【感想】Z世代~若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?~

原田曜平 / 光文社新書
(41件のレビュー)

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ブクログレビュー

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  • yonogrit

    yonogrit

    1012

    原田曜平 (はらだようへい)
    1977年東京都まれ。慶応義塾大学商学部卒業後、博報堂入社。博報堂ブランドデザイン若者研究所リーダー等を経て、現在はマーケティングアナリスト。2003年度JAAA広告賞・新人部門賞を受賞。02年から現在にいたるまで1万人を超える若者(大学生・社会人)と活動を共にしている。若者研究の第一人者であり、「マイルドヤンキー」「さとり世代」「伊達マスク」「女子力男子」「ママっ子男子」など、若者消費を象徴するキーワードを世に広めた。著書に『近頃の若者はなぜダメなのか』(光文社新書)、『さとり世代』(角川oneテーマ21)、『ヤンキー経済』(幻冬舎新書)、『平成トレンド史』(角川新書)などがある。テレビ出演多数。

    もちろん、 12 年の第二次安倍政権発足以降、アベノミクス景気もあり(アベノミクスには賛否両論あるが、若者目線で見ると、有効求人倍率が大幅に改善した点は大きなプラスとして捉えられる。ただ、この点も、長く続いた少子化により人手不足が生まれたからとの見方もある)、経済状況は好転しましたが、それはあくまでここ数年の話であり、基本的に「ゆとり世代」の生きた時代のほとんどは、彼らより上の世代が若者だった頃と比べると、経済的に大変暗いムードの時代だったということができます。

    「ゆとり世代」の上の世代である団塊ジュニア世代(1971~ 74 年生まれ)やポスト団塊ジュニア世代(1975~ 82 年生まれ)も、就職活動時期以降、暗い時代を過ごしてきましたが、それ以前の思春期の頃までは日本経済が強く、日本のプレゼンスも世界的に高かった時代であり、彼らの人生の前半戦は大変明るい時代だったと言え、「生まれながらの不況」下を生きてきた「ゆとり世代」とは大きく異なります。

    しかし、私の世代でインスタグラムを熱心にやっている人は多くなく、私のフォロワーには友人があまりいません。私のフォロワーのほとんどは、たぶん私のことをテレビや本で知った人です。つまり、私が自分の投稿で「いいね」をもらうということは、道端で大道芸をやって、知らない人に拍手をもらうのと同じくらいハードルが高いことなのです。  一方、彼らのインスタのフォロワーの多くはリアルな友達で、かつ、彼らの間では友達の投稿に対して「いいね」を押すことが、半ばマナーのようになっています。いわば、サクラを集めて道端で大道芸をやり、拍手をもらっているのと同じような状況で、彼らに下に見られるのは到底納得がいきません。加えて、「ヤラセのいいね」をもらって自己承認欲求を満たせるものなのか……? とも疑問に思いますが、それでも投稿し続けるということは、半ばヤラセと分かっていても気持ち良くはあるのでしょう。

    今や「れいわ新選組」の代表を務める政治家であり団塊ジュニア世代の山本太郎さん(1974年生まれ)が、高校時代に「天才・たけしの元気が出るテレビ!!」の人気企画だった「ダンス甲子園」で、水着に水泳帽、素肌にローションを塗って胸に「メロリンキュー」の文字を書き、「メロリンキュー!」と叫んでいたことを考えると、上の世代が若者だった頃の方が「自己承認欲求」や「発信欲求」が強かったと感じる人もいるでしょう。

    何より、大学生の成人男子が母親に自分の行動を制限されることを素直に受け入れる、ということは、かつての日本男児の間では少なかったと思います。 「母がコロナで外に出るなと言っているので、原田さんと行くことになっていた宮崎出張に行けなくなりました」と数名の男子に出張の同行をドタキャンされたこともありました。  もちろん、未曽有のコロナ禍ですから、親御さんが心配する気持ちも分かりますし、コロナにかからないように行動に気をつけるべきだとも思います。しかし、長幼の序が厳しかったかつての時代であれば、みんなでドタキャンして上の世代に迷惑をかける選択はしにくかったと思いますし、多少のリスクを冒してでも、自分のやりたいことを貫いた若者が多かったのではないでしょうか。

    また、仲が良い異性を母親に会わせ、ゴーサインが出たら付き合う、という話もZ世代からたくさん聞くようになりました。子供の結婚相手に親があれこれ口を出すのは昔のお見合い全盛時代のようですが、ポイントは、子供がそれを嫌だと思っていない点にあります。

     思春期の男子も、母の日に花束やプレゼントを贈るようになってきたので、この数年、「母の日市場」が拡大しています。母親と2人で海外旅行に行く大学生男子や、家族との写真をSNSに載せる子も増えています。親と共同で洋服や靴を使う子も増えていますし、これも極端な例だとは思いますが、お父さんと靴下を共有している女子高生もいました。

     ある恋愛リアリティー番組に出演したことがある高校生男子は、恋愛リアリティー番組がZ世代に人気ということもあり、インスタグラムにたくさんのフォロワーがいます。いわゆる「インフルエンサー」として、様々な企業から、その企業の商品をSNSで宣伝するとお金がもらえる、いわゆる「案件」と呼ばれる仕事をしており(これは「仕事」と言ってもよい)、月に 20 万円くらい稼いでいるそうです。  これ自体はすごいことだと思いますが、高校生なのに常にタクシーで移動し、おじさんの私が羨ましくなるくらい豪快なお金遣いをしていました。完全に図に乗っており(本人にその自覚はないだろうが)、大学にも行かず、これで稼ぐと言っていましたが、今はもう恋愛リアリティー番組に出ていない彼の人気や注目度は今後下がっていく一方で、きっと案件も減っていくことでしょう。そもそも月に 20 万円では、大人になってから豊かな生活を送ることはできないのですが、あまりそのことは分かっていないようでした。

    また、フリマアプリのメルカリの普及などの影響もあります。メルカリでは希少価値の高いものであれば買った時の値段以上で売れたり、普通のものでも買った値段の7割くらいで売れたりする――つまり、そもそも売り値の3割の値段で買うことと同じなので、「消費離れ」を起こした「ゆとり世代」と比べて、Z世代は消費を少し 躊躇 しなくなっているように感じます。

     この「間接自慢」という手法は、最近では「匂わせ」と表現されます。  例えば、一般人の女性がある男性アイドルと付き合っているとします。男性アイドルは職業上、彼女がいることを絶対に公表できません。でも、一般人である彼女はどうしてもそれを周りに言いたい。言ってはいけないルールだということは分かっているけれど……。だから、その男性アイドルのSNSに投稿されたのと同じ部屋で撮った写真を投稿し、その男性アイドルの熱烈なファンにそれを気づかせ、ひょっとしたらこの2人は付き合っているのではないか……と想像させるように仕向けるのです。  ちなみに、この女性がこうした匂わせ行為をするのは、人気男性アイドルと付き合っていることを周りに自慢したいのと、犬が自分のテリトリーを他の犬に示すために電柱におしっこをするのと同様、マーキングのためでもあります。

    LINEについては言わずもがな、ほとんどの若年層が利用しています(図4‐29)。しかし、どのクラスタでも1割くらいの若年層はLINEを利用していません。

    もちろん、彼らは上の世代に比べて人口が少ないし、所得も低いですが、前述したように「8ポケッツ」とも言われ、身の丈以上の消費行動を行うことができます。  人口の少ないZ世代を単独で狙っても、市場ボリュームとして小さ過ぎると考えるのであれば、未曽有の大ヒット映画『鬼滅の刃』を参考にするとよいかもしれません。

    前述したように、Z世代の価値観の最大の特徴は、まったりすることを意味する「チル」と過剰な自意識を表す「ミー」の二つです。ですので、これから挙げる全てのツボには、前提としてこの二つの特徴が横たわっている、ということをご理解下さい。

     日本における同性愛の記録は、古くは日本書紀の時代(720年~)からあります。そこから一気に飛びますが、1800年代後半から同性愛が社会で問題視されるようになり、それが1990年くらいまで続きました。   90 年代になると、WHOが同性愛は異常なことではないと発表。 94 年には日本の文部省(当時)が同様の見解を示します。そして、有名人が少しずつ同性愛を公表するようになっていきます。テレビでも古くはおすぎさんとピーコさん、近年はマツコ・デラックスさんを始め多くのLGBTQの方たちが人気者になっています。  そして今、さらに進展し、LGBTQは問題ではない、という「否定の否定」の段階から、Z世代の間では、公表する姿勢がむしろ「かっこいい」という完全肯定に変わりました。

    さて今、この韓流ブームに異変が起こり始めています。正確に言うと、韓国ブームにとって代わるブームとなるのか、あるいは韓国ブームに加わる形になるのかは分かりませんが、実は、中国ブーム(華流ブーム)が起こり始めています。  例えば、ティーンが選ぶ「2018年流行ったものランキング」の第1位は動画アプリの「TikTok」、第2位はタピオカ店の「Gong cha」、第3位はゲームアプリの「荒野行動」でしたが、これら全てが中華圏発、いわば韓流ではなく華流商品・サービスなのです(正確に言うと「Gong cha」は台湾発)。

    「中国の製品は品質が悪そうだ」「中国という国自体が信用できない」といった、これまで日本人が多かれ少なかれ抱いていたイメージは、Z世代の女性の間で完全になくなってはいませんが、少なくなってきています。  韓国と違い、「中国を旅行したい」というZ世代の女子はまだ少数派だとは思いますが、「嫌韓・嫌中」のおじさまたちも、「日本のZ世代女子研究」という目的で、韓国や中国の市場を研究しなくてはいけない時代になりつつあります。  現在、日中、日韓の間では、決して良好とは言えない政治的緊張関係が続いていますが、もともとどの国の市場でも、女性の方が政治と消費を切り離す傾向が強い、と言われています。また、物心ついた時には中国が経済大国としてすでに存在していたZ世代にとって、中国はすごい国というイメージがあり、この点も上の世代とは感覚が異なっていそうです。
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    投稿日:2024.02.08

  • taka_2

    taka_2

    マーケティングする人が、若い人を理解するために読む本なんかな。
    2020年の本なので、2023年末現在に買う本じゃなかった。タイトル買いすると、こういう失敗もあるね。
    チル&ミーがキーワード。
    チルってなんか、意識高い系の反対な気がした。出来るだけ労力をかけずに、少しでも成果を得る的な。Z世代のポッドキャスト聴いてるけど、まさにそういう感じなんだよな。
    自分は昭和の価値観で生きてるから、彼らの行動は良く分からないこともあるけど、興味をもって見ていこうかなと思いました。
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    投稿日:2023.12.10

  • たくみ

    たくみ

    第1章と第2章には学びがあった。しかし、それ以降は事象の列挙が続く。Z世代のことを全く知らない人が読むには新たな知識が身につくのだろうが、Z世代の人が読むには表面的な記述に留まっており、充実感は得られない。続きを読む

    投稿日:2023.11.22

  • 城田逸

    城田逸

    『Z世代 若者はなぜインスタ・TikTokにハマるのか?』
    著者 原田曜平
    光文社新書 2020年

    この本は「さとり世代」「マイルドヤンキー」などの言葉を生み出した若者の専門家と言える原田曜平さんが今の若者世代であるZ世代に関しての調査をまとめた本です。

    この本ではZ世代には大きく2つの特徴があると書いており、それがチルとミー意識です
    チルとは簡単にいうとまったりする感覚であり、今の社会の流れ(働き方改革やワークライフバランスなどで競争を重視しなくなった)と比例して大きくなっているのだという
    もう1つがミー意識であり、これは本書では「一見見えない過剰な自意識」と書かれてある。これはZ世代が生まれてから割とすぐにSNSが普及し始め、それに伴う形で自分のことを発信するようになり、その中で気に入らない相手はブロックするなどして、自分のスタンスを守ってきた表れだと筆者はいう。

    主にこの2つの特徴がZ世代をZ世代たらしめており、ゆとり世代とは大きくことん流転であると書いてある。

    私が面白いと思った箇所を引用します。それはZ世代が意識高いことをしているときに最近の若いものはそういうのに理解がある人たちになったという世間の声を斬る形で書かれている文章です。

    「最近の若者はすごいね。皆、ボランティアやっているんでしょ?」「これから企業はSDGs(持続可能な開発目標)をしっかり考えていかないと若者たちにそっぽを向かれる」「最近の若者は健康意識が高いからうちの商品もそれなりに対応しないと」「今の若者は地方創生に興味があるから、今後、東京一極集中が緩和されていくだろうね」ー。
    この10年近く、こうし類の「今の若者は意識が高くなっている」といった説を、大企業の方から何度も聞かされました。
    (中略)
    どんな理由であれ、環境にいいこと、体にいい行いをするのは悪いことではありません。しかし、それが「ファッション」からきている行為や意識であることを企業が理解しているかどうかで、マーケティングの効果も大きく違ってきます。

    このように表面を見ていたら、すごいと思えることでも、実態はそうではなく、ただ単なる時代の流行であっただけというものは多いのだろう。いくら意識が高くても、それがファッションならまた時代は移り変わるのかもしれない。けれど、そこで得た経験や知識は無駄ではないはずだし、そこから広がる世界もあるのだろう。そのような中で、何ができるか探るというのが最も賢い選択であると考える。
    ちなみ、全世代で定量調査のアンケートにある「国の支援は頼りにならないと感じる」という項目と「日本への不信感が募った」という項目が顕著な伸びを見せているそうだ。これは換言すると日本の福祉離れと捉えられるのかもしれない。
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    投稿日:2023.10.22

  • TAKEYA

    TAKEYA

    流し読みをしましまたが、若い世代がこれからの社会を作るというのは間違いない。 彼らの言葉をきちんと聞いて学び、社会人として育って行けるように見守り、アドバイスをしてゆこう

    投稿日:2023.08.13

  • 萌衣

    萌衣

    私はZ世代の人間だけど、そもそもZ世代とはなんぞやと思ってたのでそこから説明があったのもなるほどと思ったし、著者のZ世代に対する分析がめちゃめちゃ刺さって面白かった。
    Z世代よりZ世代を分かっている1冊!続きを読む

    投稿日:2023.08.09

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