黒牢城

米澤穂信 / 角川書店単行本
(101件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
30
44
17
1
1
  • "羊たちの沈黙"より、"オセロ"を思い出す

    問答無用、弁解不要で人を殺めても許され、何なら常に凶器を帯刀している武人中心の世界で、ミステリが成立しうるのか、解き明かすべき謎が果たしてあるのか?
    本書は舞台を単に戦国時代に移しただけのミステリとは異なり、武士としてのあるべき振る舞いという、この時代設定でなければ通用しないロジックで物語を成立させ、最後の最後に、序盤から丁寧に張られていたすべての伏線が回収され、連鎖的にコンポが決まるように、物語全体を通底する見事な構図が浮かび上がる。
    一連の犯行の動機と史実が結実するラストは、まさに歴史ミステリの金字塔。

    ミステリ的な側面とは異なり、歴史小説としてみると傑作になり損ねている。
    自らの野心のために謀反を企て、立て篭る城に妻や近習、家臣を残して単身脱出し、親しき者たちや配下の者たちが揃って反逆者として成敗される中、ひとり畳の上で大往生を迎えた荒木村重には、これまでも何度か動機の解釈が試みられてきた。
    卑近な例では、漫画『へうげもの』で数々の名物の茶器を風呂敷に抱えて逃げる村重に、「これがわしの生き様や」という名台詞を吐かせて、身内を犠牲にしても、批判上等で、生に対する尽きせぬ執着と飽くなき強欲ぶりを描いていた。

    本書では荒木村重の城脱出の裏に黒田官兵衛の策謀があったとする面白い解釈が試みられているが、その後の結末の付け方が中途半端で、『へうげもの』のような新しい荒木像を生み出したとは言いがたい。
    長引く篭城と毛利の援軍が期待できぬと気づき始めた城内で連発する不穏な事件に城主・村重は謀反人の存在を疑うが、実は城の守り人は他にいたという展開と、夜な夜な地下牢で交わされる官兵衛との語らい、そして単身城を出る決断が、もっと有機的に連関して、史実に対する新しい解釈を呈示してくれれば、大傑作となっていただろうに本当に残念。
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    投稿日:2021.10.29

ブクログレビュー

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  • HURI

    HURI

    米澤穂信の作品群に、傑作がまた一つ加わった。

    雪密室、首のすり替え、突然現れた銃弾。
    いざ戦となると数時間で万単位の人がいとも簡単に死んでいく。そんな時代の中で、人々は"死"をどのように捉えるのか。
    謎に隠された、戦国に生きる人々それぞれの企み、願いに胸が打たれた。

    因果は巡る。

    史実に忠実な設定や、硬派で難しい言葉もあるが美しい文章も相まって、天正六年の時代が見事に描かれている。
    登場人物もしっかり描き分けられており、皆魅力的。村重の、官兵衛の、十右衛門の、ーー挙げたらキリがないがーー生涯に想いを馳せずにはいられない。
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    投稿日:2022.01.16

  • 石井誠

    石井誠

    このミスの1位ということで、期待して読んだが、うーむ。イマイチ。設定やアイデアは面白いんだろうが、あまりストーリーやトリックがしっかり入ってこない感じ。

    投稿日:2022.01.16

  • Noz

    Noz

    ミステリーなんだけど、登場人物などは史実にある程度基づいているということで、戦国時代にとても興味出ちゃう。とんでもない労力をかけて書いたんだろうなと、作者の苦労にも興味が出てしまった。米澤先生たいへんお疲れ様でした。
    地の文も古い言葉遣いになっているので読みづらさはあるけど、それも含めて読み応えあるし世界観がずっしりとしていてとてもよい読み物でした。歴史小説とかはあまり慣れていないけど、基本はミステリーなのでとても楽しんで読めた。
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    投稿日:2022.01.16

  • yutan2278

    yutan2278

    荒木村重と黒田官兵衛。どちらも歴史の教科書に出てくるような有名な人物なので、とても面白くよみました。

    投稿日:2022.01.16

  • 麻阿

    麻阿

    このレビューはネタバレを含みます

    無類の歴史好きゆえ、文句無し5!なんですが、
    え、これ万人受けはするんだろうか…?笑
    このミスや他のランキングでも1位総なめなんで、万人受けしてるんだろうけれど、本当??と心配になるくらいの歴史小説です。
    (読書メーカーとかでも、言葉難しい…って意見多かったのは絶対それだろうな)
    そもそも主人公が、織田信長を裏切った有岡城主・荒木村重って時点で、私からすりゃウハウハですが
    他の人には「?」のはず…(笑)

    いやそれにしても、ここまでミステリーをしっかり書きながら、歴史小説としても完成させているのは本当にすごい。んでまたテンポもいい。
    最初の安部自念の殺害。家臣の森可兵衛が庭の灯籠を使って鑓で命を奪った。
    次に雑賀衆VS高槻衆の首入れ替わり事件。大将の大津は村重が討ち取っていた。
    最後の大事件は使いである僧の無辺と家臣・秋岡の殺害。僧のふりができた家臣・能登によるものだった。
    ……とこれを牢屋で生かしている官兵衛の知恵によって解いていく、っていうストーリーをよく考え出したなと…。史実でも、村重は約1年も官兵衛を牢で生かすわけだが。

    またこの事件が実は一つの章で解決しているかのように見せて全然してないっていうとこ。意外にここにゾッ。おお、確かに言われてみりゃ首とか誰が入れ換えたんかとか、全く明かされてなかったな、と。
    そこで明らかになるすべての黒幕=千代保も面白いし、その動機が長島一向一揆の戦いをきっかけに
    死にゆく先にも極楽が必ずあると、民に「仏の罰」はあるとわからせたかった、という
    狂気じみた、でも本当に起こりうる動機にまとめているのも面白い。

    そしてラストに明らかになる官兵衛の策略。息子の死を悟った官兵衛が、戦を長引かせること、村重の名を落とすことを目的に牢で数々の難事件を解いていたという、官兵衛の人間らしさ。
    でも村重も官兵衛に負けず劣らず人間くさいんだよなぁ。官兵衛が言ってた通り、
    信長が殺すなら殺さない、って素敵っちゃ素敵だが結局見栄っぽいのも事実。
    なんか逆にそれがこのストーリーの村重をまざまざと描いてて面白いなと思いました。
    実際、荒木村重って何で織田に背いたかっていうのは明確にはわかってないんだが、そこも倒れゆく織田を予測してたっていうのはシンプルで良かったね。(そこはあまり複雑にしなくてちょうど良かったと思う)

    荒木村重について調べたくなった一冊。
    いやーでもこれが色んな人に選ばれたのならすごく嬉しい。笑
    ※全然関係ないけど、関西出身なので有岡城や尼ヶ崎城など、たくさん出てきて楽しかった!!

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    投稿日:2022.01.12

  • やすお

    やすお

    2014年の大河ドラマ「軍師官兵衛」で官兵衛が有岡城の土牢につながれている場面を思い出す。有岡城主の荒木村重を演じた田中哲司と官兵衛を演じた岡田准一を脳内に浮かべながら読み進めた。内容は時代小説ではなく完全にミステリー。有岡城内で人質の阿部自念が殺害された事件、戦でとった首が凶相になった事件、織田方に通じていた瓦林能登入道が死んだ事件などが発生。城主の村重は事件の相談に土牢にいる官兵衛に会いに行く。官兵衛が安楽椅子探偵になるのかと思ったが、ヒントのようなものを与えるだけで事件の解決は村重が行う。でも、物語は事件を解決して終わりではない。そこに流れる本当の意図に驚いた。続きを読む

    投稿日:2022.01.12

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