【感想】台湾の主張[新版]

李登輝 / PHP文庫
(2件のレビュー)

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  • 横

    台湾の主張
    新版

    著:李 登輝
    PHP文庫 り82

    現在、台湾問題がピックアップされ、中国の南西諸島へのプレゼンスが高まるなか、なぜ台湾なのでしょうか。

    1つは、中国の海のシルクロード「一路一帯」。上海、天津といった中国の重要港から、日本の領海を通ることなしに、南シナ海に出るためには、台湾の西側を航行しなければならない。
    つまり、地政学的に台湾は、ますます重要な地域となっているのである。

    一方台湾はといえば、20世紀より、ASEANの人材をはじめ海外から多くの人員を受け入れている。

    そして、1975年のアメリカとの国交を失った時に、手に入れた台湾関係法、台湾海峡になにかが起きた場合は、アメリカは台湾を守らなければならないと明記している法的根拠をもっている。
    アメリカは、台湾関係法と、日米安全保障条約の2つの条約によってこの海域の安全保障を規定されているのである。

    もっとも近い親日国、台湾で、かって、日本人として、ともに戦ってくれた、李登輝総統の主張が本書なのである

    気になったのは、以下です。

    ・日本思想の影響 激しい自我の目覚めに続いて、私の内におこってきたのは、人間とはなにか、あるいは、人生とはどうあるべきかという問いだった。
     私がよく読んだのは、鈴木大拙の本だった。私が影響されたのは、自我を押さえるという考え方だった。
     朝早くから使役に出て克己心を鍛えたり、滝に打たれて無我の境地になるという、いってみれば、徹底的な唯心論だった。

    ・中国文化に対する反省 幼いころから私は日本の教育を受け、そして日本文化の薫陶をうけた。その一方で、同時に多くの中国の文学と思想に対する本を読み込んできた。

    ・マルクス主義との対決 当時私にとってマルクス経済学が魅力的だったのは、解放の哲学であったことだけでなく、資本の問題を徹底的に解明しようとしていたことだ。
     いまでも経済学はフローばかりを問題にする傾向があり、フローからみた生産と分配の関係を市場のメカニズムの中で、証明しようとする。しかし、ある国の経済が自立し発展する過程に目を向ければフローデハナクストックが問題になってくる。

    ・見えないものを信じるということ 普段は自らを律している枠組みから、いったん離れたときは、信じるという行為の重要さがわかってくる。
     理屈っぽい知識人には、こうした信仰がきわめて難しい。それは時間をかけて克服するしかない。

    ・回り道を着実に歩む コリントの信徒への手紙1 の言葉にもあるように、愛は、事忍び、事耐うる。
     政治においては、忍び耐えることが非常に大切であることを私は身をもって体験してきた。

    ・地殻変動の中の台湾 国民の声を聴きながら、国民が自由に活動できる社会を作る。それが現在、台湾が取り組んでいることだが、そのためには、法治がなくてはならない。

    ・日本が発揮すべき政治力量 日本という国も、これまで台湾にとって、大切な教師だった。
     1985年のG5プラザ同意以降、日本は急速な円高の中で、自分を見失ってしまったのではないかと思われることが多い。

    ・民主化への要求と現実のギャップ 民主化を推進するには、みんしゅてきな手続きを踏む必要がある。
     指導者にしてみれば、それを強圧的に批判することもできなければ、既得権益を持っている人たちを強硬に切り捨てるようなことも難しい
     こうした時に、政治には時間が必要なのである。政治の資源は時間である。

    ・未来を拓くのは教育 台湾人というのはもともと教育に熱心な国民である。
     教育改革の中には、魂 の教育の推進がある。台湾では、心霊というが、だいたい、日本でいうこころのことといえば理解してもらえるだろう

    ・教科書を作り直す必要がある 歴史の教科書も、台湾そのものの歴史が書いてあるものでなければならない

    ・なぜ日本は停滞しているのか 第1に考えられるのが、(政治に)世襲制がはびこってしまったためである。第2に、官僚主義が変化の対応をおくらせてしまっている。第3はバブルやその崩壊の中でそれまでの方法が通用しなくなったが、そのため必要以上に自信喪失することになってしまったことである。

    ・日本は多様性を回復する必要がある。はぜ、日本人から柔軟性が失われ、必要以上に緊張しているのか、最大の理由は、日本社会が多様性を失っているためであるように私は思える

    ・政治家は大きく太く育てる かつてなら精神的な修養といわれたような鍛錬をおこなわなくなってしまった。むしろ日本人にかけているのは、能力や、利害から離れた発想に他ならない。
     能力と利害から隔絶した体験をすることによって、この偏りを矯正することにあると考えることもできる。

    ・アメリカを理解していない日本 あえて日本にいいたいのは、日本はもっとアメリカについて研究してほしいということである。
     日本はこの半世紀、ずっとアメリカの政策にあわせてきたことで、アメリカについてどの国よりも知悉していると思い込んでいる
     しかし私にいわせれば、それは全くの誤解であって、むしろ追随してきたことにより、アメリカというものが分からなくなってしまっている。

     アメリカを理解し、アメリカに日本を理解させる独自の方法とルートを持たなければ、結局升コムで報道されたことを信じるしかなくなるが、マスコムに流されている、アメリカの意図や日本の意図が正しいとはとてもいえない。

    目次
    序文 いまこそ日本人が読むべき必読書 早川友久
    まえがき
    第1章 私の思想遍歴
    第2章 私の政治哲学
    第3章 台湾の「繁栄と平和」の原動力
    第4章 いま中国に望むこと
    第5章 いまアメリカに望むこと
    第6章 いま日本に望むこと
    第7章 台湾、アメリカ、日本がアジアに貢献できること
    第8章 二十一世紀の台湾
    あとがき
    解説 「哲人政治家」が日本人に残した未来への希望の書

    ISBN:9784569901138
    。出版社:PHP研究所
    。判型:文庫
    。ページ数:288ページ
    。定価:860円(本体)
    。発行年月日:2021年02月
    。発売日:2021年02月04日
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    投稿日:2024.01.21

  • ジョアンナ

    ジョアンナ

    『台湾は日本にとって、単なる製品の輸出先の、
    南に浮かぶ島の一つではない。
    台湾は、日本にとっても生命線なのである。
    周知のように、台湾海峡は海路、空路ともに
    西太平洋の不可欠の国際通商路であり、台湾海峡
     の平和と安全は国際社会の公共財である。』
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    投稿日:2021.07.07

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