【感想】デス・ゾーン 栗城史多のエベレスト劇場

河野啓 / 集英社学芸単行本
(104件のレビュー)

総合評価:

平均 3.6
19
33
28
7
5

ブクログレビュー

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  • なななな

    なななな

    何度もエベレストに挑戦したのは、彼にとって本当にやりたいことだったのか…?という感想を持った。
    本書ではあくまでも作者から見た栗城さんが描かれているだけなので、ほかの視点から描かれた栗城さんについても知りたくなった。続きを読む

    投稿日:2024.03.17

  • afro108

    afro108

    このレビューはネタバレを含みます

     奇奇怪怪で激賞されていたので読んでみた。栗城氏は情熱大陸の出演が印象的で、エベレストの登頂を手持ちカメラで撮った映像で魅了された記憶がある。そんな彼がどういった登山家でどのようにして命を失うまでに至ったかを丁寧な取材とともに記述した一級品のドキュメンタリーでとても興味深かった。
     登山家と聞くと寡黙に山に挑むようなイメージを勝手に抱いてしまうが、彼はそれとは真逆のスタイルだ。いかにマス受けするか考えて山を登ることを「夢の共有」と呼び、彼のファンダムを形成、スポンサーを獲得していくスタイルで人気を獲得していく。マーケティング戦略としては何も間違ったことはしてないのだけども、その大前提としては山登りに対して真摯な姿勢でいなければならないのに、その点を浅く見積もったことで彼は後年苦しむことになってしまった。見た目だけ繕って中身ボロボロといったことは政治を含め、ここ数年あらゆる場面で見られる事象であり、本当に気をつけてないと自分も当事者になってしまう恐怖を感じた。
     そして普遍的なテーマとして承認欲求をめぐる話といえる。登山家として認められたい、その動機自体は自然なことではある。しかし、彼の場合は目先の派手なことばかり追いかけてしまい、承認欲求をかっこよく、インスタントに満たそうとしたことにより無理が出たことがよく理解できた。なかでも強烈なのは指と酸素の話だろう。表面上は「夢をあきらめるな、必ず叶う」みたいな美辞麗句を並べておいて、裏では全くそれに見合わないダーティーワークを重ねているのだから目も当てられない。本著では「その姿勢をいかがなものか?」と糾弾するだけではないところが興味深かった。彼自身だけの責任ではなく、自らを含めたマスコミやそれを支持した大衆の責任についても考えさせてくる。SNS駆動である今の社会に生きる身に深く沁み入った。
     さらに本著の興味深いところは栗城氏側だけではなく著者の取材者としての承認欲求についても自戒的な点だ。著者が彼についてブログを書き始めてビュー数がどんどん伸びていき、インターネットに魅了されかかるシーンは生々しい。また取材者としてドキュメンタリーを作る際に自戒するきっかけとなったのがヤンキー先生こと義家氏だというのは驚いた。著者が取材したときのアツい思いを持った先生とは真逆になってしまった話はよくできた寓話そのもの。
     自戒的な姿勢が多く見られること、丁寧な取材を重ねていることで、死人に口なしで一方的に書いた結構エグめの内容(婚姻関係など)も下世話な印象を最小限に抑えることができていた。結果的に著者がブログを削除、ちゃんと取材をして本著を書き上げたことは今となってはとても重要なことかもしれない。それはネットに漂う文章ではなくフィックスされた文章の意味が過去とは大きく異なる時代だからこそ。Rawなものは即時性が高く魅力的に映るが、山を登るように一歩一歩地道に作り上げたものには勝てないと信じている。本著を読んで山登りに興味が湧いたので他の作品も色々読んでみたい。(自分では登れなさそうなので)

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    投稿日:2024.02.23

  • 名無し

    名無し

    このレビューはネタバレを含みます

    ほぼ一気読み
    無酸素単独、という言葉に縛られる
    ※エベレスト以外はそもそも酸素不要
    スポンサー集め、クラウドファンディング、ネット中継
    登山家と言うよりは芸人
    占い師との話がラスト
    傍から見ると無謀な挑戦としか思えない

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    投稿日:2024.02.18

  • もりー

    もりー

    人間という生き物の複雑さが、とてつもなく細かい描写で描かれていた。また、人を表面のみで判断することの恐ろしさを感じた。ネット界で集まる人の印象に対する意見は、良くも悪くも『その人自身』を変えてしまう可能性があること、また、自分自身もそうならないとは言い切れないことを忘れずにいたいと思う。
    「虚実皮膜」という言葉を初めて知った。
    うそとまことの境界が微妙なところにあり、虚構があることによってかえって真実味が増す、という近松門左衛門の芸術論らしいが、snsが日常にある現代では、誰もがそれを創り出してしまえる環境にあると思う。それも意図せずとも…。
    最後に。この本を通し、栗城さんの苦悩と生き様を知った私はどう在りたいか?
    改めて考えるキッカケを頂いていることに感謝。
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    投稿日:2023.11.14

  • Taichi Okamoto

    Taichi Okamoto

    このレビューはネタバレを含みます

    非常におそろしい本です。
    メディアの力によって奉られた
    登山家、栗城史多。
    ただただ、おめでたい人だったのかもしれない。
    無計画だったのかもしれない。
    芸人だったのかもしれない。
    しかし、それをつくりあげている共犯者は
    僕たち一般人なのである。
    最終章に震えます。

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    投稿日:2023.10.25

  • きんぎょ

    きんぎょ

    栗城さんのことは、亡くなった登山家としてしか知らない状態で読みました。
    私が読んだことのある本の、どんな登山家とも違う彼の人物像は、熱量が高く行動力があり、人懐っこく、軽率で自己中で。こうやって、ひとつひとつ並べていっても、実像にたどりつけたのかは分かりません。

    エベレストに真摯に向き合う姿にフォーカスした話ではなく、山を登るという手段を使い、何者かになろうとした一人の人間のものがたりとして興味深く読みました。
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    投稿日:2023.04.25

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