【感想】バグダードのフランケンシュタイン

アフマド・サアダーウィー, 柳谷あゆみ / 集英社文芸単行本
(22件のレビュー)

総合評価:

平均 3.8
5
4
7
1
0
  • 「名無しさん」への名付けと、領域国民国家の宿痾と

    イラク戦争後の政治的武力的混沌が生んだ精神的実存的混沌が、ひょんな弾みで怪物を生み出してしまう。
    怪物に肉体・魂・名前を各々に与えた銘々が辿る数奇な物語のひとつひとつが凄まじい。翻訳もよかったです。

    投稿日:2021.03.05

ブクログレビュー

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  • p-leid

    p-leid

    このレビューはネタバレを含みます

    粗筋に書いてある内容ではあるし、イラクという文化背景やその展開は、決して読み易いとは言い難いのだが、虚実不明な語り、それぞれ勝手な登場人物、現実と魔術的な内容が入り混じり、つい読み進む。
    文学的にも自爆テロの位置付け、名無しさんの存在の根源的意義など、文学的に追求すべきものはありそう。
    「百年の孤独」とか「悪魔の詩」「哀れなるものたち」とか、記憶にある感じだとそんな系統。

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    投稿日:2024.03.23

  • 村口諸氏

    村口諸氏

    このレビューはネタバレを含みます

    2005年、イラク、バグダード。爆弾テロが多発する町に住む人々と、「名無しさん」と呼ばれる怪物の話。
    息子の帰りを待つ老婆ウンム・ダーニヤール。爆発で友を失ったほら吹きの古物屋ハーディー。雑誌社で働き、社長のサイーディーに強く憧れるマフムード。占星術師を雇っている追跡探索局のスルール准将。
    それぞれの身に起こった出来事の裏で、ハーディーが爆発でばらばらになった遺体を寄せ集めて作った「名無しさん」の犯罪が全編に渡って描かれる。

    造主であるハーディーが単なる通過点でしかない、と断じられていたのが良かった。
    罪なき人の寄せ集めであり、それぞれの復讐のために行動していたはずの「名無しさん」が、意義を見失っていく過程がグロテスクだった。魂よりも存在に執着していく。死にたくないと強く思う。
    「完全な形で、純粋に罪なき者はいない。そして完全なる罪人もいない」
    訳者あとがきがとても分かりやすかった。顔のない人々。魂を圧倒する肉体=存在。それらが2005年のイラクの混乱を表している。
    愛する人や思い入れ深い場所なんかへの追憶は確かにあるが、そうした記憶は弱いもので、目の前に存在し直面する物体や状況に簡単に圧倒されてしまう、というのが良かった。端的に言うと心の弱さ、不確かさ、が前提にある。

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    投稿日:2023.02.12

  • saigehan

    saigehan

    手塚治虫氏の「どろろ」をイメージして手に取り、もっとグロくユーモアがあると思っていて。。。作品というよりも、イスラム圏というのがネックになってるのかもしんない。本の内容も自爆テロだし、要するに冗談だ通じない連中が背後に絡んでいるので、作品を面白おかしく提供することに必要以上に慎重になっているんではないかな。固有名詞もわかりずらいし、世界に入りにくかった。2回目は結構すんなり読めたけど、民族的に思い詰める傾向があり、「なんかおかしくない?」と疑問に持つような創造性が足りていないんではないだろうか?と感じた。続きを読む

    投稿日:2022.10.17

  • ymm25

    ymm25

    「作ったもののせいで自らが破滅していく」という意味でのフランケンシュタインだと思いきや、まんまの怪物側かい、いいよ、嫌いじゃないよ、このホラ吹き老人のヨタ話を物語にまとめました的な展開、むしろ好きだよ

    投稿日:2022.09.27

  • solala06

    solala06

    自爆テロをフランケンシュタインに繋げるって発想が凄いよなあ…
    今のこの時代の方が狂ってるのかもな…と

    投稿日:2022.08.22

  • NORIS

    NORIS

    2021.9.12市立図書館
    SNSで評判になっていてずいぶん前に予約して、順番がやっと回ってきた。アラビア語からの翻訳小説を読むのははじめてかもしれない。新学期で忙しくなる前に読み終えられますように

    ぶじ読了。おそろしくてぞくぞくした。登場人物名が頭に入りにくく、はじめの三分の一をすぎるぐらいまでは何度も何度も巻頭の人物紹介や前のページに戻ってばかりいてなかなか読み進まなかったが、半分ぐらいまで来たらぐっと入りこんで、最後まで完走できた。
    「バクダードのフランケンシュタイン」というゴシックかそれともSFか、さまざまなレトリックで重層的に読ませる作品だが、巻末の訳者あとがきのおかげで「バグダード/イラクはフランケンシュタイン」という含意もまた理解した。
    彼の地が抱く複雑な成り立ちや人々の感情は自分の理解の到底及ばないものだとあらためて思う一方で、いやいや彼の地にかぎったことではなく、世の中にはこういう「現存しないものへの記憶と執着」をめぐる混乱や問題というのは案外身近なものなのではないかと思い至りもし、自分のいる世界でも他人事ではないのでは…と背筋がゾクゾクしてくる。
    続きを読む

    投稿日:2021.09.12

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