FOOTPRINTS(フットプリント) 未来から見た私たちの痕跡

デイビッド・ファリアー, 東郷えりか / 東洋経済新報社
(3件のレビュー)

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  • 別の選択肢を想像できるようになるために

    産業革命の溶鉱炉から排出された二酸化炭素は、いまから1000年間は大気に留まりつづけ、1万年後でようやく10%に減じるという。
    人為起源の炭素の長い尾の影響は、この先50万年間も気候に残り続ける。


    あるいは、思うままの形に変形できる奇跡の物質、プラスチック。
    が、あまりにもありふれてているため、五感の背景に溶け込み、気づかれることもなく消えていく。
    毎年、何百トンも海に流れ出すプラスチックは、再び石油に戻るまで、この先何千万年も残り続ける。

    大気や海洋に残された足跡は、今後の暮らし方で、深くもなれば浅くもなりうる。
    砂浜に残した足跡のように、押し寄せる波ですぐさま綺麗にぬぐい去れる一時的な痕跡ではない。

    このような地球規模の巨大な生痕化石の、途方もなく遠い未来を想像するためには、イメージやメタファーを総動員した物語が必要になる。
    「物語は場所と空間を結びつけ、関連を織り合わせたものからは重要性が紡ぎ出される」。
    エディンバラ大学で英文学を教える著者は、学生とともに「未来の化石」を探す旅に出て、人新世の輝く耐え難い現実を発見する。
    「最も移ろいやすく思われるものが長く持ちこたえる潜在能力を秘めており、それが目眩を起こさせる」。

    「私とともにこの旅に出る前に、ページから目を上げて、身の回りにあるものが - ノートパソコンのプラスチック・ケースや、内部にあるチタン製品や、その脇にあるコーヒーカップが - いまから何百年もののちまで残るだろうかと想像してみて欲しい」。

    我々は、毎日の慌ただしい暮らしの中で、猛進してくる未来が投げかける不気味な光のもとで、現在を検証する必要があるのに、習慣から過去の光で照らして眺め、それとない変化を日々見逃し続けている。
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    投稿日:2021.09.07

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  • michy110

    michy110

    日本経済新聞社小中大
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    FOOTPRINTS 未来から見た私たちの痕跡 デイビッド・ファリアー著 道路・都市…文明はどう残る
    2021/7/31付日本経済新聞 朝刊
    私たちの文明は、地球環境を改変し、化石燃料を燃やしてエネルギーを使い、さまざまな人工物を生産、消費、廃棄してきた。それこそが文明生活だ。地球の総人口も増加している。そんな人間活動の結果は、後世にまで痕跡を残すだろうということで、「人新世」という新たな地質年代区分を設定すべきだという提案がなされている。


    本書は、今の人間の文明の産物が、遠い未来に、どんな残骸または遺跡となって残るだろうかを思索したものだ。その遠い未来に、人間がまだ存続しているかどうかはわからない。しかし、エジプトやモヘンジョダロなどの古代文明を見ても明らかなように、どんな文明にも栄枯盛衰があり、構築物は土に埋もれる。今の私たちの文明は、後世にどんな足跡を残すだろう?

    二酸化炭素やメタンなどの温暖化ガスの大気中濃度はどんどん上昇し、南極などの氷は溶け続けている。海水温度も上昇し、サンゴ礁は、場所によって壊滅的だ。種の絶滅はあらゆるところで起こり、生物多様性が減少していく。一方、核廃棄物の最終処理をどうするか、いまだに解決しないまま、廃棄物だけは増えていく。

    このようなことは、誰もがよく知っているだろう。が、私たちが作り出した、道路、都市、建造物などは、遠い将来にどのように残っているだろうということは、あまり誰も考えたことがないのではないか。

    世界中に張り巡らされた道路は、今や全長5000万キロにも上るらしい。橋梁、高層ビル、工場などの巨大建造物。これだけのコンクリートや鉄などを使っているのだから、それらを採掘してきたところには、大穴が空いているに違いない。一方、プラスチックなどの人工物は、どこまでも細かくなるが決してなくならない。これらは、かつてこんな文明があったことを示す、どんな痕跡となるのだろう。

    本書は、世界のさまざまな場所を訪れ、科学的な証拠を積み上げながら、それを思索する。しかし、イメージを生み出すのは、文学や絵画に表された表現なのだ。デイビッド・ホックニーの絵、イタロ・カルビーノの小説、J・G・バラードのSF、バージニア・ウルフの日記…。

    著者は英文学者であり、環境学の教授でもある。このような学問的背景であるからこそ、書くことのできた名著だ。

    《評》総合研究大学院大学学長 長谷川 眞理子

    原題=FOOTPRINTS(東郷えりか訳、東洋経済新報社・2640円)

    ▼著者は英エディンバラ大の英文学と環境学の教授。本書で英国王立文学協会のジャイルズ・セントオービン賞受賞。


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    投稿日:2021.08.08

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    投稿日:2021.07.15

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