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津原 泰水 / ハヤカワ文庫JA (5件のレビュー)
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踊る猫
眼前の現実は1つだ。それをぼくは腑分けして「男/女」「生者/死者」「現実/幻想」「事実/虚構」というように分類している。ならばこの異様なテンションに満ちた作品は、そうした分類された・秩序正しい世界に慣…れきったぼくの「寝首を掻く」ものではないか。実際にこの作品を読み進めると、ある箇所から常識/安寧を揺さぶるできごとが矢継ぎ早に起こり始めこちらをたじろがせる。批評的な読解をほどこせるほどぼくは賢くないが、著者はそうした「揺さぶり」を通して何もかもが溶け合った、「1つ」だった世界の実の姿を見せんとするかのようだ続きを読む
投稿日:2024.01.22
司書KODOMOブックリスト(注:「司書になるため勉強中」のアカウントです)
小説や映画、音楽や漫画には強度があると思う。何十年後も今と変わらず(もしくは今以上に)力を発する強さ、というものが。(この作品は)大事件が起きるわけではない。けれど、文章を読み進めるだけで興奮する。暗…く、ゆがんだストーリーであるのに、読むにつれ妙な親近感がわき、物語に引き摺り込まれる。小説というのはもともと、不穏で、ゆがんだ道徳について描くものかもしれない。世界観を支え切る文章の強さが素晴らしい、本当に、うらやましい。 (『3652』伊坂幸太郎エッセイ集 p.136より)続きを読む
投稿日:2023.09.26
リンネ
都会の中の鬱蒼とした公園、昨日も訪れた、私には馴染みの井ノ頭公園が舞台。この公園がジクジクと膿む巨大なカサブタみたい。主人公の公園管理人は、この隆起して、街に侵食の幅を広げる、カサブタの膿の中の幼児に…思える。インポテンツ。私とほぼ同い年。うわぁ。 公園管理人の「彼」にとって、井ノ頭公園全体は、幼い頃に通った「杜」と地続き。性が目覚め、そして父の縊死の果てを発見した、「杜」。この「杜」を「彼」は局部に飼うことになったのだろう。 終始、迸るような勢いの筆致に放心。鬼気迫る言葉に、心身が弄ばれた。取り扱い注意。続きを読む
投稿日:2021.04.25
てけてけ
タイトル通り、あまりにも直球に物語は主人公が風俗店に行くところから始まる。しかもピンサロである。しかし不能 なのである。 主人公の取る奇抜な行動のどれをとっても、現実ではやらんやろ、と思うものなのだ…けど、20年後、30年後の自分の姿としてありえないものではないのでは、と頭の片隅で感じてしまう。「石を投げなさい」のあれに近い感覚を感じた。 舞台がたまたま自分が住んでいる近くの吉祥寺ということもあるのか、リアルさを越えてグロテスクであった。続きを読む
投稿日:2020.02.06
toca
このレビューはネタバレを含みます
『妖都』に続き、本書も復刊(来月には『少年トレチア』も復刊されるので楽しみだ)。 久しぶりに読んだけれど、予想以上にしっかりと内容を覚えていた。最初に読んだ時、まだ若かったというのもあるだろうが、余程、鮮烈な印象が残っていたのだろう。特に終盤は圧巻。
投稿日:2020.01.24
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