帰らざる故郷

ジョン ハート, 東野 さやか / ハヤカワ・ミステリ
(5件のレビュー)

総合評価:

平均 4.4
3
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ブクログレビュー

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  • 黒い☆安息日

    黒い☆安息日

    このレビューはネタバレを含みます

    久々ジョン・ハートの新作がよーやく回ってきた。
    質量ともに読み応えバッチリ!軽く読み流す小説ではないけど、それなりに時間をかけてじっくり読む読書は最高の至福、その贅沢な時間を与えてくれる作品って意外と少なく、安定して供給してくれる作家はさらに少ない。

    ジョンハートは貴重なその一人だということ。

    主人公ギビーが少年から大人に変わる儀式の飛び込みシーンとその兄ジェイソンが刑務所から出所するシーンから物語は始まる。2人の兄ロバートはベトナム戦争で戦死、その影響で母はギビーを異常なまでの過保護に扱い、反抗的なジェイソンは毛嫌いされる。そんな家族にバランスを取ろうと苦心する父。

    ギビーの青春譜が描かれていくのかと思いきや、ジェイソンに関わる不審な動きが徐々に物語に入り込み、刑務所にひそかに暮らす悪の大御所、変態シリアルキラー弁護士、出世欲にくらむ警察官などが絡み、ベトナム戦争終焉当時の病み混乱したアメリカの病みの部分を照らし出す。

    それでも、さすがはジョンハート、少々残虐なシーンやこんなのも書くんか?と驚きのアクションシーンも経つつ、物語の落としどころは少年が大人になりゆく成長譚と家族愛の物語。涙を流して感動するような荒っぽさではなく、ジワジワシミジミ効いてくる感動が良い。

    色々感動的な場面はあるが、ジェイソンの名前を聞いて即座に敬礼を返す兵士のシーン、主人公の親友の母が晩御飯を一緒に食べるよう促すシーン、最後あの岸壁から高飛び込むを決めるシーン(飛ぶはまさかの)は良かった。

    次の翻訳が待ちきれない!ジョンハート、最高である。

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    投稿日:2021.10.25

  • fukayanegi

    fukayanegi

    このレビューはネタバレを含みます

    時は1972年、ベトナム戦争の最中。
    双子の兄を持つギブソン。
    優しくヒーロー的存在だった上の兄ロバートは戦死。
    一方下の兄ジェイソンは、ロバートを追うように戦地に赴いたが、不名誉除隊処分を受け帰国後薬物に溺れ服役。

    2年の服役期間を終えたジェイソンが街へ戻ってきた。
    素行の悪いジェイソンをギブソンに近づけたくない父母、ジェイソンに対する少なくない恐れを感じながらも血の繋がり故の湧き上がる親近感を拭えないギブソン。

    物語の書き出しがうまいなぁ。
    家族の分裂と兄弟の友愛、そのすき間に仕組まれた犯罪により深まる溝。
    弟に見せる親愛の情、悪に染まりきっていない言動を見れば、どこかに誤解があることはわかる。
    ただその誤解がうまいこと解かれる方向には進んでいかず、いじらしい展開。

    悪の絶対王者、二流シリアルキラー、黒幕二人の自己満行動で物語をたたみにいってしまうのがちょっと残念な方向性で、星5にはできないところ。

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    投稿日:2021.10.17

  • シュン

    シュン

     1972年。舞台はノース・カロライナ。ヴェトナム帰還兵とその一家の物語。作者のジョン・ハートは1965年生まれだから、本書の背景の時代は、実は作家7歳の幼年期ということになる。翻って、読者のぼくはこの年、16歳。反戦のフォークソング、悲劇的で衝撃的なアメリカン・ニュー・シネマのショッキングなエンディングに、もろに曝されて育ったあの多感な時代。

     だからこそ、というだけではないにせよ、この物語の時代背景を記憶に蘇らせながら、そこを通り抜けたアメリカの青春群像を生き生きと、現代に読み返し、想い出してゆくという読書行為は、何とも心にうずくものを抱えているような、妙に懐かしくも心の痛む、不安と緊張に満ちたものであった。

     本書の主人公であるギビー(18歳)もまた、多感この上ない青年である。殺人課刑事の父の息子である彼のもとに、戦死した兄ロバートの双子の弟・ジェイソンが帰郷した。戦地で29人殺したという伝説を携えて。収容所での不審な収容期を終えて。

     ジェイソンが帰還後、現地民虐殺の疑いで放り込まれていた州立刑務所には、一方でXという途方もない怪物がいて、事実上刑務所を支配しているという構図である。劇画的誇張が過ぎるようにも見受けられるが、刑務所幹部たち含め、彼の走狗である猟奇殺人者リースともども、物語の現代を横軸として綴る緊張が張り巡らされる。

     ノースカロライナの田舎町に起こる凄惨な女性殺人事件と帰還兵、反社会組織のバイカー集団、血に飢えた殺人者と、彼を刑務所から操るX。そうした幾重にも絡み合った暴力の嵐が、青年ギビーの家族や周囲に吹き荒れる。まさしく凄まじいまでに。

     読者だけが知らされる危険この上ない状況の中、巻き込まれ翻弄されるギビーの青春とと、その家族たち。兄、警察官である父、以上とも言える母、恋人、親友。一見、平和に見えていた家族やその周囲の人々を、ヴェトナムから持ち込まれた暴力の風が巻き込んでゆく。

     ヴェトナムに起こった村民虐殺事件の真相を背景に、徐々に見えてくる構図、散乱した事実への落とし前の付け方が、なんともスリリングな読みどころである。この作家は骨太でしかも確かな書き手との印象がやはり強い。七作目の長編ということであるが、これだけで食べて行けるアメリカの出版環境に改めて驚かされる。じっくりゆっくり作品を作ることが許される環境なのだ。それこそがこうした力のこもった大作を生み出せる要因であるように思う。

     何とも頼もしい作家による、確かな傑作であり、家族小説であり、青年の成長小説でもある。アメリカでしか成し得ないプロットでも、本書は良く成功しているように思う。
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    投稿日:2021.09.30

  • MISERY

    MISERY

    ずっと待ってた著者の新作。四年?五年?ぶり。待ってた甲斐があったすごく好みな作品。1972年のヴェトナム戦争時のアメリカ。家族の形が壊れた一家の物語。親と子、兄と弟。犯罪者として刑務所にいる兄と善良な弟。警察官の父。離れていく兄と近づこうとする弟。この二人の関係性とそれぞれを思う感情がいい。孤独、不安、恐怖を感じながらも兄を追うこと。自分の世界から遠ざけようとする兄。そこに隠されているもの、隠されている弟への思い。壊れている家族でもどこかで繋がっているように見えるこういう作品が大好きで本当に面白い。何度も読み返すことになりそうなくらいたくさん感情を揺さぶられた。続きを読む

    投稿日:2021.05.06

  • take9296

    take9296

    1972年、アメリカ。ベトナム戦争中に海兵隊を不名誉除隊させられ刑務所にいた兄と、数年ぶりに再会した弟。しかし、町で起こるある惨殺事件が、彼らを引き離す――戦争が人々の心に残した傷跡、そして兄弟の絆を描くクライム・フィクション。

    今回はポケミスのみの刊行。
    予想の斜め上を行く展開。後半は違う作家の作品を読んだような印象。うーむ。
    続きを読む

    投稿日:2021.05.06

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