入れを手伝ったり、情報集めたり、資金の手当てをする。必要とあれば少しは投資もする。
    主体的にではなく、影のように寄り添って、一緒に成長していくことが商社のビジネススタイルだ。

    3.商社の発展の原動力はマーケットインとイニシアチブ
    承認はマーケットインが大切だ。要はご用聞きでなくてはいかん。プロダクトアウトの思想じゃダメ、自分の持っている商品を売るだけの商社は大きくならない。

    もう一つ大切なのが、イニシアチブを取ること。
    メーカーの販売代理店ではいけない。メーカーの言いなりではいけない。とにかく商流のイニシアチブを取る。
    要するに、商社が主導権を握ること。企画でも強力な製品でも良い。それを考えるのが商社の人間である。

    4.「か、け、ふ」について
    「稼ぐ」は営業して儲けること。
    「削る」は無駄を省くこと。経費削減だけでなく、時間と仕事の無駄をへらす。
    「防ぐ」は不測の事態になっても大丈夫なように日頃から仕事をチェックすること。
    細かく見ることで、事態が急変した時のダメージを減らす前準備を行い、常に最悪のケースを予想しながら準備を整えて毎日働く。
    伊藤忠は削ることより防ぐことに力を入れている。



    【引用】
    伊藤忠 財閥系を超えた最強商人


    業界における伊藤忠の評価
    「関西発の繊維商社」
    「万年業界4位」
    「元気のいいトップが出てくる会社だが、今ひとつ品がない

    p9
    ・「か・け・ふ」
    「利益を稼ぐ、無駄を削る、損を防ぐ」の頭文字を掲げている。
    彼が信奉する近江商人の商いの原則。


    p15
    資源を扱っていれば大きな金額の商売ができる。それに比べると、繊維・食料等で出る利益は、手間がかかる割には少ない。
    そのため財閥系商社は非資源に軸足を移さなくてはならないと思っていても、現実にはなかなか体が動かないのである。
    伊藤忠は非資源分野にいて小さな利益集めるための知恵を磨いてきた。それが環境の変化でトップに躍り出たのである。


    p17
    ・残業禁止とフレックスタイムの撤廃
    会社と言うのは人間の力を結集すること。
    モチベーションを上げるためにも残業を禁止し、会議の書類の煩雑さをなくし、フレックスタイムをなくした。
    フレックスタイムを続けると、出社と退勤が遅くなり、自宅に戻るのが夜遅くなるので、家庭不和のもとになるため。また健康にも良くない。


    p26
    ・プロダクトアウトではなくマーケットインで考えろ
    「持ち下だり」とは客の要望に答えなくてはならないマーケット意味の業態で、しかも時代の急変にも対応することが可能なそれだ。
    逆に、時代の変化を察知して、自ら変わることができなければ存続できない業態とも言える。


    p35
    ・近江から来た商人たち
    近江商人とは、近江に本宅を置き、他国へ行生して歩いた商人の総称で、大阪商人、伊勢商人とならぶ日本3大商人の1つ。
    ただ、忠兵衛は小売ではなく、持ち下り(卸売り出張販売)で起業した。
    そうすることで、広い世界を見ることができる。


    p71
    大戦景気は長くは続かなかった。
    戦争が終わり、ヨーロッパ諸国の生産力が回復してくると、日本の輸出は後退し、貿易収支は輸入超過に転じていく。
    忠兵衛は、「大正9年以降の苦しみは言語に絶する」と社史で述べている。その後も恐慌が続く。
    1923年の「震災恐慌」、27年の「金融恐慌」、そして30年の「昭和恐慌」である。
    第一次大戦中から終結の年までは景気が良かったが、その後、日本経済は相次ぐ恐慌に疲弊したのであった。


    p96
    伊藤忠の長い歴史の中で最も功績があるトップは誰かと問われたら、2代目の伊藤忠兵衛だ。
    初代は会社を作った。だが、それはまだ個人商店の規模だった。2代目個人商店を会社にして戦前、日本郵政の企業グループにしている。
    戦後の経営者たちも会社を伸ばしているけれど、それは高度成長という良き時代に会社を適応させたからこその功績だ。
    2代目忠兵衛は、戦前の4つの恐慌を乗り越え、さらに敗戦でも会社をつぶしていない。企業活動が困難だった時代を乗り越えて、しかも呉羽紡績と言うベンチャー企業を作った。


    p110
    商社の役割とは、時代を肌で感じて、伸びていく分野を見つけ、そこで商売を考えることだ。
    工場を作ったり、新製品を開発するような金がかかる事はメーカーに任せて、仕入れを手伝ったり、情報集めたり、資金の手当てをする。必要とあれば少しは投資もする。
    主体的にではなく、影のように寄り添って、一緒に成長していくことが商社のビジネススタイルだ。


    p115
    戦後、軍隊がなくなって、公的機関や民間企業に色を求めた人数は多い。
    敗戦時、陸軍と海軍にいた人の数は約7,19万人。こうした人々が国内で職を探して送って行かなくてはならなかった。
    戦前であれば、陸軍学校等を出たばかりのエリートが民間企業に入ることなどなかった。元軍人たちが戦後自分たちが学んだ技術やシステムを伸び盛りの民間企業に伝えた。
    だが元軍人と言う肩書きが彼らを運命の存在にした。賞賛されることなく、消えていったのだ。


    p122
    ・「不毛地帯」のモデル?瀬島龍三の役目


    p141
    三菱商事の先見性、営業力、実行力は同業他社よりも格段に抜きんでている。
    ある時期から化石燃料の未来図を考えて、LNGに重点を置いた。
    この場合のイニシアチブは先見性だ。ライバル商社よりも早く未来の商品を見つけて、それを空きたのである。
    イニシアチブを取るとは同業他社が踏み込んでこない領域に陣地を築くことだ。そして、いちど陣地を築いたとしても、商品には寿命がある。
    商社の人間はホイールを回し続けて、次の時代に通用するイニシアチブが取れる商品を見つけて来なくてはならない。


    p175
    不景気なのに物価は上昇するという「スタグフレーション」


    p207
    帰国した岡藤は次の仕事に着手した。他社が追随してくる事は分かっていた。生地にブランドネームをつければいいだけだから、真似しようと思えばどこの商社もやることができる。
    サンローランを当てたからといって、そこで踏みとどまっていてはイニシアチブを取ることができない。他社が参入してこないように障壁を設け、そして先手を打って多くのブランドを糾合した。

    次々とアイディアを生み出す発想力と、細かいところまで詰める慎重な性格が相まったからこそ、できたことだった。


    p209
    ・発明ではなく発見によるイノベーション
    岡藤が行ったイノベーションとは、新商品の開発ではなかった。
    彼は新しい市場を見つけて、他社の追随を許さない圧倒的なシェアを築いたのである。
    商人の仕事は何かを、誰に言われるまでもなく、知っていたのだろう。


    p209
    ・商社の発展の原動力はマーケットインとイニシアチブ
    承認はマーケットインが大切だ。要はご用聞きでなくてはいかん。プロダクトアウトの思想じゃダメ、自分の持っている商品を売るだけの商社は大きくならない。

    もう一つ大切なのが、イニシアチブを取ること。
    メーカーの販売代理店ではいけない。メーカーの言いなりではいけない。とにかく商流のイニシアチブを取る。
    要するに、商社が主導権を握ること。企画でも強力な製品でも良い。それを考えるのが商社の人間である。


    p223
    ・トレーディングから事業投資に
    かつて商社のファンクションは何かと言えば、物品を取り扱って仲介し、収益を上げると言うトレーディング(貿易)の事でした。
    ところが90年代の「勝者冬の時代」と言われ「商社不要論「が語られた中で、会社の全部または1部に投資して成長を助ける「事業投資」によって収益を得るようになっていった。


    p286
    ・「か、け、ふ」について
    「稼ぐ」は営業して儲けること。
    「削る」は無駄を省くこと。経費削減だけでなく、時間と仕事の無駄をへらす。
    「防ぐ」は不測の事態になっても大丈夫なように日頃から仕事をチェックすること。
    細かく見ることで、事態が急変した時のダメージを減らす前準備を行い、常に最悪のケースを予想しながら準備を整えて毎日働く。
    伊藤忠は削ることより防ぐことに力を入れている。
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    投稿日:2024.01.18

  • 棚田 弘一

    棚田 弘一

    かつての大阪の繊維商社からスタートした大手総合商社の一角である伊藤忠商事を、初代伊藤忠兵衛から歴代の社長達の施策を中心にその歴史を追う。

    自分がいる業界と近く、グループ企業との取引もあるため身近な話題として読んだ。かつては「商社不要論」が出た時代もあったが、世の中の仕組みが複雑に細かくなっていく中で川上から川下までの情報に精通してイニシアチブを取れる会社(者)の必要性はさらに増していくだろう。続きを読む

    投稿日:2023.10.15

  • ゆうじ

    ゆうじ

    伊藤忠グループで働いているので、興味があり購入しました。
    伊藤忠の会長である岡藤正広さんは人情味があり、社員思いなのだと印象を受けました。
    伊藤忠商事の社員の方がご病気で入院している時も会社は支え続け、私にとって伊藤忠商事が1番いい会社ですという言葉を残し、他界。
    葬式では岡藤氏が号泣しており、亡くなった社員に対しこれからもっといい会社と言われるように決心される場面が特に印象に残りました。
    続きを読む

    投稿日:2023.09.13

  • 荒川自転車乃介

    荒川自転車乃介

    伊藤忠商事の歴史を振り返った本。
    良くも悪くも社史を読んでいるような印象。
    岡藤会長は個性的な方なので、もっと面白いものを期待したが、当然だがそれ以前の歴史も入っているので、さほど面白くなかった。

    投稿日:2023.09.07

  • ケイ

    ケイ

    購入した本。業界研究のため購入。

    岡藤新社長になって、初めて行った改革が地下鉄出口と会社入り口の間に屋根を設置することだった。細かいことの積み重ねが社員を前向きにし、業績を飛躍的に高めた。

    伊藤忠発祥の近江地方では識字率が高かった。結果として、偉大な商人を生んだ。


    伊藤忠兵衛の座右の銘は「商売は菩薩の業」
    倫理的かつ内省的に商売をすることを従業員員に求めた。

    戦後、公職追放で政治家や経営者から明治時代生まれがいなくなり、30代、40代が中心になった。それが戦後日本の躍進につながった。

    人生は運、根、鈍というが、「運と横着」が経営者にとっては必要。人格者では務まらない。

    伊藤忠パーソンに必要なのは、「イニシアチブを取れる商品を見つける能力」イニシアチブとは同業他社が踏み込んでこない領域に陣地を築くこと。

    経営とは「社員が自発的に考えること、自発的に動くこと。そのために環境を整えることが大事」

    戦地から戻って来た人の特徴として、ビジネスを通して日本を復興させ、世界一の国にするという気概があること。

    日本アクセスは伊藤忠の関連会社。

    商社の仕事は組み合わせでマーケットインが求められる。
    続きを読む

    投稿日:2023.06.17

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