パラゴンとレインボーマシン

ジラ・ベセル, 三辺律子 / 小学館
(2件のレビュー)

総合評価:

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ブクログレビュー

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  • いけだ@翻訳

    いけだ@翻訳

    このレビューはネタバレを含みます

    近未来のイギリス。色を見ることができない少年、オーデンは死んだおじが住んでいた家に引っ越してきた。仲良くなった少女ヴィヴィと庭の物置の下で、ロボットを見つけて……。

    序盤がいい。オーデンの語る世界は、私たちが住む世界とほとんど変わらないように思えるが、だんだんと違うことが分かってくるのがドキドキする。腕にはめる端末機械から、技術が進歩した近未来らしいということがわかる。そして車のガソリンよりも、水の方が高いということや、ニンジンが1袋15万円という記述に、違和感を感じているうちに、この世界で一番貴重なのは水だということがわかってくる。
    雨の降らない世界。水を奪い合って戦争が起こっている世界。フィクションだと言い切れないのがこわい。物語のなかではひとつの大きな発明がよい方向に世界を転換させたけれど、現実ではどうなっていくことか。
    主人公たちが出会うロボット、パラゴンがなんともいいキャラクターだ。詩を暗唱したり、ユーモアのセンスも抜群で、そして優しい。はじめはパラゴンを機械としか思っていないオーデンがじょじょに変わっていく。父親がわりになりつつあったパラゴンとの別れは、なんともいえず切なかった。
    主人公の他人に対して皮肉やなところはちょっといやだなと思ったけれど、語り口調がいい。この世界は複数の毛糸がもつれているように複雑だ、と語っているところでなんだかすごく成長を感じて、ぐっときた。

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    投稿日:2021.11.09

  • Mira

    Mira

    気候変動で雨がふらなくなり、水が配給制になっている未来が舞台。世界中で水を求めての戦争が起こっていて、成人男性はほとんどが戦場に送られている。

    11歳のオーデン・デアは、母親といっしょに、最近なくなったおじさん(母親の兄)の暮らしていた家へ越してきたところ。おじさんは科学者だったが、とつぜん心臓麻痺で倒れて帰らぬ人になった。

    家についてみると、部屋の中がめちゃくちゃに荒らされていた。そして数日後、オーデンがひとりでおじさんの大学、トリニティカレッジの研究室に入りこんでみると、そこもやはりめちゃくちゃに荒らされていた。おじさんには何か秘密があったのでは。もしかして……殺されたのでは?

    そんなときオーデンは、クラスメートで、トリニティカレッジの構内に住んでいるヴィヴィという少女と仲よくなる。ヴィヴィは生前のおじさんとも親しかったらしい。そしておどろいたことに、おじさんがオーデンに残したのと同じ隕石の片割れをおじさんからもらっていた。その隕石と、おじさんからのメモを手がかりに、オーデンとヴィヴィはおじさんの物置を捜索。なんと地下の部屋からロボットを見つけだした。ロボットは「パラゴン」と名乗った。

    身内が科学者で、その研究ゆえに何者かに命をおびやかされ……というのは、けっこうよくある展開なのだけれど、ロボットのパラゴンがからむことで、ぐっと魅力が増している。シェークスピアやエミリー・ディキンソンを暗唱し、「皮肉」や「ユーモア」を解するパラゴン。おじさんはいったいなんのためにパラゴンを作ったのか。

    じつはオーデンは「先天性色覚異常」で、ほとんどの色が判別できない。だからきっとおじさんは、生前に語っていたように、色覚異常を治す装置をつくってくれたのだとオーデンは信じている。しかし実は、パラゴンにはそれ以上の使命が課せられていた。そして、パラゴンを追う者たちの包囲網がしだいにせばまる……。

    パラゴンのなかに秘められた謎。追っ手たちとの息詰まる競争。色覚異常をめぐる、そして戦場にいるはずの父をめぐる、オーデンの葛藤。終盤はスピーディな展開でぐいぐい読まされる。ヴィヴィの意外な能力と活躍もいい。
    【このあと、ネタバレではないけど少しツッコミ】



    ひとつだけ難を言えば(こういう科学者モノにはつきものなんだけど)おじさんがこれ(レインボーマシン)を秘密にしていたこと、なんだよねえ。いちおうかつての研究仲間のトレブル博士もツッコミを入れていたけど。すべて完成してから公表したかったというけど、こういう趣旨なら協力者をつのりながらやったほうがぜったいうまくいくんじゃないのかな。

    もっとも、当局(水配給庁)は、防衛のためのロボットを開発することに血道をあげていたから、それ以外のわけのわからない研究には横やりを入れていたかもな。
    大人のSFだったらそこらへんをもう少しくわしくごちゃごちゃと書かないと、納得してもらえそうにないけど、児童書だとかえって邪魔になっちゃうかな?

    でも、全体としてはとてもよくできていて、すっきりしたエンディングも爽快でした。
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    投稿日:2021.08.05

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