最後の講義 完全版 福岡伸一

福岡伸一 / 主婦の友社
(16件のレビュー)

総合評価:

平均 3.7
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ブクログレビュー

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  • sagami246

    sagami246

    私は観たことはないが、「最後の講義」というNHKの番組があるそうだ。その番組の福岡伸一先生が担当した回を書籍化したのが本書。この講義で福岡先生が紹介されたのは、先生の他の著書でも紹介されている「動的平衡」という概念。

    私たちの身体は膨大の数の細胞で出来ているが、細胞レベルで考えると、私たちの身体は、日々入れ替わっている。入れ替わりの早い臓器であれば数日、筋肉だと2週間くらい、血液の細胞は数か月で入れ替わっている。身体全体として考えても、1年前の私と今日の私は個々の細胞レベルでは、すなわち、物質レベルでは、全く別人と考えても良い。私たちは、古い細胞を壊し、それを新しい細胞と入れ替えながら生物としての形を保っているのである。
    何故、生物はそのようなメカニズムを持っているのか。
    エントロピー増大の法則という法則がある。およそ宇宙の中の秩序のあるものは秩序がない方向にしか動かないという法則である。要するに宇宙の中では、秩序は常に崩壊する方向に動くということ。細胞も、細胞の集まりである生物もこの法則から逃れられない。今ある細胞は、そして、無数の細胞から成立している私たちの身体は、すなわち生命は、放っておくとエントロピー増大の法則の影響を受け、無秩序の方向に、すなわち、崩壊・死の方向に向かうわけである。生物はそれに対抗するために、細胞の1個1個を頑丈に壊れにくく作るのではなく、むしろ、自ら壊して新しいものに入れ替えるという方法をとっている。
    細胞という身体の部分が入れ替わって、何故、身体は機能を保持できるのか。例えば、脳細胞が、あるいは、脳神経細胞が入れ替わっているのに、私たちの記憶が保持されているのは何故か。福岡先生は、それを「相補性」という考え方で説明している。私たちの細胞は、身体中の細胞の関係性の中で成立しているという考え方だ。それはジグソーパズルのようなものである。ジグソーパズルのピースは、その上下左右との関係の中で初めて意味を持つというか、上下左右の関係性の中で形が決まっている。要するに、細胞は入れ替わる際に、他の細胞との関係でどのような細胞が出来るべきかが決まり、実際にそのような細胞が「相補性」の関係の中で出来るのだ。

    というのが、私の理解した「動的平衡」の考え方。
    自分自身がトータルで生き残るために、部分を日々入れ替えていき、動的に平衡を保っているというのが生物、ということだと理解した。
    知的な興味を惹かれる考え方だ。
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    投稿日:2021.10.17

  • Dr.(読多ー)あんころ猫

    Dr.(読多ー)あんころ猫

    「動的平衡」という言葉は聞いたことがありましたが著者の本ははじめて読みました。

    方丈記の『ゆく河の流れは絶えずして、しかももとの水にあらず』という言葉が浮かんできました。

    面白かったです。

    投稿日:2021.07.09

  • かおり

    かおり

    字がでかい!
    あっという間に読み終わりました。
    内容はこれまでに読んだ福岡先生の著書と重なるものが大半でしたが、「フェルメール 光の王国展」の顛末は初めて知ったので新鮮かつ面白かったです。福岡先生、世界的に認知されたフェルメールおたくだったんですね。続きを読む

    投稿日:2021.06.06

  • 鴨田

    鴨田

    『最後の講義』シリーズのコンセプト的に、過去の著作のまとめ、となるのはしょうがない。授業を起こした内容なので分量的には90分あれば、読み切れる。他の著作の予習として、あるいは、復習としてよむのに丁度よい感じ。

    P65の『ベルクソンの弧』のモデルは秀逸。破壊と創造を絶えず繰り返すことで、エントロピー増大の法則に逆らい続けるのが生命である、という整理。
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    投稿日:2021.04.20

  • 石井信之

    石井信之

    「本から」
    動的平衡は必ずしも一つの生命の中で起こっているだけではなく、地球全体の生態系の中でも成り立っているといえそうです。
    結論としては、生命や環境は動的平衡のメカニズムで成り立っていて、その考え方のポイントは要素ではなく、要素と要素の「関係」だ大事だということ。また、「物」ではなく「事」」が大事だということです。

    部分として、部品として、生命を見たり、生命の時間を分断し、流れを止めるというのは、生命本来の見方にはそぐわないもの。生命は操作したり、介入できるものではなく、共生するものです。

    記憶というのは物質ではなく、ある種の「状態」であることがわかってきました。(略)脳内の神経細胞(ニューロン)が連係した回路網として保存されているのです。シナプスによって作られた回路に何度も電気が通ることで記憶は増強され、保存されたり甦ったりしています。

    音楽はどこから発せられているかというと、自分の体内であり、生命からです。心臓の鼓動や呼吸、筋肉のパルスや脳波も、全てがリズムを刻んでいます。(略)
    自分自身の生命が奏でる音が美しいから、音楽を美しいと感じる。そこに(音楽の)起源があるのではないかと思います。
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    投稿日:2021.02.14

  • たくぼん

    たくぼん

    このレビューはネタバレを含みます

    動的平衡について、著書が人生最後に伝えたいと思って講義を行うとしたら、という趣旨で講義をした際の本である。現代の社会は、機械的な理論でなんでも標準化して物事を考え、成り立っている社会である。でも、科学技術はそうやってパターン化しないと発展しなかったかもしれないが、本当は、全てのものが色々と作用、反作用し合いながら、補完し合いながら生きているといえる。病気もその悪い部分を切り取れば治るように考えられがちだが、本当は、病気になった原因を除去しないと、本当に完治したとは言えず、その瞬間に治っただけである。動的平衡について考えるとき、当然、基礎的なことを知って置く必要があるので、機械的な学問である、数学、物理学などを学ぶ必要があるが、それをした上で、どのように全体感を持って考えなければならないかということを、本書は述べている。
    最後の方に学生との質問タイムがあるが、それを読むのもまた面白かった。

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    投稿日:2020.12.20

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