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李琴峰 / 早川書房 (7件のレビュー)
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pedarun
【私たちを隔てているもの、通わせるもの】 著者の李琴美さんが小説を6冊お出しになった後に、まとめられたエッセイ。 彼女は、台湾で生まれ、大学卒業してから初めて日本を訪れたとのこと。 両言語で執筆活動…をされていて、翻訳もされていて、 言語に対する高い意識、自らのご経験があり、その点についてもエッセイでは多く触れられていた。 日本語に恋をしたようなもの、と書かれていたが、 強い思いがあって初めて、人は可能性を証明することができるのだと思ったり。 言語は、得意不得意があったりするけれど、 私は英語は話せるものの、母語の日本語お言語力に欠けるので、外国語も、ある程度まで習得できたとしても、今のままのモチベーションでは、うまく操れるまでにはなりえないな、と思ったりしている。 でも本当に、何事も、やると信じることで可能性が広がる。 透明な膜。李さんがそう表すのは、言語の壁のように頑強ではなく、ときに見えなかったり忘れてしまいがちだけれども実際には私たちを隔てている何か。 言語だけではなく、李さんはいろいろなカテゴリー化について語られている。 それは彼女自身が社会的に纏う様々な膜を言語を通して感じているとともに、言語を通してまたそれらを越境したいと願ってもいるからなのだと思う。 言語化することは、人と関わるうえで不可欠。他者について語る時、それは時に暴力的になってしまう可能性もはらむ。 どうやったらそれを避けられるか、避けることは無理かもしれない。 自分の経験していないことを理解することはできない。 シンパシー。前の本でも出てきたけれど。 李琴美さんのように、自分の纏うさまざまなアイデンティティを誇りに思い、社会認識とのギャップについて公に言語化、主張できる人はそう多くはなかったりする。 他者を理解していると思うのではなく、理解できないからこそ、敏感になること、想像し続けること、が、私にできることかなーと思ったり。 そして自分の纏うさまざまなアイデンティティについても意識してみるのも大事かなと思った。私たちはみんなが、そんな膜を持っているのだろうし。続きを読む
投稿日:2024.03.21
ねもてぃー
生を祝う を書いた李琴峰さんのエッセイ エッセイを読んだ経験が少ないが、作者さんとおしゃべりしているような感覚 特にマイノリティに関する言及が多く、自分とは異なる視点で世界を見つめているってことに気…づく それは小説を読んで思うこともあるが、それ以上にどんな背景や意図で書いているか、その当時の社会情勢はどのようなものか、作者の過去の遍歴や生き方はどのようなものか そう言った観点に触れることができるのがエッセイの良さかもしれない。 まだまだエッセイというジャンルを楽しめている気はしないが、いい経験をさせてもらった。 もっと、いろんな人の作品読んでみたいなーって思った。続きを読む
投稿日:2023.08.13
alouette18
台湾出身の芥川賞作家のエッセー。 芥川賞受賞作品も、お名前も知りませんでしたが、日本語教師の視点で面白いと思える箇所がいくつもありました。 なかでも、最初に覚えた仮名文字は片仮名で、その理由がポケ…モンだということ。外国籍児童にも、ポケモンの名前は片仮名学習に効果的でした。 漢字圏の出身者だから日本語習得に有利ということはない、というのは、多くの在住中国人の方を見てきて感じていることで、この方の日本語の自然さは、本人の言うように「不断な努力と格闘によって手に入れたもの」なのでしょう。 努力もせずに、外国語の習得をあきらめている人に読ませたい。続きを読む
投稿日:2023.03.12
まり
2022年12月 李琴峰さんの日本への愛や日本語への情熱がこもったエッセイ。政治的な主張もまっすぐ書いているのが著者らしいと思った。 映画の何かに寄稿したのであろう文章がいくつかあり、映画を見たくなる…。調べたが、単館系だったりで、今現在は見ることが難しい。でも気になる。 あと王谷晶さんとの対談がめちゃくちゃ良かった。続きを読む
投稿日:2023.01.03
hiro1548
日本語を母語としない作者の文章は、とても正統的に感じる。文法的により正しい言葉の選び方をしているのと、本作者の場合、圧倒的な漢籍の実力があるからだろうね。 多様性を重んじる彼女の言説は、偏見の塊のよう…な自分には、ちと痛い部分も多い。言われてみれば当たり前のことばかりだけどね。ただ性差を完全にフラットにするには、人類は生物学的に雌雄同体にでも進化しない限りはどうしようもないと思うけど(これを進化と言っていいのかな)。続きを読む
投稿日:2022.12.25
よた
このレビューはネタバレを含みます
「台湾の地方出身者であること、女性であること、性的招集者であること、外国人であること、非母語話者であることー多くのマイノリティ属性を否応なしに押し付けられている身として、私は生きているだけで常に様々な隔たりを感じている。(あとがきより)」 社会においてマイノリティであることで、差別的な扱いを受けたり、無意識に気づ付けられることがある。そして私たちの多くはそれがわかっているようでやはり分らぬままこの社会を生きている。 マジョリティになることもあればマイノリティになることもある。否、この発言こそが何か違和感を感じるところであるが、これ以上なんといえばいいのか、閉口すべきなのだろうか。 著者自身のことを「台湾で生まれ育ち、自らの意思で日本に移住した一個人」に過ぎないという。本人がおっしゃるのだからそれ以上でも以下でもない。この姿勢が作品にも表れており、力強い作品となっているのだろう。 私たちの周りには目には見えないが、自分と他者を隔てている、気を抜けば忘れてしまうまさに「透明な膜」がある。著者はその膜に穴をあけようと、言葉紡ぎ続けている。 これはなんという美しい行為なのだろう。自分で臨んだ生まれたわけでもないこの世界に生を受けて生きることは、とても苦しくつらいものだ。だからこそ生きることがこんなにも輝くのかもしれない。 著者の紡ぐ言葉はとても魅力的だ。その言葉が心に刺さり、喜怒哀楽様々な感情が残る、いい意味でへばりついてくる、そんなエネルギーを感じていた。今回このエッセイを読み、少し理解できたような気がしている。 李琴峰氏だからこその表現や物語がここにある。それは紛れもない事実であって、私はこれからもその言葉を楽しみに生きようと思う。
投稿日:2022.10.17
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