【感想】色仏

花房観音 / 文春文庫
(3件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • gemi

    gemi

    花房観音さん。この本とは別のサイン本を一冊はもっているのだが、官能小説のようなジャンルだと知りなかなか読む機会がなかった。だが友人が「俺は好き」と言ってたのでこの機会に読んでみた。

    確かに性描写は多いもののそれが不快ではなかった。艶めかしい、潤い、滴る、と言った表現が多いが物語も楽しめる。そしてある程度構えて読んだので性のドロドロさはまずまずだった。ただこの物語には底知れぬ情念が感じられる。音楽で言うと演歌。時代も江戸末期でそんな風に感じた。

    近江地方の寺のお堂の軒下に捨て置かれた烏。そこにある観音像に心を奪われたままで女を知らずに今に至る。京都の寺で僧侶になる修業をするのだが、その道を捨てて観音像を彫るために生きることになる。だがそれだけでは生活が成り立たず、真砂という茶屋の女将に援助を受けて生きながらえていた。その生業として猿吉の依頼、女の人形を作る仕事をして糊口をしのいでいた。
    その客は不明なのだが、依頼された女体を隅々まで見て写し取り彫るのだ。その女たちで物語を紡いでいく…。なかなか面白かった。

    「目をそらしたらあかん。男と女の果ては地獄や」
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    投稿日:2022.03.06

  • パラボス

    パラボス

    2021年、11冊目は、花房観音の文庫化新作。

    北近江出身の「烏」。孤児の彼は寺の住職に育てられる。住職は彼に寺を継がせるよう、京都に修行に出す。しかし、彼は修行に集中出来ずにいた。そして、仏師を目指し寺を出る。彼の心は、地元の十一面観音に奪われていた。

    花房観音、久々のクリーンヒット、長打コース。今作は「人並みの価値観に一石を投じる」女史の一貫したスタイルの変化球。「情欲」と「業」に絞って、幕末の京都を舞台に展開される。

    『官能時代小説』の帯の括りだが、『官能』の男を欲情させる機能は今作も低め。もちろん、それなりに性描写は多いが、すでに女史の足元はそこには、勃っていない。人の裏や、内の顔を描く、題材が「性」であるだけのような気がする。人の「素」が一番表れる場面が、一糸纏わぬ、まぐわいの時なのだから。

    「観音様」アラフィフの自分より上の世代では、女性器の隠語だった言葉だ。その辺の言葉のチョイスも素敵。

    惜しむらくは、もう少し分量があれば、「俊覚」「梨久」「沙那丸」のエピソードや、顛末、真相等がクリアになったのでは、と思う点。それでも★★★★☆評価は充分。
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    投稿日:2021.07.15

  • 文藝春秋公式

    文藝春秋公式

    【官能と芸道のはざまで揺れる男と女の業】江戸末期の京都。僧になるため上京した烏(からす)は、ある女に出会い仏の道を捨て、観音像を彫り始める……著者初の時代小説。

    投稿日:2021.06.25

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