【感想】本日、サービスデー

朱川湊人 / 光文社文庫
(26件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
3
12
9
0
0

ブクログレビュー

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  • tikuo

    tikuo

    毎日2時間あまりの通勤。同じ立ち食いそば屋で朝ごはんを食べて会社に向かう。うだつの上がらない営業課の課長として毎日夜遅くに帰る。そんなある日、一人で夕食を食べながら映画のビデオを見ていると「明日は一生に一度のサービスデーなの」という女性の声が聞こえてくる…。

    少し懐かしいノリの怪談メインのSF短編集。5本収録されているが、最初の3本がメインで、あと2本はちょっと毛色の異なる話。最後の三途の川はそこまで違わないか。

    表題作から、ちょっと長いもの、天使と悪魔との戦いに、人間が巻き込まれるという、星新一のショートショートのような話。ただ、オチは割とウェットでご都合主義的なところは有るが。

    2作目から、おそらくこの作者の本領発揮という感じで、昔ながらの幽霊の話を核とした怪談ベースの話。怪談を描くといきいきした雰囲気を感じるので、こちらが本物なのだろうと思う。ただ、いずれも最後はふわっと終わるんだな。

    星新一のドライなショートショートの感覚と、阿刀田高の怪談のちょっとどんよりウェットな感じの中間を行くような話で、短編として楽しむにはなかなか良いのではないかと思われる。電子書籍としても読みやすいだろう。

    ただ、もうちょっと無慈悲にどうしようもないバッドエンドなどが有っても良かった。

    余談。

    ちょくちょく、ちょっと昔の時事ネタを具体的に入れた、情景比喩のような表現が見られ、作者なりの照れかくしのようなものなのだろう。また、小ネタとして入れている部分も有るのだろう。ただ、たとえば1984年に、大学生がバイト先のおじさんからCDを借りるなど、実際には+2~3年は必要な部分が見られたり(CDが一般家庭に普及するのは1986~7年)、ネタに組み込むのに必死で、裏付けが取れていないのはちょっとね。
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    投稿日:2024.03.01

  • shukawabest

    shukawabest

    このレビューはネタバレを含みます

    ①は朱川作品の中で一番繰り返し読んでるかな。おめでたい、ご都合主義と言われようが自分には心地よいのだろう。④さえ、オチがつけられていれば五つ星でも良かったのだが・・・。オススメは①と⑤。
    ①本日、サービスデー
    家庭でも会社でも冴えない中年鶴ヶ崎が迎える奇妙な一日。天使も悪魔も出てきて。
    ②東京しあわせクラブ
    「事件」の証拠品を競いに集うマニア達。最高に悪趣味だが朱川さんしか書けない。
    ③あおぞら怪談
    昔、チャンピオンに連載されていた「手っちゃん」の女版。最後の台詞、味がある。
    ④気合入門
    マッカチン(アメリカザリガニ)に勝った!と叫んだ瞬間、中途半端さがとても残念。
    ⑤蒼い岸辺にて
    目覚めるとそこは早織の知らない青い世界。生きるのがしんどい人に捧げたい。

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    投稿日:2021.09.23

  • あーるてぃー

    あーるてぃー

    これまで読んできた朱川さんの作品とは少々毛並みが異なる。ユーモラスで、見方によっては児童文学のようでもある。『気合入門』は志賀直哉『小僧の神様』っぽい無邪気な雰囲気。
    正直、『東京しあわせクラブ』以外は私好みではなかったが、色々と著者の他の作品を読んでいる身としては、作風の幅広さに驚いた。続きを読む

    投稿日:2021.09.09

  • yueli

    yueli

    すべての人間に与えられた、どんな願いがいくつでもかなうサービスデー。ただし、その日は人生に1日だけ、普通は気づかぬままに終わるのだが、悪魔の囁きで自分のサービスデーを知ってしまったら、いったい何を願うのか。表題作ほかほか短編4つ。
    鶴ヶ崎の善人、小市民ぶりに和む。自分であればもっとうまく使って、あれをして、これをして、と思ったりもするが、結局は善人が得をするという花咲仕様。「東京しあわせクラブ」はうすら寒いく、正直下衆い。「あおぞら怪談」はいい話だが、皮肉が効いているし、よく考えると日下部さんはかなりきている。「気合入門」は掌編だが、幼い頃の経験って大きくなって意外と大きな影響があるんだよなと納得、「蒼い岸辺にて」はオチがみえみえでいまいち。
    総じていい話が多いはずなのだが、全体的にほの暗さを感じてしまった。何故かはわからないが。
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    投稿日:2018.10.24

  • キー

    キー

    このレビューはネタバレを含みます

    表題作である中編と、短編四編からなる作品集。
    とにかく表題作が感動的です。解説の北上次郎氏は、欧米の小説にたとえていましたが、自分は藤子・F・不二雄先生がいうところのSF(すこし・ふしぎ)作品だと思いましたよ。
    巻末の短編「蒼い岸辺にて」は藤子・F・不二雄作品と水木しげる作品をミックスさせたような感動作。
    「あおぞら怪談」も、なんとなく水木しげる作品を思わせます。
    「東京しあわせクラブ」は、猟奇的で変態な内容。「気合入門」は、夏の日に少年がザリガニ釣りをするというだけのノスタルジック・ストーリー。
    作品世界のノスタルジックな要素は少なめにしながら、昭和世代には藤子不二雄作品や水木しげる作品を夢中で読んでいた頃を思い出させて逆にノスタルジックな気分にさせられる作品集でしたよ。

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    投稿日:2017.07.10

  • 黒い☆安息日

    黒い☆安息日

    このレビューはネタバレを含みます

    手軽にさっくり読める、エエ意味にもワルい意味にも。
    アクがなさすぎるし詰めも甘いように感じるねんなぁ。手軽に読める半面、軽過ぎて歯ごたえない感じ。
    特に表題作は、朱川風味抑え過ぎじゃないかなぁ。もうちょっと個性出して練ればオモロい話になりそうな設定だとも思うんだけど。

    収録作で一番気に入ったのは気合入門、大げさに言うたらマーク・トウェインとかヘミングウェイ風味が感じられる青春譜。だけど、いかんせんこの短編も練り込みが足りてないように思える。もうちょっと練り込んだら書き込んだら、ひょっとすると大化けしそうなだけに残念。

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    投稿日:2016.09.30

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