【感想】バクちゃん 1

増村十七 / ビームコミックス
(8件のレビュー)

総合評価:

平均 4.2
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ブクログレビュー

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  • nankado

    nankado

    この作品、読んでいてだんだん疑問が湧いてきた。これは「移民問題をSFやファンタジーで描いている作品」のように見えるが、実際には「ファンタジー的な物語を作るために移民問題を利用」してしまっているのではないか?
    少し話題になって刊行時に2巻まで購入していたが、なぜか読み進めることが難しく、1年ほど放置して、あるきっかけでむりやり読み通すことになった。
    なぜ進まなかったのか・・・読了して、その理由がなんとなく分かってきた。ここには現実に起こっている入管の虐待問題も、強制送還の問題も、シリアスな問題はファンタジーのオブラートの向こうで薄まって「他人事」になってしまっているのだ。
    たとえば同時期に発表され、比較的似た題材を扱っている谷口奈津子「教室の片隅で青春がはじまる」では、やはり留学生という「外来人」が異星人として描かれている。しかし、この場合はテーマが思春期女子の心理なので、そういったファンタジー的比喩表現がなくても(つまり、異星人ではなくふつうに地球人の海外出身留学生に変えても)ドラマが成立する。古典的には手塚治虫「火の鳥 望郷編」なども日本の海外移民(棄民)を思わせる設定でSF的年代記を描いているが、なかなかシビアな設定である。
    しかし「バクちゃん」の場合、これを人間に置き換えてしまうと、もう少し生臭くなるか、逆にちょっと話が楽天的すぎ、都合良くなりすぎるのではないだろうか。著者はそういう都合良さをカモフラージュさせるために、異星人というファンタジー的な設定を持ち込んでむりやりほのぼのヒューマンファンタジーに作り上げてしまったのではないか。
    おそらく、それは意図したものではなく、著者の作家としての生来のリスク回避センスによるものだろう(意図してやっている作家の場合は、たいてい、もっと計算しているものだ)。そして、そのことが却って作品を毒にも薬にもならないものに止めてしまっている。。
    よく取材した会心作のように思われるが、題材に向かい合う著者の根本的な姿勢が解決されないかぎり、作品として図抜けることは難しいだろう。
    あるいは、「ちいかわ」のように電通などにプロデュースを受けるなどすれば、意外と仕事になるかもしれないとは思う。しかし今の国が必要としているプロパガンダの方向だと、その可能性はおそらく薄いだろう。
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    投稿日:2022.09.05

  • おまめ

    おまめ

     バク星から移民として地球にやってきたバクちゃんが、その周囲の地球人、同じ異星人の移民、地球生まれの異星人の皆んなと一緒に過ごすお話。

     可愛らしい絵柄ですが、実際の移民の問題や外国人の扱われ方などの社会問題をテーマに扱っているような雰囲気がします。
     
     また、いい人もいれば嫌な人もいたりしますし、優しすぎる人が損をしていたりもします。
     そういう少しリアルな現実も描かれることで、より優しさが際立って見えました。

     バクちゃん可愛いよぉ。
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    投稿日:2021.09.04

  • ymmtdisk

    ymmtdisk

    夢が枯れてしまったバク星から地球・東京へやってきた、移民のバクちゃんが主人公。2巻予告の文言を借りると「すこし不思議、すこしリアル」なお話で、住民登録から銀行口座を持ってケータイの契約ができて、そこからでないと仕事が見つけられない、しかし銀行口座を持つにはある程度の在住期間が必要だったり……と、日本で生まれた身として、他の国からやってくる人の状況を如何に知らないか、という気づきが得られる内容だった。そこにバクちゃんの「夢を食べる」というファンタジーな要素が上手く絡んでいる。

    岸本佐知子さんがおすすめとして挙げていたことで知った。そこでも言及されていたけど、清掃係で27年在住のサリーさんに「地球は好き?」と聞いたときの答え、「選択肢 ないよ(ノーチョイス)」が印象的。

    あと、なんか最近バクが好き。

    岸本佐知子さんおすすめ 不思議でリアル…。移民がテーマの増村十七著『バクちゃん』|読むらじる。|NHKラジオ らじる★らじる
    https://www.nhk.or.jp/radio/magazine/article/nhkjournal/TD8eC738bE.html
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    投稿日:2021.05.13

  • NORIS

    NORIS

    ツイッター多文化共生系TLで知り、興味を持った作品。
    外国ではなく宇宙から来た移民たちが影に日向に暮らしている東京の地が舞台。バク星からおじさんをたよりに舞い降りた新参者のバクちゃんがであうさまざまな新旧の移民たちの境遇や経緯、地球の日本人との交流。設定はファンタジーだけれど、具体的なエピソードや心情はすごくリアル。
    バクちゃんを助けてくれる人間のハナちゃん、小牧さん、地球育ちが長いダイフク…みんななにかを抱えていて立体感のある興味深いキャラで続きの展開が気になる。

    多文化共生を考えられる文芸作品は児童書も含めてこのところふえてきているが、身構えずにマンガで入門できるのは貴重。マンガだから予算が、なんていわないで、全国の学校の図書室にぜひとも入れてほしい作品。

    初出:月刊コミックビーム 2019年9月〜2020年3月
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    投稿日:2021.01.16

  • ワコチ

    ワコチ

    仕事で地方に放り出された時、今まで簡単に手に入った物が手に入らなくなりました。仕事も分からず、助けてもらえる人もおらず、知り合いもいない状況…色々な側面から追い詰められました。

    主人公のバクちゃんは、住んでいる星で満足な生活がおくれなくなったので、仕方なく、でも、希望を持って地球にやってきます。言葉、文化、姿さえも見慣れない場所で暮らすことになるわけですから、いくら前向きなバクちゃんでも、とても大変なことだと思ってしまいます。

    「これは現在282万人の外国人が暮らす、日本の「みんな」の物語。」
    そんな帯を付いていて、つい手に取りました。

    今は違う地方に住んでいますが、大変だった頃の僕を救ってくれたのは、先人の知恵と時間、そして、そこに暮らす人たちの優しさでした。大変だった頃の自分を思い出し、ほんの少しでも優しい気持ちでい続けなければ、そんなことを考えています。
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    投稿日:2020.09.16

  • ozkzo

    ozkzo

    このレビューはネタバレを含みます

    なぜ放水???なんのために??

    バクは大人になると人間型になれると…あれ、ダイフク高校生では?ああ、地球の日本の学制と、成体までの年数なんて関係ないわな…。
    と言うことは、ダイフクは、子供の頃をバク丸出しで過ごしたの?それで小学校行ったり?それは、それは大変だったろう…すごい、すごく…。
    それはそれとして、ダイフクっていい名前だなあって思うけど、日本で生まれたわけではないから、大福とは関係ないか。

    ところで、結局のところ「夢を食べられる」って言うのは無害なの?そこはちゃんと調査されたの?それは大事だと思うんだ。それをするのは差別じゃないよね。じゃないと思う。
    ハナちゃんとかも、ちょう気軽に「食べて」って言っちゃってるけど「食べられるとなんかある?」とか「痛くない?」程度のことは確認しようと思わないの???

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    投稿日:2020.07.12

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