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米澤穂信 / 角川書店単行本 (608件のレビュー)
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総合評価:
ABAKAHEMP
"羊たちの沈黙"より、"オセロ"を思い出す
問答無用、弁解不要で人を殺めても許され、何なら常に凶器を帯刀している武人中心の世界で、ミステリが成立しうるのか、解き明かすべき謎が果たしてあるのか? 本書は舞台を単に戦国時代に移しただけのミステリと…は異なり、武士としてのあるべき振る舞いという、この時代設定でなければ通用しないロジックで物語を成立させ、最後の最後に、序盤から丁寧に張られていたすべての伏線が回収され、連鎖的にコンポが決まるように、物語全体を通底する見事な構図が浮かび上がる。 一連の犯行の動機と史実が結実するラストは、まさに歴史ミステリの金字塔。 ミステリ的な側面とは異なり、歴史小説としてみると傑作になり損ねている。 自らの野心のために謀反を企て、立て篭る城に妻や近習、家臣を残して単身脱出し、親しき者たちや配下の者たちが揃って反逆者として成敗される中、ひとり畳の上で大往生を迎えた荒木村重には、これまでも何度か動機の解釈が試みられてきた。 卑近な例では、漫画『へうげもの』で数々の名物の茶器を風呂敷に抱えて逃げる村重に、「これがわしの生き様や」という名台詞を吐かせて、身内を犠牲にしても、批判上等で、生に対する尽きせぬ執着と飽くなき強欲ぶりを描いていた。 本書では荒木村重の城脱出の裏に黒田官兵衛の策謀があったとする面白い解釈が試みられているが、その後の結末の付け方が中途半端で、『へうげもの』のような新しい荒木像を生み出したとは言いがたい。 長引く篭城と毛利の援軍が期待できぬと気づき始めた城内で連発する不穏な事件に城主・村重は謀反人の存在を疑うが、実は城の守り人は他にいたという展開と、夜な夜な地下牢で交わされる官兵衛との語らい、そして単身城を出る決断が、もっと有機的に連関して、史実に対する新しい解釈を呈示してくれれば、大傑作となっていただろうに本当に残念。続きを読む
投稿日:2021.10.29
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roi-ronin
直木賞受賞作品、米澤穂信さんということで読んでみました。 日本史は全く詳しくないので、荒木村重が有岡城に篭城、黒田官兵衛を拘束して土牢に監禁していたことを知らない状態から読み始めました。 言葉遣いが当…時のものになっているので、読みづらかったが、知らない言葉が多分にあり、勉強になった。 武士の時代の話を読むと、命の軽さを感じる。 自分はこの時代に生まれなくてよかったと毎度感じる。 ミステリ要素が強く、発生する事件的なものの解決を村重が進める中でつまずき、官兵衛に助けを乞う流れ。 官兵衛かっこいいと思いつつ、なぞの状況(有能であると認め、恨みがあるわけでもない官兵衛を劣悪な環境に監禁しながら助けを求める)だと、思うが、これもまた武士の世界か。 ミステリだけでなく、武士の上下関係、色々と注意して発言する必要があること、城内政治があり、これもまた勉強になった。 村重の孤独がすごい めちゃくちゃおもしろかった!でもないのですが、なかなか楽しめたのと、勉強になったということで星4続きを読む
投稿日:2024.04.07
読んジャイアン
塞王の盾を読んだ後、前評判やあらすじも知らず読み始め、1章の途中からこれがミステリであることに気付かされた。時代小説とミステリという組み合わせが自分には斬新だったが、各章で謎が顕現しそれを解いていくと…いう、探偵小説に似た構成により読みやすさがあった。一方で毎度同じ展開の章が4度繰り返されるためワンパターンになりがちであったこと、また登場人物がそこまで多くなくかつある程度文章を読んでいくとトリックはわからずとも「この人犯人っぽいな〜」という示唆があり、ミステリとしては若干物足りないかなと感じた。続きを読む
投稿日:2024.03.31
くまうり
何を信条とするか。 納得できないことや世の中にどう抗っていくか。 戦、恨み、神の罰。善因。 偉い人が言うから、世の中の常識っぽいから…に押し流されず、やっぱりこれってどうなの?なんとかならないかなって…生きていきたい。続きを読む
投稿日:2024.03.25
katz21
時代小説は読まないので、直木賞と言うことで気にはなっていたものの手にしていなかった黒牢城。いやあ、もっと早く読めば良かったと思ったとても面白い一冊でした。織田信長の時代の荒木村重が籠城していた1年間に…起こった不思議な出来事・事件の謎をとく、まさにミステリー。黒田官兵衛の凄さをまざまざと見せつけられます。続きを読む
投稿日:2024.03.18
1699398番目の読書家
黒田官兵衛がカッコ良すぎる。聞いたことはあったけど、何した人か知らなかったから面白い。ホラーかと思いきや、ゴリゴリの歴史物で、著者の文才が光る 最後が昔っぽい文章でわからなかったけど、ミステリーとか探…偵もの✖️歴史物っていう新しいジャンルで楽しめた。続きを読む
NSFM
米澤穂信さん、自分にとっては「満願」に継ぎ二作品目。 4大ミステリランキング完全制覇、及び直木賞受賞作品で、米澤さんが執筆されたのならばあまり読んだことの無い時代小説も読んでみたくなった。 作者の幅広…い知識と見聞が窺える作品。 舞台は戦国時代の摂津(今の兵庫県伊丹市)、本能寺の変の少し前の時代。主人公は有岡城城主、荒木摂津守村重。 信長に謀反を企てた村重に織田からの使者が送られる、それがあの有名な黒田官兵衛。 ここまでで無知な自分は色々と調べながらの読書になっていく。 荒木家とは? 何故村重が城主になりえたのか? 織田側にいつなったのか? 何故信長と袂を絶ったのか? 時間がかかるが下準備がないと話が入ってこないのだろうと予想していたため調べながら知識を増やしていったのだが、この作品においては背景の知識が無くても充分楽しめる作品だった。 武士の世界観が壮絶で、現代を生きる自分にはつい400年位前迄はこのような世界が同じ日本であった事に改めて驚愕させられる。志しは格好いいのだがその武士としての内容と本質はまた別の処にあるような気がした。 作品は連作短編の様な作品で、使者であった黒田官兵衛を捕らえて牢に繋ぎ、籠城状態の有岡城内で起こる怪事件を村重が最終的に官兵衛の知恵を借りて解決するという短編集。 了作だと感じるのが、何故官兵衛が村重に知恵を貸すか?という疑問と官兵衛の最終的な目論見。 その当時の武士と武家と常識が入り交じり深く心に残った。 読む前と後では、この作品に感じていた物がだいぶ変化している事に気付く。 ミステリーなのだろうがこれは史実ドラマだと感じる。 最後も官兵衛の子、松寿丸も生きながらえており官兵衛も救われたなと感じる。 竹中半兵衛のおかげと言えば裏には秀吉の影を感じ、読後調べてみれば松寿丸はその後黒田長政として秀吉に仕える。 そこまで考えると、村重が信長に敵対視して官兵衛を殺さず牢に繋いでいたからこその再開があり、その後の史実的な展開とも重なってくる。素晴らしい。 次は米澤さんの新作「可燃物」を読んでみようと思っている。 続きを読む
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