【感想】たまさか人形堂それから

津原泰水 / 創元推理文庫
(5件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • 枝乃

    枝乃

    このレビューはネタバレを含みます

    大好きなシリーズ。多くを語りすぎず、さりとて言葉足らずなわけでもない。天才肌でスランプに悩む富永くん、意外と厳しい面のある師村さん、仕事とライフワークの切り分けができている束前さん、ひと口に職人といっても人形との向き合い方はいろいろ。私から見ると八つ当たりに近い富永くんだが、それに腹を立てることなく、素直に受け止めて行動する澪さんが好き。束前さんとの距離感も心地良く、ずっと読んでいたかった。

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    投稿日:2023.01.08

  • nkwada

    nkwada

    人形の修理業を営む工房の女主人を主人公として、きほんマッタリとしたお話なのだが、ちょっとあわなかったかな。文体もしっくりと来なかったかも。人形に関するうんちくもあって、悪くはないんだけど登場人物に感情移入できず、戯曲形式の最終話は読み飛ばしてしまった。どうも前作があっての2巻目だったようで、それが理由かもしれない。続きを読む

    投稿日:2022.11.24

  • tokosan

    tokosan

    続編があるとわかっていたから前作は一気に読んでしまったけれど、本書もまたリカちゃんをはじめヒトと人形をめぐるエピソードや会話のひとつひとつが軽妙で楽しくてゆっくり読みたいのに気がつくと残りページがみるみる減ってる。懸案のあれこれ、どうしたかなと考えるとしみじみ悲しい。もっともっと新作を読みたかったです。
    著者による「跋」(文春文庫版)有り。
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    投稿日:2022.11.22

  • gabrielpetajirio

    gabrielpetajirio

    たまさか人形堂物語の続編。
    4つの連作短編と1つの戯曲。
    登場人物の人となりがわかってきたからか、前作よりも思い入れが深くなる。

    冨永君のスランプは、彼の内に秘めた悩みを反映させる深刻なものだったけど、そこから抜け出るきっかけとなった彼のやり方、その現場での澪の涙にホロリときた。
    師村さんが髪の伸びる市松人形の手業の奥深さに感じ入り自分に人生無駄ではなかったと涙するシーンは感動もの。
    そして澪と束前さん、口は悪いけど互いに憎からず思い合っているような関係性がなんだかいい。

    彼らのこれからをもっと見ていきたかったのに、もうそれが叶わないことが残念でならない。
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    投稿日:2022.10.22

  • fuku ※たまにレビューします

    fuku ※たまにレビューします

    「たまさか人形堂ものがたり」の続編。
    出版社を変えての新装版。書下ろしの「戯曲 まさかの人形館」も収録。

    澪が亡き祖母から引き継いだ〈玉阪人形堂〉は、人形の修理を主に請け負っている。職人は腕利き人形師の師村と人形マニアな冨永。
    前作では主に師村の過去に迫る話だったが、今回は冨永。
    遅刻も早退も長すぎる昼休憩もあり、店主の澪にも平気できつい言葉を投げつける傍若無人な冨永なのだが、今回は彼にスランプが訪れる。

    人形を作らない澪には『作り手にのしかかる重圧は、永久に分からない』と冨永に突きつけられた澪。少しでも彼らに寄り添おうと木目込み人形の教室に通うも、自分が思った以上に不器用であることが分かっただけだった。

    束前に『皮肉屋の坊や』と言われ、思い付きで作ったとしか思えない蛸の人形『八っつぁん』はバカ売れ、天性の才能と身勝手さと優しさとが同居した冨永の根っこにあるのはやはり繊細さだった。
    『八っつぁん』の売れ行きが陰ったのを機にスランプに陥った冨永は浮上出来るのか。
    こうした職人、特に生み出す作業をする者のスランプを脱するのは結局本人の力だと思うので澪にできることは見守るだけなのだが、それでも人形教室に通ってみたりピロシキを焼いて食べさせたり、彼が見たいと言う阿波人形を見せてあげようと奔走したり頑張っている。

    また同じくらい登場したのが束前。こちらも冨永に負けず劣らずの皮肉屋なのだが澪もまた負けずに上手いこと躱したりやり返したりしているので二人のやり取りが面白い。またなんだかんだで〈玉阪人形堂〉のために奔走してくれているのが嬉しい。

    新しいキャラクターとしては束前の同級生・香山リカ。知らなかったがリカちゃん人形のリカちゃんの名前は香山リカらしい。しかもリカちゃんと同じ、父はフランス人指揮者(リカちゃんパパは音楽家)、母親はファッションデザイナーという、キャラクターそのままの美人(リカちゃんとは違うタイプだが)。
    束前もリカちゃんには並々ならぬ思いがあるらしいが、二人の関係が読み進むうちに変わっていく。この辺りは津原さんらしくて面白い。

    そして、髪が伸びるという市松人形を持ってきたギタリスト・蒲生くん。見た目と喋り方はいかにもなロッカーだがお祖母ちゃん思いで優しい。

    それから『八っつぁん』を大量注文してくれた会社社長・神田八郎。最初は澪に強引に近づく厭らしいやり手の社長なのかと思ったら全く違っていい人だった。

    一方、師村の意外な面も出てきた。人形作り一筋で、そのために波瀾の人生になった人形一筋というイメージだったが、意外にもギターが趣味で(長らく触っていないらしいが)ジャズもカントリーも澪が理解できないタイプのジャンルの曲も好きらしい。
    それにしてもなぜ澪の周りにはジョン・スコフィールド好きがたくさんいるのか。

    興味深かったのは髪が伸びる市松人形を作ったのが〈玉阪人形堂〉にかつていた職人らしいということ。だがそれがどれほどの技術なのか師村にも分からない。そして澪の祖母が亡き今はそこに行き着く術はない。
    この辺りが今後明らかになってくれたらと思ったのだが、残念ながら先は読めない。

    いかにもな職人肌な師村と、天才肌タイプの冨永、不器用だが懸命に時折大胆に突き進む澪のトリオは良いバランスだし、そこに皮肉屋の束前や時折茶化しになのか励ましなのか分からないご隠居が絡んでくるのも楽しい。
    最後の書下ろし戯曲では冨永と束前という面白いコンビが見られた。

    今後もシリーズが続いてくれるのかと思っていたのでこの度の訃報は本当に残念。ご冥福をお祈りいたします。
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    投稿日:2022.10.22

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