【感想】ゲッベルスと私――ナチ宣伝相秘書の独白

ブルンヒルデ・ポムゼル, トーレ・D.ハンゼン, 石田勇治, 森内薫, 赤坂桃子 / 紀伊國屋書店
(18件のレビュー)

総合評価:

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  • コルベット

    コルベット

    とても考えさせられました。ヒトラーの右腕としてナチ体制を牽引したゲッベルスの元秘書ポムゼルさんの独白。すべてを正直に語っていないと評されていますが、それが人間というもの。「なにも知らなかった。私に罪はない」という主張も、賛同とはいわずとも共感しました。「人間はその時点では深く考えない。無関心で目先のことしか考えない。」そのとおりだと思いました。念頭にあるのは自分の利益ばかりで、それ以外のことにはご都合主義をとってしまう。人間は、少なくとも個人はそんなに強くありません。では、どうすれば・・・?ひとつの解として、こうした歴史に学んで同じ轍を踏まないようにする、ということがあると思いました。人間の、自分たちの在り方について考える機会を与えてくれる、貴重な一冊です続きを読む

    投稿日:2022.12.19

  • macn

    macn

    政治、差別、社会への無関心がどのような結末になるかを教えてくれました。
    流されて言われた事をやるだけだととんでもないことになる可能性がありますね。

    投稿日:2022.09.14

  • ahddams

    ahddams

    先日の『祖父はアーモン・ゲート』に続き。
    本書と同名のドキュメンタリー映画(2016)も製作されており、その情報はTwitterに流れてきた関係で知った。

    繰り返される「あの頃は無頓着だった」「知らなかった」発言。彼女のことを傍観者と取る人もいるかもしれない。
    でも誰が彼女を咎められる?自分では何の思想も持っていない。祖国が世界から孤立する中で関心があるのは自分や家族の生活だけ。後は周囲の流れに沿ってしまえば忽ちこうなる。咎めるのではなくそう認めなきゃいけない。

    「私たち自身がみな、巨大な強制収容所の中にいたのよ」

    第一次世界大戦で国中が疲弊していてもポムゼルさん一家みたいに余裕のある人達はいた。今から見れば随分ささくれ立った家風だが、子供達に「お金がない」と言って聞かせる教育にはまだ同調できた。

    そして暗黒面を殆ど目にしないまま、深い意味も持たずに入党。それでも国営放送局時代がどこよりも眩しかった。ありえない程の優遇もしかり、本物の働く喜びを目一杯満喫している。
    これじゃ自分の世界しか見えないはず。周りの死イコール前線に派遣された職場のジャーナリスト達というのがそれをよく表している。

    副題に秘書とあるが厳密には速記タイピスト。そして実際は宣伝省の事務員みたいな業務で事件性の高い重要案件に携わる、或いはその関係の書類を見ることすら出来なかったという。おまけにゲッベルスとは数える程しか言葉を交わしていない。それでも彼の人間性は充分な程伝わってきた。(極め付けは演説の場面…)

    インタビューが終わっても、何も言わずその場を後にすることしか出来なかった。ショックだとか心を掻き乱されたとか感覚が一切残らず、只々放心状態。こういう人間から乗っ取られていくのだろうな。
    どこへ向かっているのか自問する日々が訪れると今は予感している。
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    投稿日:2022.01.27

  • はに

    はに

    ポムゼルの語りをほぼ喋ったままを書いているのか、ちょっとまどろっこしいのだが、それがかえって生々しい。
    宣伝局で俳優を見たとか、家具が素敵だったとか、無邪気に語っていたりする。そして「何も知らなかった」「仕方なかった」という言葉が何度も何度も出てくる。

    70年前の記憶にしてはとても鮮明だと思うが、執筆者の記述によると、思い違いや故意にあるいは無意識に語られていない部分もあったりするらしい。

    昨今の世界情勢との類似点を挙げたのち現代人への警告として、歴史的な反省と情報テクノロジーの発達を考えれば、ポムゼルの時代のように「知らなかった」では済まされないぞというメッセージが強く込められていた。
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    投稿日:2021.10.12

  • もん

    もん

    2021/10/12 読了

    読んでいて悲しくなってしまった。
    そしてそれと共に、現代社会に対して恐怖を覚えた。

    以下はあくまで私の主観である。
    この告白をした人はただ純粋に上司の命令に従い、勤務を全うしていただけだった。

    例えば、あなたは今の仕事が誰かを多少不幸にする必要のある仕事だとして、すぐにその仕事を辞められるだろうか?明日からの生活はどうなる?
    そういった不安から働き続けていた。

    さらに、この経験と自身の折り合いをつけるために70年間ほどかかった。語ったのは70年後だから。そんな彼女の人生がただ悲しかった…

    今、現代は当時と同様に「断絶」が始まっていると感じる。
    当時のドイツでは「ユダヤ人」が断絶対象であったが、今は「移民」や「難民」になっていないか?

    自分が不幸なことを第三者のせいにすれば、自己肯定感を損なわずに生きていられる。だがそれは争いの始まりだ。

    難しいが、人々が今の自分に満足をし、自分の不幸を他人のせいにしないで辛くても前向きに生きる、それが平和な世界への一歩ではないだろうか。
    続きを読む

    投稿日:2021.10.12

  • キョウヘイ

    キョウヘイ

    面白かった。凡庸な悪とか、虚飾だとか矛盾だとかナチが台頭した土壌だとかそういうのはいい。ポムゼルおばあちゃんは100歳超えて70年も昔のことを当時の感覚のまま話してくれてて、それがすごいと思う。この70年の間に、ナチがしたこと、自分が関わったゲッベルスがどんな人間だったか、おそらく自分が携わった仕事に最終的解決に関する内容があったであろうこと、それを当事者として嫌というほど思い知らされてると思う。それなのに当時の感覚を思い出して話せてるところが稀有だと思う。当時の私達は狂ってた、ひどかった、って言わないところが潔い。矛盾がある?あえて触れてない点がある?当たり前だろ人間なんだよ。少しの嘘があるにしろ、これが当時のドイツ人の感覚としては多数派だったんだろなと思った。ここから現代の情勢を顧みて教訓を、とかって最後の著者の意見は蛇足も蛇足だし普遍的な内容ではないと思った。ポムゼルの証言にこそ普遍性がある。そこが興味深かった。続きを読む

    投稿日:2021.03.11

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