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川上弘美 / 新潮文庫 (139件のレビュー)
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rio
サクサク読める短編集。 電車移動とかには丁度いい 「このたびは、あんまり愛してて、困っちゃったわよ」 この台詞が好きだった
投稿日:2024.03.11
ハンバーグ
二人ともたくさんの嘘をついたに違いなかった。いつもの逢瀬に必要な何倍もの嘘を。しかし二人して、なんでもない顔をしていた。
投稿日:2023.10.11
ただ
裏表紙を見ると『よるべない恋の十二景』らしく、それらに、たよりとするところが無いのかどうか、私には分からないが、川上さんの数々のこと細かい描写に、胸を突かれるような愛おしさが湧いてくる事は確かである。… それは、最初の「いまだ覚めず」だけでも枚挙に暇がなく、タマヨさんが、十二年前の写真を捨てずに取ってある事や(しかも、壁一面に貼ってある中のどこにあるか、瞬時に分かった)、「仕事ばっかりしてる」「わたしも」の『わたしも』や、『あなたと手つなぐの、すきだった』や、「なにしてあそぶ」と、少しお化粧をして少しよそいきになったりと、言葉だけだと何ということも無いように思われるが、物語に於ける、これらの言葉の端々には、人を好きだという特別感のある思いが密かに、しかし、確かに息づいているのが、私には感じられるような気がして、読んでいて切なくなる。 また、「冬一日(ふゆひとひ)」に於いて、『百五十年生きることにした』は、それほど心には響かず、寧ろ、『私の声が、少しだけ、真剣にすぎた』から、『「そんなこと、ない」。こんどはできるだけ真剣にならないように気をつけながら、私は答えた』への私の想いや、『玄関の狭い土間に並んで靴をはき』にグッとくるものがあり、台詞もそうなのだが、それに続く、なんてことのない描写に感情移入させられるのは、きっと、そこでも言葉にならない台詞が読み手それぞれに感じられるからだと思い、こうした、その人の見えない大切なものを思い起こさせてくれる、川上さんの文章には、一言では説明できないような感情が、じんわりと込み上げてくる。 そして、「春の虫」と「冷たいのがすき」、それぞれに共通していたのは、好意的な部分だけではないところも受け入れているところで、前者は、『羨ましさのなかには、羨ましさだけではない余分ないくつかの気分も混じっていて、それは少々居心地の悪いものだった』に、後者は、『いじらしく、また、うとましく、感じるかぎり、僕は章子から離れられないのだと思う。いじらしい、だけならば、こんなに続かなかっただろう』にある、その複雑な気持ちは、自分だけに開いてくれている様々な一面に人間らしさがあることに、自分自身と似通った安心感を感じられたからではないかと思う。 それと、本書に度々登場する言葉として、『十年』があり、それは、十年ぶりに会いに行くであったり、十歳年上の男と別れたであったり、十年来の付き合いであったりと様々なシチュエーションではあるが、そこに見えるのは、人は単純ではないけれども、それとは別にある素直な単純さも魅力なのではないかということなのかもしれず、それは恋愛を経て、変わったところと変わらないところ、人間として成長できたなと感じたり、相変わらずだなと感じたり、新たな考え方を身に付けたと思ったら、それでも譲れないところはあると思ったり、十年経ってもどうしたらいいのか分からないと感じたり、おそらく、それらの思いのひとつひとつは、何年経とうが、その人の芯の部分として、もしかしたらブレずにあり続けるものなのかもしれないし、実は、そう見えるだけで、本当は物凄く大きな変化を遂げているのかもしれない、そんな変わるものと変わらないものを持ち続けて生きていく人間への愛しさと、それらを一人で抱えきれず共感を求めたいがばかりに、恋があるのではなんて思ってしまったが、あまりロマンチックではありませんね。 それでも、人を想うことの素晴らしさと、そのかけがえのなさを私に教えてくれた、「ばか」の言葉には、ロマンチックだけではない、個人的にそっと大切に包み込んでおきたいような真摯な想いに、私は心打たれたのである。 『男とのことがらは、藍生にとってあまりにうつくしいことがらなので、誰にも話すことはできない』 『女ともだちと愉しんだのと同じだけ、男のことを深く感じたのである』続きを読む
投稿日:2023.05.26
pokke
何か特別な事が起こるわけでもなく、そこら辺に転がってるような何気ない日常の一場面を切り取った感じなのに、引き込まれる川上ワールド。すっかり魅了されてしまった。『冷たいのがすき』が特に好き。章子の言葉の…選択や感覚がなんとも言えず良い。不倫や浮気ではなく“公式ではない恋愛”とか、「カチンとくる」ではなく「こちんとくる」とか。電話のくだりはすごくわかる。「電話をくれないひとになって、そのうえで、しばしば電話をください」 どの話も、幸せで、悲しくて、微笑ましくて、さみしくて、心地いい、不思議な感覚になりました。続きを読む
投稿日:2022.10.22
chisa
川上弘美さんの本は不思議。 短編で、明らかな小説なはずなのに、途中エッセイなのかと思ってしまう瞬間が何度もある。 もう一度読み返すと、やはり小説。ファンタジーでもないのに世界観が少しふわふわしていて面…白い。続きを読む
投稿日:2022.09.26
kazekaoru21
幸せなのにさみしい。 主人公の多くの「私」には名前が出てこない。それがよけいに自分に語られ、問いかけられているようだった。 心のままの感情を持ってしまうことへの辛さ、心細さとか、人との絡まる感情は、ど…うにも消化できない。 多くは「ままならぬ関係」だったりするが、それでもふふっと笑えたり、不確かなものだって存在するんだと、人の心の儚さが、ずしっと刺さった。 無機質でお人形さんみたいに感じる登場人物…そういう、ゆめうつつのところが、それはそれで好きなんだと思う。笹蒲鉾を持ってタマヨさんに会いに行った「私」は、私でもあった。空想の中で会いたい人に会いに行く、つい移入してしまう。 「夜の子供」「冷たいのがすき」が特に印象に残った。 表題作「おめでとう」西暦三千年一月一日のわたしたちへ、世紀末で孤独に生きる女性。時々会う「あなた」。 永遠に漠然と憧れを抱いていたかもしれなかった。しかし、仮に永遠が存在するなら、とてもこわい、しんどいものだと思わされた。とても好きな短編だと思いました。続きを読む
投稿日:2022.02.18
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