ダニエル・E・リーバーマン, 中里京子 / 早川書房 (14件のレビュー)
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総合評価:
ABAKAHEMP
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「若さの泉」には汗が流れている
二足歩行の起源を辿っていくと、チンパンジーの高コストな歩行にぶち当たる。 ナックル歩行のみじめな非効率性は、森の奥深くで生活する分には問題にならない。 だが、急激な気候変動で熱帯雨林が縮小し、飛び…地の疎開林に分断されていくと、同じ量の食糧を得るため遠くまで遠征する必要に迫られることに。 木に登るメリットを損なわず、いかにして効率よく歩行するか。 その解決策が二足歩行だったというわけだ。 つまり、エネルギー的にコスパの悪いチンパンジーのナックル歩行が、あまりにもカロリーを大量に燃やす不経済な歩き方だったがゆえに、その代わりとしてよりエネルギー節約的な直立歩行が選ばれたということだ。 ウォーキングで減量できない理由として、ある仮説が立てられている。 それは人々の一日あたりの総エネルギー予算は決まっているため、努力して追加で余分に何時間もウォーキングしたとしても、体はそれを埋め合わせるように、安静時の代謝に使われるエネルギーを減らしてしまうため、結果として一日あたりの総カロリー消費量は変わらず、体重も減らないというもの。 身体活動が勝手に代謝を変化させて減量の努力を相殺してしまうといった説明は、まだ仮説の段階で未確定らしいが、とても腑に落ちる説明だった。 なぜウォーキングが必須の運動にならなかったのか? これほどコストのかからず、それでいて有益なものはないのに、なぜ人はほんの少しでも歩くのを嫌がるのだろう? 自然選択の結果なら、もっとウォーキング好きの人たちで溢れていないとおかしいではないか? その理由は、最近まで歩くことは運動ではなかったこと、さらには人はできるだけ歩かないように進化してきたため。 私たちの祖先は改めて一万歩のウォーキングをする必要はなかった。 なぜならそうする以上に日常生活でエネルギーを消費していたからだ。 限りあるエネルギー資源は生命維持と繁殖に回された。 今日では、有り余るエネルギー資源の使い道が見つからず、無理をして代替活動を探さねばならなくなった。 走行時に頭部を安定させる項靭帯の痕跡は、豚のような走らない動物だけでなく、ゴリラやチンパンジーや初期のヒト族にもなかった。 しかし人類の祖先であるホモ・エレクトスは、暑さの中でも長距離の狩りをするために、数百万年前に解剖学的構造を進化させた。 我々は「走るために生まれてきた」のだ。 「たとえ走るのが嫌いだとしても、あなたの体には、頭のてっぺんから足のつま先まで、長距離を効率的かつ効果的に走るための機能が備わっているのだ」 人間の脚にはアキレス腱のような長くて弾性のある腱が備わっているため、持久走に秀でている。 さらに他の動物の発汗よりも優れた身体の冷却システムを持っている。 体毛が薄くなり、体全体を巨大な濡れた舌に変えることで、大量の汗として蓄積した熱を素早く放出できるようになった。 また、馬は二足歩行の人間にはできないギャロップという高速走行が可能だが、短距離しか持続できない。 対して人間は、長距離を比較的速いスピードで走れるため、一般的な人間が馬を追い越すことも可能なのだ。 なんでそんな自然適応が働いたか? それはとりもなおさず肉が喰いたかったから。 弓や矢も発明されず、手元にめぼしい武器もないまま、獲物に近づくの自殺行為だ。 蹴られたり突かれたりすれば食事どころではなくなる。 それでもどうしても肉を手に入れたい。 ということで編み出されたのが、持久狩猟の戦法。 延々と追走してただ疲れさせるのではなく、獲物の体温を上げて、文字どおりオーバーヒートさせ立ち上がれなくさせるのだ。 それができければ危うく我々はベジタリアンになっているところだった。 「若さの泉」には汗が流れている。 さらに、その汗は年齢を重ねても流し続ける必要がある。 格言の通り「人は年を取るから遊ばなくなるのではない。人は遊ばなくなるから年を取るのだ」。 人間は運動するように進化してきたのではなく、必要に応じて体を動かすように進化してきた。 それでは、なぜそれほどまでに運動は有益なのだろうか。 運動が、徐々に進行する健康状態の悪化を遅らせたり、ときにはそれを押し戻したりする理由は何か? 結論としては身体活動が、老化を促進する悪材料を防いだり改善したりするから。 じゃあなぜ身体活動は、加齢に伴って蓄積される損傷の一部を修復する何十ものプロセスを活性化できるのか? それは運動が持つ回復力の素晴らしさにある。 運動はそれによって被ったダメージを修復するばかりか、運動していなかったときに蓄積されたダメージも修復してくれる。続きを読む
投稿日:2024.10.12
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naonaoponta
カロリー消費のために運動しなきゃって思ってたのに、無駄なカロリー消費を人間は避けるから運動するのが難しいっていうパラドックスがあるってことに全く気づいていませんでした。非常に面白かった。
投稿日:2024.10.29
本好きの社長
上巻に続き、運動が大切だという内容に納得。 人間はもともと運動しないように進化していきたのに、現代の生活は運動不足が老化を早めてしまうという矛盾。
投稿日:2024.03.21
mk04
このレビューはネタバレを含みます
運動に関して私たちが抱いている態度は神話に過ぎない “現代の産業化された運動に対するアプローチは、身体活動に関する進化論的・人類学的な視点を無視あるいは誤って解釈しており、誤解、過大評価、誤った論理、散見する誤り、そして許しがたい責任転嫁により損なわれているという事実を、論拠を挙げて明確にしたい。”(p.16) 著者は、文明が発達した現代社会において、人間が運動するのは正常なことであるという神話のもとで「私たちは運動をしたがってあたりまえだ」、「私たち人間は運動をするために生まれてきた」という、運動愛好者による誤った吹聴や誇張された表現も多く、そのことは運動しない人々に手を差し伸べないにもかかわらず運動しない人々を不当に避難する結果となっているとを指摘する。 運動に関する多くの言説は、矛盾する神話で溢れておりその多くが誤っているとした上で、 ・なぜ、運動が身体に影響を与えるのか ・なぜ、多くの人が運動に消極的なのか ・なぜ、身体を動かさないと老化が早まり病気になる可能性が高まるのか これらの疑問を、欧米人やアスリートに焦点を当てた従来の研究に加えて、進化論的、人類学的な視点から明らかにしていくという内容。 本書の結論をまとめると、人間の進化における必要性から、運動をすることには多くの利点があるが、人間にはエネルギーを節約したいがために運動を避ける本能があるため、それらを覆し運動することを選択する必要があるということだった。 人間は運動するために進化してきたという表現は明らかに誇張された表現であるとした上で、運動をすることで得られるメリットについても多く書かれていた。運動を避けるのは人間の本能であるということなので、運動することの利点をよく理解した上で、楽しいと思う運動を無理なく生活に取り入れて習慣にしていく必要があると思った。 以下に本書で紹介されている有酸素運動がもたらす多くの体へのポジティブな効果をメモしておく。 (有酸素運動の効果) ▫️心臓の機能を高める ・心臓の心室を刺激して、より大きく弾力的にする ・心臓の機能が改善し、血液を送り出しやすくする毛細血管が拡張し、細動脈や酸素交換の効率が良くなる ・悪玉コレステロールや中性脂肪を減らし、動脈を不純物の付着していない、詰まりのないものにする ▫️体内のほぼあらゆるシステムの成長と維持を促す ・筋繊維の成長を促す糖質を蓄えて脂肪燃焼能力を高める内臓脂肪を燃焼させ、糖分を利用する能力を向上させる ・多くのホルモンのレベルを有益に調整する ・骨を大きく高密度にする骨の修復とともに、他の結合組織を強化する免疫系を刺激して、一部の感染症を予防する能力を高める ▫️脳の機能を高める ・脳への血流を増加させ、脳細胞の成長、維持、機能を刺激する分子の生産を高める ・認知能力や気分を向上させる
投稿日:2024.03.04
echigonojizake
下巻は上巻をふまえた実践編という位置付け。 ウォーキングもランニングもしている私にとってはとてもありがたい内容だった。 「アクティブな祖父母仮説」と「コストのかかる修復仮説」は石器時代から現代まで…通用するのかも、と思うだけで知的な刺激になる。 運動量や病気との関わりは科学的に記述できる範囲で書いてある。かといって運動したくない人に強制はしてこない。「人間は運動するように進化してきたのではなく、必要に応じて体を動かすように進化してきた」のだから。 最後に気に入ったことば。 P223 体の使い方に関する哲学は、人生の生き方に関する哲学と同じくらい有用だと確信するようになった。続きを読む
投稿日:2024.01.09
kaz.f
運動はしないよりもしておいたほうがいいわ。 目新しい新事実は少ない。ランナーを小馬鹿にしたりマッチョを小馬鹿にしたりする内容を期待してたから消化不良。
投稿日:2023.09.08
あつみ
上巻で、人は動くものなの?等々、運動の神話を「それって、神話だよねー」とほぐしていきつつ、やっぱり、運動って大事たよね、いつからでも遅いことはないから、運動しようね、と落ち着いた(笑)。
投稿日:2023.07.09
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