【感想】地下鉄道

コルソン ホワイトヘッド, 谷崎 由依 / ハヤカワepi文庫
(27件のレビュー)

総合評価:

平均 4.1
9
11
6
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ブクログレビュー

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  • sakibear

    sakibear

    奴隷制度の残るアメリカ南部。
    奴隷が逃げ出すために、地下に鉄道が作られていた、という設定。
    地下鉄には駅があって、それぞれの駅から地上に出るごとに全然違う場面に転換する。今っぽい視覚的効果だし、各場面の残虐さもネットドラマみたいな印象は拭えない。
    それでも、奴隷制度の残酷さや理不尽さは十分に伝わるし、自由を求めて進んでいく主人公と、途中で命を落とす仲間達や支援者達に、胸が痛む。
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    投稿日:2024.02.26

  • Mar

    Mar

    綿花農園に数多く囲われている黒人奴隷たち。その農園主からの過酷な体罰から逃れるため、たびたび奴隷たちが逃亡を図るも、一人の女性を除き逃げ落ちた者はいない。そんな逃亡者を母にもつ奴隷少女が一緒なら、逃亡できる運にも恵まれるのではと、奴隷の青年に一緒に逃亡をすることを、少女は持ちかけられます。

    見つかれば見せしめとして体罰の末に命を奪われ、その協力者にも残酷な仕打ちが待っています。
    逃亡手段は、地下に張り巡らされた秘密の地下鉄道。はたして、それに乗り継いで、南部から脱出することができるのか、というお話し。

    過酷な労働、残虐な農園主、自警団、そして執拗に追い詰める奴隷狩りを生業とする白人など、どこにも安寧など存在しない閉ざされた世界。まるで農園単位にディストピアが存在していたかのよう。話し自体はフィクションでも、そのような人を人と思わない風潮が、ほんの約150年前の南北戦争当時まで普通であり、現代でも人種差別について、ニュースで報道されるのを見聞きします。それにしても、『アンクル・トムの小屋』を超える描写に、人間の残忍さを垣間見た思いです。

    黒人奴隷が、いつから、どのように、どれだけの人数が、どのようにして、どれほどの期間にわたって大西洋を渡り、どのような扱いを受けてきたか…そのような過酷な歴史に対して、もう少し知っておくべきなんだなと、改めて気付かされました。

    なお、地下鉄道とは、実際にあった奴隷制廃止論者の組織のコードネームです。当時、まだ地下鉄は走っていませんでしたが、この小説ではあたかも実際に地下鉄が存在しているように書かれていて、ストーリーに幅を持たせることに成功しています。

    ピュリッツァー賞、全米図書賞、アーサー・C・クラーク賞を受賞
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    投稿日:2023.12.09

  • ppon

    ppon

    過酷な人生、なんていう言葉が甘っちょろく感じてしまう。
    逃げるという行為には、残虐な仕打ちがついてくる。
    協力者にもおよぶ、そのいたぶるような残忍さ。
    それらを目の当たりにしながらも前へ進むコーラ。
    読んでいてヒリヒリとした感覚に包まれた。
    虐げる側も虐げられる側も、とがった部分をもっていないと生きてゆけないのかもしれない。
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    投稿日:2023.11.19

  • 土橋俊寛

    土橋俊寛

    多数の受賞が本作の評価を確固たるものとしている。それでも、黒人奴隷の歴史に馴染みのない日本人の私にとって、読書中の没入感は今ひとつだった。いや、ひょっとすると、その原因は題材ではなく、重要な登場人物の心の1人である奴隷狩人の心の機微に首を傾げながら読んだからかも知れない。制度の瑕疵と評する逃亡奴隷の娘に対し、自分の心情を吐露しながら長々と興味深く会話ができるのかどうか。報酬をふいにしても自分の手で殺したくなるのではないか。

    主人公は逃亡中に地下鉄道の関係者に匿われる。「見えない鎖」に自由の意味を自問する場面がある。毎日、満員電車に揺られながら会社に通うサラリーマン諸氏にとって、格別新しい問いかけというわけではあるまい。
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    投稿日:2023.07.20

  • とりあえず

    とりあえず

    黒人奴隷の少女の逃亡劇を描いた小説。小説とはいえ、アメリカの奴隷制度という実際の状況の基づいた設定になっており、奴隷制度時代がいかに過酷なものであったのかを感じることができる。

    フィクションとはいえ、ここにかかれているような物語があって、はじめて現在のアメリカが、世界があるのだと思わされる。もっとも、過去にこんな時代があったという感傷的な作品ではなく、今まさに進行形で起こっていることにもあてはまることができる恐るべき作品だと思う続きを読む

    投稿日:2022.09.03

  • あみちゃん♂

    あみちゃん♂

    黒人奴隷の少女が様々な犠牲を払いつつ逃亡し続ける物語。奴隷逃亡を支援する目的で地下に張り巡らされた鉄道を使って。
    これは最高の良書。なぜなら全く眠くならない。アメリカの奴隷制度の歴史というノンフィクションの上に、冒険活劇風のフィクションが乗っている。自分自身、初めて知ったことも沢山。無駄な例えや修飾がないのにリアリティがある。実時間とは無関係にスピード感もあって飽きない。突然小話風に現れる、人物にフォーカスした章など、メリハリもある。
    物語と面白いのはもちろん、アメリカの奴隷制度を知る上でも勉強になる。奴隷は人間とは別の生物扱いなのか?でも、性の対象にしてるんだから、やっぱり人間だと思ってるんだよな…、など。
    日本にも士・農工商・穢多非人みたいな無茶苦茶な制度があったんだから、これを読んで頭ごなしにアメリカの歴史を批判するのも間違い。中学生ぐらいの必読書にしてもいいんじゃないかと思ったりする。
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    投稿日:2022.04.13

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