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火野葦平 / 角川文庫 (2件のレビュー)
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総合評価:
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matsunokaori
牧野伸顕伯の松濤閑談のp35に書名あり。牧野さんが外国人から見た日本人の評価について、言及している。
投稿日:2024.03.24
seaurchin
火野葦平の小説「麦と兵隊」、「土と兵隊」が収録されています。 火野葦平は石炭仲仕を商う家庭の長男として出生し、大学在学中より文学を志しましたが、その後、一時断念、左翼運動に興味を抱きながら家業を継ぎま…す。 その後、労働活動が検挙されたことにより、転向を決心し、再度文学活動を再開します。 芥川賞を受賞しましたが、転属し、報道部に入り、日中戦争渦中の南京に入ります。 本作に収録されている「麦と兵隊」は、火野葦平こと、玉井勝則伍長が、1938年の徐州会戦での記録を元に書かれた戦記文学となります。 「麦と兵隊」は日中戦争の最中、従軍時に書かれた作品で、内容は生々しいです。 兵隊や軍備のかっこよさなど、戦争賛美を書かれたような作品や、あるいは後の世に同じ過ちを繰り返させぬよう戦争の悲惨さを伝えたような作品とは異なり、ただ、戦争に参加し、そこでの出来事を、下手な盛り上がりや脚色無く書いた内容となります。 大本営や戦況を鷹の目から述べているようなものはなく、一報道部による従軍記録として書き出したのみの内容で、極限の状態でありながらも淡々と述べられています。 技工が凝らされているわけでもなく、読みにくいわけではないのですが、読んで楽しめるものではないです。 ただ、現地の兵隊がどれだけ辛い目に逢いながらがんばってきたのか、そのリアルな体験を感じられる内容となっています。 「土と兵隊」も"麦~"同様、日中戦争にて杭州湾での上陸作品に参加した際の体験が元になって書かれた作品です。 "麦と~"の方が知名度は段違いに上ですが、私的には"土と~"の方が読みやすかったです。 "麦と~"は日記形式で従軍記録を書籍化したような作品ですが、"土と~"はある兵隊が弟に宛てた手紙という形式となっています。 最初、海上で幾日も作戦の開始を待っていた「私」だが、ある日、ついに上陸が開始し、弾丸の飛び交う戦地で、日本人と見た目はそう変わらない中国人を相手に殺し合いをすること、隙間を見て睡眠し、ものを食い、脱糞する様子、そして凶弾にやられ倒れていく仲間が書かれてます。 そして最後は、今日も進軍ができること、そして、また手紙を書きたいという思いが綴られて終幕します。 いずれの作品も戦争中の場面が書かれているため、検閲が入っているようです。 それを踏まえても、思ったより踏み込んだ内容となっていると思いました。戦地の壮絶さ、痛ましさが書かれています。 本作は太平洋戦争中も読まれ、火野葦平は『戦争作家』として人気を博します。 当然の如く、軍は本作を国民先導のプロパガンダとして利用しますが、それが元となって、火野葦平は戦後に戦争責任を追求される立場になります。 ただ、本作自体は、海外でも本作されて人気が出ており、都合上の改変はあったのだろうけども極端に美化もされていない、中立な内容に思いました。 なお、本書収録の2作の他に「花と兵隊」という作品があり、花を含めて火野葦平の兵隊三部作と呼ばれています。 "花と~"も機会があれば、読んでみたいです。続きを読む
投稿日:2021.09.07
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