【感想】人は感情によって進化した

石川幹人 / ディスカヴァー・トゥエンティワン
(25件のレビュー)

総合評価:

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3
1

ブクログレビュー

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  • 1to52

    1to52

    このレビューはネタバレを含みます

    現代社会では時として感情がお荷物扱いされる。

    しかし、欲求と感情の根っこは同じ。
    進化的に感情は欲求を叶える手立てとして有効である/あった。
    本書はそんな切り口からの洞察であふれており興味深い。


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    怒り、その目的やいかに?
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    ニホンザルの群れでの実験。
    餌を撒くと、あちこちでニホンザルが餌を食べ始める。
    そこで実験者は一頭の猿に近づいて、そのサルの
    近くの餌を拾って一緒に餌を食べる真似をする。

    そのとき、実験者が「怒り顔」お面を被っていくと、
    その猿は威嚇と攻撃をしてくる。これは「笑顔」でも同じ。
    けれど「怯え顔」なら威嚇はされても攻撃はされない。
    それどころか餌も拾える。

    実は、怒りは上下関係の確立と確認が目的。
    怒りに対して退いた方が負けで下位となる。

    威嚇してきたサルには、群れの中で上位にいることが大事。
    「カリカリすんなよ、餌は十分にあるから仲良くしようゼ」
    そんなことを「笑顔」で示されたらイヤなわけ。
    威嚇したサルは、実験者が怯えて下位を表明して欲しかった。
    なのに「笑顔」で「怒り」を拒絶したから攻撃してきたわけ。

    群れをなす動物には「怒り」に有効性がある。
    この怒りの感情は、チンパンジーなど他の動物にも見られる。
    生得的で、古くから受け継がれる原始的な心の状態である。


    何か問題が起きたときに「怒る」人っていますよね?
    このとき、問題の解決策だけを話しても「怒り」は消えない。
    むしろ「怒り」は深まる。だって、問題の解決は二の次だから。

    その証拠に、社会的に怯えを示すべく、誰それがいかに悪かったか、
    誰それが間違っていて「怒る人」が正しいかなど、上下関係の確立と
    確認ができる振る舞いをすると「怒り」が穏やかになっていく。
    この上下関係が口先だけではないと示すべく、謝意と位置付けて
    問題解決策の提示と実践がなされると、さらに「怒り」は静まる。


    群れの中で上位だと、自分の分前や権利が確保できる。
    だから、処遇が期待値を下回ると「怒る」で解決を図る。
    「怒り」が通じれば、今すぐに分前や権利が回復できる。
    以降も、自分にとって公正な分前と権利が得られるようになる。


    なぜ、上から目線が不快なのか?
    なぜ、上から目線に「怒り」を感じるのか?
    それが上下関係の確立と確認に相当する行為だから。
    また、相手が自分の上位ではないと思っているから。

    一般人がイチローから野球のアドバイスをされても、
    それは上から目線と感じないし「怒り」も感じない。
    自分がイチローと同格かそれ以上になれると信じていない。
    よって、自分の方ですでに上下関係を認めている。
    要は、失うものがなく、生存と生殖に殆ど影響がないから「怒り」を感じないのである。




    そんな感じで、恐怖、不安、罪悪感、愛情、嫉妬、後悔、
    自己呈示、楽しさ、悲しみ、希望、信奉、猜疑心、道徳、
    無力感などについて洞察されている。

    様々な感情が、原始時代から現代に到るまでそのように機能しているか
    気になる人は...本書を読んだ方が早い。

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    投稿日:2020.12.01

  • 北舘一弥

    北舘一弥

    【#今日の読書 No.2】 https://amzn.to/2R3mBgp
    行動の原動力は感情なので、その仕組みを学び直すために、読んでみました。

    こんな目的で、こんな本を読んでるのかぁ~って感じで、参考にしてもらえたら嬉しいです。

    1日2冊以上(年間750冊以上)の読書を目標積み上げ中です。
    お手数ですが、書評はリンク先のレビューをご参照ください。
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    投稿日:2020.04.01

  • maple

    maple

    進化心理学なる人類の進化論と人間の感情表現について書かれている。
    自分では感情を露わにすることへの抵抗感を、心理学的にうまく解説していている。何が大切で正しいかは今一度考えさせられる

    投稿日:2019.06.12

  • prepre1212

    prepre1212

    どう感情が進化したのか?

    →自己呈示欲求の目的は、自分の得意な技能を表明し集団に貢献すること
    組織に貢献できてるということは、自己呈示が受け入れられ、メンバーとして認められること

    投稿日:2015.05.04

  • nackybg

    nackybg

    石川先生の進化心理学
    心理が遺伝することや生存競争に心理が関わっていることを解説
    自分の心を省みるのにいい
    そして、今 勝ち組のあなたは生物として勝っているかは..

    投稿日:2013.12.08

  • shigeru0127

    shigeru0127

    感情。

    そう聞くとマイナスなイメージを持つ方も多いだろう。
    仕事やプライベートでもよく、「感情的になるな」と注意される。
    怒りや悲しみ、不安は無いほうが楽に生きられる。

    ただ、この本では、人がサルと違い、進化できたのは
    感情によるものだとしている。

    「不安とはばくぜんとした恐怖が持続する状態だといえます。狩猟採集時代に人間の想像力が高まり、今ここに直面する事物以外に、創造物に対しても恐怖をいだくようになったのです。『今ここ』のみに生きている、他の動物にはあまり見られない感情なのです。」(P.40)

    人間は「今ここ」だけでなく、過去や未来に対して考え、感情をいだく。
    それは時として、マイナスにも働く。
    しかし、人間は過去から学ぶことができるし、未来に希望を持つこともできる。

    感情を頭ごなしに否定することに異議を申し立てたい。
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    投稿日:2013.03.17

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