【感想】フォト・ドキュメンタリー  人間の尊厳 いま、この世界の片隅で

林典子 / 岩波新書
(24件のレビュー)

総合評価:

平均 3.9
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3
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ブクログレビュー

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  • badboi

    badboi

    本書で今まで目を向けないできたことを、知ることとなった。自分が育ってきた環境や、いかに平和ボケしているかを痛感した一冊だった
    ネットを見ていてもたまにこのような記事や、写真をみることはあるが、本書のあとがきにもあった通り見たくないから見ないことができるのが私たちで、私はショッキングである内容に目を背けて来たが、見たくないと思っていても目を背けられない問題に直面しながら生きなければいけない人がいると言うこと、筆者の諦めずに世界で起きている様々な問題を伝えようと言う姿勢が写真や文面からひしひしと伝わり、自分に対し情けなさや恥ずかしさを感じた続きを読む

    投稿日:2023.07.23

  • つー

    つー

    日本人の常識では考えられないことが世界各地では起きている。日本人とまで言わなくても、私自身がこの様な世界の事実を知ったのは本書が初めてであった。ニュースで流れるウクライナ戦争、アフリカスーダンの内戦も繰り返し何度も放映され、気がつくとその様な大きな出来事をテレビやインターネットから断片的に得ているだけであった事に気がつく。ニュース番組も勿論視聴者の興味を惹きつける事件や出来事を優先的に流さざるを得ないと思うし、世界で起きてる出来事全てを流すことは時間がいくらあっても足りない。だから大きなニュースから優先的に、事の重大さに比例した時間枠が取られるのは当たり前だ。それを否定するつもりも無い。
    だが考えてみるとそれも随分身勝手だなと感じる。要するに自分主観な考え方なだけだ。ニュースで流れる内容だけが世界の全てでは無く、そこに暮らしている人から見た重大さは私とは異なる、こんな当たり前の事でも日常生活では容易に勘違いして生きている。
    本書は筆者の学生時代の経験やその後ジャーナリストを目指す中で感じてきた想いをストレートな文章とその場を切り取る写真で構成されている。私は趣味レベルの写真技術しか無いから、技術などは語ることが出来ないが、そこに居る人々の感情が写真の表情から十分に伝わってくる。勿論文章があることでより一層鮮やかさを増しているのは間違いないが、筆者の想いは十分に伝わってきた。
    馴染みのないアフリカの国々、観光地とでしか知らないアジアの国、そしてソ連崩壊後の東アジアの独立国。そこには我々の常識では到底考えられない事件や慣習が存在する。驚きと恐怖で読み進めるが、実際にそこにいた人々や筆者にとっては想像できない様な悲しみや絶望を感じさせたであろう。自分の病気も知らない子供や、それを見守る親族たちのどこにもぶつける事が出来ない叫びを感じる。
    そして震災で原発事故により入る事さえ困難だった地域での活動では日本人の良さも改めて感じる事が出来た。同時に未曾有の被害をもたらした地震と津波の恐怖を瓦礫の中に見た。
    私は如何に自分目線で世界を捉えてしまっていたかという深い反省とニュースやジャーナリズムの限界、困難さを理解する事となった。
    筆者も伝える事を仕事にし徹底的に懐に入ろうとするがそれも簡単な事ではない。言葉の壁、習慣の違い、経済的な問題など苦しい状況でも決して諦めない筆者の姿には世界が知らない、目を遠ざけている真実を伝えたいという想いが十分に伝わってきた。
    危険な世界ではある。だからこそ価値がある文章や写真なのではない。危険な世界の背景にどの様な原因や経緯があるのか、真実に立ち向かっていく筆者の姿勢を垣間見る事で、視野を広げると同時にその様な真実に立ち向かうには我々に何が必要なのか、それを問いかけられ続ける。真実はそれを受け入れて懸命に生きる人々それぞれに存在している。
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    投稿日:2023.04.29

  • かな

    かな

    同じ女性として、ショッキングな内容が多い。
    特にキルギスでの誘拐婚
    都市に住む女性が無理やり郊外の昔ながらのコミュニティが根付く場所へ誘拐され、そこの男性と結婚させられる。親族の説得や「伝統だから」という社会観念から、根負けして結婚を受け入れる。
    相手も、一度か二度しか会ったことないのに…
    写真だからこそ、被害者の絶望や諦めが言葉以上に伝わる

    「写真を撮るなら、被害者を助けるべきなのでは?」という意見がある一方で、著者の立場は、自分が育ってきた環境とは異なった社会を切り取るとき、他者である自分がどこまで介入すべきなのか?を考えさせる
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    投稿日:2023.03.31

  • ぽんず

    ぽんず

    このレビューはネタバレを含みます

    本を読むのが苦手な私でも読めました。
    1章の報道の自由のない国で、第4の硫酸に焼かれた女性たち、など日本に住んでる自分がどれだけ恵まれて、安心して暮らせてるのか、がすごく感じた。
    個人的に5章の震災と原発が胸に響きました。
    自分は当時6歳でニュースモルカー理解していなかったと思いましす。筆者が棺の写真を撮ったことで、娘さんは両親が最後一緒に居られてる、ことを知れてこういう繋がりができるのか、と思いました。

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    投稿日:2023.02.16

  • yumi

    yumi

    著者の林典子さんは、写真とジャーナリズムに、意図せずある日出会ってしまった人のように思えた。

    世界の片隅に、ニュースにならない、目を背けたくなるような現実が溢れていること。
    それを写真に撮り報道しても世に知れ渡り変わっていくには多くの時間を要し、その被写体となった人達は直接には救われないというジレンマ、それでも写真を撮ること、そのような人達に寄り添い、生活を共にし、写真を撮ることはしかし一見すればこのような人達に大きなカメラを向けて付き纏う冷たい日本人と見えることを常に肌で感じながら、身を削りながら取材を続けているのだろうと感じました。

    このような信じ難い現実を知ることとともに、林典子さんの思い、姿勢、成長も読み取ることができる、単なるフォト・ドキュメンタリーではない一冊でした。

    震災の、あるご夫婦の一節には、ジャーナリズムとはまた違う、深い感動がありました。
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    投稿日:2022.07.31

  • captain

    captain

    第一章、ガンビアの独立新聞社で命懸けで新聞記事を書く若い記者達の描写が1番印象深く残る。
    意義の為に危険を冒してまで職務を全うし、実際に命を奪われた者。その道を諦めざるを得なかったもの。


    第1章 報道の自由がない国で―ガンビア
    第2章 難民と内戦の爪痕―リベリア
    第3章 HIVと共に生きる―カンボジア
    第4章 硫酸に焼かれた女性たち―パキスタン
    第5章 震災と原発―日本
    第6章 誘拐結婚―キルギス
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    投稿日:2022.03.31

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