【感想】ネイビーシールズ 特殊作戦に捧げた人生

ウィリアム・H・マクレイヴン, 伏見威蕃 / 早川書房
(5件のレビュー)

総合評価:

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  • 敗北を認めた人間が鐘を鳴らす

    これまで読んできた回顧録物の中でも、最上の部類に属す。
    「果敢に冒険するのでなければ、人生など何の価値もありません」とはヘレン・ケラーの言葉だが、米司令官まで昇りつめた著者の40年にわたる半生は、まさに波瀾万丈の冒険の連続。

    まず、自虐的に「空挺カエルちゃん」と呼ぶパラシュート降下訓練の際の事故が凄まじい。
    文字通り股裂き状態になって、腹と足の筋肉が骨から引きはがされるという大ケガから生還して来るだけでも凄いのだが、その後も七つの海を航海し、世界中の戦地で迫撃砲やロケット弾で攻撃されるなど、死線をくぐり抜ける。

    各国の大統領や王女など要人とも出会い、人類の最悪な部分も最良な部分にも直面してきた経験から導き出される教訓は、実に単純明快。
    自分が手にした成功はすべからく他人の手助けによるもので、自分より優れた人間は周りにあふれている。
    だから自分は出会った人びとと友情を育み、できるだけ数多くの人に手を貸す必要がある。
    SEALの苛酷な特殊訓練に打ち勝てたのだから、どんな難関にもへこたれないはずだ。
    絶対に鐘は鳴らさない。
    最後まで何があろうとやり抜くのだ、と。

    平和な状態にゆっくりひたれる人間になれそうもない骨の髄からの戦士だし、「世界を正しい姿にするために暴力をふるう荒くれ男」とも自認するのだが、本書で自身が関わった輝かしい戦歴の記述は極めて抑制的。
    それより、特殊訓練中に失敗し恐怖にすくむ部下の様子や、負傷兵を見舞った時の病室の一場面の方がよっぽど心印象的。
    爆弾で両手・両脚を失い、首や顔も傷だらけで息を呑むほどの重傷なのに、「ほかの何人かよりはずっとましです、まだ人生がいっぱい残ってます。うまくやっていきますよ」と語るマロッコとの出会いが忘れられないと語る。

    「人生で幸運に恵まれれば、自分の世界がさかさまにひっくりかえっても他人を感化できるような人間に出逢い、忘れられない瞬間を味わうことがあるものだ。人生のどんな困難をも乗り越える方法があることを、彼らは教えてくれる。人間の体の形がどんなふうでも、人間として完全でいられる方法を、彼らは見つけ出す。膝を突いて若きブレンダン・マロッコと顔を突き合わせたとき、私はそういう瞬間を味わっていた」。

    「私は病院で見舞った数百人の男女のことを思い起こした。彼らはひとり残らず、私におなじ質問をした。いつ部隊に戻れますか? 仲間のところへいつ戻れますか? どれほど肉体が傷ついていても、自分の友人、同僚、同志がいまも危険な戦地にいることを、彼らは考えずにはいられない。一度たりとも、兵士が人生の運命のめぐりあわせに愚痴をいうのを聞いたことはない。脚を失った兵士、視力を失った兵士、体が不自由になった兵士、二度とふつうの暮らしを営めなくなった兵士でも、けっして自分を惨めだとは思わない」。
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    投稿日:2022.04.21

ブクログレビュー

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  • あ

    ウィリアム・マグレイヴンの卒業スピーチの動画に影響を受けて、手に取った一冊。ネイビーシールズでの過酷な訓練や任務の中での生きる強さを感じられた。

    個人的に刺さった一節。
    「もっとも強く、もっとも速く、もっとも頭がいいものが成功するとは限らない。弱気になり、失敗し、よろめいても、屈しないで、起き上がって進み続けるものが勝利をものにする。」続きを読む

    投稿日:2023.12.29

  • Ghost Rider

    Ghost Rider

    書店で見つける。

    ネイビーシールズ出身、米軍特殊作戦群司令官として「キャプテン・フィリップス救出作戦」「ビンラディン殺害作戦」を指揮した人の回顧録。

    著者の子供時代のエピソードに始まり、SEALs訓練生、実際の作戦、前述の作戦時が生々しく語られている。

    著者によると政党の区別なく、ブッシュ大統領とオバマ大統領は尊敬に値し、偉大な人物だが、トランプ氏は違うらしい。
    続きを読む

    投稿日:2023.03.02

  • とりあえず

    とりあえず

    アメリカの元海軍大将の回顧録。出来事として、ソマリアの海賊やサダムフセインの捕獲、ビンラディンの暗殺などを当然知っているが、その背景や過程にどのような政治的な判断や作戦実行の難しさがあったのか、本書は教えてくれる。これまで知ることができなかったこうした側面をしっかりと描写されているところが、読み応えがあり、面白いと感じた。

    やはり、特にビンラディン暗殺のくだりは、読んでいてこちらにも緊張感が伝わってくる。あと、冒頭の高校時代のアメフトの監督が電話を掛けてくれたというエピソードも印象に残っている。何気ないエピソードだけれども、こうしたこと行動をとれる人間になりたいと思った。
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    投稿日:2022.06.25

  • しん

    しん

    高評価だったからどんなもんだろう、と読んだのだけど、すごく引き込まれた。
    書き方も上手く、詳細で、リアルで。少し値段はするけど、買って、読んで良かったって思えた。
    全然本読まない自分だけど、今年のOne of the bestには間違いなくなる。続きを読む

    投稿日:2022.03.17

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