【感想】女神記

桐野夏生 / 角川文庫
(31件のレビュー)

総合評価:

平均 3.4
5
5
14
3
0

ブクログレビュー

"powered by"

  • sachiiro

    sachiiro

    再読。
    前編は海蛇島で生まれたナミマと死を司る女神のイザナミ神。
    後半はイザナキ神が人間の姿になった八岐那彦と従者の宇為子。
    最後はイザナミ神とイザナキ神が遂に再会する。

    この世は陰陽で全てが成っている。
    生と死、光と闇、昼と夜、男と女、姉と妹、
    そして陽=清浄、陰=穢れと優劣が存在する。
    古事記に触れた時に男女不平等を感じたことはなかったが、もし神代から男尊女卑が染み付いているのならばそう簡単にはなくならないのも当然だ。
    今も神事の際に女人禁制は確かに存在する。
    イザナキ神は完全に人間になり死と共に成仏できたのに、何故イザナミ神だけが救われずに黄泉国で死者を選び続けなければならないのか。
    どうしたらイザナミ神は苦しみから解放されるのか。
    そんなことを考えることこそが
    『神と人間は違う。私の苦しみは、お前の苦しみとは違うのだ』
    とイザナミ神に一喝されてしまうのかもしれない。
    ナミマの心は救われないし、読後感がスッとする展開ではないのだが、まるで桐野さんが実際体験してきたかの様な主人公の語り口にまた読みたくなる不思議な魅力がある。
    続きを読む

    投稿日:2023.04.03

  • masaximum

    masaximum

    古事記。この最古の名作を読むのは、なかなか大変だろう。この名作をモチーフに、主人公を通してイザナミ、イザナキの描写が後半に向け徐々に盛り上がる。ここから古事記に入っていくのもよいかもしれないなと感じた続きを読む

    投稿日:2023.01.09

  • 眠り猫

    眠り猫

    古事記で読んだことがあるイザナミ、イザナギの日本創世の話がベース。ナミマの話や宇為子の話、興味深く読むことができた。ただ、読了感は虚しさが残る。
    イザナミがナミマに話していた言葉が全て。「一番始末に悪い感情は憎しみだ。憎しみを持ったが最後、憎しみの熾火が消えるのを待つしか安寧は訪れない。ここにいる限り、憎しみの火は消えないのだ。」
    憎しみや憎悪は、やり場のない感情だ。もし憎しみの対象に報復ができたとしても、気持ちの平穏が訪れることはない。これは太古から今の時代に至っても変わらないのだ。
    憎しみは持つことなく、持たれることもなく生きていきたい。偽善者のような言葉になってしまうけど、それに尽きる。
    続きを読む

    投稿日:2022.05.12

  • さえ

    さえ


    読みおわった日付:2022.3.22
~本の内容に関すること~
■本の要点
男とは、女とは。

    それぞれを陥れることなく、男女の違う側面を美しい文章で、個人の話として語られる。
    愛する男に殺された、黄泉の世界の女の気持ち。
    神と人の違い。
    
■感想、意見
    古代の神々が出てくるものの、美しい口語でお話しされるので、読みやすく面白かった。
    イザナミ様の胸の内は、人である私には理解しきれないと思うと、それも含めて孤高で悲しく畏怖の念を抱く。
    ナミマの無念や解明欲は、理解できる。
    女神と人の差を、それぞれの感情を表現して伝えているのは、新鮮で面白かった。
    そうだよね、まあわかる、なるほど、と女性という性の一面を知った気分になった。
    
■調べたいこと
新作 『燕は戻ってこない』も読んでみたい。
    
■本を読むことになったきっかけ
VERY4月号での対談

■本の中で気になった言葉
『神だとて、出産で死ぬのは、いつも女』

■所要時間 3-4時間
    続きを読む

    投稿日:2022.03.23

  • あずき

    あずき

    ずいぶん景気良く神様生み出すんだなイザナギとイザナミ。
    天照大神がイザナギひとりで産んだ神様なのは知らんかった。

    出産で死んで夫に約束破られた挙句離縁されてイザナミ踏んだり蹴ったりだし
    ナミマもカミクゥもマヒトの母ちゃんも気の毒だし、マヒトもまあ気の毒といえば気の毒。
    神話からして男と女って対等じゃないのか。こりゃ男女共に性根の中にべったり男尊女卑がくっついとるはずだわ。
    続きを読む

    投稿日:2022.02.27

  • むくみ足

    むくみ足

    すごい。息を呑む、とはこのことか。とんでもなく面白い。

    女に生まれ、生きる、その苦しみ。

    「絶対に消えるものか。生きる楽しみを謳歌した者に、黄泉の国に追いやられた者の気持ちなどわかるわけがない。これからも怨んで憎んで殺し尽くすのだ。」(イザナミ、p.258)

    これは男として生まれた者に対する怒りなのかもしれない。

    桐野夏生さんが、『彼女は頭が悪いから』(姫野カオルコ、2020)の選評で、「この国で女に生まれることは、とても憂鬱なことだ。女たちの憂鬱と絶望を、優れたフィクションで明確に表した才能と心意気は賞賛されるべきだ。小説でなければできないことがあるのだ。」と書いていたことを思い出した。
    続きを読む

    投稿日:2021.06.18

Loading...

クーポンコード登録

登録

Reader Storeをご利用のお客様へ

ご利用ありがとうございます!

エラー(エラーコード: )

本棚に以下の作品が追加されました

追加された作品は本棚から読むことが出来ます

本棚を開くには、画面右上にある「本棚」ボタンをクリック

スマートフォンの場合

パソコンの場合

このレビューを不適切なレビューとして報告します。よろしいですか?

ご協力ありがとうございました
参考にさせていただきます。

レビューを削除してもよろしいですか?
削除すると元に戻すことはできません。