【感想】ナチスと鉄道 共和国の崩壊から独ソ戦、敗亡まで

ばん澤歩 / NHK出版新書
(4件のレビュー)

総合評価:

平均 4.3
2
0
1
0
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • ハルモヤ

    ハルモヤ

    ナチスが鉄道を重視していなかった(それが現在の道路整備にも繋がっている)という導入から、しかし戦況が進むに従い大量輸送の手段として当然のごとく使われていく流れ。まるで貨物のように収容所に人を運んだのも、また鉄道。続きを読む

    投稿日:2022.03.25

  • komatta22232223

    komatta22232223

    同じ著者の「鉄道人とナチス」読んで「もっと全体的な話を読みたい」と思ってたところにそんな本出た。
    まぁ新書なんでちょっと内容薄いかな、ってところもあるけど、全体的には満足。装甲列車とか超広軌とかロマンやなぁ、、続きを読む

    投稿日:2022.03.14

  • Go Extreme

    Go Extreme

    第1章 前史・統一機関車―ドイツ国鉄の誕生‐一九一四/一九一八~二九年
    第2章 レール・ツェッペリンと「飛ぶハンブルク人」―一九三〇~三三・三四年
    第3章 〇五形機関車とSバーン―一九三四~三九年
    4章 「休戦の客車」と凍える車輛―一九三九~四一年
    第5章 戦時機関車と超広軌鉄道―一九四一~四三年
    第6章 装甲列車と「死への特別列車」―一九四三~四五年
    第7章 総統専用列車―ドイツ国鉄の崩壊‐一九四五年
    続きを読む

    投稿日:2022.02.09

  • DJ Charlie

    DJ Charlie

    読み始めてみると、興味尽きない話題が多く収められていて、ドンドン頁を繰ることになった…
    1933年から1945年の「ナチス政権のドイツ」という時代に関しては色々な事が語られていると思う。この12年程度の期間は、戦争の経過や、何か歪んだような思想が体現されようとしたような出来事や、他方で様々な技術開発のような達成も見受けられた、何か複雑な時代であったように見受けられる。そうした時代に関して「鉄道」という切口で語ろうとしているのが本書である。
    「鉄道」は、何か沿線の街々の雰囲気まで作ってしまうかのような、人々にとって存外に大きな存在かも知れないが、旅客や貨物を輸送して地域を興す力を有していると同時に、軍事的な利用も可能なモノ―更に、軍の作戦行動の準備に欠かせない輸送手段という性質さえ帯びる場合も在る…―で、また様々な“政策”を実現する手段ともなり得る存在で、「ナチス政権のドイツ」という複雑な時代にも色々な「語るべきこと」が在った。それらに正面から取り組もうとしているのが本書だ。或る意味では「“鉄道”という切口で語る欧州の戦争」という側面も在るが、それに留まらない内容も含んでいると思う。そして「やや意外?」というような事実に関する叙述も興味深かった。
    ナチス政権の時代、ドイツの鉄道は第1次大戦までの帝政下の鉄道が改編されて成立した公社<ライヒスバーン>が担っていた。
    帝政時代というのは、方々の“領邦”が帝国の傘下に入っていた訳で、鉄道はその“領邦”の単位で起って、延伸されて広く方々を結ぶようになって行った。そこで地方毎の独自性も強かったが、第1次大戦後は統一的に運行して収益を上げることや、輸送機関としての役目を果たし易くすることが図られた。
    こうした状況に加え、ドイツ社会の重荷になっていた「第1次大戦の賠償金」に関連して、鉄道の収益が或る種の担保物件のようになっていたという側面も在ったのだという。
    そんな中から「社会のナチス化」という動きの影響を鉄道も受けるが、他方で高速列車の開発というような技術的達成も遂げる。他方、軍事目的も含めた輸送力の強化ということに関しては様々な課題を抱えていた。そして鉄道輸送を運営する“体制”というようなことでも課題は多かったようだ。
    ここで「やや意外?」という事実に関する叙述が在った。ドイツは高速列車の開発というような技術的達成も遂げている「技術の国」というイメージが在る。が、鉄道車輛を連結する“連結器”に関しては、ソ連、米国、日本で使用されていた形式よりも旧い形式のモノが主流を占めていたのだという。
    現在の日本では、駅で旅客列車の連結(車輛を増結)という場面に時々出くわす場合が在る。連結される列車の側に、係員の誘導を受けるようにして連結する列車が接近して「ガチャン!」と自動で車輛同士が連結される。“自動連結”というモノだ。
    1930年代末から1940年代前半というような頃、ソ連や米国、更に日本ではこの“自動連結”が既に主流であった。対してドイツは、様々な国々の様々な路線を貨車が行き交う関係で、“自動連結”の以前の「係員がボルトを締めて連結」という方式が主流だったというのだ。
    この「やや意外?」だが、独ソ戦に意外に大きな影を落としたのだという。“自動連結”はより重い貨車をより多く連結出来るので、ソ連が用いた貨物列車はドイツが用いた貨物列車の倍以上の輸送能力が在ったというのだ。これが補給で苦しんだ原因の一部であるかもしれないのだという。
    更に鉄道を巡っては、ドイツの軌間とソ連の軌間が異なり、車輛が互いにそのまま乗入れられないという問題も戦局に影響を及ぼしたという。鉄道を壊す、敷設する、また壊すという鉄道を巡る戦いも展開し、また武装した車輛が軌道を往く“装甲列車”の戦いというモノも在った。
    加えてこの時代のドイツの鉄道を巡っては、ユダヤ人迫害に関する輸送や、占領地から強引に動員した労働者の輸送というような経過に関しても忘れるべきではない。
    こういうような内容で興味尽きない一冊になっている。
    以下、極々個人的な感想である。
    実は…未だに忘れていないのだが、小学生の頃に乗物の歴史というようなテーマの、外国のテレビ局が制作したらしいモノを吹き替えた番組が在って、かなり真剣に視た中に1930年代のドイツの機関車が登場していた。当時の最高速であった時速200㎞を超えたという、真っ赤な覆いを被った<05>という蒸気機関車だった。
    長じて―随分古い話しになってしまってはいるが…―欧州諸国を列車で巡ってみるということをしてみて、ドイツ各地も廻って、ニュルンベルグの博物館で<05>も間近に眺めて来たということが在った。自身の身長よりも大きな直径の、紅い塗装の巨大な動輪が廻って、蒸気を吹き出しながら、日本の現在の在来線の最高速である時速130㎞程度を超える200㎞で走ったという様子を想い描いたことが忘れられない。実はその少し後に英国の機関車が記録を塗り替えたというが、機関車のデザインとしてこのドイツの<05>が単純に好きなのだ…
    そういう「ドイツの鉄道!!!」とか「旧き善き時代??」という想いが在るので、本書を書店で眼に留めて興味が沸いたのだった。
    本書を読了して改めて思った。鉄道とは夢や憧れや希望や好き想い出、または豊かな暮らしを運ぶべきモノだ。怨念や差別や痛苦や絶望や死を運ぶべきモノではない…そして鉄道は、沿線に歓びをもたらすべきであって、怨嗟や悔恨をもたらすべきではない…
    第2次大戦期のドイツでは長く戦争を続けたために経済、人々の労働の体制も少し歪んでしまっていて、戦地に行った人達の穴を埋めようと多くの人達が、戦局が悪化して連日連夜の空爆が続く中で鉄道を護ろうと懸命であったという一面も在ったという。今日、当然のように恩恵を受けている多くの社会資本は、史上の困難な時期にそれらを懸命に護ろうとした人達による努力の御蔭で在るということも、記憶の隅に留めておくべきであろう。
    久し振りに「強く感じる何か」が在る読書となった。本書の著者に感謝!
    続きを読む

    投稿日:2021.12.07

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。